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深川14
 深川
 十四話



 てっきり川辺の街中で興行している間の雑用だと思っていたのに、気づけば街を出ていた。
 ……なぜ?

 そもそも雑用をやれといわれたのだが、俺は右手が目下のところ故障中で何もできない。口出しすることもできないので隅のほうで小さくなっていることくらいだ。
 そもそもこんな状態でなんで芸人一座なんかに……謎だ。
 日魅子のやつ一体何を考えているやら。

 荷馬車の横を歩きながらそういえば何処に行くのか聞いていなかったことを思い出す。
 いくらなんでもそれくらい聞いておけというんだ。まぁ、どうせこの辺の地名など何一つ知らないのだとしても。

「志野。一体どこに行くんだ?」
「さて、何処にしましょうか」
 志野はとぼけたことを言った。
 俺が顔をしかめると鈴が鳴るような笑みを零して、そっと俺に耳打ちする。

「少し、お話があります」
 そういって意味ありげに俺の右手を引っ張る。
 負傷中の右手は私見で全治一ヶ月の重症。カルシウムが足りなかったのか中指骨が軒並み全滅。これからの先行きが不安なことこの上ない状態だった。

 苦痛に呻きながら森の中に引っ張っていかれた俺。

「し、志野。い、痛いから、はなして」
 泣きそうになりながら言うと、慌てたように手を離す志野。
「すみません。つい」
 何がついだ。にこやかに謝りやがって、この確信犯め……

「で、話って? なぜか知らないが女性と一対一になると膝の震えが止まらないから早くしてくれると助かるんだけど……」
 そうなのだ。軽い女性恐怖症。いや、複数人なら大丈夫なんだけど、こういう寂しいところで二人きりだとトラウマが……

「実は、火魅子様はあなたがここにいることを存じておりません」
「なぬ?」
 嫌な予感がヒシヒシと。

「それは、どういうことかな?」
「実は亜衣さんにあなたを連れ出すように頼まれました」
「……話が見えないのだが。密かに消してくれとでも頼まれたのか?」
「まさか。そんな勿体無い」
「も、勿体無い?」
 さらに困惑する俺。

 なんだ? やはり俺には俺には知らない何らかの利用価値があるってことなのか?
 でも、単純に思いつくことだと……

「むぅ。亜衣さん謀反でも考えてるのか……」
 体のいい人質。それくらいしかないだろう。
 日魅子を傀儡にするために俺を利用する。まぁ、間違っちゃいない。でも、そんなことわざわざしなくても大丈夫な気がするけどなぁ。

「じゃあ、志野もグルってことでいいのか? それだとわざわざ教える意味がよくわからないな」
「ええ、もちろんグルなどではありませんよ」
 そう言ってニコやかに微笑む志野。め、目が笑っとらん!


「じゃ、じゃあ親日魅子派?」
 そんなものあるのかどうか知らないけど……

「いいえ。フフフ、私ほどあの人を恨んでいる人はいないと思いますけど……、ですがそれとこれとは別問題です」
 日魅子を恨んでいるけれど別問題。
 と言う事は、日魅子と俺を連れ出したことは関係がない。
 ならば俺はなぜここに?

「あなたが、きっと鏡の手がかりを知っているはずです。何処ですか?」
「は?」
 鏡? 鏡って鏡だよな?

「え~と、あいにく俺は何も持ってないし、心当たりもないけど?」
「そんなはずはありません! 鏡はあの深川が持っていたんですから!」
 その叫びに俺は首をひねる。

 深川、鏡なんか持ってたかなぁ。使ってるの一度も見たことないし。

「まぁ、確かに手荷物なら持ってたけど、その中にあったかどうかなんて知らないなぁ。大体深川だぞ? 荷物に無断で手をつけようものならどんな目にあうことか……」
 う、想像しただけで吐き気が。

「……でも、私なら必ずあなたに」
「いや、志野と深川はだいぶ違うと思うけどなぁ。そもそも大事なものなんだったらあいつ俺に絶対預けないと思うけど……」
 そこまで信用された記憶もないし、そもそも信用なんてあいつがするとも思えない。

