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深川05
 深川
 五話



 血に濡れて笑う深川を見たとき一瞬感じた胸の高鳴り。

 ……絶対に違う。そんなわけがない。多分そうだとしてもあれだ、身を守るための手段として俺の中にある本能が選択した結果だ。
 疲れてると身体の一部がおっきくなるのも生存本能が子孫を残せと命令出すからだし、更に差し迫ったあの状況だと目の前に置いてあるのが例え男でもドキドキしたかもしれない。ああ、それはないか。それはないな、神に誓って。

 さて、それで辺りは真っ暗になってしまったが、血まみれだと狼の餌や魔獣(!)の餌になると言うことで、近くの沢に下りて身体を洗った。服を全部脱いで冷たい清水で徹底的に。深川には恥じらいがないのかそれともどうせ真っ暗で見えないから気にしていないだけなのか、直ぐ横ですっぽんぽんになって身体を洗っている。

 ――なんだ。
 そこに女の裸があると分かればドキドキするのが健全な高校生ですよ。
 深川に下心がばれたら殺される予感がするので、それを抑えるために更にドキドキしているのがこの場合違うところだけど。

 ああ、でもどうなのかな。この女のことだから割と平気なのかもしれないが。すでに本日一度見ているわけでもあるし。

 特にやましい気持ちがあったわけではなかったが、なんとなく視線を深川に向けると丁度雲が切れて月光が注いできた。

 ナイス! と内心思ったと同時に、血の気が引いた。


 別に深川と目があって、殺されそうになったとか言う事じゃない。

 綺麗な絹のような深川の肌。
 その、背中におぞましい入れ墨が彫られていた。

「――っ」

 うめき声は殺したが、それでも気配に聡い深川は視線を感じ取ってこちらを向き直る。
 その顔には笑みが浮かんでいる。

「どうした?」

 堂々と背中を晒しながら見据える瞳。
「その刺青……」
 こちらの戦き、その意味を悟って笑みを深める。楽しそうだね、随分。

「左道士ならば皆入れている。所詮左道士も方術師も役割と言えば神官や巫女だからな」
 神事に必要な文様、と言うことか。それにしてはとてつもなく禍々しい。どちらかと言えば呪いじゃないか。

「……そっか」
 色々言いたいことはあった。親から貰った身体に何してるんだとか、痛くなかったのかとか、趣味悪いですねお姉さん、似合ってませんよそれ、もしかして気に入ってたりします、うっわ~だっさ、だとか。
 命が惜しかったので止めておいた。我ながら懸命な判断だ。

「……この刺青がある限り、私は奴の手から逃れられない」
 あきらめにも似た言葉に、俺は首を傾げた。
 逃れられないとは、どういう意味だろう。発信器にでもなってるのだろうか。

「が、お前の存在がそれをどうにかしてくれるかもしれない。まぁ、儚い望みだろうが」
「意味が分からん」
「知らなくていい。それよりさっさとしろ」
「へいへい」
 言われるまでもなく身体は大半洗い終わっていたし、頭を振り回して水気をふりほどいて途方に暮れた。
 血に濡れた服はカピカピになるので水洗いしたが、当然の如く代わりのものなど無いので素っ裸。濡れていてもいいから着るべきか……。

「何をしている。服を持ってこっちに来い」
 深川はそう言いながら自分は何処も隠さずに河原で薪の準備をしていた。
 どうやらそのまま乾かすという事らしい。確かに季節柄夜は冷える。このままだと風邪を引いてしまうだろう。

 徐々に大きくなっていく薪の火をぼんやり見つめながら、これからの事について考える。
 色々人生観が変わるような事が連続したせいで忘れそうになるが、俺は今異世界に来ているらしい。

 異世界。

 帰る方法なんてあるかどうかも分からないし、それ以前に明日ともしれない命。
 目の前の女の気まぐれで次の瞬間には殺されているかもしれない。

 何が悪かったんだろうね。
 分かってる。
 運が悪かっただろうなんて事は言われなくても始めから。

「おい」
 声をかけられて顔を上げると、深川がいきなり乾し飯を投げつけてきた。
 顔面に張り付いた硬いそれを取ると、不満そうな深川を見つめる。

「食え。食わないと殺す」
 そう言って自分の分に食いつく。
「……俺は」
「四の五言うな。あの山人共を殺したことと、お前がそれを食うことには何の関係もない。ここで食わずに飢えて死んだところで申し訳が立つとでも思ってるのか?」
 そりゃそうだけどさ。
 簡単に納得できるかよ。

