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第三十回 火魅子伝SS戦略会議
 第三十回 火魅子伝SS戦略会議
 


 『深川』完結記念戦略会議~。わードンドンパフパフ~。

 と言うわけでまだ読んでいない人は五十四話、五十五話を読んでからこっちを読まれる事を推奨します。ネタバレが含まれている可能性がありますです。

 五十四話 五十五話





 そんなわけで深川完結でございます。最後までグダグダで正直なんじゃこりゃ、な感じの話になってしまった事が作者として大変力不足を感じるところではありますが、まぁ、完結したんだからよしとしよう。完結したってか、させたって感じではありますが(爆

「と、言う事で一年ぶりの会議ですねー作者さん」

 ……えーと、誰?

「やだなぁ、忘れないで下さいよ。貴方の心にアトミックボム、火魅子伝SSでのみ生存の許された最後のアイドル姫ちゃんですよぅ」

 そう言えば一年ぶりだなあこの会議。正確には一年以上だけど……。

「スルーですか? もっとこう感動するとかないわけですか? 寂しいとウサギは死ぬんですよ?」

 それは嘘だから気にするな。それとそもそもお前はウサギってギャフッ――

「妙な事いうお口はこれですかー? そう言う口はいらないので縫いつけてしまいましょうね。大丈夫痛くないですから」

 って痛いわボケッ! 出てきて早々作者に虐待ってなにものだお前は!

「だって、私の出番なかったじゃないですか」

 どうでもいいだろ。そもそもお前が挟まる隙間がどこにあったっちゅーねん。

「変なモノローグで歴史ねつ造されてはいましたけどね」

 そういう解釈してみたってだけだよ。間違いなく深川の姫御子とお前は別人だがな!

「それならそれで、その姫御子ちゃんもきちんと過去編書いてくれないとなー、とか思うんですけどねぇ」

 蛇渇が狂った過去編とかは考えてるんで書くかも知れないけどね。ってかそれいれると少しばかり話の格子がしっかりしていい感じだし。終わらせる前にそっち書けってはなしだけど今月は多分過労死寸前に追い込まれるほど忙しいので書いてる暇がないんだよ。

「で、さっさと終わらせたと」

 十三階段の方にその内置くわけですが、そのときは色々付け加えるかも分からん。

「なるほど。有言不実行になりそうな予感がしますけども」

 まぁ、その可能性もなきにしもあらず。

「他に裏情報は?」

 制作上の話だと途中五回ほど本気で捨てようかと思いました(爆

「うわぁ。ぶっちゃけた」

 今年に入ってからは本当に忙しくて書く暇なかったし、サイトも放置が続いてたしねぇ。

「それでも一応終わらせたんですから、偉い偉い」

 一年以上かかるとは一体誰が予想した事か。まー、単純に盛衰記は更新が早すぎたってだけなんだけども。期間もそうだけど五十話越えるとも思わなかったし。もう少し短くまとめられる才能が欲しい。売ってないかなぁ、どっかに。

「売ってたとしても、多分速攻で売り切れてると思いますよ」

 そりゃそうですね。

「で、他に話は?」

 今回の深川のエンディングですが、実のところノーマルエンドでトゥルーエンドではありません。

「はい?」

 バッドエンドはまぁ、別にいいとして、グッドエンドルートに入って後二十話ほど書くとトゥルーエンドになるんですが、非常に面倒なのでここで終わりです。

「……殴ってでも書かせてしまいましょうか」

 無理無理無理。これ以上長い作品などナンセンスだ! すでに作者は二度と読み返さない事を心に決めた闇歴史に記されているような作品だし。

「歴史に記されるの早いですねぇ」

 書いてる途中で確信してたからね。放り出すのもあれだから頑張ったけど。

「ん、で結局書く気はないんですね?」

 まぁね。蛇渇過去編は本編を補強するためにも書くつもりだけれども、トゥルーエンドはそっち書くと蛇足な感じもあるし。単純に深川が主人公でのエンディングか、九峪が主人公でのエンディングかの違いではあるけども。

「反響によっては書く?」

 気分次第。いいから別の書きたいような気もする。

「まぁ、では気まぐれに期待するとしましょう。私が登場するという」

 それはねーよ!

