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深川17
 深川
 十七話



 知らなければ良かった。

 自分が誰なのか、どんな責任を背負っていたかなんて……。

 でも、私が好むと好まざるとに関わらず、運命は私に役割を押しつけた。

 あの日、この世界に召喚された私は何もかもを知っていた。






 突如街中に降臨した私は、我に返った瞬間大勢の兵士に取り囲まれていた。
 突然の怪異に兵達も竦み脅えていた。

 二十一世紀の世界とは、何もかもが違うその場所で、私は火魅子としての知識を全て得ていた。
 まるで前から知っていた事のように、その状況を理解する。


 ――ああ、これから私がこの世界を変えるんだ。

 まるで別人になったような感覚。そんなものがあったならば私も少しは女の子らしく混乱できたのだろう。
 でも、変化したことすら感じ取れないほどに、火魅子としての自分が馴染んでいた。

 それでも、姫島日魅子と言う少女は確かに混乱していたのだと思う。


「貴様、何者だ!」

 その街の兵を統率する人間だろう。震える声で、それでも部下の手前自分を鼓舞して進み出た。

「下郎と交わす口など持たぬ。死にたくなければ疾く去れ」


 口から滑り出した言葉の冷徹さに、自分で身震いした。
 そして、そんな事を言って相手が引かないことも当然理解していた。

 今から自分がやらなければならないこと。
 その思考が頭を掠めた瞬間、一瞬だが身体が強ばった。


 ――殺す……の?

 その逡巡。
 しかし、身体は思考とは裏腹に行動に移っていた。
 それは火魅子として、敵意あるものに対する自動的な防衛機能。
 まるで機械のようにこちらの意志など無視された。



 ――そして繰り広げられた虐殺。


 耶麻台国を統べる女王、火魅子。
 その能力は万の軍を凌駕する。
 田舎の町一つを陥落させることなど、身じろぎしただけで行えてしまう。

 自分の口からあふれ出た、聞き覚えのない韻を踏んだ言葉。

 そして差し出された右手から放たれた、灼熱の火球。

 死体など残らなかった。
 或いはそれが唯一の救いか。まるで消しゴムでノートの上の文字を消すように、私を取り囲んでいた兵士達は消え去った。

 逃げる暇など無かった。
 否、敗走を思考する事さえ出来なかった。

 そして、殺されたと認識することも無かっただろう。


 虫けらのように、人が死んだ。



 他人事のように、自分が成した非道を眺め、心がぎちりと痛むのを感じた。






 珠洲から聞いた日魅子と、俺が知っている日魅子が同一人物とは思えなかった。

「あいつが何百人も人を殺した……ってのか?」
「何千人かもしれない。私たちが協力してたのは始めのほうだけだったから、細かいことまでは知らない」
 あいつは人など殺せない。
 想像することすら困難な奴だったはずだ。

 それが、虐殺と言っていいほど人を殺しまくって国を復興させただなんて……。

 正直、日魅子が直接手を下したとしても、せいぜい一人か二人で、それも正当防衛のようなものでだろうと思っていた。
 戦争とは言え一番偉い人間は、後ろに控えて指示を出すだけだろうし、そもそも俺の知っている日魅子じゃ、軍の指揮など出来ないから、それも人任せだったのだろうと……。

 それでも、優しいあいつなら心を痛めて落ち込んだだろし、それで何処か影が差していたんだと勝手に思っていた。
 都合のいい解釈だったと言うワケか。

「つまり、それが火魅子になったあいつって事か……」
 呟いてみたが実感が湧かない。
 どういう現象なのかも、やっぱり俺には理解出来なかった。歴代火魅子の知識と能力がそのまま日魅子に継承されているだなんて。

「でも、あいつは日魅子だった」
 抱えた罪業の規模は想像の範疇を大きく超えていたけど、それでもそれを非難する事は難しい。誰も責めなかっただろうし、むしろ褒め称えただろう。
 ただ自分だけが自分の罪を知り、そして誰にもそれを理解されない。

 罪を犯したと認識した人間は、それを咎められないことにストレスを感じる。

 日魅子が今辛いとすれば、そう言うことなんだと思う。



「……戻るか」


 ぽつりと呟く。イマイチ方向感覚は分からなかったが、それでもそんな話を聞かされたら、今すぐにでも日魅子と話をしなくてはならないと思った。
 多分、ボロクソに貶すだろうとも思ったけど、それでもそれを出来る人間も自分しかいないことだし。
 罪を犯したことを認めてやらなくちゃ、このまま奈落の底までまっしぐらだ。

