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深川19
 深川
 十九話



 認識と見通しの甘さ……、と言うよりは学習能力の無さこそが問題だ。
 そもそもこの世界で俺一人で生きていけるとでも思ったのだろうか?
 何かを得ようと思っても何一つそれに対する代償を持たないと言うことを、なぜ忘れることが出来たのか……。
 気高い目標もいいが、当面のメシの心配をする方が先だったろうに。



 だれか、ご飯下さい。


 とまぁ、悲嘆に浸ってみたりもしたが、思えば朝食を取って街に出て、志野に拉致されて森の中に放り出されるというめまぐるしい展開の割りに、実のところまだ丸一日ほどしかたって無かったりするわけで、お腹は減っているけど死ぬほどではない。
 昨夜は馬車の荷台の中で熱にうなされて唸っていたせいで、朝食も何も食べられなかったのだが、こんな事なら無理にでも食べておくべきだったか。

 何にしても街道沿いに歩いていればその内集落くらいあるはずで、そこで物乞いでも何でもすればいい。
 でもなぁ、恵んでくれる人なんて殆どいないんだよなぁ。

 そのことは深川と過ごした地獄の如き数日で理解していた。

 問答無用で人を殺して食い物を奪った深川に憤って、交渉して貰ってくるからと物乞いした事があった。その時は恐ろしいほど冷たくあしらわれて、それどころか身ぐるみ剥がされるところだった。

 何度か同じように挑戦したが、逆に命を狙われなければ御の字で、大抵の人間は無償で何かを分け与えるような真似をしない。
 自分に利益をもたらさずに、何かを得ようとする行為は、それがいかなる状況であろうが窃盗と変わらない。

 ようするに、俺がやった物乞いなどは、今からお前等のものを盗むと公言して回ったようなものなのだ。
 好意を向けてお願いしようが、刃を脅しに要求しようが、彼らは違いなど感じない。

 それだけ、生きていくのが大変なのだ。


「人に施しを行えるのは、それだけ余裕のある人間か、もしくは単なる狂人か変わり者って事か……。はぁ、もうヤダ、こんな世界」
 嫌気が差すのも何度目か。
 それでもこれまでの経験を思い出したのならば、例え集落に着いても真正直に物乞いするのは考え物だ。

 すでにその手段はこの世界で通用しないと分かっているのだから、何か策を巡らさなければ。
 深川を探すにしろ、一人で生きて行くにしろ、とにかく生きるための方法論を見つけることが必要なんだから。


「さて、そうなると手持ちの無い俺に出来ることなど……」
 物々交換が主流のようだが、自己生産能力も価値あるものの習得(狩りとかね)も出来ない俺に、何か上手い方策などあるだろうか。

 選択肢。
 ① 盗む
 ② 奪う
 ③ 飢え死に

 ああ、ロクな選択肢が出てこない。
 悪いが盗むのも奪うのも却下だ。誰に悪いのか知らんが。
 世の中に自分の必要性を穿つことなく生存することに何の意味があるというのか! なんて偉そうな事いえた立場じゃないが、出来るだけここは穏便に……

 単純に労働力として雇ってくれる何かがあればいいのだが、そもそもこの時代に雇用という概念自体が存在せず、似たようなものを適用されるのはすなわち奴隷となる。
 それ自体は川辺城にもいたし、それがいいのか悪いのかは知らんが……。

「ならばどうなる。どうする俺! 人類の底辺まで身をやつしてしまうのか! ああ、なんとなくその選択肢まっしぐらに飛んでいきそうな自分が怖い!」
 プライドなんて犬の餌です。そんなものは産まれる前に破棄しました。
 何も持たないのに偉そうにふんぞり返るほど恥知らずでも無し、妥当な感じがヒシヒシと……。


「むぅ。皿洗いでもさせてくれるところがあればいいんだが、そもそも外食産業が殆ど無いからなぁ。かといって農家の手伝いしてもメシはくれんよなぁ」
 考えれば考えるほど絶望的な状況だ。
 一人で生きていくというのがこんなに難しいとは……。

 まぁ、人間群れる生き物だし、弾かれればこんなもんか。

「仕方ない……。気は進まないが選択肢④だ。やはり手を汚さずには済まないか……。ああ、これではあまり深川にでかい口聞けないなぁ」
 元から大して強いことは言えてないけどね。

 それでも、最後の一線を守り抜くためには多少の悪行もやむなし。
 何も持たない九峪雅比古が生存競争に勝ち残るためには、正規の生き方など、そも許されるはずが無いのだから。






