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深川13
 深川
 十三話



 ズキズキと額が痛んで頭がボウッとする。
 なんでこんなに痛いんだったか思い出そうとするが、どうもそれも上手くいかない。
 思い出したように右手からも痛みが伝わってきて、その痛みに目を覚ました。

「あ、起きた」
 何故か寝ている俺の枕元に座っているのは、見た事もない少女だった。
 目つきが悪いことを除けば、美少女と言ってもいいかもしれない。まぁ、生憎とそっちの趣味はないので首尾範囲外であることは間違いないが。

「誰だ? 俺は一体……」
 身体を起こして辺りを見回してみるがやはり見覚えがない。壁の変わりに布でしきりがしてあって、見た感じテントみたいだ。
「……起きたんならさっさと出て行って」
「え、ああ」
 ぶっきらぼうな少女に当惑しつつ、身体を起こそうと手を突いて激痛に身体を丸めた。

「ぐ……っ!!」
 そう言えば拳が壊れていたんだと思い出し、おそるおそる目をやると包帯でぐるぐる巻きにされていた。くそ、これでは一人でメシも食えない。
「喧嘩売るなら相手くらい選んだ方がいいよ」
 少女のありがたい言葉に、記憶がようやく蘇る。

「ああ、そっか。そういえば蘇羽哉は?」
「先に帰った。日魅子に絞られてるんじゃない?」
 しれっととんでもないことを言って、早く戻らないとと慎重に立ち上がり、布キレの敷居をくぐる。
 
 その瞬間、思考が停止。



 ――そこはパラダイスだった。


 まず目に飛び込んできたのは街中で惜しげもなく裸体を晒したあの刺青女。確か織部と蘇羽哉が言っていたか。腰と胸を申し訳程度に布で覆っただけの現在の格好もイイ。乳も尻も通常の規格からははずれていて、職人さんありがとうと言ったところだ(?)。
 次に見えたのは金髪ショートカットと、黒髪のロングの二人組。二人とも織部には一歩譲るが、それでも抜群のプロポーション且つ容姿端麗。こちらを見て何故か浮かべる企みの眼差しが怖かったが、それはこの際置いておこう。多分些細なことだ。
 そして、そしてそして、最後を飾るのは頭の上で髪をまとめた、同い年くらいの少女だった。
 少女、と言う年齢ではあるが、その容姿、肢体、ありとあらゆる身体の構成が神の領域。正直現代でもこれほどの美女に見えたことは無い。透き通るような肌に全体のバランスを考慮に入れた絶妙な乳と尻。そして腰のくびれから整った顔立ちまで、文句の付けようが一切無い。

 その上、織部と同じかそれ以上に薄着だし。

 俺の鼻の下は一瞥してから一瞬で三センチは伸びた(推定)。

「……あら、目が覚めましたか」
 そう言ってにこやかな笑みを浮かべて、神の造形品が目の前に立つ。

 ――うわぁ。顔ちっちゃい。肩幅狭い。滅茶苦茶綺麗。剥製にして床の間に飾りたいなぁ。

 アホな事を考えていると、それを気にした様子もなくぺこりと頭を下げる。

「芸人一座の座長で志野と申します。お話は蘇羽哉さんの方から、かいつまんで聞いておりますけれど」
「え、ああ、そう? って、やっぱり芸人なのか……」
 織部を見た瞬間にそれくらいは分かっていたが、それにしても目の前の少女が座長というのはなんだか……。年齢的にもかなり若いし。若いというか幼い。まぁ、別にいいか。似たような歳で日魅子は女王様であらせられるわけだし。でも実力でなってるだけ志野の方がやはり凄いな。

「もうお加減の方はよろしいのですか?」
「ああ、うん。ありがとう。と言っても微妙に記憶が混乱してるんだけど。助けて貰ったのかな?」
「ええ、まぁ」
 何とも言えない表情の志野。

「気にするなよ。助けたって言っても偶然だからな」
 苦笑しながら言ったのは織部。

「偶然?」
「ああ。オレの演目が終わった後で騒ぎを起こされたもんだから、客が引いちまってな。騒ぎを起こした馬鹿を一発ぶん殴ってやろうと思って捜してたんだよ」
「ああ、そりゃまた済まなかった」
「そしたらその当人の片方は耶麻台国のお偉いさんだって言うんでな。間違っても殴るわけにもいかねぇし」
「殴っても良かったんだけどなぁ」
 苦笑すると織部が腰を上げて、俺にぐいっと近づいてきた。

「あん? 本当にやるぞ?」
「織部姉さん止めて下さい。火魅子様の逆鱗に触れますよ?」
「ふん」
 志野に止められて織部はすごすごと引き下がった。さすが座長本当に殴られたらどうしようかと思った。

「迷惑掛けたみたいで済まなかった」
「いえ。そんな事はありません」
「さて、じゃあ俺は宮城に……」
「お待ち下さい」
「ん?」
 がしっと俺の腕を掴んだ志野の瞳が、何故かしらキュピーンと擬音混じりで光ったような気がした。