 そんな日魅子を見ていたくはない。

「珠洲、悪いけど」
「川辺へは戻らせない。と言うより、戻ったら殺される」
「? どういう……」
「志野は貴方を死んだことにするために一芝居売った。その裏を考えれば分かる」

 言われてみても何のことだか意味不明。
 俺が死んだことになっている。
 それが日魅子に伝わったら……

「あいつ激怒して志野を殺しに行くなぁ。多分」
「そして志野は耶麻臺国に向かってる」
「耶麻臺国?」
 聞き覚えの無い単語い首を捻る。

「今九洲を耶麻台国と二分している勢力」
「……戦争を起こすつもりか?」
「元々戦争はしている。でも、今は狗根国軍が迫ってるから休戦状態」
「何がやりたいんだ? そんな事をしても混乱が広がるだけで……」
「だから、それが目的」
「はぁ?」
 珠洲の言うことは意味が分からない。

「志野は鏡の情報も流す。あちこちで欲にまみれた連中が裏切りや独断専行をはじめる。結果的に、この戦争で勝者がいなくなればいい」
「だからなんでだ? 意味がないだろう」
「意味? 意味ならある。どこもかしこも疲弊して、勝者がいなくなれば戦況を見守っていた者が最後に鏡を手に出来る」
「……………………つまり、え~と」
 首を捻り、暫く考える。

 周りに敵対する勢力が無くなった状態で鏡を手に入れたいと言うことは……

「……鏡と剣とやらで叶える望みを独占しよう、って事か」
 珠洲はこくんと小さく頷く。

「叶えられる望みが一つしかないのならば、今それを手に入れても必ず奪いに来るものがいる。だったら欲しい奴でそれを得るだけの力を持つものを先に全て脱落させた方が労力は少ない。そしてどうせなら自分は手を下さずに同士討ちで」

 たんたんと語る少女。平然と、そんな恐ろしい台詞を口にする。

「ふ~ん」

 気のないように返事をしてみても、自分の顔が強ばっているのが分かった。

「で、俺を川辺に帰すと殺されるって言うのは?」

「似たような事を考えるものは何処にでもいる。志野の策に乗っかろうと思ったら、アンタが生きてると邪魔。そうなったら消されるだけ」
「……う~む、思った以上に殺伐な。でも、それだと珠洲は俺をどうするつもりなんだ?」

「暫く身を隠していて貰うだけ。最終的には日魅子が残るだろうから、その時まで」
「なるほど」
 状況を理解して――と言ってもまだよく分からないが、取り敢えず俺がするべき事を考えてみた。

「なぁ、珠洲ちゃんよぅ。一言言っていいか?」
「何?」


「ふざけんな」

 にこやかに言い放ち、同時に俺は走り出していた。













追記:
 迷走する『深川』、十七話をお届けデ~ス。
 今週は機嫌がいいので(?)後もう一回更新しようかなぁ。まぁ、今二十話書いてるから出すのは可能なんだけども。今月暇だし、先月に比べたら更新頻度は上がりそうな予感が……。
 ああ、でも月の変わり目辺りは怪しいですねぇ。
 まぁ、そんな身の上話は置いといて、今回の深川ですが……。
 主人公よ何処に行く! 珠洲フラグ一話にして消滅! 日魅子プチ過去編! と、内容盛りだくさんのような、グダグダやってるだけのような。まぁ、ぐたぐだしてるのはいつものことですね。


