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お知らせ
 えー、先週は更新せずに誠に申し訳なかったです。仕事が忙しくて残業多くて、今日も先ほど帰宅したばかりで、明日の更新もちょい無理っぽいです。書く暇がなーい、と言うのは若干嘘で別のを書いていたのが原因だったりするんですけども、まぁ、だからさぼってたっていうワケではないのですが、言い訳以外の何物でもないですね。すみません。

 で、書いてた奴もなんとか99%くらいは上がったので、近いうちにupしようかなと思ってますです。ああ、オリジナルですけどねぇ。火魅子伝のSSを読みたいと思っている方には申し訳ない話ではありますが。

 煽りを喰らった深川の連載ですが、明日は無理かも知れませんが、多分来週からは何とか出来ると思います。


 web拍手のお返事。
 7/16。

0:58 星華ってば、星華ってばやっぱり星華だったww こーゆー間抜け落ちな星華を見るとホッとします(マテ
 と頂きました。
 星華様は何時だって星華様です(笑 本当は活躍させたかったんですけどねぇ。まぁ、これも多分愛の形です(謎
 コメントありがとうございました。


15:36 成る程そう言えば外法の人に術は効かないんでしたっけ。と言うか星華様、力を受け継いだとは思えないどころ
15:38 か、ナイフとか持って粋がってる三下のごとき下っ端オーラがムンムン出てますね。次回、ひでぶっとか言って
15:39 死にそうですねぇ。
 と頂きました。
 星華様が下っ端オーラムンムン。これはまた言い得てmy……ゲフンゲフン。さすがにひでぶっは無いかと思いますけどもねぇ。何かの間違いでここから大活躍が……あー、もうキャラの方向性が決まってしまったので辛いかなぁ。
 コメントありがとうございました。

 7/23。

0:12 宗像の連中は扱いやすい性格に星華を育てたのか? こんな性格でも治められる国なのか知りたい今日この頃。
 と頂きました。
 あー、なんか核心をぐさっと突き刺しちゃうようなコメントですね。まぁ、ネタバレになるので言いたくもないけど、今なんで亜衣がいないのとかねぇ。ちゃんと私に書く気があれば書くかも。
 コメントありがとうございました。

 他にも叩いて頂いた皆様に心より感謝を。

 次にアレクサエルさんからのコメント。

いつもながら、何ておもしろい!!!

しかし、星華みたいな相手で良かったですね。
もし、相手が伊万里みたいな相手なら、心情的に強引にしにくいし、
ひょとして、星華も、潜在的に深く恐怖を感じてたから、
なおさら、ああいう態度を取ったのかな?

あれ? 亜衣はどこに?
 と頂きました。
 もし伊万里が火魅子だったら……、九峪寸刻みですね(笑 元々剣士で火魅子補正が入ったら、方術無効化も意味無いですし。まぁ、その辺は実際どうなるのかさっぱり分からないんですが。分からないと言えば、九峪の無敵補正も、方術を直接キャンセルできるとして、方術で起こした火が何かに燃え移ったら火傷するのかとか、そこまで考えるとものすごい面倒ですしねぇ。いやたぶん、火傷するんでしょうけども。ご都合主義的な能力は書く上でちょっと困ります(笑 まぁ、そんなこと書かなきゃ分からないでしょうけども。
 亜衣は、まぁ、そのうち(苦笑
 コメントありがとうございました。


 では、次回はちゃんとした更新でお会いしましょう。ヾ( ̄◇ ̄)ノ)) バイバイ
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【2007/07/28 21:21】 | 会議 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
深川49
 深川
 四十九話



