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出雲盛衰記13
 出雲盛衰記
 十三章



 ――頭がボウッとする。
 かすむ目に映るのは薄暗い森。
 遠くで人の話し声が聞こえる。
 私は、一体どうしたんだ……


 次第に覚醒していく意識の中で、藤那は唐突に状況を思い出して目を見開いた。
 途端に激痛が頭を襲う。

「っつ……、ここは、どこだ」
 頭を抑えながら立ち上がる。
 足下が覚束ず、今まで寄りかかっていた木に手を突いて身体を支えた。

「山の中、のようだが……。九峪はどうしたんだ? 私の部隊は……」

 遠くの方で声が聞こえる。
 藤那は誘われるように声の方に歩を進めた。



「……で、これからどうするのだ?」
 雲母は昨日麻酔で眠らせた、藤那の副官に悪戯しようとしている九峪に蹴りを入れながら、ぶっきらぼうに聞く。
 問いただしたのは伊雅の方にだ。

「こうなっては仕方ないな。天魔鏡の思惑ははっきりした。みすみす殺されてやる言われもない。復興軍に敵対する」

 伊雅は迷い無く断言する。
 雲母がちらりと清瑞を見ると、清瑞も黙って頷いた。
「と、言うことだが? 九峪」
「……う~ん、ま、それはいいんじゃね? 問題はむしろ雲母、お前だろ。都督にはどうするんだ? 戻るのか?」
「都督?」
 伊雅が不審そうに雲母を見る。

「……始めはそれも止む無しかと思っていたんだがな。だが、戻ってみすみす処刑されるよりは、伊雅どの達と部下の仇を討った方が、まだ申し訳が立ちそうだとも思う」
「なるほど。まぁ、死ぬのは簡単だからな。好きな死に方選べばいいさ」
 九峪はそう言いつつも、にやけた顔でまだ副官の女に手を伸ばしている。今度は清瑞に蹴られた。

「ちょ、ちょっと待て。その話だと雲母殿、おぬし……もしや」
 伊雅はかすかに震えながら、雲母を指さす。
 雲母は神妙な顔で頷く。
「左様。察しの通り私は狗根国の軍人です。狗根国四天王、月影将軍雲母」

「し、四天王!!」

 驚愕に顎がはずれそうなほど口を開けて固まる伊雅。
 暫く固まっていると、ばきき、と木を踏むような音が響き、全員抜刀しながらそちらを振り返る。

「……な」
 そこには顔面蒼白の藤那が、驚いた表情で立っていた。

「四天王、だと……!!」
 藤那はぎりりと歯を食いしばって、憎悪を籠めた目で雲母を睨む。
「だとしたら何だ? 偽の火魅子候補」

 藤那はよろよろと雲母に詰め寄ると、胸ぐらを掴んで額を突き付ける。
「貴様らが、この九洲でやったことを忘れたとはいわせんぞ! 貴様のせいで私の里も、両親も!」
「別に詫びる気はない。弱い奴は搾取される。それは理だ」

「ふざけるなよ、お前っ!!」
 いきり立った藤那は雲母を殴りつけようとして、背後から九峪に羽交い締めにされる。
「九峪、貴様! 離せ!」
 目覚めたばかりでへろへろな藤那が九峪をふりほどけるワケもなく、あっさり雲母から引きはがされてズリズリと後退させられる。

「まぁ、落ち着け藤那。命令が下ればそれを実行しなくちゃならないのが軍人ってもんだ。別に雲母だけ悪いワケじゃないぞ」
「うるさいっ! 貴様もこんな奴とつるみやがって! 見損なったぞ」
「ああ、はいはい、別に幾らでも見損なってくれ」
「おい、くそ、こらどさくさに紛れて乳を揉むんじゃ……あっ……」
「ほほう、随分成長したなぁ、こっちの方も……」
「あ、や……やめ……ろ……」

 九峪は藤那が大人しくなるまで乳を揉みまくり、崩れ落ちるように藤那が腰を下ろしたところで、真面目な顔で切り出した。
「まぁ、おっさんもあんまり責めないでやってくれよ。軍人として九洲を虐げようが、それを行うのは人ではなく国だ。帖佐にしたってそうだが、仕事だからってのもあるんだ……」
「そんな事で、納得しろというのか? この十五年、儂の目の前で幾度民が焼かれ、虐げられ、もてあそばれたことか! その無念を忘れろというか!!」

 伊雅の激高した叫びを九峪は涼しい顔で受け流す。
「でもさ、それって結局伊雅のおっさんの力が足りずに、狗根国にやられちまったのが悪いんだろ?」
「なっ……」

「民が嘆いているのは、そらしゃーないけど、支配者側で国を主導する側だったおっさんが、そいうこと言うのは頂けないな。あんたらは、狗根国が攻めてきたのを撃退出来なかった時点で王族としての責任は果たしていないだろ。その結果民が酷い目に遭わされたというなら、そいうのは他人に責任を押しつけるだけのみっともない行為になるんじゃないか? ようするに勝ってれば良かったんだから」

「ぐぅっ……」
「まぁ、心情は理解出来なくもないし、生き延びちまった以上、やるせなくて仕方ないのもわかるけどさ」
 九峪は神妙にそう言って、ぐったりしている藤那を見下ろす。

「藤那の場合は問題外だな。自分も同じような真似するところだったのに、雲母を悪く言う資格なんて何処にもないぞ。いや、自分の所の民を自分で傷つけてるんだからそれ以下か」
「……うぅ」

 九峪は大きくため息をつくと、清瑞の方を見る。
「お前はどう思う? 雲母を否定するか?」
 清瑞は暫く考えた後、首を振る。
「昔の事情は知らない。ただ、雲母さんは里の民を護って戦ってくれた。その恩義は返さなくてはならないと思う」

 娘の意外な言葉に伊雅は、目を丸くする。
 そして、その素直な言動に口元をゆるめた。
「そうだな……。少なくとも、儂も雲母という武人が民を傷つけたという事実は知らぬしな。まして、本人であるかなどわからぬし。正直、先の戦闘ではこの者と共に戦場に立ちたいとも思ったのも事実だ」
 そう言って優しい目で雲母を見る。
 雲母は僅かに頭を下げる。

「かたじけない。心遣い痛み入る」
「さて、それでは、次の行動だが……」

「――うう」
 九峪が話し始めようとした瞬間に、副官が呻いた。
「……う」
 身体を起こすと、焦点の合わない目で中空を見ている。




「……おはよう、案埜津」

 かけられた藤那の言葉に、副官は当惑顔で呟いた。


「藤那様……?」









 
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【2006/02/28 15:23】 | 小説 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
出雲盛衰記12
 出雲盛衰記
 十二章



 九峪は自分の上から雲母を押しのけると、しんと静まりかえっている森に視線を走らせた。

「気づいたか? 雲母」
「誰にものを言っている」

 何処か不満そうにそう呟くと、立ち上がって服を着込み始める。

「……まったく何処の誰か知らんが無粋な奴らだ」
「全くだな」

 九峪も脱がされた服を着込みつつ、じっと一本の木を見つめる。

「清瑞。出てこいよ。いるんだろ?」

 ガサ

 露骨に動揺が伝わってくる物音。
 不意を衝かれて驚いたらしい。
 バツが悪そうに出てくると、まだ下半身丸出しの九峪を見て凍り付く。

「ん? どうした?」
 首を傾げる九峪。
 真っ赤になって俯く清瑞を見て、九峪は自分のモノを見下ろす。

「ああ、こりゃ失敬」
「早くしまえ」

 雲母がそう言って九峪の股間を蹴り上げる。

「おまっ――!」

 声にならない声を上げてもがき苦しむ九峪。
 そんな九峪を尻目に、雲母は清瑞の方へ目をやる。

「気づいているか?」
 清瑞は一瞬迷ったが、直ぐに頷き呟いた。

「敵だ」
「数は?」
「おそらく百か、そこら」
「他には?」
「僅かだが鎧の音がする。多分何処かの正規兵だろう。かなり統率が取れているし、山賊の類じゃない」
 間髪入れずに聞いた雲母の問いに、清瑞は迷い無く答えた。
 雲母は感心したように笑みを浮かべる。

「その年で大したものだな」
「……別に」
「謙遜するな。それよりこのこと、早く伊雅殿に伝えるべきではないのか?」
「ああ」
 清瑞は雲母の事を一瞥だけすると、直ぐに里の方へ走っていった。

 雲母はその後ろ姿を眺めながらうっとりとする。
「なぁ、九峪。随分上物だと思わないか?」
「……」
「おい、九峪?」
「…………」
「……今度は潰すぞ」
「はいぃ~っ! なんでございますか雲母様っ?」

 ふざけた返事をしながら起きあがった九峪に、雲母は大きくため息をついて見せた。
「ふう。百かそこらの兵に囲まれてるんだぞ? 自覚はあるのか?」
「いや、そこは雲母が頑張ればさ。清瑞もおっさんもそれなりにいけるだろうし、百くらいなら大したこと無いだろ?」
「かもしれんが、お前はどうする?」
「やるさ。かる~くな」

 九峪はそう言ってつまらなそうに笑った。
「殺れるのか、お前に?」
「ん? 何の心配だ、それ」
「いや、人殺しが出来るようには見えなかったものでな」
「ああ、はいはい、確かに軍人さんに比べりゃ淡泊ですけどね。それでも必要があれば幾らでも殺るよ」
 何も気負わずに軽く応じる。
 雲母は納得が行かなかったが、ことさらそれ以上追求もしなかった。

 遠くから、少しづつ聞こえてくる行軍の物々しい音。
 雲母は腰の剣を一度確かめると、久しぶりの感覚に笑みを浮かべた。



 深紅の鎧を着込んだ兵士達。その中で一人だけ毛色の違う人物がいた。
「やれやれ、一体キョウ様は何のつもりで、こんな小さな里を襲えなどと」
 気乗りしないのかそんな事を呟いて、ため息をつく。
「藤那様。準備、整いましてございます」
「ご苦労。では、やるとするか。一人たりとも逃すなよ」
「はっ!」

 ぞろぞろと兵が里に向かって動き始める。
 藤那はそれを後方で見ながら、ゆっくりと付いていく。

「うわあぁあぁああああっ!!」

 突然、前線から悲鳴が上がった。
 藤那は始め、それが里のモノの声だろうと考えた。
「ま、待ち伏せだっ!! 待ち伏せされてるぞ!」

 続いてそんな声が上がって、やれやれと頭を掻く。
 別にこの程度想定していなかったわけでもない。
 神器の精がわざわざ火魅子候補の一人を送りつけるのだから、敵もそれなりのものだと見るべきだ。

 分かっていながら乗り気ではなかった藤那はその予想を口に出していなかった。おかげで部隊は混乱している。

「落ち着けっ! 敵は少数だ、隊列を整えろ!」
 一応指揮官として檄を飛ばす。
 周囲に火が放たれて、炎の揺らめきの中に藤那の目にも、一瞬的の姿が映った。

 美しい黒髪の少女。
 尋常ならざる身のこなしで、一人二人と、斬り捨てては間合いを取っている。
 まだ里の中にまで入り込めていないせいで、多人数の利がそれほどない。むしろ木などの障害物を利用して、いいようにやられてしまっている。

 ――ちっ。ああ早くては私の方術も狙う暇がないな。

 山間の小さな里に、それほど多くの手練れがいる通りもない。一人でも討ち取ってしまえば、それで形勢は逆転するはずだが。
 そんな思考をしていると、別の方面からも悲鳴が上がる。

 見ると銀髪の女が鮮やかに舞うように兵士を斬り殺している。
 こちらのほうも尋常ではない腕だ。
 その近くで戦っている白髪の老人もまた、ただならぬ使い手のようだった。

「一体、何だというのだ。こんな山奥に手練れがぞろぞろと」
「おや? 藤那じゃん」

 唐突に背後に湧いた気配に、藤那は驚いて振り返る。

「――っ! 九峪?!」
「なんだよ、お前も復興軍に入ってたのかぁ。随分大きくなったなぁ」
 よしよしと頭を撫でる九峪。
 藤那は九峪の腕を払いのけると、唐突に現れた人物に動揺しながらも叫ぶ。
「貴様っ! なんでこんな所に」
「いやぁ、まあ行きがかり上。で、何してんの?」
「何って、それは……」
「お前等復興軍だろ? なんでまたこんな場所。身内みたいなもんだろ」

「う、うるさい。いいから余計な口出しはするな」
「藤那様! 誰ですかそ奴は」
 副官がいつの間にか現れた九峪に、露骨に剣を向ける。
「コイツは、その、昔の知り合いなんだが……」
「知り合いねぇ。もうちょっと言い方あるんじゃないか?」
「うるさいと言ってるだろ! とにかく邪魔するならお前と言えど斬るぞ」

 九峪は仕方ないなぁ、と呟いて腰に差していた剣を引き抜く。

「く、九峪?!」
 慌てて間合いを取ろうとする藤那。

「悪いな、藤那。この里を滅ぼされるワケにはいかないんだよ」
 剣を振るう九峪。
「藤那様!!」

 庇うように副官が剣の軌道に身体を滑り込ませる。

 死すら覚悟して、きつく目を閉じる副官。

 だが、痛みはいつまでもやってこなかった。

「……っく、あ」

 背後から、藤那の苦鳴が聞こえ、慌てて振り返る。


 ぽた……ぽた……ぽた……


 副官の目に、藤那の胸を貫いて伸びる、血に濡れた剣が飛び込んできた。


 どさり、と崩れ落ちる藤那。

 剣はずるりと抜けて、九峪は血に濡れた剣を副官に向けると、ニッコリと笑って剣を振り下ろした。

 副官が最後に感じたもの。


 それは、首筋に降って湧いたように走った、鋭い痛みだった。










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【2006/02/27 11:57】 | 小説 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
第十四回 火魅子伝SS戦略会議
 第十四回 火魅子伝SS戦略会議



 眠いっ!!

 徹夜でチャットして寝てない作者です。ああ、眠すぎる。
 眠いので微妙にフライングで出します。日付変わってないけどね(キニシナイキニシナイ
 さて、まぁ、そんな皆様には毛ほども関係ない事情は置いておきまして、十四回目の戦略会議を開催したいと……

 ??

「あら? どうしました? いつものように紹介して下さいな」
 ニコ

 ええと、まぁ、そうですね。本日のゲストは志野さんです。

「何をそんなに怯えてらっしゃるのかしら?」
 え? いえ、別に深い意味は無いんですけど、もしかして怒ってらっしゃる?

「なぜ? 私が怒るようなことを作者さんはしていたかしら?」
 ニコニコ

 その笑みが怖いんですが。ちなみに、出番が無いですよね。最近。
「ええ、そうですねぇ。なんでも編年紀は第二部の後半からというお話でしたが」

 ええ、その通りなんですけど。

「別に怒ってはいませんよ。お話の上では私はまだ出るわけにはいかないのでしょう?」
 まぁ、そうですけど。今までの経験上みんな、有無を言わさず出せとばかり言うものですから。さすが耶麻台国で数少ない常識人。

「ほほほほ、そんな事はありませんわ。それで、私と九峪さんの事なんですけど……」
 へ?

「……伊万里さんと随分仲が進展していたようですが、私の方が有利だったんじゃないのかしら?」

 ええ、でも朔夜が……

 ぴしっ

(はうぅっ、空気に亀裂が入ってる!!)

「ねぇ、私にももちろん子供はいるんですよね? それも三人くらいは当然」

 え、いえ、それは、その……

「ね?」

(怖いよー、おかーちゃーん!)

「まぁ、百歩譲っていないとしても、九峪さんがまだ出てきていないのは、私と一緒にいるからなのよね?」

 それは、違うかと……

「な~んですってぇ」
 志野! 目が座ってる!!

