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深川15
 深川
 十五話



 九峪が志野達に連れ去られたと情報が入って直ぐ、私は火向を閉鎖するように兵を出させた。
 主だった街道を閉鎖させ、海にも目を光らせる。
 だが、今の状況を考えれば九峪一人の捜索にそれほど兵を割くわけにもいかない。
 何より他の勢力に九峪の事を悟られることの方が、よっぽど状況が悪化する。

「狗根国の遠征軍ももうじき到着するというのに、今の時期に大規模に軍を動かすことは不可能です」

 亜衣はしかめっ面でそう応じた。
 分かってる。それも全て。

「とは言え大事なお客人。火魅子様も気が気ではあるまいし」
 元耶麻台国副国王伊雅は、渋い顔で擁護してくれるが亜衣に賛成なのは見て取れた。
 伊雅は九峪の価値を知らない。だから単純に私の友人一人の為に、この重要な時期に軍を私用で動かすことの愚を知っているのだ。そして、九峪の事をばらすことは今の段階では到底出来ない。

「清瑞も付いておりますし、いずれ場所の詳細ならばしれましょう。あまり急かずともよろしいのでは?」
 乱破として優秀な清瑞。
 確かにそれが唯一の頼みとは言えたが、それでもどこまで信用していいものか。
 亜衣の息がかかっていないとは断言できない。

「……そうね」
 最高権力者として、ごり押ししようと思えば不可能ではない。狗根国軍の二万や三万如き、私が直々になぎ払ってもいいのだ。だが、私の力とて無尽蔵ではない。疲弊すれば寝首を掻こうとするものは、敵味方どちらにもいるのが現状だ。
 おいそれと切り札は切れない。

「ご理解して頂ければ何よりです。何、その内清瑞から情報が入りましょう。志野も九峪殿を傷つけるなどとは思えませんし、場所が判明次第動くと言うことで」
 亜衣はそう言って話は終わりと席を立った。

 九峪が攫われたという情報が入って、その首謀者が志野であると情報が広まって、川辺城の中は若干であるが騒々しい。
 ため息を吐いて、これからどう動くかを思考していた私は、その何処か浮ついた空気が更にざわめきを増したのを感じた。


 廊下を走る足音。

 駆け込んできた衣緒。

「魔兎族達が、深川を連れて!」

 嫌なことは重なる。

 想定できる範囲の出来事に考えがまるで至らなかった自分に、自嘲的に笑って見せた。






 あぅあぅ。
 死にそうですよ旦那。突然森の中で拘束されたと思ったら、その俺を庇うように変な女が木の上から振ってきて、今志野と珠洲の二人相手に殺し合いしてます。

 こっちは拘束されたまま動けないって言うのに、遠慮無く存分に殺し合いですよ?

 流れ弾は飛んでこないけど、珠洲って少女の使ってる糸が時々逸れて、髪の毛が飛んだり頬が切れたり、頭の上から枝が降ってきたりと、なんだか生きた心地がしません。

 心の平穏が長続きしない自分の人生を本気で呪いたい今日この頃。

 誰かこの拘束解いてくれないかなぁ。その辺でこっそり泣きたいから。


「ふぅ。さすがに二人相手は厳しいか」
 変な女は(志野が清瑞とか言ってたから多分清瑞って名前なんだろう)俺を庇うように立ちながら、額に汗を浮かばせている。

 一方志野と珠洲は、一対二という有利な状況にもかかわらずその表情は厳しい。

 傍目に見ても清瑞一人の力量と、二人合わせた力量は同じくらいだ。だが、まぁ、どちらが不利かと問われれば、それは明らかに清瑞の方、だと思う。

 だって、志野達は……

「座長、手伝おうか?」
 街道の方から織部が現れる。

 そう、増援があるのだ。イマイチ一座の人間の力量は分からないが、さすがに一人で相手に出来る人数じゃない。

 志野も多分それを待っていたんだろう。清瑞に向けて挑発的な笑みを浮かべた。

 一方旗色が一気に悪くなった清瑞は、ちらりとこちらを一瞥する。

「おい」
 ぶっきらぼうな問いかけ。
「な、なんだ?」
「死にたくなければこいつ等に協力的にしていろ。命までは取られんはずだ」
「逆らうだけの勇気など持ち合わせておりませんが何か」