 周囲を包み込む霧。
 ただの朝靄にしてはあまりに濃すぎる。隣にいるものの姿さえはっきりと視認できない白い闇。

 二人は互いに背中を預けた状態で周囲を警戒していた。

 これは自然な霧ではない。誰かの手によるものだと直感して。

「――分かるか深川」
「いや。皆目見当もつかないが、既に火後の領内。用があるのはお互い様なんだから出くわしただけだろう」

 ヒソヒソとした声で会話を交わしながら、都合四つの眼は白い闇を睨み付けている。しかし見えるのは遠近感もつかめない純白。何の気配も感じられない。

「これも左道かなんかか?」
「耶麻台国の連中が使うのは方術だが、まぁ似たようなものだろう」
「闇討ち目的?」
「おそらくは」

 九峪相手に正面から戦えないのは分かり切っていること。ならば正攻法では絶対に攻めてはこないだろうと、深川は事前に九峪に忠告していた。

 闇討ち、だまし討ち、人質、罠、籠絡、恭順。
 勝つための手段はいくらでもあり、九峪はあくまで正面からの戦いでなら最強に過ぎないと。

 何より、敵には高確率で九峪そのものの戦力を無効化出来る策がある。
 殺すつもりでこられれば、九峪も深川も、あまりに無力だ。

「ふふん。そうおびえなくてもいいわよ、お二人さん」

 白い闇、そのどこからか響く女の声。楽しくて楽しくてたまらないと、愉悦を隠しきれていない、勝利者の声。

「――星華か」
 深川の呟きに、高らかな笑いが重なる。

「おーっほっほっほ。卑しき左道士にも高貴なる私の声は分かるようですわね。如何にも私は耶麻台国の次代火魅子にして宗像の宗主、星華です。頭が高いからその場で平伏したら心証良くなるかもしれないわよ」
 それは巫山戯てはいるが、自信に満ちた声だった。支配者として、微塵も揺らぐことがない絶対的な自身に。

「わざわざ来てくれたなら話が早い。アンタなら俺の中から蛇渇って奴を取り除けるかも知れないって聞いた。出来るんならやってくれないか」
「あらあら、本当にどうなっているやら」

 九峪の問いに答えず、星華は愉悦を引っ込め興味深そうな声を響かせる。それに呼応して、白い闇が僅かばかりざわついた。

「本来それは人の身で御せるような類のものではないはず。宿主を傀儡として、私に都合のいいように動かせるはずなんですけれど。さすが火魅子様が見初めた男、と言うことかしら?」

 ぶつぶつと一人呟き、まぁそんな事はどうでもいいけど、と投げやりに話を戻す。

「もちろんそのつもりで、この私が、わざわざ、こんな田舎の山の中まで足を運んだのですから、今すぐ取り去って差し上げる、そう言いたいところですけれど……」
「なんだ?」

「ふふ――」

 星華の薄笑い。

 九峪は言いしれぬ悪寒を感じて、その瞬間背後の深川を抱えて白い闇の中、足場も見えない脇へと跳躍した。

 その瞬間、――白い闇に風穴が開いた。

「な――」
 言葉もない。二人が立っていた直上から炎の柱が降ってきたのだ。

 それは炎でありながら、まるで固体のように高密度で、杭のように地面に突き立った。

「……さすがにこれくらい避けるわよね」
 星華の声色に変化はない。

「何のつもりだ!」
「何のつもりも何も、こっちを殺す気だろうが」

 叫んだ九峪に冷静に突っ込む深川。

「いや、でも、理由はなんだよ!?」
「お前の顔が気にくわなかった」
「うわ、身も蓋もねぇ」

 地面に突き立った巨大な炎の柱が周囲の霧を払いのける中、意外と冷静に漫才をする九峪と深川。

「そんな理由だけではありませんわよ」
「だけではってことはそれもあるって事か?!」
「……こほん。私はただあなたを実験台に、今の私がどれだけ強いのかを試してみたいだけです」