「んふふ、もう、しょうがない作者さんですね」

 え、あ、の、襟首を掴まないで……

「アレ、やってあげますから。ね?」

 アレって、一体……

「あら、幻聴記では私やっていたじゃない」

 って、それは、発禁になるような、ヤバ、


 いぎゃああああああああああああああああ

 王大人、死亡確認。


「ふふ、これできっと私と九峪さんの仲は……。うふふふ。次回からは【子育て爆裂記~志野編~】をお送りします。見て下さいね♪」









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【2006/02/25 00:00】 | 会議 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
出雲盛衰記11
 出雲盛衰記
 十一章



 日が沈み始める頃、九峪は自分で山に出向いて狩ってきた兎を捌いていた。
 時を止められる九峪は、猟に関してもかなり優秀だ。特に魚など逃した試しがない。三秒間だけとは言え、卑怯な奴である。

「どした? 親の敵みたいな目で、人のこと睨んで」
 さっきからひしひしと感じる視線の方に顔を巡らせると、清瑞がじっと九峪のことを見据えていた。

「仇も同然だ。父上をそそのかして」
「そそのかす、ねぇ。清瑞はこのままひっそり暮らしていても別に構わないのか?」
「当たり前だ。もとより私は他の暮らしなど知らない」

 九峪はため息をつきながら、兎の肉を串に刺して火にかける。
「そりゃ、悪いことしたな。だが、それならおっさんに言って止めるように説得すればいいだろ。可愛い愛娘が懇願すれば気も変わるって」
「……お前は何者だ?」
 九峪の言葉は無視して詰問口調の清瑞。

「生もの」
 べたべたのセリフを返すと、クナイが九峪めがけてとんでくる。
 九峪はそれを受け取ると、次の兎を捌き始める。
「真面目に答えろ!」
「はいはいっと。お姫様はどんな答えがお望みでしょうか? 耶麻台国の縁者? それとも復興軍からの刺客? 或いは狗根国の間者? どれでもなく都合のいい神の遣いだとか?」

 馬鹿にしているようにしか聞こえない九峪の言葉に、清瑞は腰に下げていた剣を抜き放つ。
「真面目に答えないなら、殺す」
 九峪は清瑞を一別して、そっぽを向く。
「止めとけ。かなりの腕なのは分かるが、お姫様には剣は似合わないよ。そんな美しい顔してるのに」

「う、美しい!?」

 裏返った声で叫ぶと、顔を真っ赤にする清瑞。
「な、き、貴様、何を――!」
「事実は事実。歳はいくつだ?」
「十七だ」

 ――青い果実って所か。瑞々しいねぇ。
 九峪はどうしようか考えながら、もう一匹の兎も火にかける。
「なぁ、お姫様」
「名前で呼べ。私には清瑞という名がある」
「じゃあ、清瑞。おまえ昨日の晩、ずっと俺と雲母の事見てただろ」

「っ!!」
 絶句する清瑞。
 耳から湯気でも出そうなほど、顔が真っ赤だ。
「関心があるのはいいことだけど、覗きは感心しないなぁ」
「だ、誰が覗きなんて真似!」
「おや、違ったかな? だけどあんな上手く気配を消せるのはこの里にお前くらいだと思うんだけどなぁ」

「し、知らない! そんなことは知らないぞっ!!」
 懸命に否定する清瑞。
 九峪は清瑞の方に視線を送らずにニヤニヤして更にからかう。
「知らないなら、なんでそんなに狼狽しているんだ? 本当は見たんだろ? やらしい奴だな清瑞は」
「うぅ、そ、そんな事……」

 だんだんと勢いがしぼんでくる。
「どうだった? 見物料は感想でいいや」
「……」
 足音を残して清瑞は無言で去っていってしまった。
 九峪はいい塩梅に焼けたてきた兎の肉を見ながら呟く。
「やれやれ、所詮は子供だな……」

 何を期待していたのか、そんなセリフをほざいてため息をついていた。



 清瑞と入れ替わりに雲母が戻ってきた。
 九峪と雲母の二人は、村の端で寝泊まりすることになっている。
 まだ得体の知れない輩を、自分の家に招くほど伊雅は馬鹿な男では無いらしい。
「何か分かったか?」
「まぁ、取り敢えず美禰の街への行き方だけはな」
「そうか。で、雲母はどうするんだ? 予定通り都督に行くってんなら、途中までは送ってくよ」

「さて、どうしたものかな……」
 歯切れの悪い解答に九峪は眉を顰める。
「なんだ? 昨日は意地でも戻るような口ぶりだったが」
「まあ、なんだ。少し興味が湧いてな。処罰を受けるのは別にいつでも構わないだろうが、その前にお前がどう動くのか、知りたくなった」
「はあ?」

 雲母は半生の兎を取ると、それに齧り付く。
「まだ焼けてねーぞ」
「半生なくらいの方が美味いだろ」
「相変わらず破綻した味覚だな。で?」
「帖佐を知ってるんだろ? どんな風に出会ったんだ?」
「ああ、それね」

 九峪は苦笑する。
「昨日のお前と一緒だよ。、あの当時は特に九洲中に魔なる者が犇めいていたから、満月の晩の度に、そりゃ酷い目に遭ったもんだ」
「ほほう。と言うことは、帖佐に掘られたのか?」
「……笑えん冗談を。言っとくけどな、雲母。満月の晩に俺のこと喰いもしないで強姦するのはお前くらいだぞ」
「喰うのか?」
「うん。コレがまた美味いらしいんだ。帖佐の時はあいつの女も一緒にいたな、そう言えば」
「ほう」
「で、蒼竜玉はその代金」
「何処が命の恩人なんだ?」

 九峪は苦笑を浮かべる。
「満月の晩に俺の肉を食うと、魔なる者の力が増す。色々効能あるんだよ。ま、人によって違うけどな。帖佐の金魚の糞、柚子妃って言ったか?あいつの病は知ってるだろ?」
「病? 柚子妃が?」
「ああ、そうか。あの時点で雲母はまだ四天王じゃなかったんだな。柚子妃は魔界の黒き泉の力で、帖佐と同じ不老になろうとして、それが行きすぎて若化が起きていたんだ。そのまま放っておけば、今頃は十歳くらいの女の子になってるはずだが、俺の肉を食ったおかげでそれが治って、目に入れても痛くないと言うくらい、溺愛していた帖佐は、海よりも深く俺に恩義を感じてるってワケだ」

 雲母は得心顔で頷く。
「なるほど。確かにあの冷血漢も柚子妃の前でだけは違うからな。本人の命を助けるよりもむしろ恩に着てるだろうな」
「そゆこと」
「しかし、あれは何なのだ? 他にも何かあるだろう? 時々おかしな動きをする事だし」

「能力については秘密だよ。ああ、どうでもいいけどさぁ――」
「ん?」
 九峪は苦笑を浮かべながら告げる。

「満月の晩に俺と犯ると、確実に孕むぞ」

 ぴしり

 雲母が固まる。

「な、なん、だと……」

「う~ん、だから俺はやめておけと言ったのになぁ。うるさいからってお前しゃべらせないし」
「は、孕むって、おい!」
「俺のせいにするなよ? お前が嬉々として人のこと組み敷いてたんだからな」
「聞いてないぞ!」
「だから言わせなかったのお前じゃん?」

 九峪は別にそのことなどどうでもいいのか、ようやく火が通った兎にかぶりつく。
「俺も、また喰われるもんだと思ってたから、別に警戒してなかったんだけどさ。やはり味音痴には最高級の美味がわからんらしい」
「……は、孕むって」
「まぁ、気にすんな。女としての務めさぁ~」

 雲母はへなへなとその場に崩れ落ちる。
「ん? そんなに嫌なのか? まぁ、堕胎すなら堕胎すで構わんと思うが」
「……最悪だな。で、責任を取る気はあるのか?」
「だから、責任も何もお前が勝手に――」
「貴様の子供には違いないだろ!!」
 雲母に襟首をしめられて、呼吸困難に陥る九峪。

「ひゅ、ひゅー」
「あ、すまない」
 雲母が手を離すと思い切りその場でむせ、少し落ち着いてからまた口を開く。
「ごほっ、ごほっ。うん、なんつーかさ。すでに俺には結構な数ガキがいるわけで、少なくとも俺に養えと言うのは無理な話だな」
「そんな無責任な話があるか!」
「そう言うお前は理不尽だな。まぁ、確かに満月の夜にそうなるって知ってて手を打たなかった俺にも非は無いこともないしなぁ。でも、前にも言ったが、俺には既に嫁がいるし」

「別れてでもどうにかしろ!」
「ああ、無理無理。話を出した時点でどうなることか」
「何処にいるんだ、そいつは」
「復興軍。って、伊雅との話し聞いてなかったのか?」
「話をつけてくる」
「って、ちょっと待て。お前が復興軍行ったら、袋たたきにされるぞ」
「知るか!」

 今にも走っていきそうな雲母。
 九峪はやれやれと思いつつ、背中を向けた雲母に声をかける。
「どのみち俺は一人の女を愛することはないよ」
 雲母はピタリと立ち止まる。
 九峪はたき火をじっと見つめながら、言葉を続ける。
「この世界は、俺にとってはかりそめだ。お前も兔音も、忌瀬も天目も、魔人も天人も、耶麻台国も狗根国も、全てかりそめでしかない。実感が湧かないんだよ。生きている。存在している実感って奴がさ。何をしていても、まるで上から俯瞰しているようで……。雲母、お前は俺に現実感を与えられるか? 俺は、もうずっとそれだけを求めている」

 雲母は、振り返ると邪悪な笑みを浮かべて九峪を見つめた。
「吐き気がするほど教えてやろう。後悔するなよ、九峪」
 そう言って、九峪に襲いかかった。



 日も暮れて、曇っているのか星も出ない夜。
 闇に包まれた伊雅の里。
 飽きずに励んでいる雲母と九峪。
 清瑞は、昨日と同じく、闇の中でじっと二人を見ていた。

 夜目が異常に利く清瑞は、闇の中で蠢く肢体を、息をのみながら見つめている。
 気を使っているのかどうなのか、昨日よりは声が漏れない。

「? なんだ?」

 そのおかげ、だろうか。
 清瑞は目の前の状況に没入しきることなく、異常を察することが出来た。

 闇の中に立ちこめる、戦いの前触れを――










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【2006/02/24 00:25】 | 小説 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
出雲盛衰記10
 出雲盛衰記
 十章



 色々な意味で激しい満月の夜が過ぎ、空が白み始めると九峪と雲母は山人の里の長老の元へ挨拶に向かった。
 長老は名前を伊雅といい、眼光鋭い白髪の老人だった。

「道に迷われたか。それは難儀なことだな」
「ええ、もう本当に。で、ただでとは言いませんから誰か案内つけてくれませんかねぇ。近くの街道まででいいので」
「うむ。のたれ死にさせるのも忍びないしな。よかろう。清瑞、清瑞はおるか?」

 老人が叫ぶと、奥の方から黒髪の美しい少女が現れた。切れ長の目に隙のない立ち振る舞い。歩き方だけで雲母は清瑞がただ者ではないと看破した。
「これは儂の一人娘で清瑞という。これに案内をさせよう」

 伊雅はそう言って清瑞の方に視線を送る。
「よいな、清瑞」
「はい」
 清瑞は短く返事をすると頭を下げた。

「さて、それで他になにか入りようなものでもありますかな?」
「いえ、案内さえつけて頂ければ十分です。これはほんのお礼です」
 九峪はそう言って荷物の中から、布に包まれた物体を伊雅に差し出す。

「これはっ――!!」
 伊雅は布をめくって驚愕に目を見開く。
 中から出てきたのは変わった形をした宝玉だった。大きな真っ青の玉に貴金属が絡まっている。

「そ、蒼竜玉!!」

 九峪は首を傾げた。
「知ってるんですか? これのこと」
「い、いや、それは」
 何故かどもる伊雅。

「蒼竜玉と言えば、耶麻台国の神器ではなかったかな? 確か」
 雲母は思い出したように呟く。
「なぜそれを!」
 またまた驚愕する伊雅。

 ――いちいちリアクションでかいなこのおっさん。
 九峪はそんなことを考えつつ、アワアワと場を取り繕うと必死の伊雅を眺める。
「ご、御仁。これを何処で手に入れられた」
「それは私も興味あるな。耶麻台国ゆかりの人間だったのか?」

 雲母は若干警戒心も含めた目で九峪を見る。
 伊雅も不審そうだ。

「別に大したことじゃない。十三年くらい前かなぁ。耶麻台国関係者を助けたときにお礼にって貰ったんだよ」
「か、関係者? 名前は分かりますか?」

「ああ、確か帖佐とかって奴だったな」

「「帖佐だと!!」」

 伊雅と雲母が同時に叫んだ。
 九峪は驚きに目を丸くしている。
「あははは、まぁ、二人が言いたいことはなんとなく分かるよ。耶麻台国関係者じゃないもんな、あいつ」

「というか、四天王だろう。しかし帖佐と知り合いだったとは……」
 雲母がため息をついている中で、伊雅はぷるぷると震えながら何かに耐えている。
「父上?」

 首を傾げる清瑞。
「……九峪殿、何故あの外道を助けたりしたのですか? そしてなぜあ奴がコレを持っていたのか、知っておいでですか?」
 静かに怒りを湛えた声。

「ああ、まぁな。あいつがまさか耶麻台国を滅ぼした張本人で、それが戦利品だったなんてな。まぁ、気が付いたのは結構経ってからだが」
「清瑞、剣を取れ」
 伊雅は真っ赤な顔をして立ち上がると、そう言って手を出す。
 清瑞は素早い身のこなしで、伊雅の背後にあった剣に飛びつくと、鞘から抜きはなって伊雅に持たせた。

「あの怨敵を助けたなどと聞いては、生かしてはおけぬ。この場で斬り捨ててくれるわ!!」
「おい、おっさん。なにいきり立ってんだよ!」
「うるさいわっ! 死ねぇ!」

 大上段から振り下ろされた剣。
 ただの山人にしては鋭すぎる太刀筋だったが、九峪はかろうじてかわした。
「すこし落ち着け、おっさん」
「黙れ!」

 連続して襲いかかる剣を何とかかわしながら、九峪は内心で舌打ちをすると、時を止める。

 僅か三秒間の制止時間。
 だが、相手が人間である限りに置いて、この三秒は絶対的な時間だ。

 伊雅の剣を奪い取ると、同時に座って静観している清瑞の首筋に剣を突き付ける。




「――ああ?」
 伊雅は目の前から九峪の姿消えて狼狽する。
「な、何処に――」
「動くなよ、おっさん」

 声に振り返ると、九峪の姿目に入る。
 いつの間にか自分の剣を愛娘に突き付けている光景に、自分の目を疑う。
「頼むから落ち着いてくれ。別に俺はアンタを怒らせたくて帖佐を助けたワケじゃないし、特に狗根国が好きだというわけでもないんだ」
 九峪はそう言い置いて剣を下ろした。

「む、むう」
 伊雅は渋い顔で頷くと、その場に座りこむ。

「しかし――」
 雲母は場が落ち着いたのを見計らって気になっていたことを口に出した。
「あなたこそ何者なのだ? 神器を一目見て分かるなど、耶麻台国縁者でもそれなりの地位の者だとお見受けするが」

 伊雅は、ぎくりとして雲母に視線を送る。
「そ、それは――だな……」
 どうにか言い訳を考えている伊雅だったが、それをもどかしく感じたのか、清瑞の方が先に口を開いた。
「父上は元耶麻台国副国王であらせられます。二人とも頭が高い」

 雲母と九峪、二人の動きが完全に停止した。

 そして、暫くして……

「ん、んなにぃ~~~~っ!!」

 驚愕の叫びは、里の隅々まで響き渡っていた。



「しかし、火向ではすでに復興軍が起こっていると聞いてたけど、副国王様がこんな所にとはねぇ」
 九峪の呆れたような、感心したような言葉に、伊雅はとんでもないと首を振る。
「今起こっている復興軍など、耶麻台国の名を利用しようとした輩が、いもしない火魅子候補を祭り上げて起こした者にすぎん。あろう事か神の遣いまで仕立て上げてのう」

「いもしない? 火魅子候補の噂は、それこそ滅ぶ前後から九洲はもとより狗根国の方でも噂になってたぜ?」
「それは九洲の民が屈すること無きよう、儂が部下にばらまかせたものだ。今生き残ってる王族は、儂と清瑞の二人だけだよ」
「だが、実際起こってるしなぁ」

 伊雅は忌々しげに呟く。
「おそらくは天魔鏡の仕業だろう」
「天魔鏡?」
「蒼竜玉と同じく、耶麻台国の神器の一つだが、アレには精霊が宿っていてな。キョウというのだが、それがおそらく何も知らん輩に悪知恵を吹き込んでいるに相違ない」

「ふうん。神器の精ねぇ」
「そうだ。自己保身のためならいかなる手段も使う、ロクでもない精霊でな。耶牟原城落城の折りにも、いもしない直系の火魅子を儂に護らせ、ついでに自分も逃げ出したのだ。アレは、火魅子候補を鏡に映すことの出来る能力があるのだが、実際は映すことの出来る者をアレが選べるだけという、腹黒い代物なのだ。ここ百年、火魅子が絶えてなかったのも、アレが映さなかっただけだ。本来なら姫御子の力など、とっくの昔に喪われていて、儀礼的なものに過ぎなかったのに、八代前の王族が、一度キョウの姿をこき下ろしたことでへそを曲げて、映さないように嫌がらせをしたと聞いている。ふん、おかげで罰が当たって、五十年前からは、おなごすら産まれんようになってしまったがな。しかも落城の折、五十年ぶりの女系王族の清瑞は王族には認めんと抜かしおって、腹いせに筑後川に放り投げてやったんじゃが……あの外道め!」

 伊雅はたまっていたものをはき出すように、くどくどとキョウの悪態をついている。
「まぁ、なんでもいいけどさぁ、だったら自分が王族ですって名乗り出ればいいわけだろ? それともそれが出来ないわけでも?」

 九峪の言葉に馬鹿にしたように清瑞が答えた。
「そんな事をすれば消されるのがオチだ。それくらい分からないのか?」
 九峪は突っかかるような口調にため息をつく。
「で、こんな山奥に引きこもったままって事か……」

 伊雅は苦々しい表情で呟く。
「せめてあの反乱が劣勢ならば、まだ我らも出て行けるのだがな……。いかんせん負ける気配もない」
 九峪はちらりと雲母を見る。
「ああ、そうだな。一月も前のことだが、一万の狗根国軍が鎮圧に出向いたが、僅か三千の復興軍にいいようにやられた」
「ふん、いまでは火向の国都も落として、火後と豊後も時間の問題だ。各地で民が蜂起して、あと三月もせぬうちに都督にも手がかかるだろう」

 九峪はぽりぽりと頭を掻く。
「まぁ、何にせよ九洲の民にとってはいいことだろ。狗根国の圧政が退いて新体制ができあがるならそれに越したことはない」
「だが、そんなものは耶麻台国ではない!」
「耶麻台国である必要も無いと思うけどなぁ。民にとっては、安寧が保証されていれば支配者が誰かなんて些細な問題だよ、実際」
「だが、人の名を借りる輩が民に慈悲など施せるとも思えん」
「真意が知りたいなら、身分を隠して会いに行けばいいだろ。こんな所に引きこもってたって何にも分からないさ」

