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深川04
 深川
 四話



 ……ぐす。
 汚されちゃったボク……。

「なかなかいいもの持ってるじゃないか。ククク」
 深川は散々俺の事を陵辱してご満悦だ。半裸に剥かれた俺は今色々と死にたい気分だ。

「九峪。そろそろ場所を移すぞ」
「……」
「おい、九峪」
 渋々と立ち上がると深川を軽く睨む。にらみ返される。

 ――速攻で視線を逸らした。
 く、くそぅ。いつか俺が優位に立って顎でコイツを使ってやる。

 心の奥底にその誓いを押し込めて旅立つ準備に移る。

「……ほら」
 深川はそう言って乾し飯を差し出してきた。まずそうだったし、食べたくもなかったので俺は首を振る。
「人を殺して奪ったものなんか食えるか」
 少し強気に言ってみた。
「そうか。まぁ、別に無理に食えとは言わないが」
 そう言う深川の物腰はいくらか柔らかくなっている。

 肌を合わせたせいだろうか。だとしたら結構お手軽な奴だ。何か企んでるだけかもしれないけど。

 それから俺達はまた山の中に入る。
 道無き道を暫く歩くと、日が暮れてきたので今夜は野宿という事になりそうだ。
 そこまで来て、あの集落にほったらかしにしていた死体の事を思い出す。
 埋めてやれば良かった。

「九峪。どうした?」
「え、ああ。別に」
「じゃあ、薪を拾ってこい。私は水を汲んでくる」
「ああ、分かった」



 思えば野宿なんて初めてだ。雨、降らないよな。
 そんな事を考えながら、燃えそうな木の枝を拾っていると、背後で物音がした。

「? 深川?」
 振り返ると、弓矢をつがえた男が……って、おい!

「ぬおおっ!」
 全力で飛び退いた。脇を矢が風切り音と共に通り過ぎていき、それを確認した男は弓を捨てると代わりに鉈を引き抜いてこちらに駆けてきた。

 ヤバイ。殺る気満々だ。
 だが、深川の人ならぬ殺気を致死量ギリギリで味わっていたおかげか、心はそれほど動揺していなかった。

 とは言え俺って喧嘩弱いんだよなぁ。
「やってられるか!」
 叫ぶと同時に転身アンド逃亡。だがしかし、一日歩きづめでぱんぱんになってる俺の足は言うことをきかない。ガクガクいって踏ん張りが利かず山の斜面を転がるように落ちる。

「のぉおおおおおお!」
 タスケテ~っ! と思ったら木に激突して止まった。
 天地が逆になってる視界に、男は油断無く近づいてくる。

「……や、やぁ」
 フレンドリーに話駆けた瞬間鉈が飛んできた。死ぬ、と思った瞬間頭すれすれで地面に突き刺さる。当たったら脳漿が飛び出しているところだった。

「なぜ、殺した」
 言葉の意味を始めは計りかねたが、男の格好を見てそう言うことかと納得した。

「あの集落の……、か」
 やるせなくなった。そう、だから殺しなんてしちゃダメなんだ。殺せば、これが永遠に続く。殺し殺され恨み憎しみまた殺し。

 何より、このどうしようもない気持ちを、味わいたくなんか無いから、だから殺しはしちゃダメなんだ。そんなの、ただ辛いだけ。素直に死んだ方が楽だ。

「……なぜ、殺したんだ!」
 血を吐くように吐き捨てて、鉈を拾う。
 俺は、なんて答えればいいんだ。
 殺したのは俺じゃないと、そう言えばいいのか?

「……」
 何も言えない。
 言葉が見つからない。
 俺は悪くないなど口が裂けても言えないし、実際過失はある。
 止められたのかは分からない。ただ、何も言わなかった、言えなかった俺も同罪だろう。


 ――だから、殺されてやるのか?


 深川の嘲笑混じりの声が聞こえた気がした。


 振り下ろされる鉈。

 俺は――






 少しのんびりしすぎたようだ。山人達に追いつかれた。
 私の所に二人来た。一人は九峪の方へ行ったようだ。丁度いい、ここでどうするか見てやるか。

 山人などものの数ではない私は、左道で二人まとめて屠り去ると九峪とそれに対峙する山人を遠巻きに眺めていた。

 ここで殺されるならそれもいい。
 その程度ならばどのみち足手まといになる。

 無様にひっくり返って、呆然と男を眺めていた九峪は、その鉈が振り下ろされた瞬間、転がるようにかわした。
 ニヤリと笑う。
 口先で何を言っても、死にたいわけがない。死んでいいと思えるワケがない。
 さぁ、そのまま殺してしまえ。そう念じた。

「止めてくれ。俺は、殺したくないし、殺させたくない」
 その言葉に、男は激昂した。

「あれだけ殺しておいて、今更そんな事を言うのか! 貴様が何を言おうと、私はお前を殺さねば気が済まん!」

 男の言うことは正しい。あれだけの事をやられたんだ。放っておけるワケがない。だからこそ、返り討ってやるのがこの場合優しさだ。失ったものは苦しい。それはいっそ死んだ方が楽なほどに。ならば、優しく返り討ちにしてやればいい。苦しまずに済む。

