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深川08
 深川
 八話



 無邪気な顔で殺気をまき散らす兎奈美は、不意に俺の唇を奪う。
 背後から、覆い被さるように。
 ヌラヌラとした舌が押し入ってきて、無意識に自分のそれを絡ませ、何処か冷静な部分がこれが魔人の味かと分析していた。

 ――なぜ、突然?

 その疑問を差し挟む余裕を兎奈美は与えてくれなかった。
 興奮しているのか何なのか、時々隠しきれない殺気が放たれ、その度に身体が硬直させられる。
 口内を舌で陵辱される感触と、明滅するような殺気に次第に思考がままならなくなり、呆然としてしまう。

 月明かりに、僅かばかりに浮かんでいる兎奈美の顔。
 その瞳が、赤く爛々と輝いている。
 美しいなと思った。
 金縛りにあったように動かない身体から、兎奈美は服をはぎ取っていく。
 引き裂いてしまう事も簡単だろうに、鼻歌を歌いながら楽しそうに。

 上着を脱がされ、呆然としている俺の胸板に頬擦りして「にゅ~」とか訳の分からない声を上げている。
 こいつは何がしたいんだ? と思っていると下の方まで脱がされる。

 この世界に来てから陵辱される運命にあるのだろうか。深川の次は魔人かよ……と嘆く。
 と言うか、なんなんだろう? 俺の何が気に入ってこいつはこんな真似をしているのか?
 殺気をちらつかせて黙らせて、これが魔人流なのだろうか?

「ふふ~。九峪、結構おっきいね~」
 マイサンを見ながら笑みを浮かべている兎奈美。

「なんで、こんな事……」
 半ば諦めつつも、掠れた声で呟いてみる。

「昼間久しぶりにいい戦いが出来たからね~。ちょっと興奮しちゃってて、こうでもしないと九峪のこと殺しちゃいそうだから~。殺しちゃったら姉様に怒られるし、死にたくないでしょ?」
 コクコクと頷く。

「今夜は寝かせないから♪」
 なんて兎奈美は無邪気に笑って、俺様はあやうく腹上死するところでしたとさ。






 翌日、足腰立たない俺は兎奈美に担がれてまた山の中を風のように駆け抜け――俺様またも気絶――、昼過ぎに目的地である川辺城とやらに付いた。
 何とか目覚めて遠目にその城を見たとき、何故か無性に泣きたい気分だった。

 都督での一件やその後深川と何度か襲撃した集落を見たり、その上兎奈美達魔人を見て、ここが異世界であると言うことは把握しているつもりだった。
 でも、それでも何処かドッキリなんじゃないのかなと思っていた。

 川辺城。その現代ではあり得ない城郭都市を見て、俺の中にあるその儚い希望は完全に崩れ去った。

「姉様達先に着いてるかな~」
 などと呟きながら、楽しげに歩いている兎奈美。
 ちなみに街に入る前に、隠しておいたらしい農民衣装に着替えている。バニースーツではさすがに目立って仕方がないし、耶麻台国に魔人がいるとおおっぴらにばれるわけにはいかないのだとか。そんな面倒なこと兎奈美は無視しそうだが、兔華乃の命令は絶対らしい。かなり怖れているようだが、あの小さい身体に何か秘密を隠してるのだろうか。むぅ、そうは見えなかったけどなぁ。

「っと、兎奈美。そろそろ自分で歩くから下ろしてくれ」
 頼んでみると、兎奈美は不満そうに頬を膨らました。
「駄目~。九峪は抱き心地いいからこのまま」
 兔華乃みたいに小さければいいかもしれないが、一応体格的には成人男子。抱き心地もなにもあるまいに。
「いや、だが周囲の目が……」
 農道のような場所を歩いているのだが、お百姓さん達が奇異の目をこちらに向けている。まぁ、無理もない。農民の衣装を着ようがそのスタイルを隠しようもない兎奈美が、大の男を担いで歩いているのだ。違和感がありすぎる。

「私は気にしないも~ん」
 駄目だコイツ。頭のお医者さんに看て貰った方がいい……。

 ため息を吐きながらも逆らうとどうなるか分からないので黙ってうなだれるに留める。
 昨夜も口答えするたびにあちこちに歯形を付けられた。すっかり調教済みなのである。

 それから街に入り――門番は兎奈美を一瞥してスルーした。顔パスらしい――、奇異の目にさらされながら宮城の方へ。そして宮城と街とを隔てる門も顔パスで通過して、兎奈美に運ばれながら俺はそのまま中へと入っていく。
 耶麻台国の要職の人たちだろうか。街中で見るよりいくらか身なりのいい人達は半ば呆れてような視線をこちらによこしている。多分兎奈美が奇異な行動を取ることに慣れているのだろう。物珍しさはあまり感じられない。

「あ、衣緒」
 呟いて兎奈美が立ち止まる。俺は顔を上げると兎奈美の視線を追った。

「兎奈美さん。誰です?」
 訝しげな顔をしているのは、なんとなく清楚な感じが漂う少女だった。歳は同じくらいだろうか。まっすぐな黒髪が綺麗に切りそろえられ、落ち着いた物腰が好印象。渾名はお母さんがベストだ。
 そんなワケノワカラン事を考えていると、兎奈美がようやく俺のことを下ろしてくれた。

