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出雲盛衰記03
 出雲盛衰記
 三章



 山を下りる九峪と忌瀬。
 さっきから二人は全く口を利いていない。
 別に疲れているわけでもなく、喧嘩をしたというわけでもないし、ことさら急いでいるというわけでもないのに。

(九峪、どうする?)
(まいったなぁ)

 二人は曼荼羅華を採取して直ぐに山を下り始めたのだが、その頃からずっと誰かにつけられているのに気が付いていた。
 怪しまれるとマズイと思って、会話もせずに黙々と歩いていくのだが、一定の距離を保って仕掛けてくるでもなく、かといって離れるでもない。

(いい加減うざったいな)
(あれ、やる?)
(……やるか)

 二人は一瞬だけ視線を交わすと、そのまま暫く歩き続けた。



 尾行者は忌瀬と九峪の後をつけながら、不意に二人の気配が消えたのに気が付いた。

 がらがらがら

 崖が崩れるような音が聞こえる。
「まさか……」

 慌てて飛び出すと、二人の姿はなく、崖下に倒れているのが見える。
「―――ちっ」
 舌打ちをすると、崖の縁まで行き下を見下ろす。
 重なるように倒れて、血が飛び散っているのが見えた。
 おそらく頭から落ちたのだろうと、ため息をつきながら慎重に崖を下りる。
 崖と言っても断崖絶壁と言うほどではなく、気をつければ下れないこともない傾斜だ。

 ―――せっかく見つけたと思ったのに、これで死んでいたら踏んだり蹴ったりだな。

 尾行者は崖を下りきると、ふと、いつの間にか男の方の姿が見えない事に気が付く。
「まだ動けたのか?」
 首を傾げる。
 まあ、いいかと女の方へ近づくと、突然女が跳ね起き、妙な液体をかけられた。
「ぐっ、罠か!……っあ、ああ?」
 視界が歪む。
 一瞬で意識が混濁し、事態を理解する間もなく尾行者は眠りに落ちた。



「上手くいったね、九峪」
 九峪はいざというときのために背後に隠れていたらしく、姿を見せるとニッコリと笑った。
「割と単純な奴だったな。ってゆーか、女か?」
 九峪は首を傾げる。
 尾行者は悪鬼の如く赤い髪をした大柄な女だった。
 手には二メートルくらいはありそうな槍を持っていて、二の腕なんかは九峪より太い。
「ふ~む。取り敢えず縛り上げててと」
 九峪はいそいそと荷物の中からロープを出して縛り上げる。

「……九峪、その縛り方はどうかと思うよ、私は」
 九峪は首を傾げる。
「なんだよ。タダの亀甲縛りでガタガタ言うなよ。こんな怪力っぽい奴だったら、下手な結び方したら逃げられるかも知れないだろ?俺は暴れたこの女を止める自信はないぞ」
「……はいはい。じゃあそう言うことにしておきましょう」
「なんだよ、羨ましいのか?」
「な!なんで縛られてるのが羨ましくなんなきゃならないのよ!!」
「そっか、思い過ごしならいいんだが……」
「……ちょっとは、興味あるかな……」

 二人が変態でしかない会話をしているうちに女は目を覚ました。
 目覚めて直ぐ自分の状況に気が付くと、まんまと罠にはまった恥辱と怒りに赤くなる。
「くそ!貴様らは何者だ」
「完全にこっちのセリフなんだけど~。あんた何者よ。こんな阿祖の山深いところに……。狗根国の乱破じゃないでしょうね」
 忌瀬はそう言ってみたものの、この女が乱破に向いていないことはよく分かった。なにせ気配の消し方はなってないし、あからさまな罠も見抜けない。乱破だとしたらかなり間抜けだと言える。

「……そ、それは」
「もしかして迷子?」
 九峪が思いついたことを言ってみる。
「な、なぜ分かった!」
 女は思わず叫んでいた。そして直ぐに落ち込む。
「……あ、あう」
 どうやら口が滑ってしまったようだ。
「なんだ、迷子か」
 九峪はため息をついて縄を解いてやる。
「それならそうと言ってくれれば街まで案内してやったのに」
「……そんなこと、言えるか!」
 女はそう怒鳴って、直ぐにしぼんでしまう。