 ぴしり、と殻が割れるように炎の柱に罅が入る。

「こんな事をご存じかしら? 火魅子の業は、初代姫御子の託宣を受け、その御霊を裡に受け入れることで、その偉大な英知と力を授かるが故に出来る。本来それは耶牟原城の神殿で行われる神聖な儀式。でも、もし火魅子の御霊を持っている火魅子本人がその場にいるとするなら、そんな神殿など無くとも御霊の継承は可能になる。だってそうでしょう? それは火魅子から火魅子へと継がれるものなのだから」

 星華は楽しそうだ。本当に、心の底から。

「九峪、とか言ったかしら? あなたと戦う前、火魅子様は私に後を任せると、口に出してはっきりとそう言った。それがどういう事かわかるかしら? 火魅子の言葉はただの言葉ではない。それ自体が呪となり効力をもつ真言。ふふ、分かるわよねぇ。私が一人で、意気揚々と、この場に来た意味も」

 炎の柱が割れ、無数の火球が周囲へと飛び散った。
 九峪は炎の御剣で目の前に飛んできた火球全てを切り払う。

 目の前を灼熱が通り過ぎ、完全に霧が吹き飛ばされた後に広がる焼け野原、その中心に巫女服姿の女が笑って立っている。

 その目に、ありあまる狂喜を宿して。

「火魅子様との事の顛末は聞き及んでいます。あなたは火魅子様より強かったわけではない。火魅子様が自分から負けただけ。貴方は勝ちを譲って貰っただけ。そんな貴方が今や九洲最強などと言われてしまう始末。認識を改めなくては、今後に差し障るでしょう? 火魅子より強いものなど存在してはならないんです。何より、私が火魅子になる以上、そんな事実は根絶しなくては。貴方が勝ったのは火魅子様が出来損ないであったからで、本当の火魅子は私なのだと、九洲の民には分かって貰わなくてはね」

 炎を身に纏った巫女は、優しげに安心してと続ける。

「死んで貰うとまでは言いません。ただ、誰の目にもはっきりと分かるように、ボロ雑巾の用になって貰うだけだから」

 星華はそう言って自分の目の前に、まるで冗談のような巨大な火球を作り出す。
 それは、日魅子が最後に九峪に向けて放とうとして出来なかった、必殺の一撃。全てのものを焼き潰す、殺すための技。

「――殺る気満々だな」
 冷や汗を流しながら、深川が自嘲気味に呟いた。
 実際のところ、自分はともかく九峪には利用価値がある。だから殺されない可能性が高いと思っていたのだが、今の星華にその判別が出来るようにも見えない。

 ただ、力の溺れているようにしか、深川には見えなかった。

「ぐ、ったく。本当になぁ。あんなの前にしたら、蛇渇を抑えるのも難しいってのに」
「今この状況なら、解放するのが唯一の生き残る道のような気がするがな」
 不本意ながら、と深川。

「それは最悪だ。駄目駄目だ。蛇渇はこれ幸いと、星華を殺して自分を封じる術、そのものを消し去ろうとするだろう。そうなったらそれこそ本当に終局。今俺がやんなきゃないのは、あいつに生きたまま、生かしたまま勝って、蛇渇をどうにかして、俺から力奪わなくちゃ勝てないと思わせることだろ。他に手段がないと、そう思わせる」
「もっともな話だが、出来るのか?」
「安心しろ。当たるも八卦、当たらぬも八卦だが、実はずっと考えていた事がある。どうすればお前に虐められなくて済むか、どうすれば立場逆転できるか考えていた頃にな」

「初耳だな。ふん、それが役に立つのか?」
「前の俺じゃ無理だったが、今なら多分大丈夫だろ。その一手はいつでも打てたが、前はその後の詰めが出来なかっただけって話だからな」
「意味が分からん」
「見れば分かる」

 九峪はそう言って、無防備に星華に歩み寄る。
 深川をその背にかばうように、ただまっすぐと最短距離を。

「お話は終わった? 間違って死んでしまっても安心して。今の私は、別に剣と鏡などで願いを叶えなくても、叶えたい願いは自分の力でどうとでも出来てしまいますから」
「それが本音か」
「さぁ、ね」

 星華は笑って火球を放った。
 九峪の目の前を灼熱の火球が覆う。
 が、九峪は棒立ちのまま一歩も動かなかった。

 ――馬鹿な! 死ぬつもりか、貴様!

