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深川02
 深川
 二話



 目の前に飛び込んできたのは湖。よく見てみると建物全体が湖の上に浮かんでいる。いや、浮いてるわけじゃないか。揺れてる感じはしないから、一応支柱が湖の底までのびてるんだろう。もしくは島なのか。まぁ、どっちでもいい。

 ここ、何処だよ……。

 どこかのテーマパークか観光施設だろうか? でもそんなものあったかなぁ。
 首を捻るが答えは出てきそうにない。ともかくここを出なくてはならない。

「しっかし参ったなぁ。あんまり遠くだと金がないんだよなぁ」
 困り果ててため息を吐く。ポケットを漁るが何もない。財布は落としたのだろうか。懐が寒いと心まで寒くなるから不思議だ。
 足取りも重く、俺はとぼとぼと出口を探して歩き始め――

「九峪!」
 叫び声と同時に襟首を強引に捕まれ身体を振り回された。
 状況はよく分からない。
 それは相変わらずだが、ともかく目の前に何か怨念が籠もってそうな黒い靄が、とんでもないスピードで迫ってきていた。






 ――――――


 静寂。そして息を飲む気配。
 それは私のものか、それとも私を殺そうとしている刺客のものか。
 今目の前で起きた現象を理解出来ず、思考が停止している。

 追っ手の左道士が放った術を回避するため、私はたまたまその場にいた九峪を盾にした。左道士にしろ方術士にしろ、術が発動してしまえばかわすか何かを盾にするしかない。そして並の人間には一度発動した術をかわすのは不可能だ。

 人間一人を盾に。それでも完全に防げるかは甚だ怪しい。だから、私は身構えていた。

「――び、ビックリしたぁ」
 なのに、なぜこいつは生きている。
 私の目は確かに捕らえていた。九峪に術が直撃するのを。だが、その術は九峪に接触すると同時に、まるで見えない壁にでもぶつかったかのように四散したのだ。
 九峪は傷一つ無い。

 あり得ない。そう、絶対に――

「ちっ」
 ともかくここで留まっているのは如何にも不合理だ。
 刺客より一瞬早く我に返った私は、素早く言霊を紡ぐ。

「――死の澱に満たされし混沌の坩堝、屍の檻に満ちし奈落の回廊、虚空で交わり伽藍に溢れよ」
 慌てて刺客も術を紡ごうとするが、出遅れは致命的だ。

「死屍辺獄」

 空間に亀裂が入り、溢れ出した魔界の瘴気が刺客の左道士達を一瞬で包み、見えざる手に全身の肉を貪られ、喰い捨てられる。
 油断無く周囲の気配を探るが、他にはいないようだ。

 しかし――、と九峪を見る。
 九峪は青い顔で戦慄いていたかと思えば、乱雑に食い散らかされた刺客の死体を見て、盛大に吐き始めた。






 ――おえっぷ。気持ち悪っ。
 胃の中のもの全て吐き出して、それでもなおまだ気持ち悪い。頭がくらくらする。
 これは現実か? なんだよさっきの。魔法? 嘘だろもう。しかも人殺してるし。ついていけねぇよ。

「おい」
 人殺しの姉さんに声をかけられて、嫌々ながらも顔を上げる。うわ、睨んでる。
 
「貴様は何者だ?」
「……アンタこそ、何者だよ」
 人を殺して眉一つ動かさない。良心の呵責を感じている様子もない。
 さっき刺客とか言ってた気もするから、正当防衛なのかも知れないが、あれだけの惨劇を作り出しておいて、無反応は怖すぎる。

「左道が途中で霧散するなどあり得ない。それともお前は私などお呼びも付かない術の使い手だとでも言うのか?」
「わかんねーよ。俺だって何がなんだか……」
 盛大に混乱する頭をどうにかこうにか整理しようと思うが、目の前にあんなもの――死体――があったんじゃ無理そうだ。そう言うわけでここは一時待避。

 立ち上がるとふらふらと出口を求めて――

「待て」
 嫌だ。嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ……。俺の事など気にしないでくれ。関わりたくないんだよこっちは。
「……お前は目的があってここにいるわけではないんだな」
 深川は言うと同時に俺の腕を掴んだ。
「……なんか用スか?」
「私と一緒に来い。何、悪いようにはしない」
 殺人鬼の笑みを浮かべて、そんなすてきな提案をされたら……

「断ってもいいんですか?」
 一応聞いてみる。
「死にたいならな」
「……」
 選択肢無いじゃん。神様、俺何か悪いことしましたか?