「……だが、キョウは儂の事を知っておる。そんな中でノコノコ出て行けば……」
「じゃあ、新勢力でも起こして、偽復興軍を叩きつぶしてみるか?」
「な、なに!?」

 九峪の頭のねじが吹っ飛んだ提案に、伊雅は目に見えて狼狽する。
「こっちとしてもだな、本当に火魅子候補が偽者だとしたら、色々と困るんだよ。嫁が今復興軍に行ってるもんでね」
「嫁、って……。じゃあその人は?」
 清瑞が不思議そうに雲母を見る。
「行きずり」
 九峪が半笑いでそう言うと、案の定蹴りを食らう。
「痛てぇよ、雲母。事実だろ」
「事実だが腹が立っただけだ。もう少し言い方を選べ」
「はいはい。まぁ、いいや。で、どうするおっさんよ。一つ契約してくれれば、手伝ってやらんでも無いけど」

 偉そうに胸を張る九峪。
「む~、だが、儂らだけでは……」
「戦力に関してはある程度確保出来ると思う。だてに十五年間各地を彷徨っていたわけでもないし。何より復興軍の中にこっちの手札が数枚ある」
「勝てるのか?」
「必勝、とは行かないだろうけどね」

 伊雅は暫く唸った後、重々しく口を開く。
「少し、考えさせてくれんか」
「仕方ないな」
 九峪はおどけたような笑みを浮かべたまま、そう言って肩をすくめて見せた。








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【2006/02/23 21:14】 | 小説 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
出雲盛衰記09
 出雲盛衰記
 九章



 九峪が兎小屋に来てから、いつの間にか一ヶ月が経とうとしていた。
 兔音はいつまで経っても帰ってこないし、雲母の傷もすっかり良くなったので、それでは山を下りようか、と言うことになった。

 問題は九峪は天目と子供がいる復興軍へ向かいたいが、そうすると敵である雲母は一緒には来られない。九峪自身は戦争などどうでもいいし、寝返ればそれでいいのに、という考えなのだが雲母はそうは行かないようだ。

「仮にも狗根国四天王の一人だぞ、私は」
 上から数えて十番目くらいには偉いらしいので、それなりに矜持もあるのだろう。
「ん~、でも一人で大丈夫か?」
「誰にものを言っている」
「送ってやるよ、なーんか心配だし」

「いいのか? 妻がいるんだろう?」
「まぁ、別に心配しなくちゃならないような奴でもないし」
「そうか」

 雲母は特に肯定も否定もしなかった。
「ま、どのみち途中までは一緒に行かないと、雲母じゃ道分からないだろ?」
「九峪には分かるのか? そもそも道に迷ったからこんな所にいるんだろ?」
「大丈夫だって。ここに来るのは初めてじゃないんだ」
 そう言って自信たっぷりに歩き出した。



 一時間後……

「ごめん、迷った」
「……言わんこっちゃない」
 たかが一時間とは言え、二人の移動速度からすると、かなりの距離を歩いている。
 元来た道をたどるのは難しそうだった。
 雲母は大仰にため息をつくと、その場に腰を下ろす。

「じたばたしても始まらない。取り敢えず小休止でも取ろう」
「ああ、そうだな」
 道に迷ったというのに、二人にそれほどの危機感はない。
 食料も持っているので、当面の命の心配がないからだろう。
 少なくとも獣如きにやられるほど二人とも弱くない。

「雲母。お前復興軍にいいようにやられちまったんだろ?」
「ああ、そうだな」
 九峪の唐突な問いに、若干不機嫌そうに答える。
「じゃあ、戻っても処罰されるだけじゃねえの?」

 雲母は渋い顔で頷く。
「おそらくはな」
「じゃあ、戻る意味無いんじゃないのか? 処罰って結局処刑だろ?」
「……私の指揮の元で、多くの将兵が死んでいったのだ。責任は取らねばなるまい?」
 楽しげに笑いながらそう言うと、何か思い出すように空を見上げた。

「いっそあの場で討ち死にしていれば良かった。けれど、私は恐怖に駆られて逃げ出したんだ。もう、これ以上そんな惨めな真似はしたくない」
「ふ~ん。惨め、ねぇ」

「慰めならいらんぞ」
「そんなつもりはねーよ。別に止める気もないし。それが雲母のけじめの付け方だって言うなら、それでいいんだろ。ガキじゃねぇんだから、自分のケツの拭き方くらい自分で決めたらいいさ」
「そうするさ」

「んな事より、どっちに向かう? 適当に決めないと歩きようも無いだろ」
「そうだな。取り敢えずあっちでいいか」
「音痴なのは料理だけだといいがな」
 馬鹿にするように九峪が笑う。
「……」
 雲母は無言で九峪のことを蹴り飛ばしていた。



 九峪の予想は見事に外れ、その日の内に山人の里にたどり着いた。
 適当に駄賃を払って案内をつければ、これ以上迷う心配もないだろう。
「どうやら方向音痴は九峪だけのようだな」

 勝ち誇ったような雲母の顔。少しばかりむかついた九峪だったが、コレばかりは言い返せなかった。
「もうじき日も暮れるし、今夜はこの里に泊めて貰おう。それでいいよな?」
「ああ、別に――」

 九峪はふと空を見上げる。
 空は赤く染まり始め、ぼちぼち真っ暗になるだろう。
 さて、そろそろ一ヶ月経つわけである。
 兔音と前に会ってから。

「し、しまったぁ――っ!!」

 突然大声で叫ぶ九峪。
「ど、どうした?」
「やばいな。ん~、って、一番やばいのはお前だ!」
 そう言って雲母を指さす九峪。

 雲母は何のことか分からず首を傾げる。
「何の話だ」
「いや、でも、くそ。どのみちもう遅いか」
「だから何の話だよ」
 九峪は引きつった笑みを浮かべながら答えた。
「雲母に俺が喰われちゃうって話だよ」
「はぁ? なんで私がお前を」
 不思議そうな雲母に、鼻で笑って答える。
「じゃ、せいぜい我慢してくれ」
 雲母は怪訝そうに首を傾げた。



 ――身体が、熱い。
 日が沈みきって、夕餉の香り漂う山人の里の角で、雲母は一人もだえていた。
 汗ばむくらいの気温なのに両肩を抱き、上気した顔で必死に何かに耐えている。

 ――九峪……

 気が付けば姿を目で追っている。
 九峪自身は観念しているのか何なのか、木の上で寝ていた。
 雲母は視界に九峪が入るたびに、いいようもない衝動が全身を駆けめぐるのを感じていた。

 ――なんだ、これ? 九峪を、貪りたくなる
 知らずに涎が垂れ、慌てて拭う。
 動悸が高鳴り、頭は熱に浮かされているように、どんどん思考がぼやけてくる。

 ――ああ、駄目。もう、我慢出来ない。
「……九峪」

 小さく呟くと九峪に飛びかかっていた。
 木の上まで一足飛びで飛び上がり、九峪を抱きしめる。
 そのはずが、両腕が空を切った。

「え?」

 確かに捕らえたはずなのに、腕の中には何もない。
 そのまま着地して振り返るとそこに突っ立っていた。
「やっぱ無理なんだな」
 疲れたようにため息をつく九峪。

「――九峪、私、変なんだ」
「ああ、見りゃわかる」
「お願い……じっとしてて」
「嫌だね」
「大丈夫、痛くしないから……」
「痛いワケじゃないんだが、それでも嫌だな」
「……聞き分けのない、男だな」

 雲母の身体から閃光が放たれる。
 眩しさに一瞬目がくらむ九峪。
 同時に全身から力が抜け、その場に崩れ落ちる。

「んなっ! なんだ?!」
 身体が動かず狼狽する。
 じたばたすら出来ずに、もがく九峪に雲母が一歩一歩近づく。
「無駄よ。ほら、右上げて」
 雲母がそう言うと、九峪の右腕が跳ね上がる。
「いいっ?!」
「左上げて、右下げて。そのまま鼻をつまんで口閉じて」

 九峪は雲母の言葉通りに動く。
 鼻をつまんで口を閉じたせいで呼吸が出来ず、九峪の顔色がどんどん悪くなっていく。
 雲母はそれを楽しそうに眺める。
「んんーっ! んーっ!」

 死にそうになっている九峪。雲母はくすっと笑うと左手を下ろさせた。
「これが私の能力。魔界の黒き泉で手に入れた、私だけの能力。ただ、一度の操れる人間の数は決まっているのが難点だが」

 一対一なら無敵じゃん、と思った九峪だったが、今や蛇に睨まれたカエル以下。無駄口は止める。
「すまないな、九峪。出来るだけ優しくするけど、多分、あまり加減出来ない」
 紅潮して呼吸も荒い雲母は、そう言って九峪に顔を近づける。
 間近で雲母の吐息を浴びながら、九峪は最後に一言だけ口にした。

「この淫乱」
 一瞬面食らった雲母だったが、やらしい笑みを浮かべるとそのまま九峪の口を自分の口で塞いだ。




 ――嬌声の響く森の中、少女が一人、男と女の逢瀬を見つめていた。

 木の陰に隠れて、息を殺して。










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【2006/02/22 11:41】 | 小説 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
第十三回 火魅子伝SS戦略会議
 第十三回 火魅子伝SS戦略会議



 風邪引いた~っ!!
 いつだか風邪引かないとか言ってたけど、やはり作者も人の子だったのですね。まぁ風邪を引いたと気が付くまでに随分かかりましたが。
 全てはこの暖かさのせいですね。
 とは言え、いま寒が戻ると悪化しそうですが。

 で、風邪引きで鼻が乾いて痛いんですが、そんなの気にせず本日の会議を始めましょう。盛衰記は今の状態じゃかけないのでスルーの方向で!

 ではさくさく始めますよ~。本日のゲストは活躍の場はやはり死に場所だった!案埜津の登場ですっ。
「……これは宣戦布告と見なしてもいいのかしら?」
 何が?

「なんでまた二度も殺すの?」
 ん~、だってホラ、死んだところ書いてなかったし、そのことで微妙なクレームがあったような無かったような。

「でも、死んでたのよね、結局」
 ええ、そりゃもう。あの状況で生き残れるわけが無いじゃないですか。
「黙って死なせておきなさいよ」

 まあ、それは作者の力の及ぶところではありませんので。憤りは最もですが、虎桃がきっと晴らしてくれますよ。
「そうかしら?あいつ結構間が抜けてるから」

 そんな事ないですよ。って、そう言えば編年紀じゃ虎桃活躍してないなぁ。活躍の場を少しはつくってあげないと駄目かな。
「いいわよ、そんなもの無くて」

 おや、醜い女の嫉妬ですか。自分はもう出られないからって……ぷぷぷ。
「よし、決めた。殺す」
 はっはっはーっ!どーんとかかってきなさい!

「あ……」

 ん? どうしました?

「う、後ろ」

 後ろ?

 どすん

 え?

 どすん


 ええっ!?

 どすん

 プチ





 「……まぁ、なぞの音の正体は第九章でだな。次回から私の特別編【ああっ案埜津さまっ】が始まる。それにしても今回短いな」








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【2006/02/21 18:14】 | 会議 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
第十二回 火魅子伝SS戦略会議
 第十二回 火魅子伝SS戦略会議



 うぃ~っす。
 ども、ていごでございます。
 と言うか今日暖かいよ。
 そろそろ頭がヤバイ人が裸で外を歩き回る季節なんでしょうかねぇ。まぁ、いくら暖かくなったからと言って、最高気温一桁である事実からすると、いささか時期尚早ですが……
 ちなみに作者はそんな真似はしませんよ……本当だって。

 では、本日も始めましょうか。
 今日のゲストは柚子妃たんです。
「ん?なにその寒気がする言い方は……」
 柚子妃たん……。
「だから三十路過ぎてるのよ、私?」

 まぁ、そうですね。あなたを大きくしたことで寄せられた全国のロリキャラ萌えの皆さんの怨嗟と言ったら、もう筆舌に尽くしがたいものがありますね。
「そうなの?」

 "帖佐たま~♪"とかほほえましく言っているのが良かったらしいです。あと死の病に冒されているという設定がまた、世の漢共のロリ魂に火をつけるんですよ、きっと。

「ふ~ん、同好の志なワケね(じと)」
 ん?何か失礼な想像してませんか?小さい女の子に欲情するような業は生憎持ち合わせていませんよ。何度も言いますが。

「あやしい」
 まぁ、好きなだけ疑っていて下さい。世の中には背が低い女の子ほどエロいという法則があるらしいですが、作者の守備範囲はせいぜい十六から上です。それも早熟ならと言う条件付きで。

「なんなのその法則?」
 さぁ、某有名週間青年誌に連載中のギャグマンガに載ってました。その前にも元ネタがあるのかも知れませんが、詳しくは知りません。

「ふ~ん、それだと復興軍ってあんまりえろくないんだ?みんな結構背が高いものね」
 そうですね。ロリキャラ以外だと只深が一番小さいことになるのかな?っても、彼女も小説版じゃ十六ですからギリギリアウトですね。つーかあの容姿じゃねぇ。

「他には虎桃とか? あの馬鹿女は確かに色欲権化だけどね」
 ん~、普段からエロいかどうかは問題じゃなくて、いざというときエロいらしいんですが。まぁ、本番で。
「どうでもいいけど、これ以上話が進むと、十八禁規制に引っかかるわよ?」

 まぁ、ジャンルをアダルトに登録してしまえば、幾らでも語れるわけですが、一回やっちゃうと戻せないしなぁ。
「ふ~ん。戻す意味あるの?」

 今はいいけど、エロ小説書いてるとか身内にバレたら自殺もんですよ?
「今更だねぇ。じゃあ、普通の小説なら拘らないの?」
 あんまり他人に見せたくはないですね。とか言いつつ、授業中に落書き代わりにノートの端にプロット書いてたりしてたけどね。読めないような字で……

「不真面目ね」
 うん、授業ってかったるいんだもん。特に高校時代は数学物理以外はそんな感じだったなぁ。大学入ってからは分け隔て無く……
「よく留年しないね……」
 ギリギリです。

「で、話を戻すけど、ロリじゃないと言い張るなら、なぜロリを書く」
 来ましたか。ついにその質問が。
 ロリは単純に言えばギャグとしてすでに成立してるんですよ。それも単品で。登場人物の一人をロリと誤解させる。それだけでパロになるんです。こんなに簡単なもんはありませんよ。と言うのが主な動機です。
「後付でしょ、それ。遠州をロリにしたのはあなたよね?」

 ……だって、遠州のキャラなんて殆ど知らないんだもん。ゲームにしか出て無くて、SSも小説ベースが多いから、遠州自体出てくる話が少ないし。まぁ、上乃にホの字だと言うことくらいは知ってます。攻略するなら見殺しにしろとか、そんなノリだったよね?

「いや、私も知らないし。で、じゃあなんでそんな扱いやすい私をわざわざ使いにくくするわけ?」
 悩んだんですよ、本当。読み返したら徒然草の羽江の年齢設定が十歳で、編年紀時点で十三……、珠洲は歳を出してなかった気がするけど、原作通りなら十四だから編年紀で十七か。ロリキャラとは言えませんね。まだ出てきてないけど。まぁ、ともあれ戦争しながら、国を作りながらの三年間を過ごしたら、そりゃロリキャラも大人になりますよ。ということで、ロリキャラがいないわけです。

「うん、で、じゃあ、なおさら私が……」
 っても、三年経ったらアンタ生きてても幼児どころか嬰児レベルにまで落ちてるはずで、生きてるかも怪しかったし。なんか加速度的に年齢が下がるの早くなってるような話も出てたからね。ロリキャラですらないじゃん。

「そこをその小賢しい頭で何とかするのがあなたの仕事でしょう」
 いや、そういわれてもねぇ。まぁ、もちろん選択肢としては考えました。当時十歳くらいの時に時間退行を直して、十三才くらいで編年紀。それもまたよしだったわけですが、耶麻臺国側の戦力がね、ちょっと。

「ああ、確かに」
 一応設定上は名前もない方々のレベルが、耶麻台国に比べて高いので国力としてはむしろ耶麻臺国の方が上だという設定なんですが(あくまで編年紀始まった時点)、それでも裏で十七夜を耶麻臺国で遊ばせるときに絡めるキャラが少なすぎて。

「あの子自分から動けないからね」
 そうなんですよ。基本的に出向いてくれないとイベント発生しない完全受け身キャラですから。まぁ、翁との戦いとか色々考えりゃ良かったんですけど、十七夜編の目的って作者が何も考えないで書くって言う、ストレス解消みたいなもんだったわけで。だからバトルシーンばっかりだし、好き勝手暴れていたわけですが。

「そういえば、あの子はロリキャラ、よね?」
 そうですね。唯一補充したのが十七夜ですね。まぁ、あれはロリですが、かなり手練手管。兔華乃といい勝負では?