「……ふん。だろうな」
 鼻で笑うと背中を向けて走り出した。
 逃げ足も速い……、と思ってると後方で呻く声が。
 首だけ動かしてそちらを見てみると、足に矢を刺されて倒れている清瑞の姿があった。

「……何事?」
 首を傾げる。

 悔しそうに志野を睨んでいる清瑞。視線の先にある志野はしてやったりと言う表情をしていた。

 ………………わからん。

 が、想像するに多分清瑞を罠に嵌めたと言うことなんだろうが。

「済みませんね九峪さん。少し利用させて貰いました。私どもに貴方を傷つける意志はありませんので、安心なさって下さい」
 などと白々しく言って珠洲に合図を送ると、身体を拘束していた糸が緩んだ。

「……利用ねぇ。え~と、なんだろ?」
 頭の回転がよろしくない俺は、取り敢えず聞いてみる。

「そちらの清瑞さんが貴方に張り付いているだろう事は伺っていましたので、それをおびき出すために一芝居売ったと言うことです。これから逃げないと行けないというのに、尾行が付いていたのでは台無しになってしまいますから」
「ああ、なるほど」
 ずっと付いていたのか……。全然気づかなかった。

「さて、それで貴方の処遇ですけど」
 志野はそう言って倒れている清瑞の方へと歩み寄る。

「……」
 黙って睨み付ける清瑞。
 うむ、怖いなぁ。女が怒った顔ってなんであんなに怖いんだろ。
「……志野」
 このままだとなんだか清瑞って女が殺されそうだと思ったので、声を掛けてみた。
 志野はにこやかにこちらに向き直る。

「なんでしょう?」
 その笑顔は、俺に一切の口出しを禁じる強制力を秘めていた。
 ものすごい威圧感のある笑み。

「あ、あぅ……。なんでもないです……」
「そうですか。さて、それで清瑞さんですけど」
 すっと、志野は柄の両端に刃の付いた剣を清瑞ののど元へと突き付ける。

「やはり殺しましょう」
 そう言って剣を振るった。





 血が飛び散る。



 思ったほどの出血ではなかったが、それでもあふれ出た血は少なくもない。


 目を見開いている清瑞。



「クソ、冗談じゃねぇ」


 口の中だけで呟いて、肩から背中に走る痛みを堪えた。

「お前、なんで……」
 清瑞の押し出すような言葉。
 それは困ったように首を傾げている志野や、周りで見ている一座の連中にも共通した感想のようだ。
 まぁ、確かに護衛対象が護衛を身を投げ出して庇ってたんじゃ本末転倒だ。

 だが、だからって、これ以上クソみたいな光景見せられてたまるか。

「志野、殺すな」
「命令できる立場ですか?」
「うるせぇっ! どいつもこいつも二言目には殺す殺すって、なんなんだよお前等は! 別に殺す必要なんてないじゃねぇか。どうせだからとか、事のついでにとか、念のためとか、精神衛生上とか下らない理由で人を殺してるんじゃねぇよ! ふざけんなっ! バカかお前等は!?」
 その言葉の意味を、誰一人理解していない事も知っている。



 嫌と言うほど知っている。


 深川という実例を見て、あれが多少極端にしろ、似たような考えが一般的であろう事も理解した。

 せざるを得なかった。

 畜生。

 あの日魅子を見たとき、本当に何も気づかずにいられたなら、俺はどれだけ幸せだった事だろう。
 十数年一緒だった奴の、変化に気づかないほど俺が間抜けだとでも思うのか?
 あいつが変わらざるを得ない世界。それは、深川が何度となく語った言葉に倍して俺にこの世界の残酷さを理解させた。

 殺さなければ生きていけない、ではなく、生きるために殺すという選択肢が公然として存在する世界。
 殺すことが行為として、禁忌からはほど遠くなってしまっている倫理観。
 日常なのだ。殺すことも殺されることも、奪うことも出し抜くことも、そして裏切りさえも、全て生きるための手段として容認され、それを誰も躊躇しない世界。


