スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

【--/--/-- --:--】 | スポンサー広告 | page top↑
深川24
 深川
 二十四話



 時の流れは所詮人の身では御せぬもの。

 運命もまたそれに似る。

 只人では他に選べる道など無く、ただその時々を生きるだけ。

 故に生きていれば悔いは増え、清算するなど夢のまた夢。


 周囲には神と呼ばれる日魅子でも、心が人ではその例外たり得る事はない。



 つまりは、それだけの話。






 三世紀の九洲。
 人々に娯楽と呼べるようなものは少なく、時折訪れる芸人一座は多少つまらなくとも人気の的。
 日魅子が訪れる少し前に刈田の街の中で興行を許された一座は、内容から言ってもアタリの部類だった。

 十数人のそれなりに大所帯であり、その誰もが高い水準の芸を持っているし、何より美女が多くいた。
 まだ昼日中だと言うのに、街のあちこちで芸を披露する芸人達の周りには人垣が出来ていた。



 一座、座長代理の志野。
 まだ若い身空の少女だが、その剣舞は超一流で見るものの心を捕らえて離さない。
 夕方、最も人が集まる時間のとりにしか踊らないのだが、見物人の中には街の守備兵まで混じるほどの盛況ぶり。街の広場に立てられた天幕から出れば直ぐに人だかりが出来るほどだ。

 そのこと自体は人の視線に晒されることに羞恥よりも快感を覚える踊り子のこと、煩わしいとまでは思わなかったが、それでも今は人前に出るのを躊躇っていた。
 その理由が志野の事を悩ませ、ため息ばかりが漏れている。

「大丈夫かしら、座長」
 今日何度目になるか、同じ呟きを零して物憂げな瞳を帳簿に落とす。
 そう難しい事を書き込むような仕事ではないが、筆は全く進んでいなかった。

「……志野、お客さん」
 ため息を吐いている志野の背後から、珠洲が現れ短い言葉を口にする。

「どちら様?」
「知らない」
 本来知らない相手など志野にわざわざ通すまでもなく断るはずの珠洲が、わざわざ報せるというのならば、それは九割以上の確率でこの街の兵士か役人と言うことになる。

 まだ街の中での興行は始まったばかりで、留主の耳に評判が届いて召し上げられるにしては早すぎる。

 少しだけ緊張しながら、控え用の大きめの天幕にはいると、そこには見慣れぬ少女が一人いるばかりだった。

「……私に何か?」
 珠洲がすんなり通したワケは志野にも一目で分かった。

 風袋がおかしい事もあったが、物腰から尋常ならざる相手だと分かる。強いとか弱いとかではなく、存在感が圧倒的で無意識にひれ伏してしまいそうなほどだ。

「へぇ」
 その少女とは言うまでも無く日魅子。
 日魅子は志野を一瞥して感心したような声を上げた。

「歳もそう違うとは思えないけど、随分落ち着いているわね」
 自分よりも落ち着いている恐らくは年下の少女の言葉に、志野は戸惑い眉を潜めた。

「あの、何か用なんですか?」
「うん、まぁね。街で聞いて回ったら、この一座の花形は貴方だと言うから会ってみたかったの」
「会って、何を?」
「お話がしたいと思ったのだけど。うん、その必要すらないか。合格だわ」
 首を傾げる志野。横で様子をうかがっていた珠洲がたまりかねたように口にした。

「変な事ばかり言って。用がないなら出てけ」
「お嬢ちゃんも、悪くないわね。さすがに幼すぎるかな。まぁ、発展性のない大人よりはむしろ懸命なのかもしれないけど」
「……」
 
 日魅子は無造作に志野へと近づく。志野は蛇に睨まれたカエルの如く身じろぎ一つ出来ずに日魅子が近づくのをじっと見つめていた。

「貴方は、何者ですか……」

 ようやく口にした言葉。

「何者って、ただの火魅子」
「ひ、火魅子――」

 そっと志野の頬に触れる日魅子。

「耶麻台国を復興させるために、人材が欲しいの。それも知を備えた人材が。志野さんは十分にそれを満たしているようだから、お誘いにね」
「――あの」
「ただでとは言わないわ。手伝ってくれるならそれなりのものを見返りに上げましょう。貴方になら国を一つや二つ任せてもいいと思う」
「私は――」
「首を縦に振ってくれると嬉しいけど、駄目かな?」