「そうですか、あくまで黙秘を決め込みますか」
「え、いや、そういわれても本当に知らないし……」
 遺憾なことに志野は俺がとぼけていると受け取ったらしい。

 その顔から表情が消え、まるで虫みたいな無機質な目で俺を見据える。
 虫の目も有機質だが、そんなくだらない突っ込みは置いといて……

「珠洲」
 名前をつぶやいたと同時に、俺の体は木に括り付けられていた。






 ……生きてる。
 手足は――動く。
 思考もはっきりしている。

 身体全体がまだ苦痛に疼くが、それでも状態としてはそれほど悪くない。
 とは言え、この状態で単独で逃げ出すのは不可能か……

 僅かに身じろぎすると身体を釣り上げている鎖が擦れ合い、金属特有の音を発する。
 目を開き、室内を見回すが今は誰もいない。

 高を括ってくれるものだ。
 だが、好都合。
 時間の感覚がはっきりしないが、亜衣が消えたと言うことは日中だろう。

「そろそろ、か……」
 顔を上げると、軋むような音を立てて分厚い木製の扉が開いた。

「まだ生きているか」
「勝手に殺すな」
 待ち人は私の方にまっすぐ歩いてくると、手を縛り上げていた鎖をその手で引きちぎった。

 支えが無くなり、私は床に膝を突く。

「手ひどくやられたものだ。まぁ、五体がくっついてるだけマシか」
「それより、早く行くぞ」
「……そうだな。姉様に見つかると拙いからな」
 そう言って私を担ぎ上げたのは、魔兎族の次女。兔音だった。

「あらかじめ聞いておくが、本当にあいつがそうなんだろうな」
「……ああ、間違いない。だが、それには天魔鏡が必要だ」
「それならばお前が……」
「ともかくここから脱することが先だ……」
「わかった」

 全ての願いが叶う扉。
 それを開くために必要な鏡と剣。

 私はそれを手に入れなければならない。

 いや、私だけが……

「どこに行くのかしら? 兔音」
 部屋を出ようとした直後、一番厄介な輩が道を塞いだ。

「姉様……」
「説明しなさい。なぜ、こんな真似を?」
 幼い顔に浮かべた笑みに、兔音は戦慄している。
 実感こそ湧かないが、この見た目幼女の魔兎族は、その実この世で最も強い。

 打倒する術はある。
 だが、この場でその条件を満たせないのも事実だ。

「……兎華乃とか言ったな。お前は、欲しいものはないか?」
 掠れた私の声に、片眉を吊り上げる兎華乃。

「欲しいもの? 私をもので釣るつもり? 生憎だけど……」
「鏡と剣……。欲しくはないか?」
 精一杯の笑みを向けた私の言葉に、兎華乃は目を見開いた。

「鏡と剣……。いえ、でも鏡はともかく剣の方は」
「既に半ば手中にあると言うのにか?」

 兎華乃は瞬時にその言葉の意味を推測した。

「九峪……さん?」

 答えの変わりに笑みを浮かべてみせる。

「そんな、でも、彼は人間でしょう?」
「異世界のな。鏡の場所は半ば分かっている。おそらくそれが近づいたが為に、あいつがこの世界に召喚された」
「……なるほど。鏡は貴方が持っていたの。てっきりあの女の私怨で拷問しているのだと思っていたけれど。ふぅん」
 本当なら、コイツを仲間に引き入れたくはない。

 これは賭だ。
 叶えられる願いが一つであるのならば、その後は血みどろの闘争となる。

 その時、私は勝たなければならない。何とも嫌な展開だ……

「……まぁいいでしょう。現状私が耶麻台国にいる理由は何も無いのだから。でも、大丈夫かしら?」
「何がだ?」
「九峪さんがそうだと、日魅子は気づいているわよ? そして亜衣も。でなければ対応がおかしいし」
「九峪など後回しで構わない……。鏡が手に入れば、剣は自ずからやってくるのだ」
 遙か昔の伝承。どこまで本当かなど誰にも分からない。

 だが私には確信がある。

 その伝承が真実でなければ、九峪は私の前に現れなかった。

 その事実こそが全てを物語っている。

「そうね。とにかく此処を出ましょう。話はそれからよ……。どのみち九峪さんももう此処にはいないのだし」

 兎華乃の何気ない言葉。


 つい数秒前にどうでもいいと言ったはずなのに、なぜだか私はその台詞に胸がざわつくのを感じていた。













追記:
 十四話をお届け……。
 まぁ、ギリギリ今月も五回更新で最低週一というペースは守っているようですねぇ。まぁ、途中随分空白もありましたが。今週はもう一回くらいは更新したいものです。……できるかなぁ。
 深川本編の方は相変わらず混沌としておりますが、もっと混沌とさせてしまいたいような気も……。先を考えるのが面倒になるので止めておけばいいのにねぇ。まぁ、収拾がつかなくなったら力業で(マテ


 ではweb拍手のお返事です。
 20日分二件。

16:46 志野が九峪を取り込もうとしてるのか?題名深川なのにこのまま往くと、亜衣は勢い余って深川を殺してしまっ
16:48 た、の一文で深川死亡の可能性も有りそうですねぇ、本当にそうなったら笑えませんが有りそうだなぁ。
 と頂きました。
 志野は九峪を拉致誘拐して何を企んでいるのか。まぁ、軽く殺されるかもしれませんね(失笑 深川の方は今回見ての通り最強のカードを引き入れましたので、無事に脱出できれば当分は大丈夫でしょう。
 まぁ、死なないとは言いませんし、殺してみたいなぁとも思うのですが。いや、ほら、キャラ的にその方がらしいというか(ぉぃ
 コメントありがとうございました。

