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深川25
 深川
 二十五話



 夜も深更というのに日魅子は眠ることもせずに月も見えない曇天を眺めていた。

 胸騒ぎがして眠れない。今夜何かが起こる。
 そんな予感めいたものを感じていたからなのか、単に慣れない場所で寝付けないだけなのかは本人にも判然としなかった。

「火魅子様。まだ眠られていなかったんですか?」
 そう言って天幕から出てきた志野はどこかに潜入でもするのか黒子衣装。

「……眠れなくてね。そう言う志野こそこんな時間にお出かけかしら?」
「はい、宮城の方へ」
 まさか夜襲が志野の策なのかと、日魅子は問いただそうとして止めた。

 それならば志野一人と言うことはあり得ないだろうし、もっと慌ただしいだろう。

「気を付けてね。貴方に死なれては困る」
「はい。ありがとうございます」
 恐縮して頭を下げた志野を見送り、日魅子はまた空を眺めていた。


 頭を掠めるのはやはり死した人々の顔。
 火魅子としてではなく、日魅子としてただいたずらに時を過ごしていれば、まるでそれをせめて立てるように死人達が日魅子を罵倒する。

 人の命を踏みにじってまでやることか?

 先に踏みにじったのはそちらでしょう。

 お前は安穏な世界で気楽に生きてきたくせに、そのお前がそれを語る資格があるのか?

 私は火魅子なのだから、それは責務。

 それだけの強大な力があれば、誰一人傷つけずとも方法は会ったはずではないのか?

 降伏しろとは言ったでしょ。それに従わなかった奴が悪い。

 自分の意に従わない人間は、虫けらのように殺すのか? それが火魅子のやり方か?

 他にどうすれば良かったと言うのよ。私だって殺したくなんか無い。無いけど、仕方が無いじゃない。

 仕方がないと言い訳して、ただ簡単な方法を選んだだけではないのか?

 私は、私は――


「……――!」
 不穏な気配に顔を上げる。
 闇夜からしみ出す僅かな殺気。
 隠す理由は夜襲を狙っているからだろう。

 ――狙いは私? いえ、この一座か。

 一座のものはまだ起きてこない。鈍いわけではないだろう。単に相手の隠行が優れているだけだ。それでももう少し近づけば気づくか。

「火魅子様」
 すっと、影のように清瑞が近づく。一流の乱破は誰よりも先に事態に気づいたようだ。

「何者かしら?」
「分かりかねますが、城内で夜盗の真似事だとすると狗根国の息がかかっているのは間違いないかと」
「そうね。志野達のやってることがバレた?」
「……可能性はあります」
 清瑞はそう言いながらも、得心がいっていないようでもあった。

 ――ならば理由は別か。

「私がやるとやりすぎるから、一座のものを起こして迎撃させた方がいいかな」
「そうですね。そう数は多くありませんから、私一人でもやれますが」
 一切気負わずに言った清瑞。そこに躊躇はない。

 火魅子はそれを何処か羨望の籠もった眼差しで見つめた後、首を振る。

「出来れば一人捕らえて、目的を吐かせましょう。事と次第によってはどのみちこの街にはいられなくなるから、一座の連中も起こさなければならないことに代わりはないわ。敵を捕らえる役目はお願いしていい?」
「はっ」
 一礼した清瑞を一瞥し、火魅子は一座のものが雑魚寝する天幕へと入っていった。






 ――勘付かれた?

 深川はきっちりと迎撃されて不意打ちが成功しなかったことに、憤るより先に驚いた。
 左道士ばかりが諜報活動の為に乱破としての訓練を受けた狩人部隊。その夜襲を迎え撃つなど、ただの旅の一座に出来る事ではなかった。

 しかも、精鋭揃いのはずの自分の部下達が、いくら気づかれていたからとは言え、一蹴できないなど。

「……深川様?」
 部下の一人が指示を仰ぐ。

「ここの留主に許可を貰ったわけでもないし、あまり騒ぎになるのはまずいな。ここはいったん退くぞ」
「御意」
 黙礼した部下を待たず、深川は先に走り出す。その前方に、少女が一人立ちふさがっていた。