「では? ってあなたのキャラでしょうに」
 だって九章で……いえ、なんでも。
「な、何よ。気になるじゃない」
 教えないよ~。言ったらつまらないしね。

「気になるな~」
 気にしといて下さい。どうせ木曜日には更新ですから。あ、あなたにも出番ありますよ。
「え?本当?」

 ええ。第一部最終章(実はその後にオマケがあるけど)なので、色々ぶっちゃけるような、逆に伏線張りまくりなような、はっちゃけ過ぎて反応が怖いような……
「またロクでもないことやったの?」
 ロクでもって、まぁ、そうですね。

「私の出番か~。活躍する?」
 いえ、出てくるだけ……
「あんだと?」
 め、目が怖いです。確実に元ヤン……

「みんなのアイドル柚子妃ちゃんを、出てくるだけのあつかいで、ええんと思っとるんか?あ?!」
 な、なぜに極道言葉に……
「知るかボケェッ!! いっぺん死んで出直してこんかい!」

 ひゅっ
 どっご~ん


 キラ~ン☆




「てへ♪ ちょっと乱暴しちゃった。次回からは柚子妃ちゃんの萌え萌え体験記、【柚子には胡椒】をお送りするよっ! じゃあね~」











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【2006/02/20 17:14】 | 会議 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
出雲盛衰記08
 出雲盛衰記
 八章



 九峪が記憶喪失になって一週間。
 些細な出来事はあっても特に何事もなく日々は過ぎていた。

「どうだ?九峪」
 みそ汁の味見を頼んでいる雲母。
 九峪は小皿に少量とって口を付けると、首を傾げる。
「おかしいな……」
 雲母は肩をがっくりと落とす。
「また、駄目か……」
 九峪は腕を組んで唸りながら、おかしいおかしいとしきりに呟いている。

「……そんなに、おかしいか?もしかして才能が無いのか、私?」
「ん~、ありえん」
「そうか、やっぱり……」
 重い空気を放って座り込む雲母。

「あり得ないんだよなぁ」
「しつこいなお前も」
「いや、そうじゃなくてだな」
「うん?」
 九峪は雲母に小皿を渡してため息をつく。
「ちゃんと出来てるんだ」
「何!!」
 思わず九峪に掴みかかる雲母。

「出来てるのか?本当か?本当にか?」
「ああ、遅効性の副作用の心配はまだ残るが、少なくともヘドロのような臭いもしないし、酸味の利いた臭いもしないし」
「どれどれ……」
 雲母は自分でも掬って飲んでみる。
 口の中にダシの香りが広がる。
「おお、確かに美味しい……、って九峪?」
 九峪は血を吐いてばったりと倒れていた。

「お、おいどうした!?」
 九峪は真っ青な顔をしながらも、何かを悟った顔で笑った。
「き、雲母……、お前は……強烈な、味音痴だ……ぐふっ」
 力尽きて倒れ伏す九峪。
「な、まさかさっきの上手くできてるというのはウソか!」
 雲母は今まで自分では一度も味見をしていなかった。
 それは味見をした後の九峪が、面白いように痙攣したり、泡を吹いて倒れたりしていたからだ。

「くそ、謀ったな九峪!!」
 むしろそんなもんを平気で味見させてる雲母の人格を疑いたいところだが……
 雲母は口元を抑えてどうしようか悩む。
 さっき口にしたときは美味しいと感じたのだが、目の前で血を吐いて倒れる人間がいると、どうしたものか悩む。
 吐き出すべきかどうか。

 雲母が真剣に悩んでいると唐突に九峪が起きあがった。
「お、おお、九峪。大丈夫か?」
「へ、へへ、へへへへへ」
 だらしなく口を開けて、嫌な感じの笑いを零す九峪。
「お、おい、九峪?」
 血走った目が雲母を捕らえる。

「お~ん~な~っ!!」
 大声で叫ぶと雲母に飛びかかる。
 雲母は反射的に持っていたおたまで九峪の事を殴りつける。
 この一週間で雲母の傷は大分回復している。
 狗根国四天王という重責を担うにふさわしいだけの力量を持っている雲母の一撃だ。例えおたまでも人の頭は割れる。
 だが、しかし!

「消えた?」
 目の前にいたはずの九峪が一瞬で視界から消える。
 ――どこだ、一体どこに……。

「っ!」
 急に背後から羽交い締めにされる。
「くく、くっくっくっく」
「く、なんて力だ!」
 ふりほどこうとして全くふりほどけない。
 焦ってもがく雲母を楽しむように、九峪は不気味に笑っている。
「ぐふ、ふふふふふ、あははははは」
 九峪は雲母の両手を片手で押さえ込むと、余った手で胸を揉み始める。

「く、お前、何を!」
「お~ん~な~っ!」
 どれだけ餓えていたのか、九峪はすっかり獣になってしまっている。このままでは喰われると思ったのか、雲母は魔界の黒き泉で得た力を解放した。

 閃光。
 そして静寂。

 後には白目を剥いた九峪が倒れている。
 ちなみに魔界の黒き泉とは、触れたり飲んだりすると死んだり超人的な力が手に入ったりする、不思議な水のことである。

「はぁ、はぁ、一体こいつ、どこにこんな力を……」
 雲母はなぜか、物欲しそうな目を、倒れた九峪に向けていた。



 九峪が目を覚ますと既に辺りは暗くなっていた。
 自分が何で寝てるのかも分からなかったが、周りを見ると誰もいない。
 どういう事かと首を捻りつつ、外に出ると近場の温泉へ向かった。

 温泉の湯気の向こうに人影が見え、九峪はなんだ人がいるんじゃないかとため息をつく。
「雲母。一人で温泉か?」
「九峪か……」
 九峪はため息混じりに呟く。
「もう大丈夫なのか?」
「ん~、何が大丈夫なのかよく分からん。取り敢えず何ともないが」
「そうか。入るか?」
「そうだな」
 九峪は躊躇無く服を脱ぎ捨てると温泉に飛び込む。

「ふい~、寝起きの温泉も格別だな」
「じじくさいな」
「ジジ臭い、ねぇ。まぁ、もう三十路だしな。雲母はいくつだ」
「二十八。まぁいい歳さ」
 雲母はそう言っておいて、首を傾げる。

「お前、もう記憶喪失はいいのか?」
「は?記憶喪失?」
「ああ」
 九峪は頭をぼりぼりと掻いて怪訝そうに聞き返す。
「俺、記憶喪失だったのか?」

「ああ」
「記憶喪失だった記憶がない」
「ふん、まぁ、思い出したならそれでいいさ」
「兔音は何処に行ったんだ?」
「それも覚えてないのか?姉様だかを探しに出て行ったよ。七日ほど前に」

「ふ~ん、って七日!? 全然覚えてないな」
 雲母はそのことに憮然となる。この七日とはつまり雲母との関わりのあった七日。九峪との関係を深めた七日間だったからだ。
 それを忘れたと言うことは、自分の事を忘れたと言うに等しい。
「覚えてないのか?何も」

「ああ。記憶喪失だった間の記憶が記憶喪失だな」
 何がおかしいのか九峪はそう言って笑う。
 ますます面白くない雲母。
「九峪、そこになおれ。成敗してやる」
「は?なんで?」
「うるさい!」

 裸なのも構わず立ち上がって九峪に飛びかかる雲母。
 九峪はワケも話からず逃げ回り、なぜか楽しげにそれを追いかけ回す九峪。
「あはははははは、待てこらぁ~っ!!」
「なんでだよ、おい!!」

 雲母の冷静な部分が囁いていた。
 ――何をやっているんだ私は、と。
 別に自分との関わりを忘れられたからと言って、雲母に困ることがあるわけでもない。
 それなのに、その事に腹が立って、そしてこうして九峪を追いかけるのは楽しい。

 ――私はじゃれ合う相手を求めていたのか? いや、ただ自分をさらけ出せる相手を……
 それは恋心と言うほどのものではなく、ただの人恋しさでしかないのも事実だったが、それでも不足しているものがあれば、代用品であれその場にあるものを求め、結果的に必要としてしまうのが人間というものだ。

 与えられる選択肢が今、目の前には九峪だけだから、だから、雲母は九峪を選んでいる。そう、それは錯覚にせよ、幻想にせよ、気の迷いであれ、現実的に今だけは。




 ……悲劇と言えば、雲母の心の隙間を埋める為に必要なピースは、決して甘い恋人同士の関係ではないと言うことか。


 ――いや、


「しつけぇっ!! 俺が一体何をしたぁっ!!」

「あはははは~、大人しく死ねぇ~!」

 ざっぱ~ん


 コレは間違いなく、喜劇だろう――









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【2006/02/18 02:30】 | 小説 | トラックバック(0) | コメント(1) | page top↑
第十一回 火魅子伝SS戦略会議
 第十一回 火魅子伝SS戦略会議



 は~い、よい子のみんな大人しく雁首そろえて待ってたかなぁ。
 今日も楽しい楽しい戦略会議がはじまるよ~。
 
 お兄さんと一緒に考えよ~♪




 キャラじゃないですね。すみません。
 まぁ、作者のキャラなんて知った事じゃないでしょうが。


 本日のゲストは、存在意義が分からない女、雲母です。
「……帰る」
 え、ちょっと、ちょっと待って下さいよ。あんたに帰られたらここで話が終わってしまう。
「終わってしまえ。私など存在意義がないんだろう」
 いや、まあ、でも、ほら原作じゃ少しは活躍してくれますって。
「そう思うか?本当に……」
 ――多分、彩花紫と平八郎にいいように出番を喰われて、九峪の奇策で大敗する寸前辺りで一人頑張ってくれるものと。
「……」
 ああ、帰らないでよ頼むから。代わりに作者が活躍させて見せましょうとも。
「活躍?どれでだ?」
 ええと、編年紀?
「既に死んでるだろ、このボケ!!」
 だって、アンタが彩花紫と九洲来たって話がややこしくなるんだもん。別に作者は戦争メインじゃないし。
「面倒なだけだろ?」
 当たり前じゃボケ。あの唯一書いた彩花紫との一戦だって適当。あらすじだけで終わらせたいのが本音です。
「編年紀もそれで通すつもりか?」
 出来るだけ少なくなるように頑張ります!
「……なんでそんなところに意欲的なんだ」
 戦術なんて考えるのだるいんだもん。だから一回もまともな戦争してないの。劣勢ひっくり返す方法なんて、不意打ち、暗殺、挟撃、後方攪乱とか、そんなんでしょ?大勢対大勢の戦いって描写がねぇ。俯瞰した描写は書いてて味気ないし、物語として必要なのはその中で登場人物がどう感じてどう動いてるか、なんだと思うけど、それも勝ってる方と負けてる方だろ?間抜けを嵌めた描写なんてうんざりですよ。
「下手くそだもんな」
 出番削るぞ、お前。
「好きにしろ。別にかまわん。下手な扱いされるくらいなら私は出ない」
 ぐむむむ、そう言うこと言いますか。この神に向かって。
「何が神だ。人様のキャラ好き勝手使っておいて。そもそもお前の生み出したキャラでも無いんはずだが、私は」
 ……。
「それを他人事をいいことにこき下ろして。何様だお前」
 ……すみませんでした(泣
「ふん。分かればいい。で、それをふまえて私の処遇はどうするつもりだ?」
 まず、盛衰記ではこのまま九峪とチョメチョメな関係に。
「ほう」
 突っ込まないんだね。後が怖いなぁ。
 で、幻聴記だけどまだ出てきてないよね、確か。
「そうだな」
 うん、多分出てきません(爆
「ほう」
 で、後は新説には出てきてたはずだよね。
 ま、これは小説そのものに続きがあるかが謎。
「……」
 で、最後に編年紀だけど、上乃が生き返ってるからって出番があるかと言えば、ねぇ。
「よく分かった」
 ゴゴゴゴゴゴゴゴ
「貴様に反省の色など微塵も無いことがな!!」


 びゅおっ
 ぱしっ

「何!」
 真剣白羽取り!
「貴様、どこでそんな技を!」
 知れたことを。日本人が白羽取りをマスターするために修行するものと言えば、踏切の遮断機をおいて他にない。
「ば、馬鹿な!」
 今回の作者はひと味違う!ちゃんと予告した通り、今日こそ作者が小憎たらしい使えないキャラをこてんぱんにのしてギャフンと言わせてやるんだ!
「表現が古いぞお前!」
 うっさい、死ねぇええ!!


 ・
 ・
 ・
 ・


 ・


 どくどくどく
 にへら

「なんだこいつ。頭割られて笑っている。気持ち悪いな。とどめと」

 ぶしゅっ


「さて、それでは次回から出雲盛衰記は【雲母の花嫁修業日誌】に変更だ。もう誰にも影が薄いなどとは言わせない!!」












 
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【2006/02/17 13:43】 | 会議 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
出雲盛衰記07
 出雲盛衰記
 七章



 雲母がウサギ小屋に迷い込んでから四日が経っていた。
 毎日繰り返される九峪と兔音の逢瀬にいい加減嫌気が差していたが、動けるほどには傷は回復しておらず、睡眠不足が解消されることはなかった。

 そのせいで昼間からウトウトしていると、がさごそと家捜しするような音に目を覚ます。
 見ると兔音が旅支度をしていた。

「? お出かけですか?」
「姉様達の帰りが遅い」
「……心配なんですね」
 兔音はギロリと雲母の事を睨め付ける。

「ふざけたことを言うな。こういうときは私に黙って面白いことをやっているに決まってるんだ。だから様子を見に行く」
「……なるほど」
 雲母はあまり突っ込むと殺されそうなので、詳しい事情は聞かないことにした。

 ところが、この場には火に油を注ぐのが趣味の男がいた。
「ウサギは一人じゃ寂しくて死んじゃうんだよ」
 中に入ってきたと思ったら、含み笑いのまま九峪はそう言って同意を求めるように雲母に視線を送る。
「昨日の夜だって、寂しくて寂しくて兔音死んじゃうよぉって、俺の胸に泣きついてきてさぁ」
 まったく見かけによらず可愛いんだから、と言った時点で見事にはり倒されていた。

「天目に会えなくて泣きついてたのはお前の方だろう。それじゃ、留守番は頼んだぞ」
 兔音は九峪の生死も確かめずにピシャリと表の戸を閉じると行ってしまった。

 ピクリとも動かない九峪。
「お、おい、大丈夫か?」
 魔人の一撃を食らったのだ。死んでいなくてはおかしい。
「……」

 動かない九峪。

 雲母はそっと近づいて、身体を起こす。
 その瞬間九峪と目が合ってしまった。
「なんだ、生きてたのか」
「……」

 沈黙を続ける九峪。
「ん?おい」
 顔の前で手を振ってみる。
 ピクリとも反応しない。
 九峪は目を開けたまましっかりと気絶していた。



「ココア誰、和菓子はドコ?」
 目覚めた九峪はしっかりと記憶障害を起こしていた。
 時々ワケの分からない事を呟いている九峪をどうしたものかと首を捻る雲母。

 ―――まったく、厄介ごとにばかり巻き込まれる。

「なぁ、あんた」
 始め雲母はまた戯言かと取り合わなかった。
「いや、あんただよ」
 問いを繰り返され、振り返る。

「何か思い出したか?」
「いや、それが、全然。俺は誰だ?」
「九峪、とか言う名前しか知らないが」
 九峪、と小さく呟いて頭を振る。

「駄目だ、さっぱり思い出せん」
「そうか、ご愁傷様」
「って、それだけかよ。ここドコなんだ?アンタ誰だ?」
「私は雲母。ここは阿祖の山奥だ」
「阿祖?」
「知らないのか?」
「聞き覚えはある気がする……。ここってアンタの家?」
「違う」
「じゃあ俺の家?」
「違うんじゃないのか?」
「アンタも何にも知らないのか」
「ああ」

 九峪は暫く黙り込むと、唐突に立ち上がって外に出ると、辺りを見回している。

「ん~。困ったなぁ。全然思い出せない」
「気の毒なことだ」
 雲母は地面に座り込んだ九峪を、なぜか若干羨ましそうに見つめていた。

「おい」
 雲母に呼ばれて振り返る九峪。
「飯でも食おう。きっとその内思い出すさ」
「ああ、そうだな」
 九峪は楽観的に笑って頷いた。



 目の前に運ばれてきた破滅的な料理。
 何をどう加工したらと思うような、吐き気を催す悪臭。
 ダリの抽象画のような盛りつけ。
 目にしみるような湯気が立ち上っている。

「どうした?食べないのか?」
 否定を許さない強い口調で雲母は九峪に料理を突き付けた。
「……なぁ、雲母。これは、なんて言う料理だ?」
「名前など無い。なんだ?私の料理が食べられないのか?」
「いや、頭痛がするし、ご飯はいいや……」

「遠慮するな、喰わせてやる」

「自分で喰えよ」

「お前の為につくってやったんだぞ?」

「……暗殺でも企んでらっしゃる?」
「私の手料理が食べられないというのか!!」
「こんなもん食えるかーーーっ!!!」

 ドンガラガッシャン

 ちゃぶ台を盛大にひっくり返す九峪。

 雲母は愕然として、九峪を見つめる。
「そ、そんなに嫌なのか?一生懸命作ったのに」
「こんなもんは料理と言わん。ちょっと待ってろ」
 九峪はそう言って炊事場の方に向かった。

 十五分後……
 元の位置に戻されたちゃぶ台の上には、至極まともな料理が並んでいた。
 近くの小川で取った魚の塩焼き。みそ汁。ご飯。

「おお」
 雲母は久しぶりのまともなご飯に、感動してしまう。
 ちなみにここ数日は、乾し肉や乾し飯くらいしか食べていなかった。

「こ・れ・が・料理ってもんだ」
 大したものでもないのに偉そうな九峪。

「しかし、記憶は無いんじゃないのか?」
「自分のことは思い出せんが、料理くらいはな。大体全部忘れたなら口を開くことも出来ないだろ?」

「それもそうか」
 二人は黙々と食事を取り終える。
 しばらくは満腹感による沈黙。

「……」
「……」

 先に口を開いたのは雲母の方だった。
「お前、天目という奴を知っているのか?」
「天目……」
 呟いたと思ったらガタガタと震え始める。

「な、なぜだ、その名前を聞くとふるえが止まらない……!」
「……お前の知り合いじゃないのか?」
「覚えてない。と、いうか、なんか思い出したくないような」
「なら、思い出さなくてもいいだろう」
「そうだな、そうしよう」

 九峪は悪寒を振り払うように首を振って雲母の方に目をやる。
「怪我してるな、アンタ」
「ん? ああ、大したことはない。もう大分いい」
「そんな怪我してるのに、俺に飯作ってくれようとしたのか。いい奴だな、アンタ」

