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深川16
 深川
 十六話



「ちょっと~。なに勝手に殺してるのよ」
 茂みの中から弓矢を手に持った女が出てくる。
 どうやら私の足を射たのはこの女のようだ。

 だが、そんな事などまるで目に入っていなかった。
 自分を庇い、地に伏した男から目が離せずに……。

「身の程も弁えない相手だし、大人しく従わないような人を連れて無事逃げられるほど、火魅子様は甘くはありません。それに、代わりには十分なものも手に入りましたし」
 志野の双竜剣が、再び私に突き付けられた。

「どういう事? ただの乱破一人なんて……」
「ただの? フフフ、そんな事はありませんよ」
「? どういう事?」
「清瑞さんは伊雅様の娘ですから」
 放たれたその言葉に、目を剥く。

「何を……バカな」
 口にしたその言葉を、志野は満面の笑みで受け止める。

「あら、知らされていませんでしたか? でも間違いありません。何せ伊雅様の口から直接聞きましたから」
「……ウソだ」
 元耶麻台国副国王伊雅。
 私の育ての親であり、剣を教えて貰った師でもあるが、それはあくまで主従としての立場を前提としてのもの。
 あの方は、私が使えるべき主君であり、間違えても本当の親では……

「本当なの? だったら確かに、真偽も分からない鏡の手がかりを持つ男なんかよりは有用だけど」
「火魅子様とお話なさっているところを聞きましたから、間違いはありませんよ」
「そう、か。でも、おおっぴらに認めてないのも事実でしょ? あっちにただの乱破と突っぱねられたら、やっぱり価値は無いんじゃないかなぁ」
「火魅子様に見殺しになんて出来ませんよ。ねぇ、清瑞さん?」
 あの人は甘い。
 非情に徹しようと振る舞っておられても、どうしようもなく甘い。

 確かに、私の血筋、その真偽がどうあれ人質としての価値はあるのだろう。

 それにしても――

「まさかお前等が天目と組んでいたとはな」
 吐き捨てるように言って、弓を持つ女に目を向けた。
 確か名は虎桃。弓の名手であるとは聞いていたが、実際射られるまで気配すら感じなかった。

「自業自得じゃない? 結局志野達がこちらに来たのは、火魅子の人望の無さが原因なんだしさぁ~。別に咎める事でもないと思うけど? 私たちも九洲解放に動いているのは事実なワケだし」
「……だが九洲の民ならば!」
 吼えた瞬間側頭部に衝撃が走って地面に倒れる。

「ぐ、志野……」

 志野は蹴り飛ばした清瑞を、冷え切った目で見下していた。
「……口は謹んで下さい。貴方が生きてるのだって、単に私の気まぐれなんですからね」

 一座の座員にその身体を縄で拘束されながら、清瑞は九峪を一瞥だけし、心の中で冥福を祈った。






 周りから人の気配が無くなってから数分後。
 おそるおそる顔を上げると周りの様子をうかがう。

「ふぅ、死ぬかと思った……」
 実際意識が数瞬飛んで、死んでしまったと思った。

 志野に刺された胸を見てみる。傷口は痛々しかったし――実際痛い――、それなりに血は出ているが見事に心臓や肺には届いていない。
 むしろ背中の傷の方が痛いくらいだ。まぁ、そちらも死ぬほどの傷じゃないみたいだけど、実際泣きたいというのは内緒だ。

「とは言え、なぁ」
 身体に絡みついた糸をふりほどく。

 まるで死んだふりをしていろとでも言うように、体中に絡みついた糸で指一本動かすことが出来なかった。
 と言うか、多分そう言う意味だったんだろうけど。

「助けられたって事か……。でもなんで?」
 疑問は色々。
 志野は亜衣に頼まれて俺を連れ出したと言っていた。
 そして先ほどの会話から、良くは分からないが天目という奴に協力しているようでもある。
 そして清瑞が王弟の娘で……。