「酷っ!」

 そんな事よりこの場を借りて告知なぞを。

「なんです?」

 火魅子伝の二次小説を書いておられる清十郎さんが、この度十三階段へと投稿される事が決定されました。

「ほほぅ。初の投稿作品という事になるわけですね。本サイトは随分と更新してませんからまさにカンフル剤。これで自分の小説は更新しなくてもサイト運営してるっぽくなって怠け者の作者さんは大喜びですね!」

 そう言う事は大声で言わないように。まぁ、放置してるから否定の言葉もありませんが!

「では清十郎さんの作品、火魅子伝異伝、現在三十七話まで置いてありますので皆さん読んでくださいね~」

 さて、会議はこの辺で。追記の方にweb拍手とコメントのお礼をば。

「うぅ、それで次回の会議……は一年以内にあるんですよね?」

 知らん。

「そんな殺生な~!」













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【2007/09/02 20:26】 | 会議 | トラックバック(0) | コメント(2) | page top↑
深川55
 深川
 五十五話



 片野城での死闘の後、星華は正式に火魅子を襲名し耶麻台国健在を宣言した。負け戦の雰囲気が濃厚だった耶麻台国も、士気が回復した事で盛り返し、年内には火向の奪還も可能であろうと言われている。
 その主たる要因は星華の変化にあるだろう。蛇渇との死闘が終わった後の星華は、まるで別人になってしまったような有様だった。本人にしてみれば火魅子という地位に関して気負う事が無くなっただけと言っているが、それを信じるものは少ない。羽江や衣緒は、街を壊滅させるほどの大立ち回りをしたおかげで、日頃のストレスが一気に発散されたのだとまことしやかに話し合っていたりもする。
 実際には継承を続ける内に火魅子御霊の中に降り積もった様々な感情が薄れ、本来の星華に戻っただけではあるのだが。

「……で、亜衣は戻ってくるつもりはないのかしら?」
 星華の当面の気兼ねは耶麻臺国に下った亜衣の事だ。元々教育係として星華をしつけてきた、姉のような存在なだけに、その裏切りはやはり相当気にかかるらしい。
「ええ。多分姉様も戻るに戻れないというところなのだと思いますが」
 嘗ての星華を基準に亜衣が考えている以上、いくら今の星華がお咎めは無しだと言っても怖くて帰ってこられないに違いない。衣緒は姉の心境が手に取るように分かったが、元々何の手みやげも無しに戻ってくるような厚顔無恥な性格でもないので、これには少しばかり時間がかかるだろうと予想していた。

「それなら、当分耶麻臺国との間での折衝として働いて貰うしかありませんわね。ふぅ」
「それと藤那様ですが、早く火向への進軍命令を出せと相変わらず猛っておられます」
「藤那が? 全く手柄を立てて立場を逆転したいなんて、浅ましい権力欲をまだ持っているのかしら。困ったものだわ。戦況を見て仰って欲しいものですが」

「いっそのこと向かわせてしまっては如何ですか?」
「駄目です。いたずらに兵を損じる事になります。期を見て一大攻勢をしかけますからくれぐれも勝手な行動を取らないよう、全軍に周知するように」
「わかりました」
 他にも細々とした報告を上げる衣緒の声を聞きながら、星華はぼんやりとあの戦いのなかで何時の間にかいなくなってしまった人の事を考える。今では何処に行ってしまったのかわからないが、できればもう一度会いたいと思っていた。今ならば、なぜ日魅子が彼女を重用しようとしたのか、その気持ちも分かる。

 とはいえ、表向き彼女はこの国にとっての恩人にして最大の裏切り者。遣いどころが今となっては難しすぎる。

「必要とあれば呼ばれずとも来てくれる事でしょうけど。彼女も随分とお節介のようですから」
 遠い目をして呟いた星華に、衣緒はやっぱり駄目なんじゃないかこの人、と妙な不安を感じるのだった。






