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深川09
 深川
 九話



「日魅子……、なんでお前が此処に」
 わけが分からない。なんでだ? あいつは俺と同じでただの高校生で、今頃は学校にでも行ってるはずだけど……。
「く、九峪こそなんでこんな所にいるのよ……」

「いや、それは……」
「……」

 お互い見つめ合って沈黙。

 気まずい雰囲気にお互い口をきけないでいると、衣緒が折良く戻ってきた。その背後には眼鏡をかけた理知的な女性がいる。

「これは火魅子様。ああ、こちらは兎奈美さんが連れてきた……」
「兎奈美が、九峪を? 何それ、どういう事なの?」
「おい、衣緒。なんで日魅子がここにいるんだよ!」

 俺と日魅子は同時に衣緒に問いかける。

「え? あの、お知り合い……ですか?」
 今度は衣緒が困惑する。
「知り合いも何も幼なじみよ! この世界にいるはずがないのに……なんで」
「ふむ。とにかく落ち着いて下さい火魅子様」
 眼鏡の女が日魅子の肩に手を置いて宥める。

「九峪殿、と仰っいましたか。こんな場所では何ですし、客間を用意致しましたのでそちらの方へ」
「はぁ」
 ワケが分からない。なんで、日魅子が……。
 この時、俺の思考はそのことばかりに囚われて、眼鏡の女が企みの眼差しを向けていることに、全く気づいていなかった。






 場所を移して、俺は今までの成り行きを全て日魅子に話した。その場にはあの眼鏡の女――亜衣と言う名前で、衣緒の姉で耶麻台国の宰相のような立場らしい――もいたが、俺たちの会話に口は挟まず黙って聞いていた。
 俺の話は元より深川に連れ回されていただけの話だから直ぐに終わり、俺は日魅子がなぜ此処にいるかを問いただした。
 答えは俺と同じく至極明瞭で簡潔なもの……とは行かなかった。

 なんと日魅子はこの耶麻台国という国の女王様なのだそうだ。まぁ、確かに耶麻台国と言えばヒミコだけれども、それが本当にそうだとは。十数年前に滅亡した折、まだ赤ん坊だった日魅子は俺たちが元いた世界に送られ、それで成長するのを待って耶麻台国を復興するために戻ってきたのだとか。
 ……なんてファンタジーなと俺はがっくりと膝を付いてしまった。幼なじみにそんな面白いフラグが隠されていたとは微塵も気づかなんだ。九峪雅比古一生の不覚!

「で、耶麻台国は復興したんだろ?」
「ううん。まだ完全じゃないの」
 日魅子はどこか困ったようにそう言った。

「完全じゃない?」
「うん。実は「火魅子様」……」
 説明しようとした日魅子を亜衣が遮った。なんだよぅ、と俺と日魅子は不満そうな顔になるが、同時に戸が開いて新キャラが顔を出した。
「お時間です。お話でしたらまた機会もありますし、今は国の大事な時期ですので」
 亜衣はそう言って頭を下げる。

 日魅子は一瞬だけ俺の方に寂しげな目を向けた後、ごめんねと呟いて立ち上がる。

「じゃあ、九峪の事お願い。九峪、大人しくしててね。お願いだから」
 そんな事を言って出て行った。一国のお姫様ともなれば確かに忙しいんだろうけど、日魅子に務まるのかそこはかとなく不安だ。つーか無理じゃね?

「では、私もこれで。後の世話はこの者に任せますので」
 亜衣もそう言って立ち去る。

 ふむ、なんか場違いな感じ。亜衣って人はあからさまに俺のことを疎ましく思ってるみたいだし。無理もないか。日魅子と一緒に国を復興させたんだろうから、後から余計なのが来たー、って感じなんだろうし。よく分からんけど。

 そんなことを考えていると、新キャラ(女)が俺の前に膝をついてペコリと頭を下げた。
「お初にお目にかかります。蘇羽哉と申します。これから九峪様の身の回りのお世話をさせて頂きますので、どうかお見知りおきを」
「あ、これは丁寧に……、って別にわざわざ世話をして頂かなくとも……」
「火魅子様のご友人を無碍に扱うわけには参りません。どうぞ何なりとお申し付け下さい」
 なんなりと……。グヘヘヘ、ってちょい待て。なんか釈然としないな~。日魅子の知り合いだからって俺は別に偉くも何とも無いんだぞ?