「……ワケがわからんなぁ。説明くらいして欲しいものだが」
「してあげようか?」
 背後からの声に思わず飛び上がるところだった。

「げ、珠洲。お前行ったんじゃ」
 目つきの悪い娘は、蹲っていた俺の尻を蹴り飛ばすと、上着をはだけて背中の傷口を睨み付ける。

「な、なんだ?」
「手当てするから大人しくしてて。暴れて手元狂うと困るから」
 ぶっきらぼうにそう言って自前の糸と針で傷口を縫いはじめる。

 背中だったから別に発狂するほど痛いというわけではなかったが、それでも肉に針が刺さり、糸が肉を縛り付ける感触は頂けなかった。痛いより気持ち悪い感触の方が強い。

 五分もしないうちに処置を終えると、小さい割りに意外とパワフルに仰向けに俺の身体を転がしてマウントポジションを取ると、今度は胸の傷も縫っていく。
 背中の方は感触だけだったが、胸の方は露骨に視界に入ってくるので更に気持ち悪い。
 しかも背中に比べて痛い。
 刺し傷な分だけ縫う時間は少なかったが、それでも吐き気を堪えるのが大変だった。

 一連の処置が終わる頃には、俺の顔面はすっかり蒼白。消毒もせずに縫っただけなので、破傷風で死ぬかもしれんなとネガティブなことが頭を過ぎったが、どうなるものでもないので無理矢理締め出す。
 人生なるようになる、だ。

 その結果が現状なのだから、その生き方もそろそろ改めた方がいいのかもしれないが……

「……立って」
 珠洲の言葉は短い。
 俺の事が嫌いなのかもしれないが、お兄ちゃん(?)としては少し寂しい所だ。
 懐けば可愛いだろうに。

 俺は言われたように立ち上がると、先に立って歩こうとする珠洲に声をかけた。

「なぁ、何処に行くんだ? それに、志野はなんで俺を殺さなかったんだ?」
「……」
 黙って歩く珠洲。

「珠洲ちゃんよーい。質問に答えてくれってば」
 珠洲は無感動な視線をこちらに向けると、いつもの通り短く一言。

「知らない」
 だそうだ。

 ああ、いいねぇ。会話をぶった切るのにこれほど便利な言葉もない。

「知らないって事はないだろ。そもそもさぁ、俺ってなんでこんな命を狙われるような事になってんのかなぁ。俺の利用価値ってなんだ? やっぱり日魅子に対する人質? でも、さっき志野が言ってた鏡がどうこうとか、それの事なのか?」
 適当に自分の推論を交えながらまた質問をしてみる。

 実際意味不明なのだ。
 日魅子の弱点である可能性は否定できないが、それなら志野は鏡の事など聞いてこないだろうし、そもそもその鏡とやらにどんな価値があるのか俺は知らない。

「鏡のこと、本当に知らないの?」
 咎めるような口調に目つき。いや、実際知らないものは知らないわけで……。
 首を振ると呆れたようにため息を吐いて視線を逸らし、ずんずんと歩いていく。

 人見知りなのかなぁと思いつつ、どうやって心を開かせたものかと思案していると、まるで独り言のように珠洲は話し始めた。

「どんな願いでも叶える天界の扉。その鍵が鏡と剣」
 思い出すように紡がれた言葉に、その意味を考える。

「どんな願いでも、叶える……」
「おとぎ話だけど、その鏡を奪い合って何度も戦争が起きてる」
「って事は信憑性があるって事か……。ふーん。で、その鏡を深川が持ってるって事か?」
 珠洲は首を振った。

「深川が持ってるのは、その鏡を探すために必要な鏡。元々はその鏡こそが天魔鏡だと思われてたみたいだけど、日魅子が違うって」
「日魅子がねぇ。あいつそんな事知ってるのか?」
「火魅子なんだから知らないはず無い。と言うか、唯一知ってるのは火魅子だけ」
「そうか? でもあいつ元々は……」
「何も知らないの?」
 冷めた珠洲の視線が、俺の事を射抜いていた。