「くしゅん」
 一つくしゃみをして首を傾げる志野。
「あら風邪? 寒くなってきたものね。はい、高麗人参を煎じたものよ。これを飲めば風邪なんて直ぐ治ってしまうわ」
「どうも、兔華乃さん」
 志野は今一座の面々と共に兔華乃の住まう阿祖山中で療養していた。志野自身は結局九峪に助けられてそれほど大した怪我では無かったのだが、珠洲の方は紛れもない重傷で、完治までは当分かかりそうだった。今も直ぐ後ろで伏せっている。

「それにしても、今回の事はなんだかくたびれてしまったわね」
「……ええ」
「結局何もかもがうやむやになってしまって、皆が勝手にアレコレと動き回ったおかげで明確な決着すら無かった。結果的に誰も得をしなかった。なし崩しに終わって残ったのは空しさだけ」
「それでも、終わってくれました」
「そう、何かが終わったのはどうやら確かなようだけど」
 そう言って兔華乃は高麗人参を煎じた茶をずずっと啜り、幸せそうに吐息を漏らす。

「貴方はこれからどうするつもり?」
「何かが終わっても、私がしてしまった事の罪は消えません。この九洲が平和になるまで、何かしらやっていくのだと思います」
「そう。ご苦労な事だわ」
「兔華乃さん達は?」

「私たちこそ変わらないわ。ここで高麗人参を育てて、時々暇つぶしに里に様子を見に行くくらいなものよ」
「そうですか」
「……いらない忠告だと思うけど、一つだけ言わせて貰うわね」
「何でしょう」
「貴方が罪のためだと過去に囚われてこれからも動くなら、また間違いを繰り返すわよ。もう少し、貴方は今を見た方がいいと思うわ」

「……考えておきます」
「考えておいて。まぁ、人間そんなに直ぐ変われるものでもないけれど」
「そうですね。困ったものです」
「本当に、困ったものだわ」

 小さな庵にお茶を啜る音だけが響く。これからどう動くにせよ、今この場はなんとも平和な空気に満たされていた。






「清瑞ちゃ~ん、面会だよ」
 耶麻臺国の座敷牢。ごたごたが続いたおかげで宙ぶらりんな状態が続いていた清瑞の身柄に、この日ようやく変化が現れた。面会人を連れてきた虎桃。清瑞はその面会人を見て目を見開く。

「い、伊雅様!? なぜこんなところに」
「清瑞。無事であったか」
 伊雅はあまりのうれしさに泣きたくなるのを何とか堪え、鼻を啜りながら格子の前に座り込んだ。
「不憫を掛けたな。本来であれば直ぐにでも救出に向かうところだったのだが、耶麻台国も大変な状況だったのだ。すまぬ」
「頭を上げて下さい。一回の乱破に伊雅様ともあろう人が頭を下げるなど」
「言うな。お前はもう乱破ではない」
「は? いえ、しかし私は……」
「お前は私の娘。もはやそういう事なのだ」
「伊雅様?」

 困惑する清瑞。そこに状況を補足するために虎桃が軽い感じで説明を加える。

「耶麻台国の方はいつまで経っても清瑞ちゃんの救出に乗り出す気配がない。そこで天目様が伊雅様に声をかけたのよ。耶麻臺国に来てくれるなら、清瑞ちゃんと伊雅様に相応の待遇をお約束します~ってね。天目様としても耶麻台国王族としての正当な血筋がいてくれれば、九洲の支配もしやすくなるし、大義名分も立つでしょ? まぁ、画策したのは別の人なんだけどさぁ」
「……虎桃、いきなり全部言っても理解できないだろう」
 そう、口を挟んで来たのは亜衣。