「俺を殺せば、気が済むのか? 俺を殺して、それで、本当に楽になれるのか?」
 迷いに満ちた言葉。歯がゆい。何を迷う。
 自分を殺そうとしている奴が目の前にいる。相手を殺すのに、他の理由など持ち出す必要はない。


「いいから、死んでくれ!」
 男はそう言ってまた鉈を振り回した。
 九峪はその鉈を無様に転びながらかわして、追撃に出された足に飛びつくと思い切り押し倒した。

 慌てた男は鉈をぶんぶんと九峪に向かって打ち下ろすが、焦ったせいか刃が当たっていない。九峪は顔をしかめながらその腕を押さえ込み、鉈を無理矢理奪い取った。

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」
 荒い息で、馬乗りになって男を見下ろす九峪。
 無様ではあったが、今は九峪に生殺与奪の権利がある。

 男は、力無い目で九峪を見ていた。

「あいつは、あいつとは餓鬼の頃から一緒で、これからも、一緒に生きていくはずだった……」
 唐突に語り出した男。

 私は笑みを浮かべて二人へと近づく。

「あいつと、娘は宝だった。俺の、人生そのものだった。だから、もうどうでもいい。俺のことも、殺せ。あいつ等の所に、逝かせてくれ」

 九峪は衝撃を受けた顔で、男の事を見ている。辛そうな顔をして、泣きそうな顔をして。


「殺してやれ九峪。それが慈悲だ。それが救いだ。そいつは既に死人だ。殺してやるべきなんだ」
 九峪は、鉈を振り上げると、それを思い切り放り投げた。

「うるせぇよ、深川。命令すんな」
「何?」
 睨み付ければ脅えるくせに、それでもこちらを見返す。

「あんたも、つまらない事を言うな。辛いから、失ったから、だから生きるの止めるなんて許されてたまるか。そこで諦めるような奴だから、死ぬとか殺すとか簡単に口にするんだ。冗談じゃねぇ。命だぞ? 大切なんだぞ? なんで分からない。何があったからって、何があるからって、まだ失ってもいないものを自分から投げ出したり、奪ったりするなよ。先の事なんて分かるほど利口じゃないくせに、知った風なことを言ってそれを言い訳にして。頼むから、もう少し考えてくれよ。駄目でも、見限らないでくれ。頼む」
 うなだれて、男を見下ろす九峪の顔はクシャクシャだ。

 ――こいつは何なんだろう。

 ふと、そんな考えが思考を掠める。ぬるい世界で生きていたというのは聞いたが、そんな環境で生きていると現実というものに対する認識が変わるのだろうか。
 見限るなと九峪は言った。
 だが、見限らずに生きていけると思っているのか? 口減らしに我が子を殺す親も多いし、自ら食す奴だっていないワケじゃない。そんな場所にいるという自覚が無いのか?

 なるほど。
 ならばこれも教育だ。
 分からないのならば教えてやればいい。
 純白の心に染みを作ってやればいい。


『俺がお前を喰わせてやるから、だからもう殺しはするな』


 現実を見つめたくないからと言って、そんな子供じみた言葉を吐いた九峪。
 私もお前が多少気に入っている。少なくとも、話していて不快になるほど馬鹿じゃない。
 だから、私がお前の事を喰わせてやろう。

 そう、こうやって――






 斬っ、と短く目の前で音が響いた。
 身体を上から押さえつけていた俺の身体に、びくりと不気味な痙攣が伝わってきて、次の瞬間には血が噴水のように目の前に広がった。
 男の首に深川の短刀が深々と突き刺さっている。
 深川は刺して、それを抉り抜いた。
 致命傷だった。
 血が一杯出た。
 降りかかる。
 頭の上から、髪を伝って血が滴る。
 何もかもが朱に染まった。

 数分、だろうか。
 それとも数秒?
 麻痺した頭には時間の感覚など分からなくて、気づいたら同じように血に濡れた深川の顔があった。
 楽しそうに、嬉しそうに笑っている。
 放心する俺の顔が愉快だとでも言いたそうで。

 ――こいつは、なんだ?

 はじめ見たときからぬぐい去れないとてつもない違和感。
 自分とは明らかに別種の生き物に対する畏怖。

 怖い、と思った。

 殺して欲しくないと、死んで欲しくないと懇願したその場で、一切の躊躇いも見せずに人を一人殺し仰せたこの女が。


 日が暮れて、血に濡れて、黒くしか見えない深川の顔がゆっくりと俺に近づき、そして唇が触れた。

 ――怖い。



 闇よりなお暗いこの女の存在が。

 そして、その存在に惹かれているかもしれないと気づいた、俺自身が――













追記:
 九峪早くも陥落か!? と言うところですがまだまだです。まだまだどんどん深みに落ちて抜け出せなくなるくらいまで深川には頑張って貰いましょう。まぁ、そう上手くいくかは分かりませんけど。

 現在の問題は深川を書く以上えろちっくな描写も欲しいなと言う所なんですが、グロイのと同じくらい。少しくらいならいいかな~(ぉぃ


 さて、web拍手のお返事ですが、昨日はコメント無いので以下省略。押してくれた皆さんありがとうございました。


 では本日はこの辺でヾ( ̄◇ ̄)ノ)) バイバイ
【2006/08/18 13:53】 | 小説 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
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