「な、なんだ?」
「火魅子様から迷惑分働かせるように仰せつかってますから、暫くこの一座で雑用して下さいな」
 ニッコリと笑ってお願いされた。

「……ええと、日魅子がそう言ったのか?」
「はい。いい社会勉強になるからと」
「は、はは」
 俺は乾いた笑いを零すと、がっくりとその場に膝を付いた。






 各地から送られてきた陳情の書かれた竹簡の山を亜衣と共に捌く。
 まだ復興して間もない耶麻台国だけあり、また実質支配体制のそう取り替えでもあるから、中央に寄せられる陳情の量は膨大なものになっている。最高権力者として一日の大半はこのような雑務に追われることになっていた。
 だが、正直に言うならばこちらの方が性に合っている。
 戦争で、人を殺すよりは随分と……。

 徹夜で深川の拷問を楽しんでいた亜衣は、疲れは見えるがまだ興奮が残っているのか視線が怖い。巫女としてあるまじき空気を纏っているのが火魅子になった私にははっきり分かったが、今の亜衣は巫女として私に仕えているわけではないので何も言わない。言えば聞く人でもないし。極刑確定で、生かしておくわけにはいかない罪人相手に楽しむ分には、目を瞑らなくてはならないだろう。

 とは言え……

「どう? 深川は吐きそう?」
 仕事をこなしながら何気なく聞くと、亜衣も手を休めることなく質問に答える。

「やはりしぶといですね。ですが時間の問題でしょう。頭のおかしい女ではありますが、それでも大分憔悴してきました。……そうですね、二、三日中には例のものの場所も……」
 クスクスと笑いながら楽しそうに語る亜衣。

「分かっていると思うけど、殺したり壊したりしないでよ? 拷問が目的じゃないんだから」
「分かっておりますよ。まだまだやり足りないですからねぇ。ええ、壊したり殺したりなど頼まれてもやりません」
「……まぁ、適任が貴方しかいないから任せるけど。こちらの仕事も減らすわけにもいかないし、大変でしょうけど頑張ってね」
「はい、お気遣いありがとうございます」
 そう言って頭を下げる亜衣。

 亜衣が拷問に精通しているのは反乱軍時代に、敵を捕獲したときに情報を引き出すために身に付いたらしい。私が九州に来るまで満足な反乱も起こせなかった時分の事だ。来るべき日に向けて亜衣は情報をより多く集めることに固執していた……と言い訳していた。
 が、それは建前な様な気がする。
 こんな九州の片田舎で捕らえることの出来る狗根国の関係者など、通常で考えれば下っ端の兵士くらい。とてもではないが拷問したところで有益な情報など得られない。そもそもそんな要人がうろつくような場所でもないし、うろつくにしても少数の反乱軍に捕らえることの出来るような警備で出歩かない。
 やはり趣味なんだろう。

 羨ましいとは思わないが、そこまで血や悲鳴を好きになれるなら、私ももう少し楽だったろうに。まぁ、同じ事かもしれないけど。人を殺しても何も感じなくなってしまうことも、それを好むことも。

「そう言う火魅子様の方は、どうなりました? あの剣の男は」
 剣の男……。

 今のところ、その事実を知っているものは極少数。だが、勘付きはじめている者もいるだろう。
 深川が奪った例のものの事を知っているもの。
 九峪が異世界から突如現れた事実に目を付けたもの。

 確証をもてるのは私だけのはず。
 今目の前にいるこの女も、いずれ必ず裏切るだろう。

「蘇羽哉と一緒に街に出て行くと言っていたけれど。まぁ、心配はいらないでしょう。清瑞を貼り付けているしね」
「なるほど。それならば……。しかし大丈夫ですかね。今街には例の一座の者達が来ていると噂に……」
「え?」

 例のなどと言うまでもなく、亜衣の口から出る一座と言えば志野達の事だろう。
 だけど、志野達は……

「くっ! 直ぐに呼び戻さないと」
「お待ち下さい。火魅子様直々に出て行かれては騒ぎになります。城下のものも火魅子様の顔は大概知っておりますから」
「けど、九峪が!」
 叫んだ瞬間、亜衣がニヤリと笑った気がした。

 いや、表情は何一つ変わっていない。

 だが、確実に笑った。

「ともかく、早急に呼び戻すように兵を出します。私はこれで……」
 楽しげに笑う、亜衣の後ろ姿。

 出来るだけ素っ気なく、九峪の間での顔は演技だと思いこませていなくては、いずれ九峪は私の弱みになる。

 そんなことは分かっていたのに、つい顔に出た。

 笑いたいだろう、亜衣。
 その気持ちは、分かる。

 だけど、九峪に何かあったら……

 その時は――













追記:
 十三話をお届け。今週は多分これっきり。気まぐれが起きれば別ですけどね~。
 さて、志野達一座が本格参入で、その上今回遂に出番が消えた深川。メインヒロインって何ですかと自問自答する日も近いかも。まぁ、脇役書いてる方が楽しいという小説を書く上での普遍の法則のせいだと諦めて貰いましょう。こんなはずじゃ無かったんだけどな~。


