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深川06
 深川
 六話



 この世に神も仏もいないなんてことは、もう随分昔から分かっていたことだけど、そのくせ鬼とか悪魔とか厄介なものはきっちり存在しているとまでは考えていなかった。

 ある~日、森の中、魔人に、であ~った♪

 ……
 ……

 ……泣くぞこの野郎。

 恥も外聞も無く泣きわめきたい状況。と言いたいところだがそんな余裕すらない。
 深川の顔も見た瞬間に凍り付く絶対的にヤバイ存在。
 元々左道士が魔界から呼び寄せるものと聞いていたから、深川を追っているのが左道士である以上、確かに追っ手として放たれる可能性はあったワケだ。

「ちっ、せめて魔獣ならば」
 なんて余裕ぶっこいてられる深川が羨ましい。こっちは逃げるだけで限界。
 そもそもここ数日歩きづめで体力の限界千代の富士なボクちゃんは、今現在死んでいないこと事態が神の奇跡かといった有様。

 ああ、誰でもいい。何でもするからこの状況から救ってくれ。

 無駄と知りつつ願った瞬間、自分の足に自分の足を絡めて転ぶという、器用な真似をかます。

「……」
 気まずい気配がヒシヒシと背中に。顔だけ振り返ると、色男とも言えそうな鎧を着込んだヤバイ目つきのお兄さんが、変な剣を突き出す所だった。
「いやぁあああ~~っ!」
 女のように悲鳴を上げて地面を転がる。

 耳元でざくっと地面に剣が突き刺さる音。
「九峪!」
 舌打ちと共に叫ぶ深川。ああ、おいどんはもう駄目ですけん。骨は海へ……。なんて人生を諦めてみたが、いつまで経っても追撃が来ない。
「?」
 不思議に思って振り返ってみると、魔人の兄さんは楽しそうな表情を浮かべて明後日の方向をみていた。

 ――これは、潜在一隅のチャンス!

 俺はジリジリと匍匐前進で距離を取る。少し離れたら立ち上がって死ぬ気でダッシュだ。

 ざり

 土を踏む音。目の前に山肌の腐葉土に少しだけめり込んだ白い足が生えた。
 いや、それは目の前に現れただけで、別にそこからニョキっとタケノコの如く生えたワケじゃないだろうけど。
 おそるおそるそのむっちりとした足のラインを上へとたどると、何かが視界を遮った。

 ――まさか、これって、乳?

 その巨大なくせに張りがあって上向きかげんなスイカップの物体を、呆然としながら見上げる。乳がでかすぎて顔が見えない。しかし、なんだ、なぜこんな場所に爆乳でバニーな女が……。
 そう、格好がバニーなのだ。
 お尻の所に丸く尻尾が付いてるし、乳の端から長く白いウサ耳が出ている。

「???」
 混乱の極みにいる俺に、乳が徐々に下降してくる。同時に華奢に見える腕が伸びてきて胸ぐらを掴まれた。
 身体がふわりと浮かぶ。次の瞬間には目の前に女の顔があった。
 好奇心を隠そうともしない無邪気で大きな瞳。
 楽しそうに笑みを浮かべた口元からちらちらと見える、肉食獣っぽい八重歯。
 ほぼ成人男子の俺を片手で釣り上げる異様な膂力。
 頭の上でぴょこぴょことせわしなく動いているウサ耳。

「? あの、どちら様?」
 訊ねた俺の視界が線になり、背中に衝撃を受けたと思ったら深川の横にいた。

「げほ、ぐ、な、なにが……」
 ぶん投げられたのだと言うのが数瞬遅れて分かる。クラクラする視界に先ほどの魔人とウサ耳爆乳少女の姿がかすんで見えた。
 いや、脳しんとう気味で視界がかすんでいるわけではない。
 視覚で捕らえきれない速度で動いているのだ。二人とも。

 金属と金属がぶつかる音。

 良くは分からないが、どうやら戦っているようだが。魔人と戦うって、何者なんだあの少女。

「ふ、深川?」
 どうやら背中をぶつけた先は深川だったようだ。かなり思い切りぶつかったので、深川も呻いていたが、何とか無事ではあるようだ。
「……くそ、なんなんだ一体」
 毒付きながら立ち上がると、俺の手を引く。

「とにかく、今の隙に逃げ……」
 深川の台詞は途中で止まった。

 もう一人のウサ耳な爆乳女の、唐突な出現によって。






 魔人の襲撃。
 それ自体は考慮に入れていたし、いずれ来るだろうとは考えていた。しかし、来たのはいきなり上級魔人。実力差がありすぎて逃げまどうことすら無意味に思えた。
 それでも向こうがいくらか遊ぶ気だったのは幸いだった。
 油断しているなら、例え上級魔人でも嵌められるかもしれない。

 だが、事態は予想外の展開に向かう。
 九峪が殺されそうになったところで、別の上級魔人が現れた。その容姿から魔兎族であると直ぐに分かった。
 どういうつもりか九峪を庇って戦闘を始め、その隙に逃げようと思えばもう一匹。