「何を?」
 日魅子が辛い目に遭ってきたことは察していたけど、その実体は知らない。
 一体日魅子がどうしてあんなに荒んだのかとか、俺がこの世界に来るまでの数ヶ月、一体何があったのか、とか。

「……知りたいのなら、教えるけど」

 ぶっきらぼうに言った珠洲に、俺は黙って頷いていた。













追記:
 九峪にロリコンフラグが立った!
 なんてことがあるかどうか。相変わらず誰がヒロインなんだかさっぱり分からない節操の無い展開ですが、元々男キャラが少ないから仕方ないんです。まぁ、珠洲とのフラグが成立するかはまだ謎ですが。
 それよりも深刻なのが、話に深川がまるで絡まないところですね。このまま行くと完全に日魅子に喰われそうです。頑張れ深川! 負けるな深川! 次回こそはきっと出番が…………、なさそうですね(苦笑
 九洲の現状は炎戦記と似たり寄ったりでして、だからこそ川辺城が本拠地になってたりするんですけど、天目まで話に絡ませるとどんどん混沌と……。収拾付くといいですね(他人事


 ではweb拍手のお返事でも。
 28日分。一件目。

13:10 怖い女ばっかり、デレっとした子はいなのかな。まぁ面白いからいいけど、、、
 と頂きました。
 でれっとした子はいませんねぇ、今のところ。その内出てくるかもしれないですけど、話の感じから言うと浮きそうですし。使いどころも難しい感じ。まぁ、候補はいますけどももう少し先になりそうです。
 コメントありがとうございました。

 二件目、三件目。

14:21 新説・火魅子伝おもしろかったです!
 21:28 新説・火魅子伝面白かったです!
と頂きました。
 同じようなコメントでしたので、手抜きでしたがまとめてお返事を。続きを書いてないのでこの手の感想は心が痛みますねぇ。ああ、そんな事言うと最近深川以外書いてないなぁ。済みません、そろそろ……と言いつついつになるかは謎。
 ともかくコメントありがとうございました。

 29日分。

4:48 へたれな九峪が頑張った分、非道さが目立つ志野は、目的達成寸前で不幸のどん底に墜ちろと思う今日この頃。
4:51 まあ考えてみれば登場人物皆真っ黒なんですけどねぇ、はっ!狗根国に滅ぼされエンドの方が世のためか!?
 と頂きました。
 志野が極悪になってますが、許してやって下さい。まだ序の口です(嘘 どん底まで行くかどうかは神のみぞ知るですが、今回九峪が生きていたのでいい人フラグが立ったかも? なんて甘い話があるかどうかは次回のお話に……。
 狗根国に滅ぼされた方が世のためって言うのは、半分くらいはあってる気がしますが……。ええ、でもこの物語での歴史的背景を考えると、誰が天下を取ってもこのままだと五十歩百歩かなぁ。まぁ、その辺の話はちょこちょこ書いていこうかと思います。
 コメントありがとうございました。

 1日分。

20:05 ぶっちゃけ舞◯恍先生のより面白いっす。なにより久峪が無敵ってのがイイ!これからもがんばってください!
 と頂きました。
 やや、これまた過分な評価を。九峪が無敵って言うことは深川では無いですね、少なくとも。新説辺りでしょうか? 原作より面白いかどうかは個人の趣味に寄るでしょうが、楽しんで頂けたのならば幸いでした。これからも精進致します。
 コメントありがとうございました。

 他にも叩いてくれたみなさまに感謝!