 ではweb拍手のお返事でも。
 本日分しか無いので、それを。

8:22 げ、げげげげ、げげげげんげんげんげん、げんっ、ちょおーきーー!
8:23 幻聴記ー!
8:24 深川物語、血に染まって黒い日魅子とか拷問サド亜衣とか面白いですけど。
8:25 けど、いつまでも心喪失状態の日魅子とか敗北寸前復興軍とか、
8:25 気になって仕方ないやないですかー!
 と頂きました。
 あ………………。
 いえ、別に忘れていたわけではありませんよ(汗 ええ、多分。深川を書くのに夢中で手が着かないとか言うわけでもなくて、何というかアレです。単純に時間が無いのですよ。まぁ、それも言い訳ですけど。
 幻聴記もそう長く続く話でも無い(予定)なので、一気に書いてしまえばいいような気もするんですが、まぁ、どのみち今月中は厳しいので来月かなぁ。催促も来たことですし考えて見ます。
 コメントありがとうございました。

 他にも叩いてくれた皆様ありがとうございます。

 そして、アレクサエルさんからのコメント。

 相変わらず、GOODな!!!!
 毎度過分な評価をいただき恐縮です。


 志野達は、どういう立場なのでしょう?  
推測すると元火魅子候補と言う感じでなく、耶麻台国協力者、かなり中枢に近い?
 志野達の立場ですか。表向き復興軍時代の良き協力者。しかしてその実体は! って感じです。意味が分かりませんね。まぁ、追々明かされるでしょう。


 考えてみれば、キョウがいないのだから、火魅子候補を確定出来る存在が無いのですよね。 精々、星華や藤那が王族と証明出来る程度かな?
 香蘭も書付があるから王族と認められるかな?(もっとも、偽造や前作「出雲盛衰記」であるように、証拠なんて盗む事が出来ると、言いがかり?をつけられるかな?)
 キョウがいないことで藤那、星華以外の火魅子候補が主張できないのはその通りですね。この二人に関しては伊雅が認識してるので証明自体は可能です。藤那の場合は神器も持っていますからなおのこと。星華はその点やや弱いですが。問題になるのは天魔鏡がいつから無くて、そして火魅子候補を天魔鏡で選別していたのかどうか、という点だと思いますが、その辺も今後書ければと思います。忘れないといいなぁ(ぉぃ
 香蘭については出番自体無いかも(ぇ あ、キャラがいなくて話が進まなくなったら出てくるかもしれませんが。盛衰記でも本来出さない予定だったくらいで、大陸からのお二人さんは少々邪魔な事もあったりするものですから。


 当然、志野、伊万里(里長が素性を知っている?)、只深(養父が知っている?)が王族なんて判る訳ないか?
 もっとも、日魅子と言う直系の女王がいる以上、王族なんて星華を除けば、危険極まりませんよね、いや、星華にしても、亜衣は、ともかく、日魅子の方が、将来、消そうとしようとするかも・・・・・・・・・。
 志野、伊万里、只深については王族なんて絶対に分かりませんね。なので一般人レベルの扱いに。伊万里に出番があるかは謎ですし、只深はほぼ確実に出てこな(ry 志野については役回りも結構アレですし。どうアレなのかは秘密ですけどね。
 ともかく火魅子候補自体の存在意義が日魅子がいる以上無くなるというか、限りなく薄くなるので、今のところ日魅子の元に一本化している状態なのです。日魅子も星華を暗殺とかは現状考える必要もない状態、と言うところでしょうか。まぁ、思惑は悲喜交々で、作中で出てくるキャラの大半がお腹の中が真っ黒なので、状勢は変わっていくとは思いますが、果たしてそんな所を細かく書くかは謎ですね。
 コメントありがとうございました。


 では本日はこの辺で。ヾ( ̄◇ ̄)ノ)) バイバイ
【2006/09/19 16:34】 | 小説 | トラックバック(0) | コメント(2) | page top↑
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コメント
うーむ、13話、おもしろく、更に謎が深まって行くような・・・・・。
亜衣の小勢力時代からの拷問の趣味、おしゃるとおりですね(笑)。
亜衣は、拷問相手が誰でもいいのか? それとも美女が美少年でなければとか(笑)。

清瑞は、一応、日魅子直属なのか?
NO,2?の亜衣もいつか裏切るのが、想定の範囲内か?(ホリエモン)
日魅子も亜衣の後釜を考えているのか?
志野をもう警戒しているのか?
 ムムム、益々楽しみです。
【2006/09/19 22:34】 URL | アレクサエル #xfGWKbWo[ 編集] | page top↑

どうも、北野です。

作中で出てくるキャラの大半がお腹の中が真っ黒
(´▽`)
相変わらずですねぇ。
(褒めてるやら貶してるやら・・・、いや褒めてるんだよきっと)
おかげで本来大した出番もない蘇羽哉が印象の良いキャラに。
ヒロイン(?)の出番も何やら怪しくなってるようだし。
いっそ蘇羽哉が出張ってはこまいか。
まあそんな事はないでしょうけどね。
ていごさんだし(マテ)
今後も期待しています(ナニヲ?)
【2006/09/25 08:10】 URL | 北野 #-[ 編集] | page top↑
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