「べ、別にそれは私が食べたかったから、そのついでで……」
「あんなもん喰いたかったのか?」
 茶化すように言った九峪だったが、氷のような雲母の視線に口を塞ぐ。

 一方雲母もさすがにさっきの料理はあり得ないという自覚があったのか、顔を赤くして直ぐにそっぽを向いた。
「教えてやろうか、料理」

「え?」
 不意に出された要求に戸惑う雲母。

「教えてやろうかって。さすがにその年で料理も出来ないのはマズイだろ?まあ、別に俺も上手いワケじゃないけどな」
「い、いいのか?」

「……どうせ記憶が戻るまではどうしようもないしな。なんかここ山の中みたいだし。怪我人のアンタに何処か案内して貰うわけにはいかないだろ?」
「まあ、そうだな」
 なんとなく頷いてしまう雲母。

「怪我が治るまで俺はアンタに料理を教える。怪我が治ったら、俺を何処かに案内してくれ」
「何処かって?」
「知らん。まかせる」

 堂々と言い切る九峪。
 雲母は呆れきった顔をして、ため息をつくと疲れたように呟いた。
「分かった。まあ、勝手にしてくれ」


 こうして、九峪と雲母の奇妙な共同生活が始まることになった。








 
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【2006/02/16 19:27】 | 小説 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
第十回 火魅子伝SS戦略会議
 第十回 火魅子伝SS戦略会議



 ちわ~っす。
 皆さんご機嫌ですか?
 なんか今日は四月上旬並みとか言う暖かさで、雪が溶けてくれそうです。さっさと消え去れと思っていたので何よりですね。

 どうでも言い気象の話は置いといて、ちゃっちゃと始めましょうか。

 では第十回火魅子伝SS戦略会議の始まり始まり~。

 本日のゲストは倭国一のツンデレ、清瑞です。
「なんだ?つんでれとは」
 あ~、別に気にしなくていいよ、そこは。作者の清瑞ツンもデレもしてないから。というか、ツンデレキャラの書き方が分かりません。
「だから、なんなのだ?」
 え~と、そうだね。この台本読んでくれれば全ては理解出来るかな?
 まず、作者から『今日は来てくれて悪いね、清瑞ちゃん』(棒読み

「何々?『べ、別にお前の為に来てやったワケじゃない。私が来ないと、他の奴が困るから…、だから仕方なくだ、仕方なく!』で、いいのか?」

 うん、だいたいいいんじゃない。そんな感じ。出来れば視線そらしつつ、顔赤らめつつがいいけど。まあ、かなり初歩的なツンデレだね。これ以上は知らん。この程度のネタも最近ギャグマンガとかで使われてるの見ると、なんだかなーだし。
「ふん、どうでもいいが、なぜ唐突に私なんだ?」
 ゲストなんていつも適当に選んでますから。まあ、昨日upした盛衰記関連で雲母って言うのも考えたんですが、龍虎さんの短編を読んだので、清瑞になったのかな?
「龍虎さん?」
 火魅子伝同盟に短編を投稿してるSS書きの人ですよ。九峪に膝枕する清瑞。う~ん、ウチの作品だと新説以外ではあり得ないなぁ。意外と九峪×清瑞の関係浅いし。
「単にお前が嫌いなだけだろ?」
 原作の清瑞は好きなんだけどな~。好きなキャラと書きたいキャラは必ずしも一致しないし、好きだからと言って活躍させられるかというと案外そうでもないし。
「つまり私の事は書けないと?」
 ん~、というか、ツンデレキャラが書けない。書けないと言うよりは、書いていると疲れる。多分作者の中にツンデレという属性が欠片も存在しないからでしょう。まあ、そう言うキャラほど他の作品で読むと惹かれるワケですが。
「ふうん」
 まぁ、書けるように勉強したいもんですけどねぇ。ああ、今年の目標はツンデレを習得することにしようかな。
「くだらん目標だな」
 ばっさりと斬り捨てるなよ。コレだから作者の書く清瑞は。本当にただの殺し屋なんだから。デレっとしろ少しは!
「お前がちゃんと台本書けばいいだけだろ。逆ギレするな」
 そのための目標だろうが!!
「……ふん。で、去年の目標は何だったんだ?」
 いや、別にないけど。
「……」
 作品毎にこう書こうってスタイルは自分なりに決めるけどね。意図的にこんなキャラにしようと書いてても破綻するし。新説の九峪なんかまさにそれ。あんな小学生いてたまるか。大体ホッキョクグマ倒すって貴様勇○郎か!!一文字流とか、アホかと。ちなみに今確認したら技の名前間違ってるしね。巌山剣じゃなくて斬岩剣です。
 どうでもいいけど元ネタが濃いね、どっちも。
「じゃあ、今回の目標もどだい無理な話じゃないのか?」
 ……頑張ることに意味があるんだよ。一歩一歩歩いていれば、到達出来なくても確実に近づくさ。あ、なんかいいこと言った。
「向かう方向を間違ってなければな」
 ……そんな否定的なことばっか言うとぐれるぞ。
「これ以上性格がねじ曲がったら次は犯罪者だな」
 人聞きの悪い。
 作者は反社会的な言動を好むけど、思想はその真逆なんです。
 決まりも守れん豚は逝っちまえって事ですよ、けっ。
「だったら……」
 ん?
「まずはお前から逝け!」

 ずぱっ
 ぶしゅううう

「ふう、これもお約束だな。では次回からは私が主役の感動巨編【清瑞先生のツンデレ教室】がはじまるぞ。見ない奴は居残りさせてやるからな」








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【2006/02/15 12:44】 | 会議 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
出雲盛衰記06
 出雲盛衰記
 六章



 日本昔話でおじいさんとおばあさんが暮らしてそうな、木造家屋。水車付き。家の前にはステロタイプな畑があって小さな緑の葉っぱが地面から顔を出している。
 九峪は傍らに膝をついて、しげしげと葉っぱを眺めた。
「あ~。これは多分……」
 九峪は手慣れた手つきで土をすくい取ると、小川から水を汲んで来て土を入れてまぜ、布で越す。それから荷物の中から怪しい瓶を取り出すと、中の液体を一滴垂らす。透明の液体が赤く変色した。
「やっぱりな」
「何がだ?」
 九峪の行動の意味が分からずに首を傾げる兔音。
「高麗人参が自生しているのは、主に山岳地帯。腐葉土の降り積もった酸性の土壌が最も適している。だが、阿祖山系の土壌は火山灰による酸性硫化塩土壌。ただでさえ酸性に傾いてる土壌に、腐葉土を肥料として捲いたせいで、ちょっとばかり偏りすぎてる。こういう時の対処法はと」
 九峪は立ち上がると兔音を見る。
 ちんぷんかんぷんだ、と目で訴えていた。
 無理もない。
「取り敢えず石灰をまくのが定石だな」
「石灰?」
「ああ。まあ、幸い場所も分かってるし。直ぐに取りに向かうか」
「まあ、それで治るというのなら手伝うか」
「新しく畑を耕す方がいいなら、それでも構わないけどな。割と繊細なものだから、あまり同じ場所で作るのは止めた方がいい。連作障害で、作れば作るほど質は落ちるし、病気もつきやすい」
「わかった。だが、取り敢えず今は応急的にでも処置をするべきだろう」
「ん、そだな」
 と、言うことで石灰を取りに二人は向かった。



 割と近場なので二日ほどで戻ってくると、そこには見知らぬ女が待っていた。
「誰だ?人の家に勝手に上がり込んでいるのは」
 兔音がいかにも不快そうにそう言って女に詰め寄る。
 女は戦場から逃げてきたような格好で、背中に矢が二本ほど刺さって息も絶え絶えと言った風情だ。
「……ま、魔人……」
 兔音の事を見て絶望にうちひしがれる女。
 状況からすれば戦に敗れ、這々の体で阿祖に逃げだし、死にそうになっているところでこの場所にたどり着いた、と言うところだろうか。
「まあ、誰でもいいさ。この場所を知られたら生かしてはおけない」
 そう言ってあっさり殺そうとする兔音を、九峪はやんわり引き留める。
「あんまり気軽に殺すなよ、こんないい女。勿体ない」
「……」
 じと目で九峪を睨む兔音。
 九峪は意に介さずに女の傍らに座り込むと、背中の矢を見る。
「あ~あ、こりゃ抜くのに苦労するな。兔音、酒」
「まったく、お人好しめ」
 そう言いつつ逆らわない兔音。
「お前は?」
「九峪ってんだ。アンタは?」
「雲母と言う」
 九峪はその名前に眉根を顰めた。
「雲母?月影将軍?四天王の?」
 雲母は黙って頷く。
「よく知っているな」
「世事には詳しい方だ。あちこち旅してるからな。しかしアンタがここにいると言うことは、復興軍とはもう戦が始まってるのか」
「始まっている、というのかな、アレを」
「?」
「既に終わっている、と言ってもいい」
 九峪はせっせと雲母の鎧を剥いで服を脱がすと、敷物の上に俯せに寝かせる。
「終わってるってのは?」
「各地で一斉に民衆が蜂起した。同時に主要都市の領主が暗殺され、実質狗根国の軍事力は九洲内で機能していない」
 九峪はため息をつく。
 ―――おそらく、桂と小夜の仕業だな。少しは手加減してやれよ、まったく。
 そんなことを考えつつ雲母に布きれを噛ませる。
「痛いけど我慢しろよ」
 九峪は小刀をやじりの根本に突き刺すと、ぐりぐりと肉をえぐって先端を掘り出す。
「ぐがっっ!!んんーっ!!」
 激痛に身をよじる雲母。
 九峪はその身体を必死に押さえつけながら、取り敢えず一本取り出す。
「ふー、ふー、ふー」
 荒い息で雲母はぐったりと倒れてしまう。
 九峪は流れ出る血を吹いて、そこに酒をかけて消毒する。
 雲母の白い身体が真っ赤に紅潮し、床の上をのたうつ。
 酸味の利いた香りが室内に充満し、九峪は顔をしかめる。
「ん?これ、酢じゃないか?」
「ああ、間違えた」
 兔音は悪びれなくそう言ってニヤリと笑った。
「性格悪いな。まあ、滅菌は出来るからいいけどさ」
 雲母は白目を剥いて気絶していた。
 本人はあまり良くなかったらしい。
「さて、じゃあもう一本もさっさと引っこ抜くか」
 九峪はそう言って小刀を握る手を振り下ろした。



「ん、うあ、あ」
 ―――気が付くと辺りは真っ暗だった。
 静寂に包まれ、自分の息づかい以外に物音もしない。
 雲母は身体を起こすと辺りを見回した。
 壁の隙間から入り込んだ月明かりに、うっすらと室内は照らされている。
 背中には断続的に痛みが走っているが、耐え難いほどではない。
 上半身は背中の傷を覆うように包帯が巻かれていただけで裸。
 張りのある胸が露出している。
 着るものを探したが、元々着ていた服は何処にもなかった。
 どのみち返り血と自分の血液で濡れて着られたものではなかったが。

「―――…」

 話し声が聞こえた気がして立ち上がると、戸の隙間から外を覗く。
 そこにはウサギの耳をはやした魔人と、ひげ面の優男が岩に腰掛けて寄り添い、酒を飲んでいた。

 二人だけの世界に浸っていて、話しかけるのは憚られた。
 雲母はやれやれと肩をすくめると、元の場所に戻ってもう一眠りすることにした。


 が、

「ぅん、あああんっ!」
 などと嬌声が一晩中響き渡って、さっぱり眠れなかったと言う。










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【2006/02/14 05:29】 | 小説 | トラックバック(0) | コメント(1) | page top↑
第九回 火魅子伝SS戦略会議
 第九回 火魅子伝SS戦略会議



 ただ日々を不毛に過ごしている今日この頃。皆さんは如何お過ごしでしょうか。
 あ、今出雲盛衰記書けって突っ込んだそこのあなた。
 昨日、一昨日とぐったりするほどぐったりしていたので、今日はそんなテンションじゃ無いのだよ。ごめんね。
 と、いきなり謝りつつも九回ですね。よくもまあ、こんなくだらんものを続けて書いてるよ、作者は本当に。
 アホですか?まあ、多分アホですね。
 さて、では本日のゲストに登場して貰いましょう。
 火魅子候補一目立たない出番が少ない使いづらい、只深です。
「ふご、ふが……」
 ちなみに彼女にしゃべらせるとぐったりしてしまうので、猿ぐつわを噛ませてあります。おそらくは耶麻台国の幹部の中で一番弱いですからね。喧嘩をすれば羽江の方がまだ強いでしょう。
「ふぐ、ぐ~!!」
 待遇の不満を訴えているようですが、まあ、確かに関西弁キャラってだけで作者に半歩躊躇させるキャラですからね。大阪弁とか京都弁とか、その辺殆ど区別ついてないし……。まあ、三世紀の九洲ですから、まんま大阪弁を話しているわけもないという、そんな言い訳も出来るんですが、実際適当に書いてるから、関西の人から見たら突っ込みどころ満載なんだろうなぁ~なんて思ってるわけです。
「んぐぅ~っ!」
 ん?出番がないって?だから、理由は今言ったとおり、関西弁が分からんから、しかたないんや~、みたいなのがあるし、そもそもアンタの特技って地味だし。金勘定するのが仕事で、その辺りを書いてもつまらんし、かといって戦場に出しても役立たずだろうしねぇ。同じ眼鏡キャラで、頭脳労働させるなら、忌瀬か亜衣を使うというのが正直なところで……。
「……んが~っ!!いい加減ウチにもしゃべらせんかいっ!!」
 おお、猿ぐつわを噛みきった。
 結構口筋力あるんだね。
「だてに普段からしゃべって鍛えてへんわ。それよりほんまにウチのこともう出さないつもりなん?」
 そんな事言ってないですよ。あなたがいなければ耶麻台国は三日と持たずに破産してしまいますからねぇ。縁の下の力持ちとしてこれからも……

 ごきゅ

 ひゅー、ひゅー(喉の奥から漏れるヤバ気な呼吸音)
「どや、尹部直伝のネックハングや。ウチでも子牛くらいならイチコロやで」
 ひゅーひゅー(なんで外来語しってんだよ!)
「何言うてるかわからんなぁ。これからウチの質問には首を縦に振るか、横に振るかで答えるんやで?ええか?」
 ぶんぶん

 ごきゅ
「ええか?」
 こくこく
「まずウチの出番ってまだあるんやろう?」
 こくこく
「ふう。で、ウチ活躍するん?」
 ぶんぶ……ごきゅ、ぶち

「活 躍 するんやろ?」
 こく……こく……

「始めからそう言えばええねん。まったく手間かけさせてからに」
 ……(泣き

「さて、ではこの辺から毎度おなじみ恥ずかしい秘密の暴露コーナーを……」
 やめんかいっ!!
「なんや、しゃべれたん?」
 小娘のネックハングなど効くか!ちょっと声帯ちぎれかけたけど、もう治ったわ!!
「まあええわ、実はこのていごっちゅー男はな―――むぐっ!」
 黙れぇ!!黙らんかぁっ!!

”おまわりさん、あそこです!あそこで男の人が女の子を!!”

 げっ!!誰だ通報した奴!!

”こらーっ!!貴様何やっとるかぁ!!”

 くそ、三十六計逃げるにしかずだ!!スタコラッシュ!!

 だったった
 作者は逃げ出した。

「ふん、ああ、思い切り掴み腐ってからに。顎はずれるかと思ったわ」

”君、大丈夫かね”

「ああ、おおきに。別に何もされてへんよって」
”こんな年端もいかぬ少女を虐めるとは、人間の風上にもおけぬ奴。絶対捕まえてやる”
「ちょいまちぃ、誰が年端もいかぬ少女やって?」
 ゴゴゴゴゴゴ

”う?こ、これは!まさかスタンド!!”