 体の裡で蛇渇がのたうった。その激痛に顔を顰めながらも、九峪は苦笑するように蛇渇に向けて呟いて見せる。

「お前だって知ってるはずだろ。見てたんだろう? こんなもの、どうとでもなる」

 断言すると同時に、炎に九峪は飲まれ――



 静寂。
 それは息をするものがいなくなったからでは無く、息をするのを忘れたから。
 焼け残った木々も、星華も、深川も、大気や地面ですら、その状況に困惑するように、沈黙した。

「何、よ、それ」

 弱々しい星華の呟き。
 それは驚愕と混乱。

「さて、これで俺を倒す術は一つしか無くなったはずだよな? どうする? 星華」

 傷一つ無く突っ立ったままの九峪は、柄にもなく得意げに言って見せた。













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【2007/07/15 22:46】 | 小説 | トラックバック(0) | コメント(1) | page top↑
深川48
 深川
 四十八話



「そんな話なら聞く意味がない」
 寝太郎の出した条件に九峪は間髪入れずに返事を返した。

 蛇渇は何とかしたい。どうにかしなければならない。が、しかしそれで九峪か深川が死ぬというのなら、そんなもの大人しく九峪が死んでいればいいだけで、現状から事態は何一つ代わりはしない。

「あら、私からすれば破格の条件だと思うのだけれど」
 寝太郎は聞く耳持たないような九峪の態度に意外そうに呟いた。

「その条件なら黙って俺が死んだのと何も変わらない」
「変わらない? 変わらないですって?」
 どこか怒ったように、からかうように、寝太郎は九峪の言葉尻をとらえる。

「認識が正しくできていないようね。このままではあなたは死ぬ事なんて出来ないし、蛇渇に飲まれて消えるだけのちっぽけな存在。誰かが殺してくれるなんて、そんな他人任せな上に不確定な事を本気で考えているの? 今や九洲で最強のあなたを、一体何処の誰が、どうやって殺すというの? いざ戦いとなれば動くもの全て殺し尽くすまで止まれない、壊れた殺戮人形のあなたを確実に、たった一人の命で止めてみせる。私はそう言っているのだけれど、それでもあなたはそれすら不満だと言うつもり?」

「不満だ」
 九峪は言い切った。ちらりと深川を見つめて、そう言いきった九峪を当然だとでも言うように見ているその表情に、救われる自分を感じながら。

 そっと手を伸ばして深川の手を握る。確かに感じる体温。それを失いたくはない。もっと感じていたい。そのためには、どちらが欠けてもいけないのだと。

「寝太郎って言ったか。そんな議論は深川ともう済ませたんだ。俺は死ぬつもりはないし、これ以上殺すこともしない。蛇渇は、もし取り去る方法が無いって言うならねじ伏せるだけだし、そのことで弱音ももう吐かない。出来ないなんて言葉は知らない。ただやるだけだ。それしか無いというなら、俺は迷うことすらしない」

 まっすぐと見つめられ、寝太郎はやれやれと苦笑をこぼす。

「度し難いほどのお馬鹿さんね、あなた」
「誠に遺憾な言葉をありがとう」
「仕方がないから教えてあげましょう。実に簡単に、炎の御剣、その御霊を解放する方法を」

 首を傾げる九峪。その方法とは、結局犠牲を強いる何か。ならばそんなものは聞きたくもないと言いそうになった九峪を、寝太郎は制して告げる。

「生け贄なんていらないわ。ちょっと意地悪してみただけよ。これだけの立場にあって女といちゃいちゃしている神経が少し癪に障っちゃったの」
「な――」
「うふふふ。でも、まぁ、そこまで筋金入りだというなら、まぁいいでしょう。教えてあげるわ」