「え~と蘇羽哉さん?」
「呼び捨てで結構です。何でしょう九峪様」
「あ~、まず様って言うの止めてくんない? 背中が痒くなる」
「いえ、しかし……」
「じゃあ、俺も蘇羽哉様って言うけどいいか?」
「こ、困りますそんな……」
「ならば呼び捨てで言うこと! いいな!」
 何故か強気の俺様だった。なぜならば今まで散々深川とか深川とか深川とかに虐められてきたので、下手に出る人間に強気に出ることが快感だったからだ。ああ、気持ちいい。

「いえ、ですが。う~、仕方ありませんね。では九峪さんと」
「強情な奴だのぅ。仕方ないその辺で手を打つか。して蘇羽哉さんや。兔音とか兎奈美は帰ってきたのか?」
 一番聞きたかった疑問はそれ。
「いえ、まだ見えられてませんが」
「そうかぁ」
 深川、大丈夫かな~。あんな腐れ外道でもある意味では命の恩人だから、知らないところで酷い目に遭ってないといいけど。まぁ、馬鹿みたいに強い兔音と一緒だし、万が一は無いか。でも、兎奈美みたいに兔音が発情してたら、あの二人どうなってたんだろう。うわ~、想像したら下腹部に血が……。

「九峪さん。あの、よろしければ簡単に城内をご案内致しますけれど」
「ああ、うん。じゃあ頼もうかな……と、その前にもう少し話をば」
「はい、何の話がいいでしょうか」
「そうだなぁ~」
 などとお茶を濁したが、実は単に今立ち上がると変態扱いされかねないと言うだけの話だったりする。座っていても若干前屈み。理由は人体の神秘だけどねっ。






 蘇羽哉と川辺城の中を一通り見て回り、ついでに何人か幹部を紹介して貰ったりした。驚いたことに耶麻台国を仕切ってる連中はとても若い。衣緒も十代半ばくらいだろうが亜衣にしてもまだ二十代前半。その上女性が多くて俺様としては大変嬉しい。日魅子の知り合いだと聞かされると途端に恐縮されるのが妙な感じだが。
 当の日魅子は耶麻台国の女王なのだから仕方がない。まぁ、正式な即位には色々とやらなくてはならないことがあるらしく、今のところは暫定的なものだとは聞かされていたが。

 ――それにしても日魅子がねぇ。

 笑えてくる。俺が知っている日魅子はとても国なんて統べる柄じゃない。と言うか、一介の女子高生に過ぎない。曲がりなりにもこうやって国を復興させてしまったというのは、未だに事実として理解できないでいた。恐らくは補佐する人間が優秀なのだろうとは思うが、それにしても……。

「に、しても兔華乃達はまだ戻らないのか……」
 ぽつりと呟く。外は夕暮れてきて、もうすぐ日が沈むだろう。今日はもう会えないかもしれない。

「……大丈夫、だよな」
 脳裏を過ぎるのは深川のこと。
 出来れば二度と会わない方が自分の為だろうとは思うのだが、それでももう一度会いたいと思う。出来れば脅されていない状況で、ちゃんと深川と話がしたかった。とは言え深川は確か復興軍とも反目しているらしいから、もしかしたら捕まっちゃったりするかもしれない。あいつの事だから多分ものすごいことをやらかしちゃってるんだろうけど、どうにか日魅子に頼んで許して貰おう。
 確かに、あいつは悪い事してきたし、実際悪人だと思う。