「アリアリアリアリアリアリアリアリアリ~ッ!」
”しかもブチャラティかよ、ぐふっ”

「さて、邪魔者もいなくなったし、毎度恒例の宣伝でも。次回からはウチが主人公の【只深~守銭奴の掟~】が、始まるで。ほな、アリーヴェデルチ(さいなら)」









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【2006/02/13 19:41】 | 会議 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
第八回 火魅子伝SS戦略会議
 第八回 火魅子伝SS戦略会議



 ちわ~っす。
 ども、作者です。

 八回目を向かえました火魅子伝SS戦略会議。
 ぶっちゃけこの題名だったことを見て、見なくてもいいやとブラウザを閉じてる人が何人かいる気がしなくもありませんが、気にしませんよ、そんなこと。

 さて、毎度火魅子伝SS戦略会議と銘打ってるにもかかわらず、ゲストに呼んだキャラに、作者が虐められるだけでは芸が無いというか、筋違いもいい加減にしろと言うところなので、たまには戦略を会議してみたいと思います。

 では、一応ゲストもいるのでゲストの紹介です。本日のゲストは九峪君です。
「ういっす。初めまして」
 初めまして。いや、礼儀正しいですね。八回目にして初の野郎ゲストですが。
「つーか、普通主人公は一番始めに来ないか?」
 何の話やら。大体君はどの九峪君?幻聴?徒然?それとも新説?
「軽く流しやがって。一応徒然だよ」
 徒然か。ふむ。なるほどねぇ。
「何だ?」
 いえ、クズ男君かと思って……
「……」
 まあまあ、君が悪いんじゃないよ。あの世界に二十一世紀の高校生が行ってしまったら割りと普通の反応だから、アレ。まあ、女を喰ってるところが許せんが。
 ああ、怒るなら後にしてね。
 本日の議題は九峪君も来てくれたので、火魅子伝における九峪の位置についてです。
「位置?」
 そう、位置。
 立場がほら、SS毎に全然違うじゃない。作者は面倒なことに小学生、テロリスト、クズ男、最近じゃ三十路にまで手を出してる始末。
「節操ないよな」
 う~ん、まあ、一本だけだったら別に個人サイト持つ必要も無いかな~って思ったりしてさ。
「なるほど。そして中途半端なものを何個も上げて放置と……。腹黒いな」
 始めは徒然一本で、幻聴記なんぞオマケのはずだったんですがねぇ。何に人気が出るかなんてわかんないもんです。まあ、徒然は兔華乃が出てきた辺りからは手抜きが目立ちますけどね。
 って、内輪の話はどうでもよろし。九峪が変わればシナリオも自ずと変わるという話だよ。
「ふ~ん。でも、お前の小説の場合はあちこち身勝手な設定が鼻につくけどな。天空人兄妹は入れたがるし、蛇蝎は他人の召喚した魔人を送り返すし。俺の能力が色々だってのは別に構わないと思うけどさ、俺だけが変わったことでと言う話にしては少々問題があるよな」
 ……このクソガキが。
 いいか、よく聞け!一々天魔鏡と共に森の中に放り出されて、耶麻台国が云々って、あのシーンを二度も三度も作者に書けと言うのか?例え違う設定でもその説明台詞を同じ状況で言わせることの面倒さが何故分からん!?何よりあの始めのシーンなんて、大勢の人が書いてんだから始め見ただけでまたか、ってなるだろ!出だしでお前という人間を表現するためには、徒然の場合は一人っきりで現実思い知ることの方が説得力があるんだよ!!分かったか!!
「何もそんな後付の言い訳を力説しなくても……。知ってるんだよ、俺は。徒然の本当のコンセプトが無血革命だったって」
 ぐはっ!!
 まさか、貴様、DL版のオマケを読んだな……
「いや、始めから演技してる俺は、当然知ってるし。台本がどんどんねじれまくってさ。アホかと……」
 アホって言うな!!
 はっ、話が逸れてる。いいか、坊主。今回の論点はそこじゃない。作者が言いたいのはだ、ようするに九峪を変えると言うことは、少なからず世界を変える必要も生じるはずだと言うことだよ。でなければ確実に途中で行き詰まる。作者だって割と長いこと文章書いてるんだから、どんな話だと行き詰まるかくらいは分かってるんだよ。自分なりに。
「偉そうなことを。大したもん書いてないくせに」
 ああ、そうさ!完結した作品より未完の方が圧倒的に多いさ!!オリジナルなんか、合計四十本以上書いてるけど、完結してるの半分くらいだっつーの!!ちなみにトータル字数1815430文字って……、原稿用紙5542枚文?う~ん、結構書いてるね。まあ、SSはカウントしてないし、ルーズリーフに書いたのが、軽く千枚近くあるから、もっと多いけど。
「馬鹿?つーか、そんだけ書いてこの文章って才能無いんじゃないか?」
 いいことを教えよう、九峪君。いい小説を書きたかったら勉強しなくちゃ駄目だよ。SSはまあ、原作を知ってる人が見るから、多少細部が書かれていなくても関係ないけどね。
「関係ないのか?」
 決まり切ったセリフならかなりはしょれる、と思う。まあ、どんなものを書きたいかによるし、話の流れにもよるけど。例えば耶麻台国と狗根国の関係とか、五天の話とかは、自分の設定上の違いだけ語れば、後はぶっちゃけ無くてもいいくらいだし。まあ、全然読んだことがない人にも楽しんで貰いたいと殊勝な事を考えるのならば、細かく書くのもアリだろうけど、暇潰し程度に読んでる人にしてみれば、そんなのただだるいだけだし……と作者は思うわけだが。
「まあ、言ってることは正しい気もする。全く同じ展開なら読む必要すらないわけだからな」
 二次創作の利点はベースとなる知識を共有していると言うことなのだよ。共有していればこそ、多少キャラの描写が変でも読み手は補正するし、もしくはその違いを楽しんだりも出来る。
「知ったようなことを……。どうでもいいけど話しずれてないか?俺の立場の話だったんじゃ」
 ん?ああ、そう言えば。文字カウントを始めた辺りから、意識が飛んでたな。
 まあ、いいや。それっぽいことを話してればいいんだよ。どうせこんなもんチラシの裏だし。
「ぶっちゃけやがった。そんなんで物書きって言えるのかよ」
 別にプロでもないし~、金もらってるわけでもないんだからいいじゃん。
「一応見ようと思えば全世界の人が見れるって忘れてるワケじゃないよな?」
 大丈夫大丈夫。やばそうになってきたら直ぐ閉鎖してトンズラするから。
「最悪だな」
 ふん。君の生みの親が作者であることを忘れたわけではあるまい。ちなみに作者は虫も殺せない優しい人ですけどね。
「殺し屋みたいな目をしてるってよく言われるだろ?」
 はっはっは、そんなこと十二回くらいしか言われたことありませんよ。まあ、周りからはこいついつか自殺しそうだとは思われてるかも知れませんが。
「なにせ中学時代に周りからかけられる一番多い言葉は、元気出せ、だもんな」
 ぐほぁっ!!
 貴様、なんでまたもやそんな極秘情報を!?

「調べはついてるんだよ。ちなみに一番始めに書いた小説は、隕石が落っこちて来ると決まった日に、電車の中で好きな女の子に告白したら、見事に撃沈した、と言う夢を見たことがきっかけって、これもろに映画の影響だろ。なぜ告白してふられてるのかは意味不明だが……」
 止めろぉっ!!
 そんな話ししないでぇ~っ!!

「あ、逃げやがった。根性なしめ。じゃ、俺もこの辺で。ああ、俺は別に他のシリーズに出る気ないから。次回はまた出雲盛衰記でもやるんじゃないか?んじゃ」









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【2006/02/11 02:01】 | 会議 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
出雲盛衰記05
 出雲盛衰記
 五章



 ドサ



 九峪の首が地面に落ちた。

 兔音は喜び勇んで九峪の首に駆け寄ると、生首を持ち上げて眺める。
「フフ、いいザマだな九峪」
「……やはり今回も無理か……」
 九峪は生首のまま諦めたように口を動かした。
 当然肺と繋がっていないので、声は出なかったが。

 生首で平気で生きている(?)九峪。
 兔音はそのことは既知のようで特に気にした様子もなく、切断面を嘗める。血が抜けて土気色の九峪が不快そうに顔を歪めた。

「そんなに美味いか?吸血族でもないくせに」
「お前の血は特別だ。特に満月の夜はな」
「変態め。っていうか、首なんか切るから、あっちの方が漏れまくってるけど?」

 九峪がそう言って視線を自分の身体の方へ向ける。
 首の断面から血は勢いよく噴き出し、地面を濡らしている。
「そうだな。勿体ない」
 兔音は九峪の頭を放り投げると、九峪の身体を持ち上げて、頭から血を浴びる。
 うっとりと瞳を細めて、身体を流れ落ちる感触を楽しんでいる。

「もっと、丁寧に扱えっつーに」
 九峪は口に入った土をはき出しながら、首だけで動けないのでそのまま転がっている。
 九峪からは兔音の方で何をやっているか見えないが、九峪自身は見たくもなかった。

「ん、九峪少しお腹に肉が付いたか?」
「ついてねぇっ!」
「いや、コレは間違いなく。むしゃむしゃ。うむ。前喰ったときより油がのっていて美味いな」
「そんな感想本人に聞かせるな」

 カニバリズムな状況。
 九峪の身体を遠慮無く咀嚼している音だけが、長々と響いた。



 一時間後―――


「もう、食べられないわ」
 それは満腹だからという意味ではなく、単純に食べる場所が無くなってしまったと言うことだ。
 九峪は兔音に自分の身体の残骸を見せられて大きくため息をつく。
「……いい食べっぷりで」
 身体は骨以外のほぼ全てが食い尽くされていた。
 かれこれ自分の骨を見るのも何度目になるだろうか。

「たまには頭も食べてみるか」
「止めておけ。腹壊すぞ、食い過ぎると」
「ふん、まあ二度と食べられなくなっては勿体ないしな」
「つーか喰うなよ」
「別にいいだろう?死ぬわけでもないし」
「いっそ死にたい……」

 兔音は苦笑すると九峪の頭を自分の豊かな胸に埋める。
「今日はそこで寝るといい女の胸は好きだろう?」
「くそ、手も足も出ないと思って」
「文字通り無いからな」

 兔音は九峪を胸に埋めたまま木の根本に腰を下ろすと、満足げな顔でそっと瞳を閉じた。



 まぶしい光を浴びて兔音が目を覚ますと、九峪はいつの間にか起きていて、少し離れて兔音の事をじっと見ていた。
 いつの間にか手足も生えている。
 昨日兔音が丁寧に脱がした服を着ているが自分の血でかぴかぴしている。着心地は悪そうだった。

「おはよう。しかしいつもどうやって戻っているのか見れたことがないな」
 そう言って微笑む兔音。
「見ない方が身のためだ」
 むろん俺の、と九峪。
 兔音はその言葉に笑みを深める。

「九峪、お前に頼みたいことがあるんだが」
「ああ?なんだよ、唐突に」
 兔音は何処に持っていたのか、しなびた根っこのようなものを取り出す。九峪は見覚えがあったので直ぐに答えた。
「高麗人参か。随分小振りだな」
「ああ、ここ二年ほど不作でな。お前に見て貰いたい」

 九峪はやれやれと重い腰を上げる。
「そう言うこと頼む相手を、楽しそうに喰うなよな」
「それとコレとは話が別だ」
 兔音は飄々とそう言って取り合わない。
「全く……。まあいいか。兔華乃も兎奈美もいないんだろ?」
「ああ、戻ってなければな」
「じゃあ、ちっと邪魔するか」

 九峪が荷物を担いで歩き出そうとすると、兔音の姿が見えない。
「? 兔音?」
「こっちだ」
 声の方へ歩いていくと、服を脱いだ兔音が挑戦的な笑みを九峪に向けている。

「……」
「どうした?今は手も足もあるだろ?」
「天目には内緒だぞ」
「無論だ」

 九峪は一切の躊躇なく、兔音に飛びかかって行った。
 兔音は危なげなく九峪の事を受け止め、喜色を浮かべたままゆっくりと地面に身を横たえた。








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【2006/02/10 19:53】 | 小説 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
出雲盛衰記04
 出雲盛衰記
 四章



 忌瀬と音羽と別れ、二人から離れるように山道をひた走る九峪。
 既に夕暮れ近く、山間では大分暗くなってきている。
 完全に闇が覆い尽くし、月が辺りを照らす頃には月に一度の最悪の夜が始まる。

「そろそろ、いいか」

 呟いて周囲を見回す。
 樹齢数千年ものの大木が林立し、地面まで日が当たらないせいか下草が少なく、そのおかげで動きやすい。もう少し開けた場所の方が理想的だが、地面が比較的平らなぶんだけマシだと考えた方が良さそうだった。

「今日は何が来るかな~」

 不安そうに周囲を見回している九峪は、それでも何処か楽しそうですらある。

 パキ、キ

 小枝が折れる音。
 聞き逃すわけもなく、音の方に首を向ける。

「そっか、そう言えば阿祖と言えばお前等だよな」

 九峪はげんなりしたように呟いた。
 視線の先には恐ろしくきわどい衣装を身につけた、爆乳ウサ耳女がいる。金色の髪が、かすかに揺れる。

「久しぶりだね、九峪」
「……おう、久しぶりだな、兔音」
 九峪は及び腰になりながらも答える。
 兔音はウサ耳をピクピクと動かすと、ニヤリと笑う。
「天目はいないみたいだね」
「……まあな。そっちは?兎奈美と兔華乃はどうした?」
「あら?私だけじゃ物足りないのかしら?」

 婉然と微笑む兔音。
「むしろ見るだけで吐き気がするほどお腹いっぱいなんだが……不自然だろ?」
「ふふ、姉様と兎奈美は復興軍を見物に行ったわ。だから、ここには私一人……」

 九峪はため息をつく。
「一人でも、魔人は魔人だしなぁ……」
 負担が半分以下になったのは事実だが、それでも相手は魔界ですら畏れられている種族、魔兔族の女だ。今の状態で出くわす相手としたら、最悪から数えて三番目くらい嫌な相手だ。

「迂闊だったなぁ、俺も。阿祖と聞いた時点で逃げてるべきだった」
 考えようによっては、天目と一緒に復興軍に行かなかったことで、兎奈美と兔華乃の二人を相手にすることもなくすんだとも言えるが。

 唐突だが説明しよう!九峪はとある出来事で、時間を停止させる能力を得たのだが、その副作用として満月の晩に、身体から妙なフェロモンを出すようになってしまい、近くにいる魔なるものを呼び寄せてしまう至極危険な男になってしまったのだ!!

「さて、もういい加減こっちは我慢の限界だ。イクよ」
 上気した顔で言い放つと、九峪の視界から消える。
 九峪は消えたと判断したと同時に、時を止める。

 鼻先に突き付けられた半円状の妙な武器。
 止めるのが刹那遅ければ、九峪の頭が半分になっているところだった。
 九峪は兔音の顔の前に足下に落ちていた石を置き。背後の回り込む。

「時は動き出す」
 ごっ

 兔音は自分が飛び込んだ瞬間にいきなり目の前に現れた石をかわせるはずもなく、もろに食らって体勢が揺らぐ。
 それでも何事も無かったかのように立ち止まると、額を抑えて不思議そうにしている。
 九峪はその様子を見てあきれかえる。
 兔音はかすり傷一つ負っていない。

「相変わらずワケの分からん技を使うな、お前は」
「残念だが、教えてはやれないぜ」
「別に―――」

「時は止まる」
 兔音の言葉の途中で止めると、止まっている時間の間に荷物の中から、怪しげな小瓶を取り出す。
「時は動き出す」
「――興味は、ない」

 兔音には九峪が一瞬で微妙に動いたことに眉根を寄せる。
「何か、したのか?」
「興味ないんじゃ無かったのか?」
「……そうだな」
 
 また兔音の姿が視界から消える。
 真っ昼間なら残像くらいは見えるかも知れないが、こう暗くては視認するのは不可能に近い。
 九峪はまた時を止めた。

「ん?」
 また直ぐ近くにいると思った九峪だったが、何処にも兔音が見あたらない。
 焦って視線を巡らすが、何処にもいないようだ。
 ―――どこ行きやがった!

 九峪の時間停止の能力は一度に三秒だけ。
 連続使用は出来ないので、一度使ったら三秒は休まなくてはならない。
 一度使ったら、上級の魔人相手に三秒間という永遠とも言える時間を稼がなくてはならないのだ。

 九峪はその場に留まるのは危険だと判断して、取り敢えず動く。
 同時に時が動き出し、九峪のいた場所に兔音が降ってくる。
「う、上からかよっ!!」
 わりと単純な事だったらしいが、兔音はまたはずしたことを不思議そうに一瞬だけ九峪を見た。
 そう、一瞬だけ……

 兔音の姿また消える。

 九峪の横を、風が一陣通り過ぎた。

 そして離れた場所に兔音が姿を現す。
 その手に持つ刃は朱に濡れ、兔音はうっとりとその血を嘗める。

 ドサ



 九峪の首が地面に落ちた。
 







 
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【2006/02/09 00:20】 | 小説 | トラックバック(0) | コメント(1) | page top↑
第七回 火魅子伝SS戦略会議
 第七回 火魅子伝SS戦略会議



 周りで風邪が流行ってるのに一人だけ健康体だと寂しい気がする今日この頃。体調管理万全の作者です。

「ナントカは風邪引かないって言うしね……」

 そこ!さらっと暴言吐くな!!

「……ふん」
 ちっ、クソガキが……。と、言うことで本日のゲストは端で見てると可愛いけど、実際いたら容赦なくぶち殺すランキング暫定一位の珠洲です。
「……」
 何かいいたそうだな、オイ。
「今までの人と態度が違う」
 オイオイ、ガキの分際で天目様や深川様と対等の対応を期待するのか?身の程知らずめ。
「怒」
 ああ、怒らせてしまいましたね。とは言え戦闘力では今までのゲストの中では最下級。作者だっていつもいつもやられてるわけではありません。
「やる気?」
 いえいえ、あなたに手を出すと九峪や遠州みたいにあらぬ誤解を受けるので、一切手は出しません。まあ、そんな話は後に取っておいて珠洲から作者への質問なんかを。
「最近出番ないんだけど」
 そう言えば編年紀になってから影も形も見えませんね。幻聴記の方は九峪にくっついていますからその内出てくることになるでしょうが。
「いつ出れるの?」
 珠洲は志野とセットですからね~。まあ、第二部の中盤までには出番がありますよ。きっと。
「あやしい」
 細かいところはまだ決まってないんだからしょうがないんですよ。
 さて、他に質問は?
「幻聴記の九峪様は何で糸使えるの?ぱくり?」
 ああ、珠洲にしてみれば気になりますか。ええと、どうせどうでもいい設定なので暴露すると、九峪は恐ろしく器用なのでああいう「針と糸」系等の技は何でもこなします。デフォで糸使いの技を持ってたんですが。ちなみに永楽を拘束したのは珠洲から貰った糸ですが、蛇蝎戦の時に使ったのは別のもの、と言う設定にしようかなあと思ってたんですが、別にどっちだっていいですね。
「糸使いは二人もいらない」
 こういう特殊な技が被るのはあまりいいことでは無いでしょうね。何より珠洲の出番が減りそうですから。珠洲が典膳で戦うようになれば問題は無いでしょう。あの九峪に鬼のような改良をして貰えばきっと歩く戦術兵器くらいにはなれるはず。
「そのつもりはあるの?」
 元気のいい子供は大好きですから、珠洲にも子供らしく元気に暴れて貰いますよ。そりゃもう、たっぷりと。
「あくどいこと考えてる」
 嫌だなぁ、上乃その他を殺したり、藤那を乱心させてみたり、九峪がテロリストだったり、クズ男だったりする作者があくどいことを考える訳がないじゃないか(遠い目
「……アンタは今のウチに殺しておいた方がよさそう」
 はっはっは、どーんとかかってきなさい、貴様のような小便臭い子供にやられるほど落ちぶれてはおらんわ!!

