スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

【--/--/-- --:--】 | スポンサー広告 | page top↑
深川01
 深川
 一話



 ――そもそも、だ。そもそも俺は高校生だ。
 そう、疑う余地もなくただの高校生で、今日は幼なじみの日魅子と一緒に日魅子のじいさん(考古学者で教授)の発掘現場に見学に行ったはずだった。

 ――それがなぜ、こんな事になっているんだ?



「……」
 完全に沈黙している女。俺の頭部でうずく痛み。



 結論から言えば、どうやら俺の頭が女に当たって気絶させたらしい。って、結局此処どこだ?

 辺りを見回しても見慣れたものは一つもない。何処かの館、だろうか? 人気はなく辺りは静寂に包まれている。


「……変な格好だな、この女」
 取り敢えず他に見るものも無いので、気持ちよさそうに気絶している女を見る。歳は多分二十代半ばか後半かな? 髪は割と短めで七三。かなりの美人だ。うぅむ。悪戯しちゃおっかなぁ。

 むっふっふと笑いを零しながら青少年(?)らしく己の欲望に従って、女の胸をつついてみる。

 ぷに

 柔らかい感触が伝わってきて、俺は危うく感動に涙するところだった。

「く、くそぅ。こんな凶器が標準装備なんて、女は卑怯だ! かくなる上はお仕置きを……」
 既に思考がイッちゃってるがそれはこの際置いておこう。これはこの良くわからん状況に置かれた俺に対する、神が与えた唯一の慈悲なのかも知れないのだから。と言うかそう言うことにしておこう。うん。

「では、頂きます」
 そんなワケで俺、九峪雅比古は女体に現実逃避する事にしました。






 痛みと不快感。
 それが私に覚醒を促した。
 かすむ目を開けると、誰かが上にのしかかっているのが分かる。ボウッとした目でそれを見つめて、それから頭部に疼痛があることに気づく。どうやら寝ていた原因はこれのようだ。
 身体の各部が動作するかを確認。大丈夫、感覚はある。
 それはともかく、さっきから人の胸を夢中で揉みしだいてあまつさえ口に含んでる輩は何者だろうか。まぁ何だっていいさ。

 この深川様の身体を辱めるなど、万死に値する。
 取り敢えず殺すか。どうやら追っ手というわけでもないらしいし。


「おい」
 声をかけると男は弾かれたように視線を私に向けた。呆然とした顔が徐々に青ざめ、引きつった笑みが浮かぶ。
 顔だけ見ればなかなか可愛い少年と言った所だが、如何にも助平そうでその事しか頭にない男に見える。

「……あ、あの~、え~と、そのこれは……」
 私の上から飛び退くと、同時に言い訳を考えようと必至で頭を巡らせる男。
 私は胸をしまいながら立ち上がると、すぐさま殺そうとしていた気持ちを抑えた。

「……お前、何者だ?」
 男は見慣れぬ格好をしていた。見たこともない形。見たこともない染め色。芸人か何かかとも思ったが、それにしても場所が場所だ。こんな所、そもそも私以外がいることがおかしい。
 男は質問にわたわたと手を振る。

「えっと、別に特にやらしいことをしようと思ったとかそんなことは無くて、ただ倒れてるからどこか怪我してるのかなぁって調べてただけで、胸がぷにぽょ~んっだったとかそんなことは」
「何者だと聞いている」
 らちが明かないので腰に差していた短刀を引き抜き突き付けた。

「のおおおっ! お、落ち着け話せば分かる! 頼むから話を」
 話が分かっていないのはどちらだと思ったが、少なくともその態度から刺客である可能性は消えた。こんな腰抜けではそもそも人を殺すことなど出来ないだろう。
「いいから名を名乗れ。私の質問だけに答えろ」
 殺気を籠めて言ってやると男はカクカクとぎこちなく頷いた。

「く、九峪……」
 掠れる声で呟く男。
「九峪か。で、貴様はこんな所で何をしている」
「な、何……って。いや、それは俺が聞きたい。なんで俺はここにいるんだ?」
 それが本気で言っている言葉だと言うことは、人の嘘を見抜くことに長けている私にはよく分かった。

「……理由は無いと」
「っていうか、ここ何処ですか?」
 九峪は泣きそうになっていた。これが女であれば嗜虐心に火がつくところだが、男が相手ではどうにも気が乗らない。
「ふん。ここは征西都督府だ。最も今は誰も寄りつかないただの廃墟だがな」
「……せいせい、何?」
 聞き覚えのない単語だったのか、九峪はますます不安そうな顔になる。

「見たところ九洲の者でも無いようだし、都督の事など知らんか」
「一応九州ではあるんだ……。でも、聞き覚えないなぁ。あの、福岡って近いですか?」
「……何処だと?」
 聞き覚えのない単語に聞き返すと、九峪は小さく福岡と繰り返した。

「……聞いたこともない。私の知る限り九洲にそんな地名の場所は無かったはずだが」
「え、無いってそんな馬鹿な! お姉さん俺のこと担いでるんでしょ?!」
「まぁ、十五年前にはもしかしたらあったのかもな。耶麻台国滅亡の折りに消えた地名かもしれんが」
「……え」