 殆ど恫喝に近い日魅子の言葉に、志野は唇を噛み締めるとそれでも言った。

「耶麻台国を復興のお手伝いというのであれば、ご協力するのに是非もありません。しかし、今すぐにと言うのは困ります」
「うん? なぜかな」
 日魅子は首を傾げると志野から手を離して少しだけ間合いを開ける。

「元々、私どもも復興軍には協力する心算でしたから、旅の一座という側面を利用して、敵地に潜り込むような策に向いています。軍に組み込まれてはその特性が殺されてしまいますし、既に動き始めているので途中で放り出すワケには……」
「そっか。そう言う事なら確かに今すぐというのは無謀な話ね」
「はい」

 日魅子は落胆の色一つ見せず、暫く考え込む。志野はその様子を見ながら不安そうに珠洲に目をやった。

 今此処で志野の意見を日魅子が突っぱねて強引に連れ出されたら、志野は断ることが出来ない。

 誰であろうとも、九洲に住むものにとって火魅子の権威は絶対であり、直々に頼まれて断るというのはあまりに畏れ多いことなのだ。

「分かった。どういう策かはしらないけど、待つことにします」
「あ、ありがとうございます」

 だから日魅子が引き下がってくれたことは単純に嬉しいことであり、同時に次の台詞に仰天した。

「でも、ただ待ってるだけと言うのも暇だし、何か手伝おうか?」

「ええっ!」

 火魅子とは九洲人にしてみれば神と等しい存在であり、畏れ多く口を効くことすら憚られる圧倒的上位者である。
 その火魅子が、何処の誰とも分からない旅の一座に手伝うかなどと申し出ること自体異常だった。

「いえ、その、そんなことをして頂くわけには……」
「いいじゃない。それとも私じゃ使えないとでも?」
「め、滅相もありませんが」
 志野は戸惑う。今必要なのは特に戦力ではない。あくまで諜報の延長としてこの街を陥落させることを目論んでいるのだ。美禰の街を一人で落とした火魅子の噂は聞いていたが、どう考えても適任とは言えそうになかった。

「そう。じゃあ、清瑞――。あなた手伝ってあげて」
「はっ」
 志野の意図を汲み取ったのか、日魅子は天幕の外で控えていた清瑞に声を掛けた。

 志野と珠洲は全くその存在に気づいておらず、多少警戒しつつ清瑞を見つめる。

「一応私の護衛だから、警戒は必要ないわ。乱破としてはかなり優秀だと言うし、あなた達を手伝うならば確かに適任でしょう。いいわね、清瑞」
「ご命令とあらば」
 志野達に申し出を断れるはずもなく、結局清瑞と日魅子は一座に居座ることになってしまった。






 刈田近くの森の中。
 怪しげな出で立ちをした集団が、怪しげな相談をしている。

「そうか。やはり鏡はあそこか……」
「はい。間違いないかと」
 怪しげな集団の紅一点。深川は部下からの報告に笑みを深める。

 ――遂に掴んだ。

 鏡の手がかり。
 狗根国が九洲に進行するそもそもの理由であり、全ての願いを叶える扉への手がかり。

 それを自ら手に入れられたとすれば、恩賞は思いのままだろう。

 早計とは言え口元が緩むのも無理無からぬ事だった。

「いつ仕掛けますか? 街の中の警備は、美禰での反乱の影響で一層厳しくなっておりますが」
「ふん、こんな田舎の町の警備など、たかが知れている。それよりもこの情報が別の部隊に流れて先取りされることの方が厄介だ」
「……確かに」