 寝太郎は一拍おくと、じっと九峪の瞳を見つめる。

「そもそも、炎の御剣、その純白だったはずの御霊が汚れ、剣と共に一人歩きを始めた理由がある。蛇渇と名乗り狗根国に渡り、三百年にわたって宿主を捜し続けるに至ったその理由。元来変質するはずもない、初代姫御子が生み出したただの道具の延長上でしかないはずの精霊が、何を契機に変わり果ててしまったのか?」
「三百年も前の事じゃ……」
「そう。誰も知りはしない。唯一知っていそうな火魅子も知らなかったからこそあなたに殺された。でも知っているものは必ずいる。蛇渇という名の外道に剣の精霊を作り替えた犯人と、剣と一対の神器である鏡の精霊だけは」
 寝太郎は断定的に語って、不機嫌そうに鼻を鳴らす。

「伊万里には会ったわね? あの子が手に入れた鏡の精霊から裏は取れた。三百年前、私利私欲で蛇渇を生み出したのは宗像神社。想像の域は出ないけどまぁ、低俗にして浅薄な理由があったのでしょう。剣の精霊に宿主に対する妄執を植え付け、自分たちは鏡を管理し、いずれ宿主と共に戻ってくることを待っていた。自分たちはただ待てばいい。それが何年であろうとも、すでに七百年待っていた彼らには些細な問題だから」
「……宗像って」

「ふふ。まぁ、元凶というならばまさにそこ。けれどそんなことはもう些細な問題でしょう。実際に実行したものは既に土に還ってしまっているんだから。しかし、意図的に行ったことであるならば、当然その後の対処も織り込み済みのはず。何年かかるかも分からない偉業であるならば、確実にその術は子孫に伝えられている。そう、戻ってきた精霊が狂ったままだというなら、それをどうにかする方法も、確実に知っていなければならない」

 寝太郎は話は終わりとため息を吐く。

「まぁ、それをどう考えるかはあなた達次第。どのみちもしかしたら死ななくてはならないのかも知れない。けれど唯一にして最大の希望であることは確かでしょう。強がりで押さえ込むなんて言うのは結構だけれど、気合いでどうにか出来るようなものでもないはずよ。じゃあ賢い選択をすることを願っているわ」
 歩き去る寝太郎。頭の中で今の話を反芻していた九峪は、慌ててその後ろ姿に声を掛けた。

「ありがとう。でもなんであんたはこんな事教えてくれたんだ?」
 ただの親切、だとは思えない。

「……さぁ。ただ、人間界に降りてくる仙人なんてものはね、大抵お節介で偉そうに人間を導くことが趣味の変わり種なのよ。まぁ、私の場合はただの気まぐれ。敢えて言えば、九峪さんが少し可愛かったからかしらん」
 冗談めかしに言って気まぐれな仙人は闇に消えていった。

 暫く狐につままれたように呆然としていた九峪は、ふと隣からの視線に気づいて目を向ける。

 深川は何も言わなかった。
 九峪も口を開かなかった。

 何も語らなくても、今だけは考えていることが分かったから。
 自然、視線は火後を向いていた。






 やることもなく、片野城の街の中をぶらぶらしていた伊万里。やるべき事は全て星華がやる。何一つやることが無いのは暇だなと思いながらも、自分一人ではどうにもならないのだから仕方がないかと諦める。

 火魅子を殺した相手。

 そんな途方もない化け物相手に、勝算などカケラもない。星華は自信満々だったがその根拠が分からない伊万里には、状況が見えていないのではないのかと勘ぐってしまう。無論、星華は伊万里などより火魅子に近しい位置にいたのだから、その力の大きさも正確に知っている。それを倒すという意味も理解している。