 耶麻台国の現状として、男手の大半は軍に志願して、大抵の集落や村では女子供の姿が目立つ。平均年齢の低い時代だけに、老人はそれほど多くは見られないのも特徴かもしれない。
 健康で腕っ節に自信があるものは、曲がりなりにも九洲の半分取り戻した軍に参戦することを厭わず、むしろ自らの手で祖国を奪還することに燃えているのだ。夫や息子を送り出す女達も、その意志を尊重するのが大半であり、むしろ戦いを嫌い残る男達をあざ笑うような風潮さえある。
 勝ち戦に次ぐ勝ち戦。
 何より火魅子の加護があるとしれば、戦いを躊躇う人間の方が少ないと言うものだ。

「ふぅ」
 一息吐いて顔を上げれば既に夕暮れ時。
 小さな集落の中で、ひと商売終えた私はこのままこの集落で一晩過ごすか、それとも次の里まで向かうかどうか考えた。
 この時期は日が落ちるのが早いから、このまま足を伸ばせば途中で暗くなってしまうだろう。そう考えればやはりここで夜を明かすのが順当と言えた。
「無理しても意味無いしねぇ」
 さっそくその旨長老さんに伝えようと立ち上がると、線の細い少年が一人、目の前をフラフラと横切る。
 見るからにこの村の住民ではないし、そもそも九洲人にも見えない。あまり日に焼けていない白い肌といい、どこか垢抜けたその顔は、あまりにもこの場所で浮いていた。
 ふらふらと歩く少年。

 その足取りは如何にも不安定で、今にも倒れてしまいそうだ。

「あ、転んだ」
 思ってる傍からばたりと倒れ、ピクリとも動かない。

「……はぁ」
 行き倒れなどよく見る光景だ。何もこんな村の真ん中でこれ見よがしに倒れなくてもいいのに。
 腹が減っていれば、誰かに縋りたくなる気持ちもわからないじゃない。だけど、それに手を差し伸べるお人好しなど何処にもいない。

 まぁ、それも分かっていて、それでも縋るしか道が無くなっているのだろう。


「なんだかなぁ」
 ため息を吐きながら歩み寄ると、足を掴んで引きずる。
 何にせよ道の真ん中で寝ていたら通行の邪魔だ。

「行き倒れにも決まりはあるのよ。せめて最後くらい人に迷惑にならないようにひっそりと死になさい」
 聞こえていないだろうけど一応教えておく。

「……あ」
 小さな呟きが、確かに聞こえた。

「なんだ、まだしゃべるだけ余裕あったんだ。じゃあ、頑張って人のいないところまで行って倒れたら?」
 重いので手を離すと、少年はゆっくりと立ち上がる。

「あれ? ここは?」
 辺りをきょろきょろと見回しながら、そんなとぼけたことを呟いた。
「お腹が空いて前後不覚か。それとも倒れたときに頭でも打ったのかしら?」
「あんた、誰?」
「誰でもいいでしょう? 起きたのならさっさと何処か行けば?」
「……」
 黙ってこちらを見つめてくる少年。
「何?」
「いや、ちょっと驚いちまった」
 なんて言って視線を逸らすと、顔を赤くしている。

「……どうして驚くの?」
 聞かなくていい事を聞いているなと思った。

 関わり合いになどなる必要など無いだろうに。

 少年は頭を掻きながら、
「気づいたら何処か分からなかったって言うのもあるけど、気づいて目の前にいた人があんまり綺麗だったからさ」
 なんて言って照れてみせる。

 綺麗だ、なんて言われたのは何年ぶりだろう。

 そりゃ素材はいいと自分でも自覚しているけど、それでも決まった寝床も持たず、年がら年中各地を旅して回っている私はボロボロだ。

「な、な、なんて事言うのよ」
「え、いや、だって……」
 返答に困りながらまたこちらをじっと見つめてくる。

 私に比べたら何倍も綺麗な肌や髪。そして優しげな瞳。

 唐突に変なことを言われた戸惑いもあったが、その瞳に魅入られて――

「君の方が綺麗じゃない」
 なんて変なことを自分も口にしていた。

「……俺男だけど?」
「わ、分かってるけど、だって実際私汚いし」
「そうかな?」
 言って何気ない仕草で私の髪に触れてきた。

「こんなに綺麗な人、はじめて見たよ」
「え」
 顔が火を噴きそうなほど熱くなる。

「名前、教えてくれないか?」

 ゆだった頭の私は、その問いかけを断ることが出来ず、知らず名前を口にしていた。

「き、忌瀬……」

 少年は嬉しそうに笑って、俺は九峪と自らも名乗った。













追記:
 選択肢④「ヒモ、或いはジゴロ」
 無難な選択肢と言うべきか、やっぱり九峪はそんなキャラか……。皆様の憤りが聞こえてきそうですが、何度も言うけどそんなうまい話が九峪に存在するわけ……。
 で、忌瀬登場です。
 世話好きなお姉さんキャラを投入しようと考えたとき、勢力に依存しないという条件を含めると彼女しかいないんですよねぇ。ああ、魅土とかでもいいかもしれないけども、非人はちょっと。
 次回は少し時間軸が戻って、九峪が忌瀬に会うまでの艱難辛苦の道のりになります。