 千載一遇のチャンス。出来るならば今すぐにでも取りに行きたいくらい。

「今夜だな。各々準備は怠るなよ。是が非でも、鏡をこの手に」
「御意」

 そろって頭を垂れる部下を満足げに見回した後、深川は一層笑みを深めた。












追記:
 ひ~さ~し~ぶ~り~。
 いやぁ、こんなに更新遅くなるとは思わなんだ。申し訳ありません。
 色々忙しかったんですが、忙しいついでに過去編のプロットをきっちり決めたので、どの位かかるかは不明だけど、来週からは少しは進む……かも。

 今回は志野が出てきましたね。ええ、台詞におかしなところがありますが、誤植ではありません。日魅子が偉そうなのは偉いからです。嘘です。無理して頑張ってるんです。過去編は三人称なんだけど気にしないでくれると助かります。深川はいらないんだけど(ぇ)お情けで登場です。まぁ、メインヒロインですから過去編でも少しくらい顔を出そうと。
 既に話の流れが分かったエスパー並みに勘のいい人もいるかと思いますが、そこに至るまでにどの位かかるかなぁ。十話以内に終わらせたいとは思いますが……。


 ではweb拍手のお返事です。いつからだろ?

 24日。一件。

10:45 ふむ、日魅子は強過ぎて他に頼れない。亜衣は能力は有るが、自分を過信しすぎ感有りって雰囲気ですね。
 と頂きました。
 まさにその通り。弱ければアレコレ口出してくれたりもしたかも知れませんが。なかなか難しいところですね。亜衣はうぬぼれでしょうか。優秀なのも確かなんですけども、日魅子を過小評価するきらいがある気がしますね。
 コメントありがとうございました。

 25日。

16:58 九峪よ・・日魅子を救ってくれ!!・・・そして彼女の処女mak
 と頂きました。
 日魅子を救うんですか~。え~(ぉぃ 話の流れ的にはそうですが、何せほら、ヒロイン深川ですからねぇ(ぇ まぁ、お優しい九峪君ですから見殺しとかそう言う方向には行かないと思いますが、救われるかどうかはあのヘタレの覚醒にかかっています。
 日魅子の処女mゲフンゲフン……は、どうなんでしょう。秘密ですね。
 コメントありがとうございました。

 27日。

18:13 深川はちょっと肌に合わないので、■■■■■■待ってます
 と頂きました。
 軽く規制。コレについてはまぁ、あれです。ぶっちゃけ書いてるんですけどねぇ。つまらなくていいなら出しますが、どうしようか。う~ん、考えておきます。
 コメントありがとうございました。

 28日。

18:04 ありがとうございました。
 と頂きました。
 いや、ご丁寧にどういたしまして。って、何か感謝されるような事をした記憶がないので激しく困惑中です。まぁ、罵られているわけではないのでいいのですが、根拠が分からないでお礼を言われるのも不安になる今日この頃。何かしたかなぁ?
 コメントありがとうございました。

 と、web拍手は以上ですね。他にも叩いてくれた皆様ありがとうございました。


 続いて直接コメント。まずは北野さん。

どうも、北野です。

黒い方々の謀略が巡る中、ヒロインとしての頭角を現してきた(?)日魅子の過去編が遂に。
黒い、もとい暗い話になる事請け合いでしょうけども誰が話に絡んでくるやら・・・。
今後も日魅子・・・げふんっ。
深川に期待する事にしましょう。
 と頂きました。
 話に絡んできたのは志野でした。志野のくせにあの非道な策略はあり得ないとか、割とボロクソ言われたので、遂に耐えきれなくなって過去編書くという噂もありますが、噂でも何でもありませんね。おかげで深川の影はどんどん薄く。出てきてもいいけど、どうせあの方のポジションは決まっているわけで……。
 まぁ、最後には輝いてくれることを祈りましょう。過去編はあくまで日魅子のものです……多分。
 コメントありがとうございました。