「魔人とやり合っていたのは見てたんだろ?それで警戒心を抱かせちまったかな?ま、見たところ耶麻台国ゆかりのものみたいだし、ついてくるなら一緒にどうだ?」
「な、なぜ私が耶麻台国ゆかりのものだと!」
 九峪の言葉に、女はまた思わず叫ぶ。
「ぷ……あははははは、駄目だよあんた。こんな簡単なカマかけに引っかかっちゃ……」
 腹を抱えて笑う九峪とは裏腹に、忌瀬は気の毒そうに女を見ている。
 どうやら忌瀬もこの女がウソをつけるような人間ではないと分かったようだ。

 忌瀬は笑い転げている九峪に蹴りを入れて追い払うと女の方を見た。
「で、名前くらい聞かせてよ。私は忌瀬。一応復興軍付けの薬師だよ」
「え?復興軍の?私は音羽。父が元耶麻台国の将軍だったの。復興軍に加わろうと里を出たのはいいんだけど……」
「何を間違ったのか、こんな場所に?凄い方向音痴ね」
「面目ない」
 しょげかえる音羽。
「ま、ここで私たちに会えたのも何かの縁でしょう」
「あははは、方向音痴って、げらげらげら」
 九峪はまだ笑っている。
 音羽のこめかみに青筋が立つ。
「いい加減、むかつくんだが?」
「いいよ、殴っちゃって♪」
「お言葉に甘えて」
 その後九峪は音羽に思い切り殴り飛ばされ、十メートルほど宙を舞うことになったという。



 始めは忌瀬一人だったのに、いつの間にか三人に。
 忌瀬は二人を復興軍にどう紹介したものかと頭を捻っていた。
 音羽は知り合いも入っているはずだからと言うので問題は無いだろう。九峪も天目が無事に復興軍に入っていれば―――何事もなくすんなり収まっているとは到底思えなかったが―――多分大丈夫なのだろうけど。
 何か訳の分からない不安が付きまとっていた。

「あ、今日って満月だ」
 思い至ったように九峪が呟く。
 忌瀬も思わずハッとなった。
 音羽だけ何の事か分からず困惑する。
「だからどうしたの?夜通し歩くというなら別に構わないけど」
「そう言う問題じゃない……。う~ん、じゃ、忌瀬そう言うことで」
「仕方ないわね」
「なんだと言うんだ?」
 首を傾げる音羽。

「九峪は満月になると必ず大変な事に巻き込まれるのよ。近くにいると命がいくつあっても足りないわ」
「なに、それ?」
「分からないと思うけど、分からなくていいからそう言うことにしておいて頂戴。分かったときにもう遅いから」
「じゃ、音羽も忌瀬も元気でな」
「九峪もね」

 九峪は手を振りながら一人行ってしまった。
「いいのか?」
「何が?」
「好きなんじゃないの?」
 音羽の言葉に忌瀬は困ったように顔をしかめた。
「好きだから、一緒に行けないって事よ。あの人のせいで私が死んだりしたら、傷ついちゃうでしょ」
「……そんなものかな?私なら、片時も離れたくないと思うだろうけど」
「所詮子持ちの男だもん」
「……そうなの?」
「あれ?言ってなかった?」
「子持ちと知ってて、その、あの……」
「な~に、見てたの?やらしいんだから音羽さんは」
「ちがっ!」

「ふふふ、いいから急ごう。もうすぐ日暮れだし、早く離れないと巻き込まれるよ」
「……分かった」
 笑みを浮かべる忌瀬と、憮然とする音羽。
 二人は足早に山を下りていった。







追記:
 出雲盛衰記を懲りずに書いてる人がいます、ここに。
 新キャラとして音羽が出てきましたが、何故か方向音痴というオプションがついてしまいました。ご都合主義だって?そんな言葉は知りませんよ……
 当面の計画はお姉様キャラのみで話を構成しようかと考えていますが、どこまで持つかは分かりません。羽江や珠洲の出番はおそらく無いでしょう。まあ、お姉様と言ったところでこの話の九峪は三十路なワケで全員もれなく年下ですが。
 どこまで書けるのか知らんのですが、もう少し続くかな。せめてもう一度天目に会うまでは。さて、それも何時の日になることか……

 では、今日はこの辺でヾ( ̄◇ ̄)ノ)) バイバイ
【2006/02/07 10:55】 | 小説 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
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