 ではweb拍手のお返事を。
 9日。

21:15 うわい、切れた(汗 色々な方の色々なSSを読みましたが、日魅子を応援したくなるのは初めてカモ(w
21:18 大抵は志野か伊万里がツボなんですが、この日魅子は危うい感じが良い感じです < 鬼
 と頂きました。
 原作通りなら九峪が感じるべき、というかそれ以上の罪業をその背に負わされて、足下で部下が腹黒いことを画策してればそりゃ目障りで切れたりもします。
 日魅子が登場するSSはそこそこありますけど、原作で殆ど何も語られていないからキャラは人それぞれな感じですよねぇ。ただの女子高生だったり、鬼強だったり。今作品では力と精神のバランスが取れてない、核兵器並みに物騒な奴です。これからもどんどん追い込みます(笑
 コメントありがとうございました。

 10日分。一件目。

0:43 ふふふ
0:44 がんばれ 旦那
 と頂きました。
 うひひ(?)
 ガンバリまっす。
 コメントありがとうございました。

 二件目。

1:26 く、九峪くん君深川見つける為のエサにされとると思いますよ?いい加減世界最弱の自覚もとうよ!
1:30 後、亜衣さん策士策に溺れる大誤算!そして日魅子!暴君として討たれないようにガンバレ!
 と頂きました。
 あやや、鋭い指摘。まぁ、概ね間違ってないかなぁ。惜しむらくは九峪が例え深川の場所を知っていてもたどり着けるだけの体力も能力も無いという点ですね。まぁ、本人も最弱の自覚はあったりしたんでしょうが、喉元過ぎれば熱さを忘れるというか。今回で何とかその辺は学習してくれたモノと思われます。
 亜衣は殺しておいた方が安全なんでしょうけどねぇ(苦笑 少しばかり日魅子の事を見くびっていたと言うところでしょう。もしくは自分の能力と立場を過信しすぎたか。どちらにしても哀れですなぁ。
 日魅子は暫く暴走して貰いましょう。後戻り出来なくなる辺りまで。まぁ、現状最強ですから殺される心配だけは無いんですけどね。
 コメントありがとうございました。

 三件目。

21:06 うーん、志野が普通の民を巻き込むほどの内戦を引き起こすのを是とするのは、かなり違和感を覚えまするです
 と頂きました。
 ごもっともなご意見ですね。だから原作をないがしろにするなと言う話なのかもしれませんが、腹黒度百五十パーセント増量中に付き冷徹になりすぎているとかなんとか。
 もっとも志野の思惑は語られても、理由は上辺の所でしか語られていませんので、それ次第で納得して頂けるかもしれないしそうでないかもしれないという曖昧な事しかいえませんね。主に作者の力量次第なので辛いかもしれませんが……orz
 コメントありがとうございました。

 昨日分。

4:39 姫御子チンファンに一票ノ そして盛衰記を読んできます(w
4:40 ってか亜衣、策士策におぼれるって感じですね。ナム~>||<
 と頂きました。
 姫御子チンファンがまた一人……。盛衰記での勇姿を存分に振り返ってやって下さい。あれが彼女の遺作(爆)ですので。
 亜衣についてはまだ念仏上げてやるには早いので、今後に期待しましょう。きっととんでもない腹黒な真似をしでかしてくれるはず。
 コメントありがとうございました。

 他にも叩いてくれた皆様に感謝を!