 でも、俺は決めたんだから。
 あいつにきれい事を押しつけると。

「九峪さん。なにニヤニヤとしてるんですか?」
 蘇羽哉が怪訝そうに聞いてきた。
「いや、別に。それより蘇羽哉はいつまで俺の所にいるんだ? 仕事とかは?」
「私の仕事は九峪さんのお世話ですから」
「ああ、そうなんだ。でも、俺ってこれからどうすればいいんだろうねぇ」
 正直日魅子がいるからなんとなくいるけど、実際場違いな感じだし。
 賓客扱いは楽でいいけど、何もしないというのもどうも……。

「――失礼します」
 凛とした声が聞こえて戸が開く。顔を覗かせたのは亜衣という女だった。
「こちらにおられましたか。九峪殿、折り入ってお話が……」
「俺に? はぁ」
 入れ替わるように蘇羽哉が部屋を後にし、亜衣さんが俺の前に座る。

 お茶でも用意したいところだが、生憎と部屋には何もなかった。

「……で、話って?」
「端的に申し上げて、火魅子様とどういったご関係で?」
 射抜くような視線。なんだか咎められている気分だ。

「どうって言われてもなぁ。幼なじみとしか……」
「男女の仲、と言う事では無いのですか?」
 明け透けな問いに、思わず閉口した。

 俺と日魅子の関係。確かに主の人間関係は宰相としては気になるだろうけど。

 でも、なんて言うべき何だろう。あいつは、恋人と呼べるのか?

「え~っと、特にそう言う関係じゃ、無いと思うけど」
「では、ただのご友人だと?」
「……亜衣さん。俺があいつの恋人だと、その、国としてはやっぱりマズイか?」
 俺がそうではないと言うのは簡単だが、それはそれであいつの気持ちを裏切る事になるし、かといって、立場が変わってしまった以上それもわがままになりかねないし。

「気を使われているのですね。ご配慮痛み入りますが、私は単に事実関係を確認しておきたいだけです」
 亜衣さんはそう言って幾分優しげな笑みを浮かべた。
「う~ん、じゃあ正直に言うけど、俺にとってあいつは妹みたいなモンで、別に女として見てるワケじゃない」
「……なるほど。しかし、火魅子様はどうでしょうね?」
「んなもんあいつに聞けよ」
「正直にお答えしてくれるとは思えません」
「かといって俺が思ってるのと同じだとは思えねーけど。ま、多分あいつは…………好きなんだろうな」
 他に仲のいい男がいるわけでもないし。何かと世話を焼きたがるし。時々怪しい視線を向けてくるし。

「やはり、そうですか」
「困るか?」
「……本音を言えば。いえ、貴方が本気であるならば、私もお手伝いは致します。ですが仮に火魅子様の婿になるというならば、それなりにやって頂くこともありますし」
「やって頂く事って何です?」
「幸い貴方は火魅子様と同じ世界からいらっしゃいましたから、神格化して火魅子様の守護者のような立場で耶麻台国に喧伝すれば、特に問題は無いかと思います」
 ……まぁ、日魅子偉いんだから、俺も偉くならなくちゃ色々問題だって事だろうけど。

「むぅ~、でもそれ多分無理だわ。俺偉そうに出来ないし」
「……時間はあります。どうぞゆっくりとお考え下さい。まだこちらの事も良くお分かりにならないでしょうし」
「ああ、すんません」
「いえ。では私はこれで」
 すっと立ち上がると静かに亜衣さんは出て行った。


 日魅子と恋人に。
 なるならば生活保障もあるし、別にあいつが嫌いなわけでもないし。

 悪い事じゃないだろう。と言うか、自活する能力のない俺にとって選択肢は他に無いような気もする。
 何より、どちらにしろ日魅子を此処に放り出して何処かに行ってしまえるかという話もある。