「あ、亜衣さん。あなた……」
「よく考えろよ清瑞。最早火魅子独りに頼った国の維持など不可能なのだ。そもそも、次代の火魅子は存在しえない。星華様が良くても次は続かない。盤石な体制を望むならば、現政権の打倒こそが九洲にとっての最善。だからこそ、あらかじめ言っておくが伊雅様もお前も擁立するわけではない。あくまで協力願うだけだ」
「……しかしそれは裏切りだ」
「結果的に生まれてくる未来の九洲の子等に対する裏切りになるのはどちらか。火魅子に依存したままの体制で、星華様が亡くなった瞬間崩壊すると分かり切った国を残すのが正道か? 私はそうは思わない」

「それでも、貴方は星華様の後見人でしょう?」
「……いずれ、星華様は直接私から話をする。その上で対立するなら――」
 亜衣は誤魔化すように笑って踵を返した。
「耶麻台国が火向奪還に動くまでは待つ。それまでに答えは出しておけ」
 清瑞はその後ろ姿を見つめ、難しい立ち位置に立たされた自分が、どう動くべきなのか考えるのだった。






 九洲の動乱の気配は当分止みそうにもなく、人々の困窮は続く。船上から遠く離れていくその場所を見つめる深川。最低な事と最高な事があった地だが、おそらくはもう二度と踏み入れる事はないだろう。戻っても余計な混乱を招くだけだろうし、深川の居場所など何処にもない。いや、そもそも今の深川に居場所など無いが。
「大陸に渡ってアテはあるのか?」
「大丈夫、かどうかは分からないけど、まぁなんとかなるでしょ。大丈夫よ私この歳まで独りで良く行ってたし。このメンツなら万に一つも無いでしょうよ」

 背後で聞こえる声に、振り返る。そこには何の酔狂か、深川に着いてきた二人の女がいた。

「深川~。あまり体冷やすと体に悪いよ。もう貴方一人だけの体じゃないんだから」
 そう言って茶化すのは忌瀬。
「そうだぞ。あらゆる願いより優先したものだろう」
 伊万里が付け加える。

 深川は小さくため息を吐くと、外套で体を覆って船の縁に腰掛けた。

 深川は結局、天界の扉を開かなかった。九峪との愛の結晶を犠牲にする事が躊躇われたから。自分の人生を翻弄し続けたその元凶に到達することを恐れた。理由はいくつかあっただろうが、本当のところは本人以外には謎だ。ただ、事実として深川は生きる事を選んだのだ。

『それは貴方に預けておくわ。どうせ他の人に使えるものでも無し。預かろうにも私じゃ預かれないしね。一時の気の迷いという事もあるかも知れないから、落ち着いて考えてから決めるのもいいんじゃないかしらん?』
 寝太郎はそんな事を言っていた。結局寝太郎の目的はキョウと蛇渇の消滅だったらしく、他の事に興味は無いと言わんばかりだった。

 そんなわけで、深川は今天魔鏡と炎の御剣を持っている。伊万里はそのお目付に付いてきて、忌瀬は相変わらず気まぐれで。

「でも、九峪も損な役回りだったわよね。あんた見たいな外道を改心させるのに命掛けたんだから。物好きって言うか、なんていうか」
「私はうらやましい生き方だと思うが。何か一つだけでも身命を賭して成し遂げる事が出来たなら、存外幸せだったんじゃないかと思う」
「私にはその感覚分からないわ」

 好き勝手な事を言っていると、深川は思った。別に腹は立たなかったが九峪の本心はそんなんじゃないと、教えてやろうかと思いやめる。そんなことは自分だけが分かっていればいい事で、自分以外に理解して欲しい事でもないのだと。

 ――あいつは別に自分の境遇を嘆いちゃいないさ。不満だったろうし、やりきれなかっただろうが、それでもそんな事で絶望できるほど、救いのある人間じゃなかったんだから。

 だから、もし死んだ後でも口がきければ必ずこういっただろう。

”あー、ったく死んじまったよ。ってか有り得ねーだろ。ここで死ぬとか。空気読めよ星華。せっかくのハッピーエンド台無しにしやがって。でもまあ、死んだのは仕方がないしなぁ。おい深川。だから、しょうがないから後はお前が頑張れよ。俺はいなくなっちまったけど、でも、俺の味方を公言するってんなら、俺の味方でいてくれるって言うなら、分かるだろ? うん、じゃ、そう言うことだ”