 紛れもなく人を殺して奪ったものなんだ。
 食べてしまえば、俺も同罪になる。
 自分に言い訳が立たなくなる。

 自分に――


「……分かってる。結局俺は深川があいつ等を殺した事なんてどうでもいいんだ。理解できるし、仕方のないことだって思う。きれい事を言ってるんだって事も。結局俺は自分に言い訳がしたいだけだ。殺したのは俺じゃないから、それを証明するために喰わないぞって。喰わない限り、俺は罪を意識しなくて済む」
「それが望みならそのまま飢え死ね」
 深川は容赦がない。そして、その上で俺が取る行動を疑っていない。
 それは深川にとって当たり前だからだろう。

 ここで、かっこよく深川に乾し飯を投げ返してやりたい。
 きっと清々するだろう。

 しかし、俺は乾し飯に食らいついた。
 腹が減っていたから。
 喰わなければ死ぬから。
 死にたくないから。

 綺麗事を押しやって、俺は生きることを選んだ。
 全く呆れた意志の弱さだ。だが、俺が意地を張るべき場所はこんな所じゃない。

 たった今決めたから。
 この最悪な状況を俺の力で脱して、この女を綺麗事の世界に引きずり込んでやると。
 そのためには今は敢えて汚泥を啜ろう。

 ……本末転倒な気がするが、多分これでいい。
 そう言うことにしておこう。


 具体的にどうすればいいのか、ちっとも思い浮かばなかったけど……。






 不機嫌そうな顔をしながらも、まずそうに乾し飯を食べ始めた九峪を満足げに見る。
 生存本能に従えばいいだけのことだ。別にこの結果は当然のこと。
 自分では気づいていないかもしれないが、九峪は今生きるために他者を殺すことを黙認したのだ。
 そんなことはないと、コイツは言い張るだろうが同じ事。
 確実に、九峪は道を踏み外した。
 後はどんどん沈んでいくだけ。

 その様を想像するだけで愉快だ。

「楽しそうだな、深川」
「そうか?」
 私は笑いをかみ殺しながら膝を抱えて座っている九峪を見据えた。
 九峪は女に慣れていないのか、視線に気が付くと顔を赤くして視線を逸らす。その姿が更に笑いを誘った。

「昼間散々見ただろうに……」
「純情なんだよ」
 自分で言っていれば世話はない。
「それより、これからどうなるんだ? いつまでも山の中逃げ回るなんて、身が持たないぞ、俺の」
「のようだな。恐ろしく体力が無いようだ」
 色々あって大した距離を歩いたわけでもないのに、九峪は疲れ切っている。追っ手に追われながら山の中をコイツと一緒に逃げ回るのは不可能だろう。
 ならば見捨てればいいようなものだが、ただ逃げまどうのもどのみちもう限界だ。

 昼間の刺客。
 今までの連中と質が違った。九峪という偶然が転がり込まなければ、私の方が死んでいたかもしれない。
 あのクソじじいがいよいよ本腰を入れて私を討伐に来たと言うことだ。ならば、ただ逃げることにもう意味はない。

「おい、深川……」
「ふん。取り敢えずこのまま西へ山を越え、火向に向かうとしよう。警戒線はおそらく那の津の方面に張り巡らせているだろうから、多少は時間が稼げるはずだ」
「そ、そうか。よく分からんが」
「明日からは一日中歩く。分かったらさっさと寝るんだな」
「げ、一日中!」
 げんなりした九峪の表情。
「嫌なら別に構わんが。ここでのたれ死ね」
「あうぅ。寝ます」
 九峪は半乾きの服を身体に捲くと、ごろりと横になり、すぐさま寝息が聞こえはじめた。


 小さくため息を吐くと荷物の中から半分に割れた銅鏡を取り出す。
 普通の丸い銅鏡とは違い、楕円形で複雑な文様に縁取られている。
 これがある限り、あのクソじじいは私を追い続ける。
 だが、渡すわけにはいかない。

 私は、これを使ってやらなければならない事があるのだから……














追記:
 昨日は兄の結婚式でした。まぁ、酒飲んでメシ喰ってただけでしたけどね。まぁ、なんにせよおめでとう兄。家の事は全部任せた(爆
 ってなわけで、制作状況は聞かぬが花でございます。編年紀ちょこっと書いたので、何とか今週中に一章分くらいは出したいとおもいますが。あと深川は書いたら出します。書かなければ出しません(ぇ