 だからその上で余裕があると言うことは、何か確実な策を既に持っているという証左であるはずなのだ。

「結局私は鏡持ちって立場か。やれやれだ」
 ぼやきながらふと視線を前に向けると、絶世のと言って差し支えないような美女と目が合った。体の線は細く肌は白いが、決して病的な感じはない。むしろしっかりと鍛えられたしなやかな体。安定した立ち姿はそれだけで手練れであることが知れる。やけに露出と装飾が多い格好は、女が芸人である事を示している。

 視線が合ったのは向こうもこちらに何か感じるものが会ったからだろう。これも縁かと、伊万里はその美女に話しかけることにした。

「やぁ」
「どうも」

 気軽に声をかわし、それからふと何の話をしたものかと迷う。

「あー、この街で興行でもしてるのか? 生憎とお目にかかった記憶が無いんだが」
「ええ。興行はここではなく、別の街でやっておりますから。ここには少し用があったもので」
「ふぅん。用ね」
「あなたは?」
「?」
「ただものを卸に来た山人には見えませんが」

 伊万里は言われてみれば、今の自分が宮城にいるため普段とは違う格好であったことを思い出す。

「まぁ、私もちょっと用があったんだ。ああ、私は伊万里」
「志野と申します」

 志野。その名前に伊万里はぴくりと反応する。

「……どこかで聞いたような。何だったかな。確かについ最近」
「私の名を聞いたことがあると言うことは、伊万里さんは耶麻台国の関係者と言うことですか?」
「ん? どうだろう。ああ思い出した。確か女官の誰かがうわさ話をしていたのを聞いたんだった」
「ロクな噂ではなかったでしょう?」
「もう忘れたよ」

 伊万里はそう言いながらも、確かに憎悪すら籠もった良くない噂であったことを思い出す。目の前の少女を、裏切り者だの売国奴だの口汚くののしっていたのだ。

 ――とてもそうは見えないが。

 そんな内心はおくびにも出さず、しかしそんな嫌われ者が今や耶麻台国の中心である片野城に来ているのか不思議に思う。

「関係者でしたらちょうど良かった。出来れば星華様にお取り次ぎ願いたいのですが」
「ああ、どうかな。今はかなり忙しいみたいだし。それに取り次げるような立場でもないんだ。私も」
「そうですか。でしたら直接宮城へ――」

 "見つけた"

 向かおう。そう口にしようとした志野の言葉が止まる。空耳かとも思ったが、確かに聞こえた。

「あの、今何か?」
「え、いや私は何も――」

 "これで、――――る"

「え?」
「ん?」

 伊万里と志野。二人で首を傾げる。
 確かに聞こえた声。

 "時は満ちた。さぁ、扉を開こう"


 不思議な声が、二人にはとても楽しげに聞こえていた。













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【2007/07/08 17:08】 | 小説 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
深川47
 深川
 四十七話



 雨は上がり日は沈み、夜の帳が降りた頃、九峪は空を見上げていた。その腕の中で眠る深川の体温を感じながら、決然とした顔で。

「……すー、すー」
 寝息を立てる深川の顔は年齢の割に幼い。そんなことを口にすれば怒られそうだが、今は安心したように無防備ですらある。

 ――私だけは、お前の味方だ。

 誰が言っても深川だけは口にしないような台詞。
 その意味が分からないほど九峪は馬鹿なわけではない。

 嬉しかった。
 ただ単純にそう感じられた。

 隙あらば表に出ようと藻掻く蛇渇を押さえ込むだけで、九峪の精神は疲れてしまう。今や九洲全てを敵に回した九峪にとって、味方だと言ってくれる人間が一人でもいるのは心強い。