 ではweb拍手のお返事を。
 一昨日分。

21:55 久しぶりに訪れてみましたら…新連載が!? 
21:56 いや、これ……腹黒!こわっ!!ガクガクブルブル (((;´д`)))
21:58 もうね、いままでの久峪が一転してへたれなのは新鮮ですが、魅力であるべきな女性陣が…… orz
21:58 ちなみに鍵って鍵ですよね?w 男の鍵ったら真ん中についてるアレしかないっしょ?ww
22:00 鍵は鍵穴に入れてこそかg うわっ なにをすr(くぁwせdrftgyふじこlp;@:
22:02 (副音声1:仙人達がつくる万病に効く薬「金丹」は金と銀でできてるそうです。)
22:04 (副音声2:ちなみに男の○液を金、女の愛○を銀だと書かれている文献もあるそうですよ?ww)
 と頂きました。
 お久しぶりと言うことは盛衰記以来と言うことでしょうかねぇ。まぁ、懲りずに連載してますのでこれからも遊びにきて頂ければ嬉しいです。
 今回の連載のサブテーマが作者の知らないうちに(ナニ?)腹黒になってましたが、おかげで女性陣は確かにいい迷惑。本来なら純朴な田舎ものが素直に一向一揆でもするのが火魅子伝の正しいあり方(偏見)なような気もしますが、戦争って言うとどうもドロドロとさせたくなってしまって……。原作無視も大概にしないといい加減怒られそうですね。今更な感もありますが……orz 
 鍵に関してはまぁ、怒張したイチモt(ry 鍵穴に入れる展開になるかと言うと……。入れた方がいいですか(笑 まぁ、程々に考えておきますが(マジ?
 副音声の豆知識の方は……、なるほど。つまり九峪がにゃんにゃん(死語)する事で作り出される万能薬こそが、本来の伝承だと言うわけですな。それが『全ての病を治す』→『全ての願いが叶う』に変化して、更に別の変な伝承と混ざり合って、今の形に落ち着いたと!
 まぁ、そんな展開にはならないんですけどね。
 コメントありがとうございました。


 え~、次のコメント。

23:13 新説を読んで・・・・・ヒロイン全員ショタコン?
 と頂きました。
 ええ、その通りです(爆 小学生が主人公でハーレムものという暴挙を行う以上、それが当然です。と言うか、なんというか、時代が時代ですので、性交可能な年齢であれば恋愛対象に入ってもいいと思うのですよ。九峪自身かなりませてますし……。マセるとかの次元じゃない気もしますが……。まぁ、皆さん変態なんでしょう(ぉぃ
 コメントありがとうございました。

 更にもう一つ。

23:29 ふふふ
23:29 ふふふふふ
23:30 流石だよ 旦那
23:31 続きも楽しみにしてるからね
23:31 ふふふ
 と頂きました。
 ふふふ
 ふふふふふ
 まだまだこれからでっせミスター(?)
 オチが弱くても恨まないでね(ぇ
 ふふふ
 コメントありがとうございました。


 昨日分。一件目二件目。

0:31 展開に頭がオーバーヒート気味です・・・プスプス(。。; まあ。面白いから良いのですけど
0:32 次回も期待してます~。(もしかしたら、この話では伊万里も真っ黒クロスケなのだろうか・・・)
 と頂きました。
 ごちゃごちゃしてて済みません。これから少しずつ脱落者が出始めますので、少しはわかりやすくなるかもしれません。さて、誰が真っ先に落ちぶれるかは次回のお楽しみに。まぁ、敗者復活もありですけど(爆
 伊万里については出番がそもそもあるのかなぁ。志野以外の火魅子候補が出てくるかというと……。
 コメントありがとうございました。

 三件目四件目。

1:09 「このまま行くと完全に日魅子に喰われそうです。」←この文を読んで、普通に日魅子って人食いする位人外に
1:13 なったんだぁ凄い!と思いました。流石それは無くとも生け贄使った術位平気で使いそうだなあ。
 と頂きました。
 日魅子が人を食う! 新事実発覚! って、食べませんからご安心下さい。グロ描写は嫌いじゃないけど、人食いってあまり萌えないんですよねぇ。個人的に(そう言う問題か?
 生け贄を使った儀式ですが、必要性に迫られれば躊躇はしないんじゃないでしょうかねぇ。ただ、本当に必要でなければやらないでしょうけど。まぁ、そんなことをし出したら、タイトルが深川からサバト火魅子伝とかに変わるかもしれません。
 コメントありがとうございました。


 らすとー。

1:47 ふと思ったんですが、鏡、剣が有るって事は玉も有るんでしょうか?大体この三つはセットって気がしますが。
 と頂きました。
 はいクリティカルな質問が来ました。三種の神器と言えば当然玉も入りますよねぇ。ええ、もう、そりゃ当然。伝承で伝わってないんですけど必要になるんでしょうかねぇ。そうなると玉は蒼竜玉辺りを使うことになるのかなぁとか思いつつ、忘れてなければその辺の話が最後の方で出てくるかもしれないし、そもそも話が破綻しているかもしれないし……。
 コメントありがとうございました。