「一年前にバイト止めてから十キロ以上太ったくせに」

 ぐはっ!!

「二年前に買った携帯のメールの件数が百件もたまってないくせに」

 げほぁっ!!

「一番最近貰ったバレンタインのチョコが、三十も年上のおばちゃんからのくせに」

 いやあああああっ!! もう堪忍してええぇぇぇっ!!

「あ、居たたまれなくなって逃げた。いい気味。他にも色々会ったんだけど」

 言わないでぇ~っ!


「……ま、いいか。次回は志野と私の禁断の愛の物語【失楽園~許されざる愛~】をお送りします。それじゃ」







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【2006/02/08 17:11】 | 会議 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
出雲盛衰記03
 出雲盛衰記
 三章



 山を下りる九峪と忌瀬。
 さっきから二人は全く口を利いていない。
 別に疲れているわけでもなく、喧嘩をしたというわけでもないし、ことさら急いでいるというわけでもないのに。

(九峪、どうする?)
(まいったなぁ)

 二人は曼荼羅華を採取して直ぐに山を下り始めたのだが、その頃からずっと誰かにつけられているのに気が付いていた。
 怪しまれるとマズイと思って、会話もせずに黙々と歩いていくのだが、一定の距離を保って仕掛けてくるでもなく、かといって離れるでもない。

(いい加減うざったいな)
(あれ、やる?)
(……やるか)

 二人は一瞬だけ視線を交わすと、そのまま暫く歩き続けた。



 尾行者は忌瀬と九峪の後をつけながら、不意に二人の気配が消えたのに気が付いた。

 がらがらがら

 崖が崩れるような音が聞こえる。
「まさか……」

 慌てて飛び出すと、二人の姿はなく、崖下に倒れているのが見える。
「―――ちっ」
 舌打ちをすると、崖の縁まで行き下を見下ろす。
 重なるように倒れて、血が飛び散っているのが見えた。
 おそらく頭から落ちたのだろうと、ため息をつきながら慎重に崖を下りる。
 崖と言っても断崖絶壁と言うほどではなく、気をつければ下れないこともない傾斜だ。

 ―――せっかく見つけたと思ったのに、これで死んでいたら踏んだり蹴ったりだな。

 尾行者は崖を下りきると、ふと、いつの間にか男の方の姿が見えない事に気が付く。
「まだ動けたのか?」
 首を傾げる。
 まあ、いいかと女の方へ近づくと、突然女が跳ね起き、妙な液体をかけられた。
「ぐっ、罠か!……っあ、ああ?」
 視界が歪む。
 一瞬で意識が混濁し、事態を理解する間もなく尾行者は眠りに落ちた。



「上手くいったね、九峪」
 九峪はいざというときのために背後に隠れていたらしく、姿を見せるとニッコリと笑った。
「割と単純な奴だったな。ってゆーか、女か?」
 九峪は首を傾げる。
 尾行者は悪鬼の如く赤い髪をした大柄な女だった。
 手には二メートルくらいはありそうな槍を持っていて、二の腕なんかは九峪より太い。
「ふ~む。取り敢えず縛り上げててと」
 九峪はいそいそと荷物の中からロープを出して縛り上げる。

「……九峪、その縛り方はどうかと思うよ、私は」
 九峪は首を傾げる。
「なんだよ。タダの亀甲縛りでガタガタ言うなよ。こんな怪力っぽい奴だったら、下手な結び方したら逃げられるかも知れないだろ?俺は暴れたこの女を止める自信はないぞ」
「……はいはい。じゃあそう言うことにしておきましょう」
「なんだよ、羨ましいのか?」
「な!なんで縛られてるのが羨ましくなんなきゃならないのよ!!」
「そっか、思い過ごしならいいんだが……」
「……ちょっとは、興味あるかな……」

 二人が変態でしかない会話をしているうちに女は目を覚ました。
 目覚めて直ぐ自分の状況に気が付くと、まんまと罠にはまった恥辱と怒りに赤くなる。
「くそ!貴様らは何者だ」
「完全にこっちのセリフなんだけど~。あんた何者よ。こんな阿祖の山深いところに……。狗根国の乱破じゃないでしょうね」
 忌瀬はそう言ってみたものの、この女が乱破に向いていないことはよく分かった。なにせ気配の消し方はなってないし、あからさまな罠も見抜けない。乱破だとしたらかなり間抜けだと言える。

「……そ、それは」
「もしかして迷子?」
 九峪が思いついたことを言ってみる。
「な、なぜ分かった!」
 女は思わず叫んでいた。そして直ぐに落ち込む。
「……あ、あう」
 どうやら口が滑ってしまったようだ。
「なんだ、迷子か」
 九峪はため息をついて縄を解いてやる。
「それならそうと言ってくれれば街まで案内してやったのに」
「……そんなこと、言えるか!」
 女はそう怒鳴って、直ぐにしぼんでしまう。

「魔人とやり合っていたのは見てたんだろ?それで警戒心を抱かせちまったかな?ま、見たところ耶麻台国ゆかりのものみたいだし、ついてくるなら一緒にどうだ?」
「な、なぜ私が耶麻台国ゆかりのものだと!」
 九峪の言葉に、女はまた思わず叫ぶ。
「ぷ……あははははは、駄目だよあんた。こんな簡単なカマかけに引っかかっちゃ……」
 腹を抱えて笑う九峪とは裏腹に、忌瀬は気の毒そうに女を見ている。
 どうやら忌瀬もこの女がウソをつけるような人間ではないと分かったようだ。

 忌瀬は笑い転げている九峪に蹴りを入れて追い払うと女の方を見た。
「で、名前くらい聞かせてよ。私は忌瀬。一応復興軍付けの薬師だよ」
「え?復興軍の?私は音羽。父が元耶麻台国の将軍だったの。復興軍に加わろうと里を出たのはいいんだけど……」
「何を間違ったのか、こんな場所に?凄い方向音痴ね」
「面目ない」
 しょげかえる音羽。
「ま、ここで私たちに会えたのも何かの縁でしょう」
「あははは、方向音痴って、げらげらげら」
 九峪はまだ笑っている。
 音羽のこめかみに青筋が立つ。
「いい加減、むかつくんだが?」
「いいよ、殴っちゃって♪」
「お言葉に甘えて」
 その後九峪は音羽に思い切り殴り飛ばされ、十メートルほど宙を舞うことになったという。



 始めは忌瀬一人だったのに、いつの間にか三人に。
 忌瀬は二人を復興軍にどう紹介したものかと頭を捻っていた。
 音羽は知り合いも入っているはずだからと言うので問題は無いだろう。九峪も天目が無事に復興軍に入っていれば―――何事もなくすんなり収まっているとは到底思えなかったが―――多分大丈夫なのだろうけど。
 何か訳の分からない不安が付きまとっていた。

「あ、今日って満月だ」
 思い至ったように九峪が呟く。
 忌瀬も思わずハッとなった。
 音羽だけ何の事か分からず困惑する。
「だからどうしたの?夜通し歩くというなら別に構わないけど」
「そう言う問題じゃない……。う~ん、じゃ、忌瀬そう言うことで」
「仕方ないわね」
「なんだと言うんだ?」
 首を傾げる音羽。

「九峪は満月になると必ず大変な事に巻き込まれるのよ。近くにいると命がいくつあっても足りないわ」
「なに、それ?」
「分からないと思うけど、分からなくていいからそう言うことにしておいて頂戴。分かったときにもう遅いから」
「じゃ、音羽も忌瀬も元気でな」
「九峪もね」

 九峪は手を振りながら一人行ってしまった。
「いいのか?」
「何が?」
「好きなんじゃないの?」
 音羽の言葉に忌瀬は困ったように顔をしかめた。
「好きだから、一緒に行けないって事よ。あの人のせいで私が死んだりしたら、傷ついちゃうでしょ」
「……そんなものかな?私なら、片時も離れたくないと思うだろうけど」
「所詮子持ちの男だもん」
「……そうなの?」
「あれ?言ってなかった?」
「子持ちと知ってて、その、あの……」
「な~に、見てたの?やらしいんだから音羽さんは」
「ちがっ!」

「ふふふ、いいから急ごう。もうすぐ日暮れだし、早く離れないと巻き込まれるよ」
「……分かった」
 笑みを浮かべる忌瀬と、憮然とする音羽。
 二人は足早に山を下りていった。







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【2006/02/07 10:55】 | 小説 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
第六回 火魅子伝SS戦略会議
第六回 火魅子伝SS戦略会議



 うぃ~っす!作者です!何故かブログだと一人称が作者で、サイトだと管理人な作者です!別に深い意味はありませんよ~。

 え?テンションがいつもと違うって?アハハハ、すみませんね、現実世界で色々立て込んでおりまして、いっぱいいっぱいな今日この頃です。理由の説明になってませんね。ま、いいや~。

 では、第六回の戦略会議を始めたいと思いま~す。

 本日はようやく出番が回ってきた藤那様の登場です。

 どげしっ!

 がすっ、がすっ、ボキ

「貴様、なんだアレは~!!なぜ私があんな真似を晒してるんだ!!」
 い、いたひ。首が妙な角度に……
「知るか!答えろ!」
 もう、乱暴なんですから。
 まあ、何の話か分からない人は本日upした編年紀十二章を読んで下さい。先にネタバレされたって当たらないでね。
「いいから、こ~た~え~ろ~っ!!」
 ……だって、本編でだって琉度羅丹がアレでそうなりそうじゃないですか。編年紀ではそこをアグレッシブに書いてみただけですよ。
「常識的に考えてあそこで反乱起こす分けないだろう!」
 そうですかねぇ。大胆がウリの藤那様ならなきにしもあらずだと思うんですが。
「というか、あの閑谷は何だ!普通閑谷が真っ先に止めるだろ!!なんで積極的に加担した上に、人殺しまでやってるんだ!」
 嫌だなぁ。閑谷だって人くらい殺しますよ。書いてないけど徒然草の彩花紫戦であなたの横で戦ってたじゃないですか。
「戦場での話とは別だろうが!!」
 ―――ああ、なるほど。愛しの閑谷くんが汚されて怒ってたんですね。ぷぷ、可愛い所も……

 ごきん
 ぼぎぼぎ
 ぶち

「ふー、ふー、ふー」
 馬鹿力ですなぁ。作者の首をねじ切るとは。普段からこれを食らってる閑谷くんの首はものすごい強そうですねぇ。ムエタイとかレスリングとかやったら結構凄いかも。
「ぬおっ!生首でしゃべってる!?」
 まあまあ、そんなに驚かないで。
「ちっ、本当に不死身か。ところで私の今後の活躍はどうなってるんだ?」
 幻聴記はまあ、考えてないんですが、編年紀はちょこちょこ活躍するんじゃないですかね?あんまり活躍されると耶麻台国が滅びそうですが……。
「いっそのことこのまま征服した方が……」
 なにやら物騒な事を……。
 まあ、それなりの役所ではありますから、徒然草のように出番すらないよりはマシ、になるでしょう。
「本当だろうな?」
 作者はウソつかないヨ。
「なぜ片言なんだ」
 ……?ソナコトナイヨ、シャチョサン。
「ふむ」(何かを納得したように頷く

 ぶち

「口もなくばしゃべれまい。一応焼いておくか」

「天の火矛!」

 じゅうううう



「編年紀は次回から、【藤那覇王伝~火魅子への道~】に改名だ。期待して待ってろよ、ふふふふ、あーっはっはっはっは!!」





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【2006/02/06 16:16】 | 会議 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
第五回 火魅子伝SS戦略会議
 第五回 火魅子伝SS戦略会議



 ……よし、誰もいない。
 フフフ、いやぁ、苦労しましたよ魔界の変な蟲を取り除くのに。食いついて離さないの何のって。深川様も勘弁して頂きたいものです。

 さて、二日連続の小説を上げてみたりしましたが、皆さんは如何お過ごしでしょうか?こっちはやること山積みでいい加減小説なんざ書いてる場合じゃないんじゃないかと思う次第でございますが、追いつめられるほど鍵板叩くスピードが上がるのは何故だろう?現実逃避は楽しいですね。後でどうなるか知りませんが……

 さて、ではそろそろ本日のゲストに登場して頂きましょう。
 今回は忌瀬で~す。

「ど~も~。みんなのアイドル忌瀬だよ~」
 誰がアイドルですか。
「私。違うの?」
 どいつもこいつも全く。天目をさしおいて出しゃばることが出来たからって喜んでるんじゃねぇっ!
「別にそれは関係ないし~。っていうか、作者さんとしてはどうなの?私への愛の度合いは」
 薬品いじってイッちゃってるキャラとしては大好きですね。お姉様キャラまで行かなくとも、年上キャラで割といじりやすいのが書く方にしてみればポイントは高いですよ。まあ、作者は眼鏡キャラであれば何だっていいんですが。
「節操ないね~。好みは何なの?」
 好み?愚問ですね。作者は鬼畜ですから何でもアリです。
「男も?」
 それは別問題だろ……。さすがに男はノーセンキュー。大前提として女であることだよ、決まってんだろ!誤解を受けるような発言は慎め!!
「すみませんねぇ」
 反省の色が無いですが、まあいいや。
 今後の忌瀬の活躍ですが、ええっと、編年紀は微妙にしか出てきてないですな。まだ。
「そうだね。なんだか主人公があっちこっち行ってて」
 徒然草では九峪に喰われちゃってますからねぇ。仁義なき女のバトルがすっ飛ばされた三年の間にあったのやら無かったのやら。
「そう言えばまだ志野さんも出てきてないわよね?」
 九峪の恋愛相手としては、伊万里、上乃、志野、忌瀬、途中で諦めた臭い織部。後は無理矢理上げれば真姉胡と亜衣もかな?まあ、亜衣のは尊敬とか畏敬とかそんな感じで、何かあったかは分からないけど。
「でも、話から行くと伊万里さんが百歩くらいリードしてるよね?子供までいるし」
 ま、そうなってますね。子供が出来たとき九峪は志野になんて言い訳したんでしょう。血を見ずにすんだとは思えませんね。普通に考えれば。
「で、ちゃんと考えてるの?」
 ん~、微妙。九峪の恋愛関係は本人が外道ですから、最終的な勝者は誰になるかはきっちり決めてはいませんね。成り行きで決めます。
「そういえば委員長はどうなの?どうなるの?」
 委員長は委員長ですからねぇ。死ぬんじゃないですか、きっと。
「っ!! さらりと爆弾発言! 本当に?」
 嫌だなぁ、冗談ですよ冗談。仮にも主人公格のキャラ殺してどうするんですか。いえ、殺したいという欲求はあるんですが、話の構成上死んではくれませんね、多分。
「じゃあ、十七夜ちゃんは?」
 十七夜はほっといても死にそうですが、あれは名目上の編年紀のヒロインですからね。まあ、そんな感じです。
「ひ、ヒロイン?!天目で遊ぶ女の子が?」
 あれ?言ってませんでしたか?まあ、第二部からは大人しくしていてくれるでしょう。いえ、第二部だけは……
「語る気はなさそうね」
 ネタバレになりますから。
「じゃあ、しょうがないか。で、何章くらいで終わりそうなの、編年紀は」
 さあ。管理人のテンション的に、同じ話を長く続けられてもせいぜい五十章くらいが限界だと思ってるんで、多分その辺でしょうね。元々それほど引っ張るつもりはありませんでしたから。
「五十書いたら十分長いと言う話もあるけど」
 一部が【表】十三章、【裏】九章、挿話が全部で五章分であわせて二十七章。第一部で半分と言うわけではなくて、第二部からは【表】の章を引き継ぎますから、十四章から始まって、残り三十六章。う~ん、長いなぁ。
「何部構成なの?そもそも」
 一応四部構成の予定です。さしずめ今の第一部が神の遣い降臨編と言った感じかな。まあ、それだけでくくるには話が色々ありますが。
「ふ~ん。で、私が活躍するのはどの辺りなのかな~?」
 忌瀬が活躍する予定なのは第三部の終わりの辺りなので、ぶっちゃけ作者が逃走してかいてないかもしれませんね~。あはははは。

「笑い事かぁっ!!」

 べぶらっ!!
 う、今回は大人しいゲストだと思って安心してたのに。
「ふっふっふ、いつも好き勝手やってくれる作者を虐められるってそりゃあ、楽しみにしてたんだよ、私」
 そんないい笑顔で、怪しげな小瓶を取り出さないで下さいよ。
「これ中身何だったかなぁ~。うん、実験してみよう」
 いえ、あの、だから、人体実験はいやぁ~っ!!

「問答無用!!」

 びちゃ (怪しい液体が降りかかる音

 く、くく、あれ? くひっ、これ、は、あひゃひゃ、まさ、かぁ!!

「ああ、超強力な笑い薬みたいね~」

 あひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!

「効果時間は十二時間くらいだから、頑張ってねぇ~」

 げひゃひゃひゃひゃひゃ!くふっ、くそ!あひゃひゃ、いっそ、くく、こ、殺して、あははははははは、くれぇ~!!