 ちなみに深川の方は今回までで導入部分一区切りで、次回からは場面が変わるような気がします。そろそろ他の人が登場するかも? 割れた銅鏡に関しては真面目に書く気があればその内明かされるでしょう(ぉぃ


 ではweb拍手のお返事を。

 まずは18日分。一件目二件目。

23:40 めずらしくよわっちぃ九峪が良し。脅える九峪萌え~
23:42 あと深川はもう少しえろくていいと思うYO!
 と頂きました。
 脅える九峪に萌える人アリ。まぁ、最後までヘタレてるかは謎ですが、多分そうなんでしょう。今回の九峪には胸焼けするほどきれい事を言わせようと思ってるんだけど、どうなるかなぁ。実力の伴わない正義は滑稽だけど、主人公っぽいよね?(謎
 深川は序盤からあまり飛ばすと最後まで持ちそうにないので、本領発揮はもう少し後にします。ああ、ほれぼれするようなグロエロシーンが書きたいなぁ(マテ
 コメントありがとうございました。


 19日。一件目二件目三件目。

2:01 九峪×深川も良いですねぇ。ダー九峪に志野の一座襲わせてみたりとか伊万里の里とか襲わせて
2:02 「俺を殺したければ付いて来い」てきな展開もステキだなぁ。とか妄想してみた。
2:03 でもそれは蛇渇(女)×九峪の方が似合ってるか(笑)。
 と頂きました。
 ダークな九峪……は、幻聴記で頑張って貰うとして(ナニ?)、志野とか伊万里とかの出番あるのかなぁ……。まぁ、正規ルートからは離れまくってるので、割と宗像関係者とかには縁がなさそうだけど。まぁ、考えてみようかなぁ。
 でも、襲わせて殺したければ付いてこいは、深川ルートにならないので(爆 まぁ、天目ルートのはずの盛衰記で天目の出番がアレだったとか言う話もあるわけですが、深川ルートは深川だけかなぁ。まぁ、いても後一人くらい、の予定です。
 蛇蝎(女)×九峪は……。うむ、絶対に書かないと思います(爆
 コメントありがとうございました。

 四件目五件目六件目。

8:07 碧さんの赤ちゃん--ああ違ってたのか。よかったw あれ、とんでもない三段論法をかましまして、
8:07 赤名って精神だけ寄生?→最後の2歳の姿が~ って来て→もしや、生まれてくる赤ちゃんに
8:08 とりついて乗っ取れるんじゃ?となった訳でして。いやいやお恥ずかしいかぎりです >x<
 と頂きました。
 え~と、これは前回のOLSの話ですな。なるほど、赤名を赤ちゃんに……。考えてなかったなぁ(笑 それもいいかもしれませんが、若干あり得ないとか色々。まぁ、十一月号を読むと分かるんだけど、まだ執筆中につき変わるかも。でも、碧さんの赤ちゃんは多分出番無いです。産まれてくるところまで話が無いので。エンディングくらいには出すかもしれませんが、良くも悪くもあの人は脇役で、本筋とは関係ないところでほのぼのしている人ですから。旦那の方は……(ニヤリ
 コメントありがとうございました。

 七件目以降。

20:53 深川の旦那様
20:55 今回も旦那様の趣味に走ってますな・・・
20:57 旦那様の深川愛を感じますなあ
20:57 ・・・・・・
20:57 ・・・・・・
20:57 ・・・
20:57 ・・・
20:58                                               はあ~
 と頂きました。
 はぅっ! ため息吐かれてる!!
 でもまだまだ趣味に走りますから、この程度でため息吐かれると先が思いやられます。そのため性格が変わるかもしれませんが(既に手遅れ気味)、そこは何とかしたいですね~。
 コメントありがとうございました。

 昨日の分。一件。

9:47 負けるな九峪!深川の闇の誘惑に打ち勝つんだ!・・・だって闇に墜ちた九峪って蛇渇よりやばそうだし(汗)
 と頂きました。
 蛇蝎よりやばくなる……。確かに極悪非道になりそうですが、いかんせん今作品の九峪はとても弱いので、極悪非道になるとただの悪人に……。いや、まぁ、その内戦闘力補正は多少はいると思いますが、それっていつになるんだろう……。謎だ。
 コメントありがとうございました。

 他にも叩いてくれた皆さんありがとうございました。


 では本日はこの辺で。ヾ( ̄◇ ̄)ノ)) バイバイ
【2006/08/21 16:14】 | 小説 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
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