 では続いて北野さんのコメント。

どうも、北野です。

いやいや、安易な展開ドンと来いですよ。
ストレートなのも好きですから。

原作よりもこの九峪の方が好きだなぁ。
日魅子はともかく(ぇ)
なにやらヒロイン日魅子な様子?
まあ自分は火魅子伝はヒロイン日魅子が基本だと思ってるのでいいんですけどね。
 と頂きました。
 ども、ご無沙汰です。
 安易な展開も安易だからこそいい部分がありますよねぇ。予想通りにキターって感じで。まぁ、話を斜め上にばかり持っていく作者には多少縁遠い感じもなきにしもあらず……。安易な展開を書くのもそれはそれで難しかったりするときもあります。
 でも、原作よりもこっちの方が好きと言うことは、ヘタレて偉くならない方が好みと言うことなんでしょうかねぇ。まぁ、実際高校生があの時代行っても何も出来ないと思うんですが……。
 しかしヒロインがすっかり日魅子になってしまいましたねぇ。あははは……orz タイトル通り深川なはずが。まぁ、この際だからカップリングが深川×九峪で、ヒロインは日魅子でいいかなぁとか。どんな話になるのか謎ですが。
 火魅子伝のメインヒロインはやはり日魅子と言ってもいいでしょう。あの影の薄ささえどうにかなればねぇ(苦笑
 コメントありがとうございました。

 アレクサエルさんのコメント。

18、おおお。
九峪は、エサかな?
確かに、九峪が、「直接」何も知らないなら、志野にとって、連れ回すのは、足手纏いで、常に監視が必要だし、足腰は弱いし、デメリットの方が多いのかな?

 深川の交渉も、おもしろい。
 エサです(笑 まぁ、何も知らなかったからと言って、九峪をそのままにしておくわけにも行かないわけで、ある程度泳がせるにも限界はあるでしょうが。対日魅子における最高のカードとまで認識されてるかは謎ですが、仕える手札くらいには志野も認識しているでしょうから。何よりここで九峪生存が明らかになっては本末転倒してしまいますし。
 深川は九峪と別の意味で生きることに精一杯な感じですねぇ。ああ、ヒロインとしての出番が更に……orz


 しかし、天目こそ、いい面の皮ですね。 このまま、天目、日魅子とも、志野のいいようにされるか? しかし、全てを計算通りに事を進めるなんて、ユリウス・カエサルでも不可能でしたからね(笑)
 天目だけではなく、この日魅子も、マヌケとは、程遠いみたいですから・・・・。
 まったくもってそうですね。天目サイドを書くのが非常に面倒なのですが、どこまで志野の思惑を知って、それに載っているかはやっぱり重要ですよねぇ。それ次第で志野の運命も左右されますし、状勢もかなり変わってきますし。
 策謀が計算通りに行かないのは当然で、最終的に志野の思惑とはずれて行くかもしれませんが、まぁ、それはそれで。特に不確定要素があまりに多いですからねぇ。結局は志野の立ち回り方次第と言うところでしょう。
 

 日魅子も、亜衣を半分追放に出来たから、「災い転じて福と為す」かな。
 しかし、亜衣も首都追放になっても、宰相だから、手の者が、政権にたくさん残っているでしょうから、影響力を完全に無くす事はないかな? 知らない人から見れば、亜衣に同情が集まるでしょうから・・・・・・。 
それとも、これを機に日魅子は、亜衣派?を首都から叩きだすのかな?
 
 やはり、日魅子は、志野と亜衣の同盟に気付いたのかな?
 ん? 衣緒は、亜衣の計画を知っていたのかな?
 亜衣の追放はメリット半分、デメリット半分と言ったところでしょうね。煩わしさは解消されて日魅子が動きやすくなると言う反面、優秀な人材でしたからそれが無くなることで負担も増えたりするわけで。後釜がいないというのも結構致命的。優秀な人材は大抵腹黒いという方程式が(笑
 亜衣の手のものというのは余り考え無くてもいいかもしれません。首魁である亜衣を取り除いた事は、いわば見せしめに近いものもありましたし。まぁ、この後亜衣が行く先を考えれば、それ以上の厄種を抱えたとも言えるかもしれませんが、それもまた別の話。少なくとも政治的に影響力を行使できるような立場に亜衣の忠実な部下はいないと言うことですね(川辺には)。
 志野と亜衣の関係については証拠が無いとは言えほぼ断定していると言えます。火魅子として勘も鋭いですから。もっとも誰かさんが絡むと日魅子としての葛藤がそれを阻むとかあるかも。いえ、適当に言っただけですけどね。
 衣緒は亜衣の思惑は完全には知りません。察しているかもしれませんが、今のところ多分唯一腹黒くないキャラなので、知っていれば姉をたしなめるような人格者であると信じたいところです。というか、衣緒まで腹黒くなったら泣けますし。
 コメントありがとうございました。


 では本日はこの辺でヾ( ̄◇ ̄)ノ)) バイバイ
【2006/10/12 10:25】 | 小説 | トラックバック(0) | コメント(1) | page top↑
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コメント
紐か!?
第四の選択肢は紐なのか!!!11!
【2006/10/12 23:27】 URL | 一匹 #X.Av9vec[ 編集] | page top↑
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