 それから俺たちは征西都督府と言う水上宮殿を出て、なぜか道無き山の中を歩いています。何かがおかしいと言うことには直ぐに気が付いた。
 と言うかさっきからずっとおかしいんだから別に今更気にすることでも無いかもしれないのだが。
 なんて言うか、そうだなぁ。周りがとても原始的なのだ。征西都督府なんて豪勢な建物ではあるが、細かいところを見れば作りは荒いし、あれだけの施設に繋がっている道にしても、舗装すらされていないし。というか砕石くらい巻いてても良さそうなものだがそれもない。あれじゃ雨の日はぬかるんで歩けたものじゃないだろう。

 そして周りは山山山。そこに躊躇無く踏み込む深川。ああ、わけが分からない。追われているらしいと言うのは分かった。分かりましたから。だからこそ俺を巻き込まないで。
「ふ、深川さん?」
 恐る恐る声をかけてみる。ともかく少しでも心を落ち着けるためには現状の確認と、相互理解が急務だ。機嫌が悪いとかでこの人俺の事殺しそうだし。

「なんだ?」
「あの? 追われてるんですか?」
 まずはそこを確認しよう。この際ここが三世紀でもいいや。ともかく死にたくないし、生き残ることに全力を尽くそう。後の事はそれからだ。
「ああ」
「な、なぜ?」
 まぁ、聞かなくても分かるけど。俺だって理屈抜きでこんな危ない人は死んでいて貰いたいし。

「……仕事でヘマをした。それだけだ」
 ……どんな危険な仕事だったんだ? 失敗したら殺されるって。あ、聞きたくないなぁ。どうせ腹の中が真っ黒な人が考えつく邪悪なお仕事だろうし。
「それは、お気の毒というか」
「口先だけの同情など止めろ。殺されたいのか?」
 怒気が含まれた言葉は失禁したくなるほど怖い。うぅ、勘弁してくれよ~。

「九峪。お前の方こそなぜあそこにいた?」
「なぜと申されましても……」
「お前の存在はもしかしたら現状を打開するきっかけになるかも知れない。なんでもいいから自分の事を話せ」
「はぁ。別にいいですけど――」
 はっ! ここで大したこと無い奴だと思わせたらその瞬間もしかして殺されるのか? く、くそぅ。胃がキリキリと痛む。

 それから俺はピチピチの平成生まれだとか、住んでる場所だとか、通ってる高校だとか、ともかく思いついた端から自分の事を口にした。

 深川は時々一般常識的な事柄についてそれはなんだと合いの手を入れてきたが、基本的には黙って俺の言葉を聞いていた。

 話し終えると深川は立ち止まって神妙な顔で俺の事を見つめる。

「やはり、そうか」
「何か分かったんですか?」
「お前がこの世界の人間ではないと言うことは分かった」
 深川の言葉は残酷に頭に響いた。むぅ、と言うことはやはりここは三世紀の九州なのか。というか、さっき深川変な魔法みたいなの使ってたしなぁ。左道だっけ? ということは、ましゃか……

「……異世界に迷い込んだなんてファンタジーな話では……」
 ぼそりと呟いてぶんぶんと頭を振る。きっとこれはドッキリなんだ。そうに違いない。そうでないと困る。もしそうだったら取り敢えずこの企画考えたプロデューサーは殺そう。世の中の為に。
 でも、本当だったら?

「おそらく左道を無効化したのもこの世界とは別の理で生きているからだろうな」
 などと得心顔で仰っていますが意味が分かりません。分かりたくもありません。

 それから俺は、俯いてぶつぶつと恨み辛みを呟きながら、深川の尻を見て歩いていた。別に触りたいとかそう言う話じゃなくて、落ち込んでて視界が下がってるだけ。いや、本当に。

 ――はぁ、止め止め。落ち込むなんて無意味だし。
 ほら、深川も沈黙で息がつまってるじゃない。どうにもなりそうにない現状だけど、だからこそ俺は落ち込んでる暇など与えられないのだ!

 と、無理矢理ポジけた思考に持って行って深川の後ろ姿に声をかけた。
「深川さん。よければこの世界の事を教えてくれないか」
 別にまだ完全にここが異世界だとか阿呆な話を信じたわけではないけれど、それでもただならぬ事態であることだし、嘘でも真実でも情報は多い方がいいだろう。

 ――知らなければ良かったって後で思うとしても。

 深川はわかりやすいため息を吐いて、こちらに振り返った。

「気安く話しかけるなこの変質者が。殺すぞ」



 ――父さん、母さん。俺、多分この女に殺されます。どうか、お幸せに。


 思わずそんなフレーズが脳裏に浮かんできて、俺は軽く泣きました。













追記:
 ……。言ってることとやってることが一致しない作者は二話目も投下。これも予定通りだとかなんとか。
 ともかく今作品の九峪はヘタレです。時々かっこよくなるかもしれませんが、それは死ぬときだけかもしれません。深川の前でかっこつけたらその瞬間殺されそうですから。前途多難な二人の行く手に幸大からんことを願いつつ、無理な話だよなぁと思ったり。


 ではweb拍手のお返事でも。

 一件目。

20:03 OLSシリーズ良いですねぇ、青くんの騙しっぷりに惚れそうです。
 と頂きました。
 おお~、オリジナルの感想はお久しぶり……でもないかな。青くんは嘘つき、と言うか全てを嘘にする作者の話の作り方がウソつきすぎというか……。まぁ、大丈夫です。一割くらい真実が混じってます……きっと。
 コメントありがとうございました。

 他にも叩いてくれた人たちに感謝!


 では本日はここまで。ヾ( ̄◇ ̄)ノ)) バイバイ
【2006/08/10 16:19】 | 小説 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
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