 多分、そんなものだ。あの楽観主義は死んだくらいで治るものか。そんな九峪に惚れて、共に生きると願ったなら、悔しいが後を追って死ぬ事だって許されやしない。自分の命を賭けて生き返らせるなど論外。

 ――まぁ、いいさ。

 九峪は願いを叶えてくれたのだから。
 下腹をさすりながら、深川は思う。

 ――会いに行くが、それは暫く後の事だ。それまで、先に逝った日魅子と懇ろしていろ。

 深川は幸せそうにほほえんで、それを見た忌瀬と伊万里もつられてほほえむ。



 数年の後、九洲はとある国家の元に再統一される。

 しかし、それはこの物語とは関係のない話。

 後には、母と子の記する必要がないほど幸せで平和な、なんでもないただの日常だけが続いていく――














【2007/09/02 20:24】 | 小説 | トラックバック(0) | コメント(1) | page top↑
深川54
 深川
 五十四話



「九峪、今更だが、言っておきたい事がある」
 星華を追って走る九峪の背中で、深川は唐突に口を開いた。
「なんだ?」
「お前の中から蛇渇をとりさることが出来たとして、そのときお前が炎の御剣の加護をも失っているなら、私とお前はただの火魅子殺しの罪人でしかない」
「……まぁ、そうだな」
 形はどうあれ、火魅子を殺してしまった事実は消えはしない。

「直ぐに殺される事が無かったとしても、行き着くところは多分同じだぞ」
 深川も分かっている。それでもなお、今の九峪には時間が無く、手段など選んでいられない事を。
 最善を求めるならば、同時に最悪に落ちる事を許容しなければならない。どこにも救いのない終わりを迎える事を、認めなければならない。奇跡を求める代償は、大抵破滅でしかないんだから。

「なぁ深川」
「なんだ?」
「結局、お前ははじめ何を願っていたんだ? 剣と鏡で叶えたい願いがあったんだろ」
 九峪は答えるべき言葉がないのか、答える事で終わってしまいそうな何かを嫌ったのか、関係のない問いを口にしていた。

「……ふん、例えお前にだろうが言うつもりはない」
「なんだよ、気になるな」
 おどけた調子の九峪に、深川は重苦しい沈黙を返す。九峪も別にそれ以上聞こうとは思わなかった。

 別に聞かなくとも、今の深川の願いならはっきりと聞いているのだから。

『私だけは、お前の味方だ』

 そう言いきってくれた、ただそれだけで良かった。






 キョウが何事かぶつぶつと呟いた。
 その瞬間九峪の体が背後にはじき飛ばされ、九峪がいた場所には蛇渇が残っていた。ただ、蛇渇だけが残っていた。
 はじき飛ばされた九峪は、後方に控えていた深川にぶつかって、深川を押しのけるような形になって、それが結局深川を庇う形になっていた。
「あっ……」

 胸に灼熱が走った。見れば細身の剣が突き刺さっていて、数瞬遅れてそれが志野の剣である事を判別する。しかし、それを突き刺したのは本人ではなく、煌びやかな衣装に身を包んだ星華だった。
「ふん」
 不満そうに鼻を鳴らす星華。狙った獲物を外した事への不満。だが、これはこれでいいかと、そんな事を考えている顔だった。

「九峪!」
 名を叫び、駆け寄ろうとした深川を星華がひと睨みで黙らせる。彼我の戦力差は歴然。深川では例えどんな策を弄しても今の星華に勝ち目はない。

「ごふっ、が」
 血を吐き出し、崩れ去る九峪。ずるりと剣が引き抜かれ、滴る血が深川の目に焼き付く。

「駄目じゃないか星華。九峪は剣の主。儀式が終わるまで生きていて貰わないと扉が開けないよ」
 キョウが少しだけ困ったようにそう言うと、星華は思い出したようにキョウへと視線を移した。