 何より、少なからず九峪自身も深川のことが。

「……だから、お前を日魅子と同じ目には」

 巻き込んで、自分のせいで殺してしまったらもうどうしようもない。二度と繰り返さぬと誓ったのだ。もう終わらせると決めた。ならば、九峪の取るべき道など一つしかない。

「悪い」
 深川が起きないように、そっと体をずらして地面に横たえる。

 今ならばまだ、自分でけりがつけられるかも知れない。

 そう思って立ち上がった九峪の腕を、しっかりと深川は握っていた。

「私を、養ってくれるんだろう」
 それは約束。九峪から口にした、迷い言。

「綺麗事な最善を求めるのがお前の性分だろう。なら、自分の人生をここで諦めるのは違うんじゃないのか?」
「……そう言ってくれるのは嬉しいけど、実際問題他に方策はない」
「諦めるのか? 先の事なんて分かるほど利口じゃないくせに、それを言い訳にするな。そう言いはなったのもお前だろう」
「だけど」
「お前の論理に従うなら、お前を失うと悲しいと思う人間がいるのに、その命を捨てるのは間違いだろう」
「……」

「火魅子を殺して悲しい気持ちが分からないでもない。今の私になら何とはなしに想像も付く。死にたいほどに後悔しているんだろう。蛇渇を止めることも出来たのに、それが出来なかったんだから。だがそんなものは結果論だ。あのときのお前にそれは出来なかったし、火魅子が礎になったからこそ、いまその偉業を体現できているとも言える。火魅子はお前に生きて欲しかったからこそ、自らその身を犠牲にした。ならばただ単純に死を選ぶのは火魅子の死に対する冒涜ですらある。何かの死を踏み台に生き残ったというなら、その分まで生きるべきだ」

 最後のそれは深川の論理。だが、今このとき九峪にもそれは正論だと分かる。

「だけど、そのためにあいつが護りたかったものを傷つけるなら、そんなものはあいつの望みなんかじゃ」
「寝ぼけるな。九洲の民が真実護りたかったならば、お前のことを殺していたんだ。九洲の民、その有象無象よりお前を取った。ただそれだけの事だろう」
「けど、俺は……」

「言い訳などするな。そんなものは無意味だ。罪の意識に思考が曇っているというなら私が教えてやろう。お前が取るべき道というものを」

 毅然と深川は言い放った。
 九峪は、場違いではあったが今この状況がとてもおかしくて、あまりにもおかしすぎて――

「ぷ、あはははっ!」
 思い切り笑ってしまった。

「……嘗めてるのか貴様」
「ちょ、だって、お前。くく、あはははは、よりにもよってお前が言うか? いや、うん、その通りでさ、そうなんだけどもさ。まさか深川の口から励ましなんて聞けるとは思わなかったからさ」
「からかってるなら殺すぞ?」
「違うって。意外すぎただけだ。これも愛の力かねぇ。いや重畳重畳」
「やっぱり貴様からかってるだろう。ん? そうなんだろう?」
「まぁ、多少は」
 深川は無言で頭を殴りつけると、それからため息を一つ吐いて続きを口にした。

「最善がもしあるとするなら、お前が蛇渇に完全に打ち勝ち、その炎の御剣の力を我がものとし、さらに天魔鏡で本当の望みを叶えることだな」
「願い事はどうでもいいんじゃ?」
「権利があるなら行使するべきだ。蛇渇の思惑が入らなければお前の望みは九洲の民のためにもなるのだろ。まぁ、私にしてみればどうでもいいが」
「……そうだな。まぁ、確かに実行する手段があるのだとすれば、それは確かに最善だ。誰も犠牲にはならないし。願い事云々は置いておくにしても、俺自身、もう誰も殺したくはない」

「問題は手段だがな。正直なところ火魅子本人が生きていてもどうにか出来るものなのかどうか」
「おい」
「ようはお前が揺るがなければいいだけの話だ。蛇渇に負けないように」
「簡単に言うが、ものすんごいしんどいんだぞ? 実のところ熟睡だって全く出来ないんだぞ? ぶっちゃけ寝てないしな」
「お前も少しは考えろ」
「んなこと言ったって、余計な事考える余裕もねーんだよこっちは」