 嫌になる。



 そんなことは間違っていると思う自分が間違っている事を、理解してしまった自分が何より嫌だった。

 冗談じゃねぇ。

 そんな事を認めてなるものか。
 そんな世界をそのままになどしておけるものか。

 どんなにそれが傲慢な事か分からない。

 だが、それでも俺は世界を変えたいと思った。

 俺のためだけに、俺が住みやすい、元生きていた世界と同じにしてやろうと、この時本気で願望した。

 多分、キレたんだと思う。

「必要ならありますよ。足を怪我した程度では、すぐに情報は川辺の方に伝わるでしょう。そうなっては不都合ですからね」
「……ああ、なるほどね。全くどいつもこいつも素敵な頭してるんだから」
 一々突っ込まなくていいぞ。俺の方がめでたい頭だと言うのはもう理解したんだからな。

「正直俺にどんな利用価値があるのか、大して理解も出来ないし、今後の先行きがものすごい不安でしょうがないが、それでも俺を連れ回す気だと言うならばこれだけは誓え。俺の前で俺の認めない一切の殺生をするな。コイツも殺すな。手当をしろとまでは言わないから、せめて放っておけ。足止めは出来たんだから、それでいいだろう? もし殺すと言うなら、俺を先に殺せ」

 死にたいと思ったワケじゃなかったし、殺されない確信があったわけでもなかった。

 ちょっぴり自暴自棄だったのは認めるが、それでも俺はこの時引く気が全く無かった。目の前にいたのが深川でも、多分一緒だっただろう。

 本人の口から自己紹介すら受けたことのない、見ず知らずの女の為に、命を投げだす無意味さは気にならなかった。
 ここで殺せば、俺はまた見逃す。

 ならば同じだ。
 目的を達するために、志を捨てることがあるならば、その時は潔く死んだ方ましだ。

 少し男前に考えて、自己陶酔に浸る。

「では、遠慮無く」

 志野は躊躇しなかった。

「え? ウソ……」

 認識の甘さ、だろうか。明らかに殺傷目的で突き出された志野の剣が、まっすぐに俺の胸へと突き立っていた。

 胸に痛みと言うよりは、耐え難い熱さのようなものを感じたと思った次の瞬間、俺の意識は暗転していた。













追記:
 と言うわけで主人公死亡! 深川完!
 って感じの展開ですがダメですか? ダメでしょうね、ええ、分かってますよそんなことくらい。まぁ、それにしても志野のキャラが変わりすぎな気もしますがどうなってるんでしょうねぇ。
 まぁ、次回をお楽しみに……、していいのかどうか分かりませんが取り敢えずまだ続きます。


 web拍手のお返事。
 25日分。

19:02 相変わらず、すごいね旦那。
19:03 流石は、深川の旦那だね。
19:03 ふふふ
 と頂きました。
 この溢れんばかりの深川への愛よ! 届け世界中に! とかまで言う気はありませんが、メインヒロインがあのザマですからねぇ。そもそも九峪と離ればなれになってる上に、九峪側があまり意識してないというのがなんとも……。やはり深川×九峪の図式になるのかなぁ。と、他人事のような独り言でした。
 コメントありがとうございました。


22:01 この話に良い人が出てきたら速攻死ねそうだなぁ。多分神クラスの超越者か九峪くんが凄く強くなって守ら
22:04 無いと、高い能力もって様と、腹黒さん達に闇から闇に消されそうな気がしますなぁ。
22:06 蘇羽哉はてっきり九峪にちょっかいカケたのを日魅子に嫉妬されて消されたと思ってました。
 と頂きました。
 例えば姫御子ちんが乱入してきても、いいように振り回されてしまいそうな感じではありますね。でもそろそろ清純派のキャラも九峪一人じゃ厳しい感じ。腹黒くない人が出てくるかなぁ……。ああ、でも根本的に存在しない設定なので……。
 九峪の強化はおそらく終盤だけになりそうな感じだし、最悪よわっちいままになるし……。誰かを守れる九峪君にはならずに、むしろ腹黒なお姉さん達に振り回されるのがデフォですからねぇ。立場が逆転する日は当分なさそうです。
 蘇羽哉は多分亜衣の指令で次の任務に移っているでしょうなぁ。日魅子と顔合わせたら容赦なく消され……。
 コメントありがとうございました。