「私は一体どうしていたのかしら。困ったものだわ本当に。こんな邪霊の甘言に唆されるなんて」
「じゃ、邪霊って酷いなぁ」
「天界の扉なんて私には不要だって言うのに、魔が差してしまうところだったわね。危ない危ない。でも、別に火魅子のである私にはそんなもの必要ないのよ。それはあなたもさっき言っていたとおり。誰かに頼る必要なんて今の私には無いんだから」
「……じゃあ、どうするのかな?」
「あなたをたたき割り、その忌々しい剣をへし折って、この騒動の幕引きとしましょう」

 静かにそう言って、一歩天魔鏡に近づいた。

「そうは行かぬ」
 立ちふさがったのは蛇渇。本来的にキョウと同質の目的を持つ蛇渇もまた、儀式を邪魔するものは敵。
「九峪さんと言う盾が無くなった今、ただ少し強いだけの左道士風情に私が止められるとでも?」
 星華は楽しげに笑う。

「カカカカカ、劣化した火魅子相手ならば、この老骨でも少しは相手になるであろうよ」
「思い上がりも甚だしい」
「思いこみは愚かしい」
「いいでしょう。まず貴方から消え去りなさい、炎の御剣!」
「お主を殺して今こそ我主従の頸木から解き放たれん!」
 こうして最後の戦いは始まった。






 蛇渇と火魅子の激戦は片野城の八割を壊滅させたが、その災厄の渦中にあって尚、その空間は静かだった。
 どくどくと流れ出す血を手で押さえながら、もう目を開ける事もないだろう愛しい人を抱いている深川。最後の最後で守られてしまった。今この場で逃げ出せば、きっと逃げ切る事だって出来る。もう深川には誰も用は無いのだから、追っ手が付く事もないだろう。
 九峪は深川を解放する機会を確かにくれた。それが偶然であれ、深川にとって最悪の形であれ。

「お前が死んでしまっては、何も意味はないだろうに」
 心臓の鼓動はとうに聞こえない。血が流れ出て土気色になってしまった九峪は、それでもまだ暖かみを残している。なんだか、どうにかすればまた目を覚ましてくれそうな。死に顔もただの寝顔に見えてしまう。

「困ったなぁ、これじゃ儀式が出来ないよ」
 避難するように深川と九峪の傍らに飛んできたキョウ。深川はその鏡の精を忌々しげに見つめた。全ての元凶。出来るならばこの場で殺してやりたい。粉々にたたき割ってしまいたい。

「まったく計画が滅茶苦茶。本当なら志野か伊万里のどちかを生贄に願いを叶えるはずだったのにさ」
「何?」
「おかしいと思った事無いかな? そんな事考えもしなかった? 人間から見れば殆ど不老長寿の天空人である姫御子は、一体何処にいってしまったんだろうって。寿命で言えばまだまだ生きていなければならないのに」
 キョウはため息を吐く。

「儀式をすれば術者は命を落とす。鏡の所有者も剣の所有者もね。だから最低限生きていてくれないと困るんだけど」
「それで我が良くば星華を生贄に厄介払いまで済ませてしまおうと思ったワケか」
「オイラにすればどっちでも良かったんだけどね。ようは儀式さえ出来てしまえば。蛇渇はちょっと壊れてるけど、基本的には一緒だよ」
「おかげでコイツはさんざんな目に遭ってきた」
「同情はしないよ。そう言う巡り合わせだったって言うだけ。オイラはオイラでオイラのやるべき事をやってきただけだし、蛇渇もそう。恨み辛みはお門違いだし逆恨みだよ。国家千年の計で動いているオイラには個人の悲劇なんて心底無意味だもの」
「だが、それもこれまでだな」
「うん、どうやらそのようだね。なかなか上手く行かないものだね」
 キョウは屈託無く笑って、深川は鏡に向かって拳を振り上げた。