 21日分。

9:13 もうすぐ三十万ひっと、がんばれ~
 と頂きました。
 そうですねぇ。気づけば十三階段の方が三十万ですねぇ。明日には多分……。一ヶ月以上更新してないな……(汗 え、ええと、できたら今週中に編年紀を一章分くらいは出したいと思います。
 コメントありがとうございました。

 他にも拍手して頂いたみなさま、ありがとうございました。

 では、コメントの方を。
 アレクサエルさんから。

うーむ、13話、おもしろく、更に謎が深まって行くような・・・・・。
亜衣の小勢力時代からの拷問の趣味、おしゃるとおりですね(笑)。
亜衣は、拷問相手が誰でもいいのか? それとも美女が美少年でなければとか(笑)。
 謎は深まってきても、結局最後まで分からないままになっていることがあったりするんじゃないかと、戦々恐々ですねぇ。作者としてはその辺どうでも良かったりすることもあるのですが、拙いですよねぇ(汗 亜衣は盛衰記に引き続き極悪非道ですが、最終的にどうなるのかが、作者自身楽しみです。ええ、もうそのシーンを考えるだけで愉快ですね。
 亜衣の趣味についてですが、原作では趣味が特殊とあったはずですから、一番好きなのは嵩虎みたいな奴をいびる事だと推定されます。まぁ、深川もある意味ゲテモノの類ですから、対象としてはいいのかも(笑


清瑞は、一応、日魅子直属なのか?
NO,2?の亜衣もいつか裏切るのが、想定の範囲内か?(ホリエモン)
日魅子も亜衣の後釜を考えているのか?
志野をもう警戒しているのか?
 ムムム、益々楽しみです。
 清瑞については、属性は中性と見なしていますが、まぁ、中性であるだけ日魅子には服従しているという感じかと。次回出番があるのでそこを見て頂ければなんとなく分かるかも?
 亜衣の裏切りはいつ公然となるか、と言う点が焦点ですね。日魅子も亜衣は獅子身中の虫くらいに見てますから、後釜が見つかったら速攻で今の職から蹴落としそうな感じです。何にしても亜衣が優秀で、耶麻台国が人材にかけてる以上、明確な証拠が無い限りおいそれとは切れないでしょうけども。
 で、その後釜に九峪が~、という展開はまず無いですね。なぜならば深川がヒロインだから。後はご想像にお任せします。
 志野の立ち位置は結構重要ですけど、その辺はお楽しみと言うことで。
 コメントありがとうございました。


 続いて北野さんから。

どうも、北野です。
 ごぶさたです。北野さんも火魅子伝の長編を遂に連載開始したようですね。期待してます。


作中で出てくるキャラの大半がお腹の中が真っ黒
(´▽`)
相変わらずですねぇ。
(褒めてるやら貶してるやら・・・、いや褒めてるんだよきっと)
 あ、相変わらずって、そんなに黒いかなぁ。思い当たる節がたくさんあり過ぎて否定できないのが悔しいですね。でも、黒いキャラってステキですよね(ぉぃ


おかげで本来大した出番もない蘇羽哉が印象の良いキャラに。
ヒロイン(?)の出番も何やら怪しくなってるようだし。
いっそ蘇羽哉が出張ってはこまいか。
まあそんな事はないでしょうけどね。
ていごさんだし(マテ)
今後も期待しています(ナニヲ?)
 蘇羽哉が良キャラですか。いや、まぁ、ねぇ? あの人のお腹の中だってきっと……。そもそも九峪を志野に拉致らせる段取りは、亜衣が計画して蘇羽哉に実行させたものだったりするわけで。面ど……ゲフンゲフン、一身上の都合で描写は省いたんですが、まぁ、気まぐれで本当に良キャラになるかもしれません。どうでもいいキャラなので今後の展開次第ですね。
 後、ヒロインの出番が少ないのは仕様です。そう言うことにしておいて下さい(苦笑
 コメントありがとうございました。


 では本日はこの辺でヾ( ̄◇ ̄)ノ)) バイバイ 
【2006/09/25 16:53】 | 小説 | トラックバック(0) | コメント(1) | page top↑
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コメント
14話GOODですね!!!!!
目的には、鏡と剣と・・・・・・・異世界の住民がいるのかな?

どうも、志野と亜衣は、一時的な利害関係の協力者という感じがするような・・・・。

しかし、深川の最初の拷問から脱出する描写、一瞬、九峪の事だと思いました(笑)。

志野も九峪に拷問するのかな? それとも、時間を掛けて尋問でもするのかな?
この件は、やはり、珠洲だけでなく、団員全員が知っているのかな?
楽しみです。
【2006/09/27 07:29】 URL | アレクサエル #xfGWKbWo[ 編集] | page top↑
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