 では既に恒例のアレクサエルさんのコメントを。


 15話、確かに清瑞が、あっさりと九峪を助けたら味気ないですよね。

 しかし、清瑞を殺したら、伊雅の深刻な恨みを買いますよね。 志野は知らなかったのかな? それとも、構わないと思ったのかな?
 まぁ、どだい九峪を連れて逃げるなど不可能だったんですけどね。体力が無くて怪我までしてるし。清瑞なら担いで逃げ切りそうな気もしますが、相手も相手ですし……。
 清瑞を殺害する気は今回の話を読めば分かりますが始めから無くて、生け捕りこそを目的にしていたらしいです。まぁ、それも名目上。話を補完するために過去編を書こうかどうか現在考え中ですが、どのみちぶつ切りな話になりそうです。


 でも、志野の清瑞をあっさりと殺そうとしたけど、昔は、あれが普通なんですよね・・。
戦前の新兵だって、教官の軍曹?から 「お前らは消耗品だ」と言われ、38歩兵銃以下の扱いを受けたとか・・・・・・・・・・・・・。
 人が消耗品。まぁ、昔ならばそうなんでしょうねぇ。現代だとどうなんでしょうか? 人材育成も結構金がかかる時代ですから、ミサイル一発分くらいに格は上がってるかも? もちろん戯言ですけど。
 そもそも人を人扱いしていたら戦争など出来ないような気も……。ものに存在を貶めることで、精神的均衡を保たなきゃ上官もやってられないんじゃ無いかなぁとか考えてみたりしましたが、まぁ、世の中人でなしもいますのでそれも絶対じゃ無いでしょうかねぇ。


 でも、九峪のあの態度嫌いじゃ無いです・・・・・・・・・。
 まぁ、正直頭は悪いですけどね。なんだかんだでまだ世の中を嘗めているというか、高を括っている部分があるような。あの世界で他人に良心を期待するような打算じみた心根は命取りだと気づいて欲しいもんですねぇ。それが理解できれば少しは九峪も成長するようなしないような。


 志野が、あっさりと九峪を殺そうとする所は、志野は短慮じゃないかな・・・・・・。
九峪に価値があるのなら、九峪がいくら喚いても、実害が無いのだから、無視すればいいのに・・・・・・・・・・・・・。
 九峪の言葉に志野の勘に触ったのかな・・・・・・・・・・・。

 次回どうなるでしゃろう。
 今回の話で九峪が生きていたことになってるので、志野が短慮ではないという証明にはなったかなぁ? むしろ狡猾です。九峪を死んだことにして自分だけで所有しようとしているわけですから。なぜ九峪が必要なのか、その辺りは次回と言うことで。

 コメントありがとうございました。


 では本日はこの辺で。ヾ( ̄◇ ̄)ノ)) バイバイ

【2006/10/02 20:33】 | 小説 | トラックバック(0) | コメント(1) | page top↑
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コメント
16
おお、志野と天目が組んでいた。
亜衣だけでなく、天目も欺こうとする志野凄い!!!!
ん? 亜衣は、流石に天目と組んでいる事は知らないかな?
多分、亜衣は亜衣なりに耶麻台国を愛しているだろうから、天目と組む事は無い気がしますし・・・・・・・・・・・・・・。

志野は日魅子にどんな恨みがあるのか・・・・・・・・・。
しかし、日魅子も自分に敵意を持っている志野を近づけていた、と言うか、放置していた日魅子も、甘いような・・・・・・・・・・・・。

 志野の狡猾さや非常さが目立ちますが、こっちの方が納得しますね。 
原作でも、育ての親の敵を、執念深く、追い、狙い、そして殺した。
邪魔になりそうだった藤那達を躊躇(ためらい)なく殺そうとした。
それまでに、多くの者の口、狗根国、旧耶麻台国を問わず、塞いだでしょう。
それで、原作のような、明るい善人だったら、むしろ不気味かも・・・・・・・・・・。

それでも、珠洲や座員に対してだけは愛情があるのかな?

 まあ、九洲人だからと言って、必ず耶麻台国に忠誠を尽くさなければならない、と言う理屈は可笑しいですがね・・・・・・・・・・・・。
【2006/10/03 22:36】 URL | アレクサエル #xfGWKbWo[ 編集] | page top↑
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