「ちょっとお待ちなさい」
 そこに、水を差すように現れたのは寝太郎。
「君は?」
「私は寝太郎。竜宮の乙姫の遣いよ、キョウちゃん」
「乙姫の!」
 今まで飄々としていたキョウの表情が一変する。

「約束の千年。果たされた以上はこれでもう終わり。次の千年なんてもう無いのよ」
「そうはいくもんか! オイラ達はやらなくちゃならないんだ!」
「姫御子も、本当にどうしようも無いものを作ってしまったものね。それともこれが千年という時間のなせる業かしら。まぁ、いいわそんな事は」

 寝太郎はそう言って深川の方を見る。死んでしまった九峪を見下ろし、ため息を一つ。

「あなた達の願いは一応叶ったのね。それが例え一瞬であれ、確かにあなた達が望んだ通りに。九峪さんは蛇渇から解放された。二人とも生きたまま」
「一瞬では意味がない」
「一年なら実感が得られた? 百年なら思い残す事もない? でも、そうそう全てが叶うほど現実は甘くないわ」
「そんな事など知るか」
「分かっていた事でしょう。だから、あなたもそれほど悲しんでいない」
 言われて深川は否定はしなかった。

 分かっていた結果。想定の範囲内。それも確かに事実だ。不意の出来事ではあったが、それでも二人とも生き残れる未来なんて、深川には想像も出来ていなかった。九峪にだっておそらくは。それでも、悲しんでいないわけがない。悲しまないわけがない。生涯で唯一心を許せると思った相手の死。心が裂けそうな、泣き叫びたい衝動はのど元まで来ている。

 それを抑えているのは、未だ希望などと言う曖昧なものを持ってしまっているせいだ。

「九峪さんを助けたい?」
「出来ると言うなら、なんだってしよう」
「でも、それはさすがに無理」
「……ならば、後は」
「それでも叶えたい願いがあるというならば、貴方が天界の扉を開けばいい」
「できるのか?」
「貴方なら、一人で扉は開けられるわ。鏡も剣も、今の貴方なら所持できる」
「なぜ?」
「元々天魔鏡の器として蛇渇は貴方に作らせた。蛇渇が蛇渇のやり方で願いを叶えるために、天魔鏡の精霊を殺すものとして」
「……」
「だから、そこのそれは自分が万に一つ殺される事を恐れ、星華に貴方を殺させようとした。なんとも浅はかで愚かしい事だけど」

 深川はキョウを睨み付ける。結局は、キョウがいなければ全て上手く行ったかも知れない。キョウがいなければ、少なくとも今のこの気持ちを味あう事はなかっただろう。

 そっと、天魔鏡に手を伸ばす深川。
「や、やや、やめてよ! オイラはまだ、願いを!」
 阻む精霊の抵抗など無地味。深川の手が天魔鏡に触れたと同時に鏡の中に吸い込まれ、それきり静かになった。

「後は剣を」
 寝太郎に言われ、九峪の亡骸から剣を取ろうとして、ふと手を止めた。

「なぜ、私が剣まで持つ事が出来る? 私は鏡の所持者だろう?」
「なぜだと思う?」
 問いかけるような寝太郎。深川はワケが分からなかった。仮に蛇渇が深川を剣の所持者として作れていたならば、やはりそこに九峪が巻き込まれる要因も無かったはずなのだ。

「貴方は独りじゃないわ」
 寝太郎の言葉に、深川は目を見開く。意味ありげに下腹の辺りに視線を落とした寝太郎。深川は、知らずそこを守るように手を置いた。

「そう、なのか?」
「蛇渇にさんざん体をいじくられた貴方が、まだ子供を産める体だったと言うのは驚きだけど」
「そう、か……」
 まだ、人としての形も成していないだろう、しかし確かに宿った新たな生命。

「どうする?」
 寝太郎の最後の問い。

「私は……」

 深川は最後の選択を迫られた。














【2007/09/02 20:23】 | 小説 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
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