 続いてアレクサエルさん。

 23いいですね。
 今の所、日魅子を心配しているのは、伊雅、清瑞、伊緒ですね。
 しかし、亜衣の言うとおりだと思います。
こんな方法では、日魅子と軍部との結びつきが、強くなりませんね。
ある意味、亜衣は、こんな日魅子に叛旗をひるがえそうとするのだから、凄い女!!!
 周りにロクなのがいない哀れな日魅子。まぁ、この時点では仰るとおり、亜衣以外は割とまともなのですが、一番欲しい心の支え的なものが無いのが痛いですね。
 亜衣の戦略眼に関しては間違いは無いですね。日魅子も分かってはいるのでしょうが、あまり興味がないご様子。火魅子として九洲の民をいたずらに傷つけるのは躊躇われるのかも知れません。まぁ、いたずらに出はなく必要に、なんですが、この辺も過去編の中で割と重要な部分だったりするようなしないような。
 結果的に亜衣は元の時系列で反乱前に首にされるわけですが、志の大きさだけは立派と言えるかも知れません。


 原作、第七巻出ましたね。
 出ちゃいましたね(爆


 「藤那の叛乱」これは、九峪が導入した「知事制度」大失敗ですよね。
流石に、最高司令官を面と向かって非難出来ないでしょうが、責任問題ですよね。
 独裁政権だと責任問題にならないですからねぇ。名目上は共和国だろうが、最高責任者が九峪で、実質その独裁であると言う状況には違いないような気がしますし。九峪の口から出た意見は、よほどのことがない限り多分すんなり通ると思うので。
 まぁ、実際に火魅子候補が謀叛を起こすのは、原作の流れだと予期はしにくいでしょうし、そもそも考慮に入れないのも仕方がないのかなとも思いますが。
 不満が募ればクーデターで神の遣いは失脚、とかも有り得る選択肢ではあるのですが、展開的にまず無いでしょう(笑


 しかし、「藤那の叛乱」 もし治まっても、藤那やその側近を、無罪放免にでも、するつもりでしょかね? そんな事を他の者が、納得しますかね?
どんな方法で、例え無血で、解決出来ても、絶対に遺恨が残りますね・・・・・・・・・・。
 読者として一番気になるのはやはり藤那の罪に関してですよね。実害を被る前に琉度羅丹を放逐するなり暗殺するなりして自体を収拾したとしても、戦局に重大な影響を与えたことは事実ですし、そもそも付け入られたのは藤那の不明でしかないわけですから。
 まぁ、最終的な火魅子選定の前に、火魅子候補を何人か減らしておきたいという考えなのかなとも思いますが、話の展開的に割と消化不良に終わりそうなのは否めないなぁと思います。


 只深本活躍開始?
ここの作者が書いてくれた、火後の国の財政問題が出てましたね。
周辺を、非友好国に囲まれて、国家(主に財政)運営なんか、出来ますかね?
 まあ、短期的に見れば、九洲で一番安全な地域になりましたが、下手すると、憎悪の的(特に共和国から)になるかもしれませんね。
 私の書いた編年紀では、そもそも反乱の下地を二年くらい使って作っていますから、物資に関しては備蓄できたわけですが、確かにあの時点で反乱したら何もないなぁと、感心したりもしました。ただ生活する分には、そもそもこの時代自給自足でしょうから殆ど困らないと思いますが、軍行動を起こすための物資はどうにもなりませんからねぇ。
 現状何処もわざわざ構ってやるほど余裕がない状態なので、平和と言えば平和ですが、状勢が動き始めればと考えるとお先真っ暗で、私なら引っ越しますけどね(笑 最後まで隣国に攻め込むという選択肢を取らなければ、藤那はどうあれそれほど九洲人には嫌われないような気もします。所詮実害がなければ、腹を立てるのは地位の高い人間だけしょうし。
 コメントありがとうございました。


 では本日はこのへんでヾ( ̄◇ ̄)ノ)) バイバイ
【2006/11/03 20:18】 | 小説 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
<<深川25 | ホーム | 深川23>>
コメント
コメントの投稿












管理者にだけ表示を許可する

トラックバック
トラックバックURL
http://sophist00.blog48.fc2.com/tb.php/139-8d878e17
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
| ホーム |
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。