 正直、魔兎族相手に人間ではどう足掻いても勝てない。
 しかも今目の前にいる奴に、一部の隙もありはしない。
 逃げるのは難しいだろう。

 しかし、やりようによっては切り抜けられるかもしれない。この魔兎族達、もしかしたら……。

「そこで大人しくしていろ。何、殺しはしないさ」
 金髪の魔兎族はそう言って静かに殺気を放つ。
 はじめ襲ってきていた上級魔人は、もう一人の魔兎族が押さえ込んでいた。実力伯仲のようだ。

「……た、助けてくれるのか?」
 脅えた九峪は、それでも私を庇うように前に立っている。腰抜けのくせに頑張るじゃないか。
 足下を見れば膝が笑っているのがみっともないが。

「さぁな。見るからに怪しい事だしな……」
 そう言って目を細める。

「うぅ、そんなこと無いですぅ。善良なタダの一般市民ですぅ」
 泣きそうな九峪の態度に、毒気が抜かれた表情になる魔兎族。
「男がみっともなく泣くな。別に殺しはしないと言っただろ」
「かたじけない。ぐす」
 九峪を小汚いものでも見るような目つきで見た後、視線がこちらに移る。

「お前等、何の目的でこんな山奥にいるんだ?」
 解答を誤るわけには行かない。こいつ等は先の復興戦争で耶麻台国に協力していた奴らだ。私は耶麻台国にとってもお尋ね者。出来るだけ穏便に此処は乗り切らなくては……。

 だと、言うのに……
「狗根国の左道士に狙われてるんですぅ」
 九峪はあっさりとばらしやがった。
 すかさず背後から脇腹に拳を叩き込む。
 九峪は僅かに呻いて、涙目でこちらを睨んできた。にらみ返すと視線を逸らしてぶつぶつと何事か呟く。

「狗根国に……? なぜだ?」
 あからさまに訝しんでいる魔兎族。
「それはこいつが『ゴッ』――っ、な、なんでもないです」
 九峪を黙らせると、代わりに私が口を開いた。

「理由はコイツのせいだ。変わった体質をしていて狗根国の左道士に研究材料として追われていたんだ」
「変わった体質なぁ」
 魔兎族はそんな事を呟きながら、九峪をためつすがめつしている。

「確かに、変な感じだな」
 無造作に手を伸ばすと、九峪の頭を掴んでクンクンと臭いを嗅ぐ。そんなことで何か分かるのか?

「あうぅ、別に美味しくないよぅ」
「確かに不味そうだな。さて、どうする姉様」
 金髪の魔兎族がそう言って私の背後を見る。

「――そうね、一応一緒に来て貰いましょうか。殺してしまうのが一番面倒が無いんだけれど、この人……」
 いつの間に背後を取られたのか全く気づかなかった。
 視線を向ければ、どう見ても"姉様"と呼ばれるには不釣り合いな、兎の耳をはやした幼女が九峪を見ている。
「似てると思わない、あの人と」

 "姉様"の言葉に、金髪の方が確かにと頷く。
 似ている――。そう、コイツは似ている。外見ではなく雰囲気が。
 だからこそ、耶麻台国に渡すわけにはいかないんだが……。

「それに、あなた左道士でしょう? と言うことは狗根国の。興味あるわ」
 少女はそう言って底の見えない笑みを浮かべて見せた。どうやらバレバレのようだ。
「……今は追われている身だ」
「なぜ?」
「そいつの為だよ」
 じろりと九峪を睨むと、少女は「あら?」なんて言って嬉しそうに笑う。

「駆け落ちでもしたの? ふぅん、いいわねぇ」
「……いや、そういう『ゴス』、その通りですぅ」
 余計な事を口走るなこのアホが。今は生きるか死ぬかの瀬戸際だと言うのに。

「まぁ、そう言うことなら耶麻台国に匿って貰った方が色々と都合もいいでしょうし、情報を提供して頂けるならば悪いような扱いにはならないと思いますけれど」
 そうする、と少女の目が問うてくる。

 選択肢は――無い。

 私は黙って頷いた。






 話がまとまったようだが、俺は未だに金髪の姉ちゃんに鷲掴みにされたままだったりする。
「あの~、できれば離して頂きたいのですが」
「ん?」
 ギロリと睨み付けられて「ひうっ」と小さく悲鳴が上がる。
 この世界には目つきの悪い女しかいないんだろうか。そんな感想を抱いていると、金髪の姉ちゃんはぺたぺたと無遠慮に俺の身体を触っている。な、何がしたいんだ?

「ふむ、貧弱だな」
「ぐほぁっ!」
 一応俺も男だから、女から貧弱とか言われると傷つくわけで。まぁ、ここ数日も深川の足を引っ張ってばかりで、痛いほど自分の貧弱っぷりを味わっていたわけだが。
 少しばかり悔しかったので、俺は女の胸を凝視しながら言ってやった。

「そう言う貴方の乳は立派ですね」
 ついでにぐわしと掴んでみる。むぅ。凄い弾力だ。埋もれてみたい……。

「……何を、している」
 非常に冷たい声。
 何って、こんなものを目の前にぶら下げられて揉むななどと言うつもりじゃあるまいな!