「じゃ、お言葉に甘えて」

 シュッ

 スコン


 ばたり

「さすが十歩蛇の毒。よく効くわね」

 つんつん
 返事がない、ただの屍のようだ。



「よし、それじゃあ、次回も私が大活躍の【出雲盛衰記】、見てね~♪」
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【2006/02/04 00:00】 | 会議 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
出雲盛衰記02
 出雲盛衰記
 二章 魔人



 出会ってしまったのが運の尽き。
 そう言う存在と言うのは何処にでもいるわけで……



 曼荼羅華は高山の湿地帯にはえている草で、それらしいところを探していた二人は、出会って二日後にようやく見つけた。
 忌瀬の話では尸操蟲を腹の中に飼っている、酔狂な知り合いを助けたいと言うことだった。

 尸操蟲とは、狗根国―――山都の国に本拠を持つ富国強兵な国―――の左道士―――怨念の籠もってそうな魔法を使う人―――が、人を操るときに使用する蟲の事だ。怪しげな分泌物を体内で垂れ流して、暗示にかかりやすくする。

 駆除するためには曼荼羅華をアレコレしたものを飲ませなければならないので、忌瀬が取りに来たというわけだ。

「尸操蟲ねぇ。あれ、鳴き声が不気味なんだよなぁ」
 九峪は思い出しているのか顔をしかめる。
「あの分泌液そのものは色々使えるんだけどねぇ。何せ希少な蟲だから」

「ん?お、あれがそれっぽいな」
 九峪はそう言って指さす。
「相変わらず目がいいわね」
 忌瀬はそう言って遠眼鏡―――暗視装置、拡大機能付きの便利な眼鏡―――で確認する。

「あんなの、どうやったらここから見えるわけ?」
「なんでだろうな。見えるんだからしょうがないだろ?」
「ま、しょうがないけど」

 忌瀬はなんとなく納得がいかないような顔をしていたが、考えていても意味はないと思ったのか、曼荼羅華の方へ歩き始める。
 九峪もそれに続いた。

「でね、その尸操蟲を使ったのが、どうやら深川みたいなのよ」
「へぇ。深川ね。生きてたんだ、あいつ」
「本当女に甘いんだから、あのとき殺しておけば、私はこんなに苦労しなくて良かったのに……」

「それは俺に会えなくても良かったって事か?」
 意地悪に九峪がそう言うと、忌瀬はため息を吐く。
「そんな事言ってないでしょ~。もう、本当に」
「ははは、は……」

 拗ねる忌瀬を笑っていた九峪の顔が強ばる。
「どうしたの?」
「いや~な予感」
「ん?」

 九峪はゆっくりと振り返る。

 ザザザザザザ

 さして深くもない沼地を水しぶきを上げて、近づいてくる何か。
「あれって、もしかして……」
「皆まで言うな……」

 二人とも顔色が悪い。
「「魔人」」

 つぶやきに呼応でもしたかのように、魔人は動きを止めると立ち上がり、二人を見つめる。
 緑色の体表をした、カッパのような魔人だった。

「九峪……任せていいかな?」
「一人で逃げようってか?」
「うん。か弱い女の子にはちょっときついわ」
「俺もか弱いおっさんなんだけどねぇ」
「天目と夫婦になれるだけで、アンタは凄いよ。天目に比べれば可愛いもんでしょ?」
「……」

 そうだなと頷こうと思って九峪は慌てて首を振る。
「じゃ、時間だけでも稼いでよ。曼荼羅華取ってさっさと逃げましょう。任せたよ~、九峪」

 忌瀬は薄情にもそう言って踵を返す。
「おいおい。俺は数万人も殺戮するようなテロリストでも、無敵補正がかかったクズでも、シロクマ倒せる小学生でも無い、人畜無害なタダのおっさんだぞ」

 九峪の抗議の声は忌瀬に届いていないようだ。九峪は苦り切った顔で魔人を見る。
 対称的に魔人は嬉しそうにその口を歪めた。

「ひ、久しぶりの得物だぁああ、どうやって、喰ってやろうかぁ。頭から喰ってやろうかぁ、それとも、足の先から躍り食いがいいかぁ、動いている心臓をそのまま喰うのもいいなぁ」

 食べ方を色々吟味している魔人。九峪は引きつった笑みを浮かべる。
「おい、俺は美味くないぞ~。喰うならあっちの若い女の方が美味いんじゃないか?」
「あ!九峪酷いっ!」

「両方喰えば、いいだけの事だぁあ。どちらも、逃がさないぃぃいぃ」

「「……」」

 閉口する二人。

 魔人は忌瀬と九峪をじろじろ見た後、暫く考えるような仕草をして、勢いよく走り出した。

「まずわぁ、まずそうな男の方からだぁああ!!」

「げっ!まじかよ」
「がんばれ、まずそうな九峪!」

 忌瀬からのやるせない声援に九峪はため息を吐きながら、魔人に対して無防備に構える。

「死ぃいいぃぃいいいいい、ねえぇええぇえええぇええっ!!」

 魔人の叫びと共に振り下ろされる腕。
 九峪はじっとそれを見つめ、呟いた。

「時は、止まる……」

 その瞬間、世界の何もかもが停止した。

 時の止まった世界、その中で九峪だけが動く。
 荷物の中から小瓶を取り出すと、中の液体を魔人の口の中に注ぎ、急いで魔人から横にずれる。

「時は、動き出す」

「おおおおおおおぉぉおお、お!?」

 当たったはずの快心の一撃の手応えが無く、慌てて振り返ろうとした魔人。
 しかし、反転する間もなく、白目を剥いて泡を吹きながら倒れた。

「あれ?」
 忌瀬が一瞬で移動した九峪と、突然ぶっ倒れた魔人を交互に見て首を傾げる。

「ふう、死ぬかと思った」

 九峪は盛大にため息を吐いている。
 九峪自身は別に人より力が強いわけでも、動きが速いわけでもない。旅人を長年やっていたおかげで、体力はついているが、言うなればそれだけ。
 忌瀬が不思議に思うのも無理はない。

「九峪、今何したの?」
「十歩蛇の毒を口の中に放り込んでやったのさ」
「ふうん。毒をねぇ。全然見えなかった」
「ま、どうでもいいじゃん。さっさと曼荼羅華取ってこんな場所出て行こうぜ」
「そうだね。さすがにもう魔人はいないと思うけど」

 忌瀬は納得していないような顔だったが、九峪に促され頭を切り換える事にした。




「―――なんだ、今のは?」
 九峪が魔人を片づけた手際を見て、眉根を寄せている奴がいる。
「早いとか遅いとかじゃないな。見ていてもそんな手練れには見えないし……」
 一人ぶつぶつと呟く。
「まあいい、暫くつけて様子を見るか」
 怪しい奴はそう言って忌瀬と九峪の後を追い始めた。





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【2006/02/03 00:02】 | 小説 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
出雲盛衰記01
 出雲盛衰記
 一章 忌瀬



「まいったなぁ~。完全に迷った」
 九峪は一人山の中で途方に暮れていた。
「これで何回目だ?ま、その内天目が見つけるだろ」
 楽観的に呟くと、道も分からないのにまっすぐに進む。


 十五分後……

「……またか」
 九峪は森の中で倒れている人間を見つけて、呆れたように呟いた。
 【また】と言えるだけ行き倒れに慣れているのか、倒れている女の傍らに膝をついた。
「お~い、生きてるかぁ?」
「……」
 無反応。
「ま、だろうね」
 くねくねと曲がった癖毛。荷物から薬師だと分かる。薬師とは薬草などを採って回って、怪我人を直したりして生計を立てている人たちのことだ。
「おい、起きろ忌瀬。乳揉むぞ」
 知り合いだったのか、九峪は女の頬をぺちぺちと叩く。
「ん、う~ん」
 忌瀬は身じろぎしながら僅かに瞳を開いた。
 九峪は起きたことを確認すると、持っていた怪しい丸薬を、忌瀬の口に放り込み、水筒を口の中にねじ込んで無理矢理飲ませる。

「―――っごほ!げほ、ごほっ!」

 思い切りむせてたたき起こされる忌瀬。九峪は水筒をしまうと忌瀬の頬を二度、三度と叩く。

「い、痛い!ちょ、も、もう起きてるから!ぶふっ!」
「本当か?」

 九峪が満面の笑みでもう一度叩こうとしたのを必死にかわす。

「九峪!あんた私を亡き者にする気なの?」
「んな分けないだろ。また、助けてやったんだから」
「あれ?そう言えば、また?」

 忌瀬はそう言って頭をぽりぽりと掻く。
 周囲を見回して自分の状況を把握すると、にんまりと九峪に笑いかける。

「あはは、またのたれ死にするところだったね。ありがと、九峪」
「命の恩人に随分軽いな。何回目だよ、これで」
「えっとぉ~、確か十二回目くらい?」

 あっけらかんと言う忌瀬に、九峪は疲れたように肩を落とした。

「なぜ、方々適当に歩いているもの同士がこうやって何度も面を付き合わせることになるんだろうなぁ。不思議だ。一年に一度は会ってるよな?しかも毎回に行き倒れてやがるし」
「なぜか行き倒れると、必ず九峪が助けてくれるんだよね。私の方が不思議。別に好きで倒れてるワケじゃないんだけどなぁ」
「年に一回は行き倒れるって、お前やっぱり旅人としての才能に欠けてるんじゃないのか?」
「余計なお世話よ」
「で、九洲に何のようだ?この前は半島だったろ?」
「えっとね、曼荼羅華を取りに」
「ああ、なるほど。麻酔が入り用なのか?」
「ちょっと治療にね。丁度良かった、天目もいないみたいだし、手伝ってよ」
「仕方ねぇな」
「んふふ、ところで今私に飲ませたのって何?」
「ああ、超強力な滋養強壮剤みたいなもんかな。常人が飲むと丸一日は走り回りたくなるような強力な奴。今の忌瀬になら普通に戻るくらいですむだろうな」
「はぐらかした言い方しないでちゃんと教えなさいよ。それともヤバイものなの?」
「ん、ある意味」
「今度教えてね」
「気が向いたらな」
 忌瀬は九峪のやる気のない言葉に、頬を膨らましながら歩き始めた。



 二人の出会いは今からもう十年以上も前になる。
 当時は他の薬師の元で一緒に各地を旅していた忌瀬だったが、山中で魔獣に襲われ、逃げ出したものの保護者だった薬師とはぐれてしまって行き倒れになっているところを、天目を連れた九峪に拾われたのだ。
 二月ほど一緒に旅をしていたが、九峪の旅は色々と物騒だったので、忌瀬を知り合いの薬師に任せてそこで別れた。
 お互い漂泊の身の上、どこかでまた会うこともあるだろうとは予想していた九峪だったが、まさか年に一度も会う事になるとは思っていなかった。
 そして毎度の如く行き倒れ。
 九峪が、またかと言いたくなるのももっともなことだった。
「小夜ちゃんと桂くんは元気?」
「年を追う毎に生意気になってきてなぁ。誰に似たんだろう、本当に……」
 尾根づたいにある気ながら、世間話に興じる二人。
 話は子供の方へ。
「誰って、天目に決まってるじゃない。あの性格と趣味の悪い女の影響でしょう。だから、あんなの捨てて私と一緒になろうよ。教育的にもその方がいいって」
「お前に似たら、更に厄介になりそうだと思うのは俺だけか?」
「何それ?」
「痛てぇ!つねるな」
 忌瀬は顔をしかめて九峪から離れると、急に立ち止まって俯いてしまう。
「私って、魅力無いかな……」
 ぽつりと呟く。
「そうだよね、薬狂いの女らしさの欠片もない、変な奴だもんね。天目みたいに綺麗じゃないし。何処の馬の骨とも分からない、汚い女だもん」
「お、おい」
「……そう、思ってるんでしょ?」
 涙に濡れた目で、振り返ると、九峪を見つめる。
 九峪はやれやれと内心ため息を吐きながら、忌瀬に詰め寄る。
「そんなこと無いさ。忌瀬は十分魅力的だし、汚くなんかない。着飾ることしか脳のない、そこら辺の女に比べたら遙かに魅力的だよ」
「ん、嬉しい」

 二人の顔が近づき、唇が触れあう。
 九峪は忌瀬の身体を抱き寄せる。
 忌瀬は求めるように口を開き、九峪もそれに応じる。
 舌がお互いの口内を行ったり来たりしながら絡まり合い、唾液を交換し、むさぼりあう。
 数分して、ようやく二人が離れる。
 惚けたような顔をして、忌瀬は力が抜けたように体重を九峪に預ける。
 九峪はゆっくりと忌瀬の身体を地面に横たえた―――



 
 約二時間後……

「私にも赤ちゃん出来ないかなぁ」
「縁起でもない……。天目に殺される」
「別にいいじゃない」
「よくねぇっ!」

 下腹の辺りを抑えながら、幸せそうな笑みを浮かべる忌瀬。
「赤ちゃん出来たら、私と一緒になってくれる?」
「嫌だな、それ」
「なんで?責任とって貰うからね」
「そんなことで一々責任取ってたら、身体が二つや三つじゃ足りないだろ?」
「なに、さも当たり前のように言ってるの……」
「小夜も桂も天目の子供じゃないって事くらい、知ってんだろ?」
「確かに、見た目は似てないけどさ。よく殺されないね」
「ふっふっふ、天目は所詮俺無しじゃ生きられないからな。まあ、五回ほど刺されてるんだが……」
「じゃ、告げ口してやろ~っと」
「やめろ」
「それが人にものを頼む態度?」
「どうすればお気に召しますかね、忌瀬ちゃんは」
「んふふ、もう一回して♪」
 とろけるような笑顔。

 結局その日はその場で夜を明かすことになったとか何とか……



 詳しい話は、二人のヒミツ。










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【2006/02/02 17:08】 | 小説 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
第四回 火魅子伝SS戦略会議
第四回 火魅子伝SS戦略会議



 よいしょ、どっこらしょ、と。
 ああ、ようやく手足がくっつきました。
 ほんと、もう死ぬかと……。

 さて、どこぞから天目贔屓の続きじゃないのかとクレームが来そうですが、思ったより手こずってるんで、その内ね。気長にまっててください。

 と、言うわけで何事もなかったかのように第四回の戦略会議の始まりでゲスよ。
 本日のゲストは深川様でございます。

「禍し餓鬼!」

 げふぅっ!!

「本当に死なんな。これは遊べそうだ」
 な、とつぜん何を晒すんですがあなた様は!
「ん?ここは作者を虐め倒す場では無かったのか?」
 断じて違います! 深川様になら虐められるのもいいけど……
 うほんっ。では深川様、作者はこれまで割と贔屓してきたつもりなのですが、何か言いたいことはございますか?
「そうだな。原作より出番は相対的に見れば多いだろうな」
 深川様の魅力を世の中に知らしめるのが、作者の務めでございますから。
「魅力?」
 ええ、その人間をゴミとしか見てない鬼畜な所だとか、拷問好きで血に飢えてる危ない所だとか、何より、先天的に運が悪いのか、相対的に割りをくってるだけなのか、火魅子候補をその手に落としておきながら、気づかずに返しちゃう間のぬけっぷりが、あなた様の魅力ですね。

 びきっ

 なんの音でしょうか。今、空気にヒビが入ったような……
「ほ、ほほう。この私が、間抜けだと?」
 え、やだなぁ。 
 まさか自覚がないんですか?

「さぁ~て、どんな拷問がいいかなぁ。くく、死なないなら丁度いい、腹を引き裂いて、この家庭内害虫を百匹くらい詰めてまた閉じてやる」

 そ、それは、幾ら倒錯的趣味の作者でも、ちょっと……

 ぎにゃあああああああああっ!!

「ああ、いい叫びだ。少々艶が足りないが。ふふふふふ」

 ぴくぴく
 うう、お腹の中がぁ、もぞもぞしてるよぉ……

「って、普通に起きあがってくるとは」

 作者を嘗めちゃいけません。精神的にはかなりこたえてますが、肉体的にはこんなもん痛みのウチには入りません。
 では、危ないものを裡に秘めたまま話を続けますが、深川様もやはり出番欲しいですよね?
「当然だろう」
 ですよねぇ。まあ、あなた様は大好きですし、役回りがはっきりしているだけ使いやすいので、今後も出番はあるでしょう。というか、編年紀でもその内出番がありますよ。戦闘力補正がかかってかなり強くなってますし。
「ほほう。それは楽しみだな」
 でしょ?
 ま、捨てゼリフを吐いて去っていく、やられキャラには違いないんですけどね! ププ

 びぎぎ

 おや、なにやらまた大気の割れる音が……

「おい、teigo。そこにオモシロイものが落ちてたぞ。今度はこれでやってみようか、なぁ?」

 あれ?それって、俗に言うアイアンメイデンって拷問道具じゃ……

「なるほど、そんな名前か。ついでにからし味噌があったから、よく塗っておいてやろう」
 いえ、そんな恐縮です。というか、全力で遠慮したいんですけど。まだ、お腹の中身もアレですし。
「遠慮するな!」

 いやあああああ、ゆっくりしまってくる。
 からし味噌、痛い痛い、し~み~る~っ!

「ふふふ、余ってた家庭内害虫と、ムカデと、蜘蛛と、蠍と、オマケに魔獣にくっついてた、得体の知れない不思議生物を入れて、蓋をしてと」

 ぎにゃああああああああああああああああ!!

「さてと、後は明かないように縄でぐるぐる巻きにして、おい、お前達、こいつを海に沈めてこい」
「へ~い」(深川の部下達



「さて、作者は天目を贔屓に書きたがってるようだが、アレで少しは私の魅力に気が付くだろう。ふふふ、のたうちまわるがいいさ……(うっとり」

「次回からは深川様ヒロインの新シリーズ【百鬼夜行】が始まる。見なかったら、拷問してやるからな」
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【2006/02/01 15:51】 | 会議 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
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