 他にも叩いてくれたみなさま、ありがとうございます。

 ではアレクサエルさんのコメントを。

16
おお、志野と天目が組んでいた。
亜衣だけでなく、天目も欺こうとする志野凄い!!!!
ん? 亜衣は、流石に天目と組んでいる事は知らないかな?
多分、亜衣は亜衣なりに耶麻台国を愛しているだろうから、天目と組む事は無い気がしますし・・・・・・・・・・・・・・。
 志野の立ち回りが今後の九洲の状勢を左右する……かもしれないですが、九峪はそんなこととは別路線をひた走る事に……なるかも。天目へ日魅子に対する決定的な切り札、九峪を渡さず、その上で清瑞を献上したことでこれから九洲は混沌とすることに……。ああ、恐ろしや。
 亜衣は天目とは組んでいません。あくまで二正面作戦なんて無謀な事を志野がやってるだけです。大体こういう作戦は破綻するんですが、志野は大丈夫でしょうかねぇ(他人事。


志野は日魅子にどんな恨みがあるのか・・・・・・・・・。
しかし、日魅子も自分に敵意を持っている志野を近づけていた、と言うか、放置していた日魅子も、甘いような・・・・・・・・・・・・。
 志野の恨みはそう複雑な事ではありませんが、その話はまだ先になるかなと。日魅子が志野を放置していたのは、その恨み事の辺りの事情で志野に負い目があったからですね。志野と協力していたのは、今回の過去話の直後くらいからなので、日魅子も今ほど冷徹にはなりきれていなかったわけです。まぁ、あそこまで大量殺戮を行った上でそんな話はお笑いですが。それが甘かったと言えば甘かったのでしょうけども、それ故に袂は分かっても警戒対象と見なしてはいなかったのでしょう。


 志野の狡猾さや非常さが目立ちますが、こっちの方が納得しますね。 
原作でも、育ての親の敵を、執念深く、追い、狙い、そして殺した。
邪魔になりそうだった藤那達を躊躇(ためらい)なく殺そうとした。
それまでに、多くの者の口、狗根国、旧耶麻台国を問わず、塞いだでしょう。
それで、原作のような、明るい善人だったら、むしろ不気味かも・・・・・・・・・・。

それでも、珠洲や座員に対してだけは愛情があるのかな?
 原作でも確かにかな~り冷徹ですからねぇ、志野。身内にも厳しい感じですが、敵には容赦ないというか。原作では九峪に看過されてああなったと言う事なのでしょうが、そう言う人物がいなければ変わらないでしょうしねぇ。
 まぁ、そもそも敵討ちにそれだけ執念を燃やせる人間なんですから、身内にはかなり愛情を持っていると思いますよ。同時にそれが信頼にも繋がっているのでしょう。


 まあ、九洲人だからと言って、必ず耶麻台国に忠誠を尽くさなければならない、と言う理屈は可笑しいですがね・・・・・・・・・・・・。
 事情は悲喜交々でしょうし、どんな時代にも流れに逆らう人はいるわけですし。まぁ、少数派ではあるのでしょうけどもね。
 コメントありがとうございました。


 では本日はこの辺で。ヾ( ̄◇ ̄)ノ)) バイバイ
【2006/10/04 18:30】 | 小説 | トラックバック(0) | コメント(1) | page top↑
<<アトガキ 編年紀二十七章 | ホーム | 深川16>>
コメント
17話、なるほど、志野の最終?目的はわかりました。
狡猾で遠大だな~。
九峪に逃げられたら、陰謀がばれるかも知れないから、逃げす訳にはいかない。
しかし、九峪は、阿呆か!!!!! 九峪の身体能力でどうやって逃げられるんだよ!!! それとも、作者が言っていたように、相手の良心とやらに期待しているのか?
いつもの、感情任せの出たとこ勝負か?

 でも、問題があります。 鏡などを手にいれとも、本当に「何でも願いが叶う」、
機能なんかあるのでしょうかね?
Fateの聖杯のように、落とし穴があるような・・・・・・・・・・・・・。
 それに使い方がわからなければ、意味がない・・・・・・・・・・。

 諸勢力に殺し合いをさせる志野、確かに外道ですが、王朝の創始者なんて、全員、
千人のドラキュラ以上に血塗れですからね。

そもそも、原作の九峪なんて、自分が帰還したいという、個人的な望みの為に、全九洲の人々をペテンにかけ、敵味方問わず、日々、大量の死体を生産している。
 新聞を賑わす、殺人鬼なんて、可愛い、可愛い。
 だから、志野が原作の九峪より、特に外道と思いません。
【2006/10/05 20:25】 URL | アレクサエル #xfGWKbWo[ 編集] | page top↑
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