 26日。

6:30 深川復活 志野真っ黒でますます先が分からなくなってきたような……いあ、深川復活はいいはずなんだけどw
6:31 ともかく、どっちに転がるか分からない展開がこの先も楽しみですw
 と頂きました。
 深川復活ですが、出番は更に減るとか言う噂もありますが……(ぇ 志野は真っ黒で思わず九峪をぶち殺してしまうほど。でも彼女絶対清純派じゃないよね。露出狂だし強権政治好きそうだし。アレに比べれば口が悪いだけの珠洲の方がかわいげがあるような。
 話がどの辺に転がっていくかは確かに分かりませんが(ぉぃ なるべくコンスタントに出して行ければいいですねぇ。
 コメントありがとうございました。

 他にも叩いてくれたみなさま、ありがとうございました。


 では、毎度おなじみアレクサエルさんのコメントを。

14話GOODですね!!!!!
目的には、鏡と剣と・・・・・・・異世界の住民がいるのかな?
 鏡と剣。鏡は天魔鏡で剣は九峪だと言う感じの話にはなってますが、九峪が剣であると判断できているのが日魅子と亜衣、後は深川でその確証も何も今のところはありません。まぁ、前回兎華乃には説明しましたから兎さん達も知っていることにはなりますが。証明できる人材は今のところ日魅子だけなのですが、本当にそうかどうかとか、そんな話もまた別問題ですね。
 欲の皮の突っ張った連中が、九峪を血みどろになりながら取り合うようなドロドロとした話を書きたいわけですが……。まぁ、どうなるかは知りません(笑


どうも、志野と亜衣は、一時的な利害関係の協力者という感じがするような・・・・。
 利害関係の一致したから協力していると言うのはその通りですが、まぁ、知っての通り皆さん腹に一物ありますから、そこで更に……。最終的に誰が九峪を強奪(失笑)出来るかが物語を変えるような気がしますけど、どうなんだろう(ぇ


しかし、深川の最初の拷問から脱出する描写、一瞬、九峪の事だと思いました(笑)。
 今回の九峪にそんな格好いい見せ場などありません! って言うとアレですが。始めは九峪が拷問部屋を見つけてそこからこっそり深川を助け、尚且つ日魅子に文句を言って袂を分かつみたいな話だったんですが、何を間違ったかこんな展開に。アレ? そっちの方が良かったか?


志野も九峪に拷問するのかな? それとも、時間を掛けて尋問でもするのかな?
この件は、やはり、珠洲だけでなく、団員全員が知っているのかな?
楽しみです。
 拷問以前に殺してるし(爆笑 まぁ、本当に死んでるかは次回こうご期待ですが。いえ、死んでてもいいですけどね(ぉぃ 邪魔な清瑞を排除した上で、志野の素敵な企みが半分くらい次回明らかになる……ようなならないような。
 団員は基本的に志野に服従と言うか、志野を信頼してますので何やってても、最終的な目的に導いてくれると信じているでしょう。まぁ、そう言うことにしておいて頂ければ何よりです。
 コメントありがとうございました。


 では、本日はこの辺でヾ( ̄◇ ̄)ノ)) バイバイ

【2006/09/28 16:43】 | 小説 | トラックバック(0) | コメント(1) | page top↑
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コメント
 15話、確かに清瑞が、あっさりと九峪を助けたら味気ないですよね。

 しかし、清瑞を殺したら、伊雅の深刻な恨みを買いますよね。 志野は知らなかったのかな? それとも、構わないと思ったのかな?

 でも、志野の清瑞をあっさりと殺そうとしたけど、昔は、あれが普通なんですよね・・。
戦前の新兵だって、教官の軍曹?から 「お前らは消耗品だ」と言われ、38歩兵銃以下の扱いを受けたとか・・・・・・・・・・・・・。

 でも、九峪のあの態度嫌いじゃ無いです・・・・・・・・・。

 志野が、あっさりと九峪を殺そうとする所は、志野は短慮じゃないかな・・・・・・。
九峪に価値があるのなら、九峪がいくら喚いても、実害が無いのだから、無視すればいいのに・・・・・・・・・・・・・。
 九峪の言葉に志野の勘に触ったのかな・・・・・・・・・・・。

 次回どうなるでしゃろう。
【2006/09/29 22:43】 URL | アレクサエル #xfGWKbWo[ 編集] | page top↑
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