「無理だなぁ~」
 この世界の厳しさを身をもって体験し、誰かの庇護下でなければ生きていけない、脆弱な存在だと思い知った。
 再び明日もしれぬ所に自らを置いておく事など出来るだろうか?
 野に下り、また人を殺して生きるのか?
 そう考えると頭が痛い。

「まぁ、ここにいるからって必ず日魅子と恋人関係やってなければならないって話でも無いと思うけど」
 いや、そうでないならば俺が此処にいる意味も無いのか?
 あいつを支えようと思ったら、俺もそれなりの立場にならなくてはならない……ような気がする。

「……面倒だなぁ」
 大きくため息を吐いて、床にごろりと横になった。
 出来れば、目覚めたときに何もかもが夢でありますように。













追記:
 なんか日魅子が深川の恋敵になりそうですね~。ああ、どうなる九峪。せっかくだから喰っとく? でも浮気がばれたら殺されちゃうよ~。
 と言う感じで、まぁ、次回くらいにこの深川でのメインテーマが出てくるような気が……。あまり長くしたくないなぁと思ってるんですが、二十章は少なくとも超えるなぁ、これ。まぁ、いいか。
 どうでもいいけど短編でも無いなら『深川』ってタイトルどうかと思うので、その内変えるかも。まぁ、どうでもいい話ではありますが。


 ではweb拍手のお返事をば。

 一件目。

13:28 意地の悪い神様が、ニヤリと笑った――そんな気がした。 ←姫神子?いや神様じゃなかったっけ?
 と頂きました。
 え~と、特にこれは表現上の話で比喩ですから別に神様が本気で笑ってるとか伏線になってるとかそんな話ではございません。まぁ、でも姫御子が神様かと言えば、神格化はされてるけど歴史上の人物でもありますから、耶麻台国内ではキリ○トとかブッ○とか、そんな扱いになるんでは無いかと思います。信仰の対象にはなってそうですから、神と言ってもいいような気もしますが、そこは定義の仕方の問題でしょう。多分。
 コメントありがとうございました。

 二件目三件目。

20:49 深川とか兎奈美にえちぃ事されてるのに、欠片も羨ましくないのは何故だろう?何か不幸の星の元に生まれたみ
20:50 たいにも思える九峪くんの明日に幸せは有るのか!無い!
 と頂きました。
 はい、確かに全く羨ましくありませんね。何せ命と天秤ですから。よほど自暴自棄になっていない限り出来ることなら回避するのが吉。強制フラグが立って餌食になってる九峪は哀れで仕方がありませんよ。
 そして九峪の明日に幸せなど無い! 有り得ません! まぁ、ぬか喜びとか刹那的な幸福は訪れるかもしれませんが。
 コメントありがとうございました。

 四件目。

23:48 おぉ日魅子と再会だ。なんか珍しいパターンですねえw
 と頂きました。
 ええ、日魅子が先に来ているというパターンは、多分はじめてじゃないかなぁと。まぁ、幻聴記も似たような感じでしたが、時系列的に言えばあれも九峪が先に来てる話ですし。何より今回の九峪がヘボなので、アレとはまた違った感じになりますねぇ。まぁ、二人の関係は次回と言うことで。
 コメントありがとうございました。


 他にも叩いてくれた皆様に感謝を!


 では本日はこの辺で。ヾ( ̄◇ ̄)ノ)) バイバイ
【2006/08/30 20:50】 | 小説 | トラックバック(0) | コメント(1) | page top↑
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コメント
深川09おもしろいですね。
ひょっとしたら、九峪はもし耶麻台国首脳陣の想像以上の有能さを見せたら危険かも?

九峪は、その気になれば、NO,2に成る事も不可能じゃない・・・・。 と、思う人もいるかも・・・・・・・・・・・。

もっとも日魅子にしても、亜衣達に取り、御輿として存在すれば、いいと思われている?
【2006/08/31 01:26】 URL | アレクサエル #xfGWKbWo[ 編集] | page top↑
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