「本物かどうか確認しておかないと後で困るだろ」
 何が困るのか意味不明だったが、そう言うことにして手を離す。
「姉様、やっぱり殺していいか?」
 青筋を立てながらこちらを睨み付ける姉ちゃん。うぅ、しまった。お茶目が過ぎたか。
「止めておきなさい、兔音。そんなことより兎奈美の方を手伝ってきたら? あの子一人じゃ大変でしょう」

 言われて振り返ればまだ魔人が戦いを繰り広げている。
 むぅ。やっぱり見えん。
 だが、二人の戦いに巻き込まれて周囲の木々が吹っ飛んでるのが何ともまぁ……。

「ちっ」
 兔音と呼ばれた女は小さく舌打ちして姿を消す。早い。うむ、からかうのも命がけだが、いつの間に俺はこんなに大胆になったんだろう。

 いや、違うか。敵意に対して敏感になっただけだ。
 あの兔音とか言う奴が、俺に対してあの程度で敵意を向けないと、見抜けていたからだろう。
 魔人と言っても理性的のようだ。まぁ、魔人のなんたるかを俺は知ってるわけではないけど。というか、魔人なんだよな?

「それで、貴方達の名前を教えてくれるかしら? 私は兔華乃。はじめに戦っていたのが兎奈美。さっきまでここにいたのが兔音よ」
 小さな少女の兎、兔華乃はそう言ってニッコリと笑う。

「俺は九峪。で、こっちが深川だ……」
 そう自己紹介した瞬間、背後でものすごい舌打ちが聞こえた。


 ――あれ? なんか拙かったか?

「そう、九峪さんに、深川さん――ね」
 少女はその名を聞いて意味ありげに笑う。

 その笑みが、俺を心の底から不安にさせた。













追記:
 盛衰記ではさっぱり出番が無かった魔兎族三姉妹を持ってきてみました。まぁ、後一回くらい出番もあるかも? 九峪が誰かに似てるとか、本当にお前先のこと考えて書いてるのか? とか自分にツッコミを入れつつ、まぁ、何とかなるんじゃないのかなぁと適当な事を考えていますが。はてさてどうなるか。
 次回はようやく人里に下ります。下りてどうなるかは知りませんけどね……。



 ではweb拍手のお返事を。

 21日分。一件目。

18:23 あ、深川やってるっ!!じゃあLoversの方はダーク九峪でやろっかな・・・  by宮
 と頂きました。
 お久しぶりです宮さん。さっぱり顔出せてませんが、読んでますよ~。あ、補足説明を入れれば、この宮さんとは同じく火魅子伝のSSを書いてる方で宮の宮というHPを運営されています。十三階段の方からリンク貼ってますから、興味ある人はどうぞ。
 で、前に宮さんに深川で短編書いてくれってお願いしたとか言う経緯がありまして……。まぁ、作者の深川は短編に収まりきれずに、連載とかワケの分からんことになってますが……。
 まぁ、宮さんも書いて頂けるならば見てみたいものです。ダークでもエロでも(ぉぃ)ほのぼのでも(アリエン)いいですよ~。頑張って下さ~い。
 コメントありがとうございました。

 二件目。

19:27 なんだかストックホルム症候群みたいですな、九峪。まあ、深川になら洗脳されたい気も……
 といただきました。
 ストックホルム症候群……。え~と、犯罪者に人質に取られていたりすると、被害者の方が犯人の方に恋愛感情とか肯定的になってしまう症状の事ですよねぇ。まぁ、まんまですね。適応機制というか、自然な人間の心理でしょう。う~ん、ただ九峪には出来れば心の底から深川を隙になって欲しいような気もしなくもないんですが、今のままだと辛いですね。さて、そのためのイベントをば考えんとね。
 コメントありがとうございました。

 22日分。三件。

12:25 綺麗事の世界に引きずり込んでやると思いつつ、悪人街道を少しずつ歩いてる九峪が好きです。後、天魔鏡らし
12:29 きモノを持っている深川さんの目的とは?このシリーズの最後の方で悪逆非道と化した九峪の前に、鏡から
12:30 姫神子が召喚されたら爆笑ですが。
 と頂きました。
 九峪は徐々にはまっていって貰いましょう。きれい事を言う人をボロクソにするのが小説書く上での一番の楽しみですね。性格悪いですって? 知りませんそんなことは。最終的には気づいたら悪逆超人になっているというのが理想なんですが、まぁ、正義の味方になってるかもしれないし、展開次第と言ったところでしょう。
 深川の持ってる謎な銅鏡については、本当に最後まで分からない……かなぁと思いますが、ネタにつまったら出すかも(笑 姫御子の登場は確かに爆笑ですが、今回奴の出番は無いでしょう。一応深川の話はシリアスで書こうと思ってますので。……多分。
 コメントありがとうございました。

 他にも拍手をくれた皆様ありがとうございました。


 では本日はこの辺でヾ( ̄◇ ̄)ノ)) バイバイ
【2006/08/24 19:51】 | 小説 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
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