「エヘヘ、姉様達帰ってる?」
「兔華乃さんですか? いえ、見えてませんけど」
「そっかぁ~。う~ん面倒だなぁ」
 確かに兔華乃や兔音無しで兎奈美が話を通すのは難しいような気がする。と言うか不可能だろう。だってコイツ俺から見てもおつむが足りない。

「え~とね、まぁご飯でも食べさせておいてよ」
「は? え~と、誰なんです?」
 衣緒と呼ばれた少女は困惑した顔でこちらを見る。うむ、同情しよう。だが俺も迂闊な事は言えんのだよ。
「私は姉様達を探してくるから。じゃあ、お願いね」
「は、え、ちょっと兎奈美さん」
 呼び止めた衣緒だったが、それも虚しく兎奈美は行ってしまった。

「ふぅ」
 頭を抑えながらため息を吐く衣緒。俺も同じくため息を吐いた。

「それで、どちら様でしょう?」
「ああ、九峪って言うケチなもんです」
「九峪さん……、なぜ兎奈美さんに?」
「さぁ? 俺もそれを聞きたい」
 虚しいことに、俺自身、なぜ自分が此処にいるか、一つも分からないのだった。






 衣緒は兎奈美に言われたとおり俺にご飯を出してくれた。お腹も減っていたし、こちらの世界に来てからはじめてまともな――それでも貧相ではあったが――食べ物に、俺はがつがつと一心不乱に掻き込む。何というか、生きててよかったと心の底から思えた。
 兎奈美が連れてきたからなのか、衣緒は俺のことを賓客扱いと言うことにしてくれて、特に警戒されている様子もない。

「衣緒は、耶麻台国の偉い人なのか?」
 まだ若そうなのに、廊下ですれ違う人が頭を下げていたりする。結構な地位にあるものと思われた。それがとても意外で聞いてみたのだが、衣緒は困ったように首を傾げる。

「まぁ、そうですね。それなりに。九峪さんは一体どちらから?」
「う~ん、その辺の事は自分でもよく分かってないんだよね」
 そう答えると衣緒はまた困ってしまうようだ。

 それにしても会話で相手に殺される心配をしなくていいって、なんて開放感だろう。うぅ、こんな当たり前のことで涙が出そうだ。

「兔華乃さんが来てくれるまで何も分かりませんか。兎奈美さんも少しは説明してくれてもいいでしょうに」
「まぁ、あいつにその辺の事を期待するだけ無駄というか」
「? 兎奈美さんとは親しいんですか?」
「え? まさか。まだ一晩くらいしか一緒にいないし。ただ魔人に襲われてるところを助けて貰っただけで……」
「ま、魔人! 魔人が出たんですか?!」
 衣緒がいきなり叫んで詰め寄ってくる。うむ、凄い剣幕だ。やはりこ奴も裡に牙を隠し持っていたか。深川や兎奈美に比べれば可愛いものだが。

「まぁな。俺の連れが狗根国に追われていて。そいつは兔音と逃げてるはずなんだけど、まだ着いてないみたいだなぁ」
「狗根国に……」
 衣緒はそう呟くと急に黙り込んで、そうかと思えば席を立ち部屋を出て行ってしまった。

 食堂に一人取り残されてロンリーな俺様。
 見知らぬ場所で放置されるって凄い不安なんだけど……。何せ根が臆病者ですから。


 それから何分経っただろう。お茶碗に残ったご飯を手持ちぶさたに一粒ずつ口に運んでいると、トコトコと軽い感じの足音が。誰か来たのか? と若干不安に思っていると、あり得ないものが俺の目に飛び込んできた。

「――嘘」
 そいつは愕然として一言呟き、俺の事を凝視している。


 そして、それは俺も同じだった。


「日魅子――……。なんでお前が……」


 あり得ないはずの再会。



 意地の悪い神様が、ニヤリと笑った――そんな気がした。













追記:
 ……はい、というわけでものを投げないで下さいね。影の薄いメインヒロイン再びです。話の上で特に重要かどうかと言われるといらないんじゃないかなぁと思いますが、話のつじつまを合わせるのには丁度いいような気がしたので登場と相成りました。次回はもう少し詳しい話……、になるようなならないような。
 ところで深川は……?



 ではweb拍手のお返事でも。
 26日分。

13:25 哀れ九峪、よりにもよって兎奈美と二人きりかぁ(汗)懐かれてれば可愛いんだけど、今の状態は気分次第で
13:31 首と体が泣き別れですからなぁ、ガンバレ九峪!兎さんを籠絡出来なければ君の未来は無いぞ!
 と頂きました。
 兎奈美は懐きません(爆 ある意味懐いているのか? どちらかというと丁度いい玩具を見つけた位にしか思ってないような気がしますねぇ。まぁ、遠くない未来打ち首獄門に……なったら話が終わってしまう(笑
 籠絡云々は今の段階ではおおよそ不可能でしょうねぇ。人間相手に恋愛感情持ちそうにないし……。まぁ、役得出来たので九峪ももう満足でしょう(ぇ
 コメントありがとうございました。


 他にも叩いて頂いた皆様ありがとうございます。


 では本日はこの辺でヾ( ̄◇ ̄)ノ)) バイバイ
【2006/08/28 19:08】 | 小説 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
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