 九峪は精神的にかなり参っている。いや、いまだ正気を保っていられるのが不思議なほどだ。深川はふと、その事実事態が何か現状を打開する鍵になるのではないかと気が付く。

 普通の人間。例えば自分ならば蛇渇の精神などどうあがいても叶わないだろう。それに対抗できるのは何故なのか。

「うふふ、頑張っているようねぇ、少年」

 唐突に闇夜に響いた妖艶な声。声のした方を見れば明らかに堅気には見えない煌びやかな衣装に身を包んだ女。油断無く構えながら、九峪と深川は女と対峙した。






 女は細かく編み込まれた色鮮やかな布を頭に巻き、季節はずれに暑そうなこれまた色鮮やかな衣を幾重かに纏い、その端正な顔に満面の笑みを浮かべていた。
 夜だというのにその姿がはっきりと見えるのは、女の手のひらの上で何かが発光しているから。よく見ればそれは札で、九峪には理解できなくとも深川にはそれが方術士が使う符であると分かった。

「仙人か? なぜこんなところに」
 身に纏う異質な気配から深川が正体を推測すると、女は笑みを浮かべたまま二人へと近づいてきた。

「なぜ、と問われれば救いに来たと返しましょう。うふふ、信用していないみたいね。でも本当よ。まずは自己紹介でもしましょうか。私は寝太郎。竜宮にて乙姫に仕える仙人よ」
 寝太郎。男のような名前に戸惑いながら、九峪は近づいてきた寝太郎が、この前自分がナンパしようとした相手だと言うことに思い至る。

「アンタ、あのときの」
「あら、覚えていてくれたのね。嬉しいわ。それより名前を教えてくれないかしら。私は名乗ったのだから」
 そう言われて名乗ろうとした九峪の口を深川が手で塞ぐ。その目は寝太郎に対する警戒心がありありと浮かんでいた。

「迂闊に名乗るな阿呆。術者相手に名を軽々に明かすなど自殺行為に等しい。それが敵になりうるなら自ら名乗るなど論外だ」
「……ふが、って、それじゃ名前分からないだろうが」
「そうねぇ。私は名乗ったわよ?」
「ふん。どう考えても本名ではあるまい。それに、私たちを捜してきたというなら、わざわざ名乗る必要も無いはずだ」
 言うまでもなく、既に知れているだろう。深川の言葉に寝太郎は苦笑を浮かべると頷いた。

「やれやれ、警戒されてしまっているみたいねぇ。心配しなくても私は基本的にあなた達の味方なのよ。九峪さんに深川ちゃん」
 寝太郎はからかうようにそう言って、二人の間合いに易々と入ってきた。

 その無防備な振る舞いに深川も九峪も毒気を抜かれてしまう。

「その剣を、なんとかしたいんでしょう?」
 見透かしたように確信を突いた寝太郎は、クスクスと笑いながら九峪の瞳を至近から覗き込む。顔と顔とがくっつきそうなあまりの近さに九峪は気圧されたが、押しのけるまでもなく寝太郎は直ぐに離れた。

「……なんとか、出来るのか?」
 懇願にも似た九峪の問い。寝太郎は値踏みするように九峪と深川を交互に見た後、指を一本立ててみせる。

「出来るしやり方を教えてあげてもいいけれど、条件が一つだけ。あなた達にそれが飲めるかしら?」
「なんだ? 条件って」
 どんな条件であれ、現状を打開できるならと聞いた九峪に、寝太郎の回答は残酷なものだった。

「どちらかが、必ず死ぬわ」

 それは宣告。

「それでもよければ、教えましょう」

 楽しむような寝太郎は、まるで死神のように二人には見えた。













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【2007/07/01 19:17】 | 小説 | コメント(1) | page top↑
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