 九峪は呆然と私の事を見つめていた。

「やま……たいこくって……」
「何をぼけたことを。耶麻台国と言えば十五年前狗根国に滅ぼされた九洲の大国だろう。倭国語がそれだけ堪能ならば、半島人や大陸人でも知らぬ事でもあるまい」
「……まさか、そんな、馬鹿な事が……」
 戦慄いて床にツメを立てている九峪。

「そんな馬鹿な事があってたまるかよっ!!」
 そして怒鳴った。






 もう信じられねぇ。どういう事だ? 何が起こったんだ? 邪馬台国? ばかばかしいなぁもう。それっていつの時代だよ。何? タイムスリップ? 冗談じゃないよ。時を駆けるのは少女だけにしてくれ……、マジで。

 ともかく俺の事をきっちり無視して家捜ししている女の事は置いておこう。もしかしたら本当に担がれてるだけかもしれないし。あ、そうか。寝てる間に悪戯されたからその腹いせか。そうか、それなら仕方がない。って、俺マジで信じて叫んだりしたのか? うっわ、滅茶苦茶恥ずかしい。誰か俺が入る為の穴を用意してくれ。至急。

「……あのぅ」
 おずおずと声をかける。何というか、この女もの凄く怖い。いきなり刃物出すし。絶対キ印の人だ。なんで俺はこんなのを神の恵みと勘違いしたんだろう。
「なんだ? 戯言なら殺すぞ」
「はぅ! いえ、その、よろしければお名前をと思ったんですが……」
 いきなり殺すとか……。しかもマジでやられそうでチビリそうです。

「深川だ」
 女は割とあっけなく答えてくれた。深川か。そうか。でも名字しか教えてくれないと言うことはやっぱり怒ってるんだなぁ。まぁ、当然か。そう言えば俺も名字しか名乗ってないしな。本名割れると面倒そうだし、このままにしておこうっと。

「あの、怒ってらっしゃいますか?」
 黙って逃げればよさそうなものだけど、一応ここでさっきのことについてきちんと釈明――事実だけど――しておかなければ後でお巡りさんが家に押しかけることになりかねない。未遂で終わったんだから、どうにか温情をいただかなくては。

「怒る? ああ、さっきのことか……」
 深川はとても凶悪で残忍な笑みを浮かべて俺を睨んできた。こ、怖ぇ~っ!

「そう言えば礼をするのを忘れていたな……」
「れ、礼って……」
 お礼参りとかの礼だろうか。そりゃそうだろうなぁ。
「この深川様に手を出したんだ。覚悟はあるんだろうな」
 ククククと怪しく笑う深川様は手加減抜きで悪い人。ああ、誰か助けて……

「あの、出来ればお手柔らかに……」
「……ちっ。もうここも嗅ぎ付けられたか」
 脅える俺から突然顔を背けると、苦り切った表情で深川は呟いた。

「あの……?」
「運が良かったな小僧。お前も死にたくなければ逃げることだ」
 そう言って走り去った。

「な、なんなんだよぅ。う~」
 半泣きになりながらトボトボと深川の後を追う。この場所がどこだか知らないが、確かにいつまでもいたくはない。さっさと帰らないと。っていうか、俺どうやってここ来たのか結局分からないし。



 ――え?


 ほこりっぽい部屋から出た俺は愕然とした。

 そこには、夏の日差しを照り返す、凪いだ湖面が一面に広がっていた。













追記:
 え~、夏休み気まぐれ企画。深川様で涼もう第一弾! けど第二弾は冬休みくらいになるかも知れないところがこの企画の恐ろしいところです。いいから幻聴記書けとか新説書けとか言わんといて下さい。ただ今週編年紀出せそうに無かった穴埋めなんですから。続くかどうかなんて知りませんが、深川をヒロインに再構成やるなら始めはこんな感じかなぁと。まぁ、でも深川で再構成って、それは既に別の作品だろうと言う気もしますが……それもいつもの事ですねそうですね。
 ちなみにまだ続き書いてないから要望出しても無駄無駄無駄ぁーっ!!


 さて、ではお久しぶりにピンでweb拍手のお返事を。

 5日。一件です。

12:35 気まぐれがおきること祈ってます、なむなむ
 と頂きました。
 気まぐれが変な方に作用してこのような結果になりました。外伝はいつになるか。盆休みに書くかも知れないし書かないかも知れないし。今書きたいものがいっぱいあってちょっと困ってます。う~、どうしよ。
 コメントありがとうございました。

 7日。一件です。

23:31 飲みすぎやいっき飲みは危ないですので気をつけて
 と頂きました。
 お気遣いありがとうございます。実際そんなに飲んでませんでしたのでご安心を。酒はかなり弱いので一気飲みやったら急性アル中で救急車で運ばれると思います。なのでやりません。尿道にカテーテル突っ込まれるとか聞くと恐ろしくてたまりません。皆さんも飲み過ぎには気を付けましょう。
 コメントありがとうございました。

 他にも叩いてくれた皆さんありがとうございました。


 では本日はこの辺で。ヾ( ̄◇ ̄)ノ)) バイバイ。
【2006/08/09 17:19】 | 小説 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
<<深川02 | ホーム | 第二十八回 火魅子伝SS戦略会議>>
コメント
コメントの投稿












管理者にだけ表示を許可する

トラックバック
トラックバックURL
http://sophist00.blog48.fc2.com/tb.php/114-0d2b009b
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
| ホーム |
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。