「……貴方が頭目かしら。ふぅん、確かにただの盗賊では無いようね」
 左道士の臭いがする。

 深川は戦慄に立ちすくんだ。
「――何者だ、貴様」
「さて、何者かしら。でも敵だと思うわ」
 呟きは後ろに流れ、瞬きする間に目の前に少女が移動していた。

「ぐ……」
 少女は手を後ろで組んで、突っ立っているだけ。どこまでも無防備。だが、深川は手が出せなかった。

「旅の一座を襲撃して、何が目的だったの? 興味深いわね」
「誰が、言うか……」
 目の前にいるだけで拷問に近い圧迫を受ける。

 その圧倒的存在感に、深川の中である結論がはじき出された。

「貴様が、火魅子――か」
 少女は少しだけ驚いた顔。
「察しがいいのね。ふぅん、使えるかしら」
 推し量るように深川を見つめる。そこに殺意も敵意もない。

「優秀な人材であれば、多少人間性に難があっても用いよう、と思ってるのだけど――」
 無邪気に笑った少女の顔。

 深川は本能的に飛び退いていた。

「貴方は多少の範疇ではなさそうね」

 呪文の詠唱すら一切無く、手を振るという動作に当たり前のように付随して繰り出された炎の玉。

 深川の身体が赤く照らされ、次の瞬間には丸子げにしたであろうその火球は――

「深川様!」

 横合いから飛び出した部下の犠牲によって食い止められた。

 周囲の街を壊さないように手加減したせいか、炎は人を松明にして燃え上がり、夜の街を煌々と照らした。

「……あ」

 少女の口から零れた呟き。
 戦慄いて口元を抑え、食い入るように直立したまま灼かれた人を見つめている。

 深川はその隙に迷うことなく離脱する。

 僅かばかり、自分の盾になった部下の冥福を祈って。






 真っ青な顔で一座に戻ってきた日魅子は、討ち取ったものの死体を今の内に隠すように指示を出す。
 幸い敵方も隠密行動だったせいで騒ぎは起きていない。引き際が鮮やかだったのも一因だろう。

 目立ったと言えば日魅子がやった深川の部下一人だが、それも既に燃え尽きて欠片も残っていない。

 宮城の方へ行った志野も戻ってきたが、そちらの方でも大きな騒ぎにはなっていないとのことだった。

「……大丈夫ですか、火魅子様?」
 気遣う清瑞に日魅子は軽く頷いて見せる。

「それより首尾の方は?」
「はっ。一人捕らえましたが」
「上出来。何か察しは付く?」
「狗根国の狩人部隊のようですね。占領下の地域で諜報活動をしている左道士で編成された部隊です」
「……諜報ね」

 自分が目的であれば深川は驚いたりしない。だとすればこの一座に狗根国が興味を持つ何かがあると言うこと。


 ――何があるというの?


 その事を考えなければならないと分かっているのに、瞼の裏にちらつく先ほどの光景が、それを許してはくれなかった。













追記:
 あ~う~、お疲れ気味でございます。三連休中はずっと小説書いてたんですが、火魅子伝には触れてもいません。不思議だな~(ぉぃ

 え~、今回は深川様、日魅子と出会うの巻でした。メインはそこじゃねぇだろうと言う感じです。まぁ、人生色々って事ですね(謎



 ではweb拍手のお返事を。
 4日分。

13:09 日魅子って、覚醒して力も知識も人材を登用する目も備わったのに、人心掌握能力だけスルーなんでしょうか。
13:10 あの孤立っぷりからすると、そんな感じがします。そもそも本気で復興するんなら、部下蔑ろは論外かと。
13:12 日魅子が復興に対して投げやりに見えるんですよね。心はそのままなので、尚更復興を頑張る理由が見え難い
 と頂きました。
 え~と、万能戦死戦士日魅子ちゃんは人心掌握などできません……、と言うと語弊がありますね。妙なカリスマオーラのおかげで常人ならばひれ伏せさせるのは簡単であります。ですが、お察しの通り日魅子自身は戦争なんかやってられるかーっ! な女子高生ですので、いろいろオプションを付けて貰ったところで直ぐには対応できないのです。結果としてちぐはぐな事をしてしまっているって事ですね。
 それでも火魅子として頑張っているのは、そのオプションに付随してきた「復興しなきゃ死ぬ」的な脅迫観念があったりします。完全に人殺しになれるまではこの葛藤は無くならないでしょう。今回の話で悪化してる気がしますが……。
 コメントありがとうございました。

 昨日。一件。

12:25 いんそむにあ 前編の感想です。青、やばい奴だやばい奴だと思ってたら、幽霊?取り憑かれたのか!・・・
12:27 ・・・って、鬼とか人外がいるんだし驚くほどの事じゃないか。あと、理事長人望ゼロだったんですねぇ、さら
12:37 っと流されてますし、異能が無ければ、あ、あの人しんだから~~で、すまされてそうだ。
 と頂きました。
 あー、連休を潰してくれた奴の話ですね(笑 書き直すこと実に四回(爆 やればやるほど泥沼で、ややこしい設定を最後に盛り込むと大変になるんだなぁと身にしみました。何とか終わらせられたらなぁとは思います。
 で、青利のアレは幽霊じゃないんだけど、まぁ似たようなモンかなぁ。取り憑いているという表現は正しいですし。次ではっきり書きますから。あと理事長は人望がどうこうよりも、周りの人間が人死に一々心動かしてくれるような人道的な連中じゃないというのが問題かと。血も涙もねぇです。
 あ、でも青利が死んだら泣く人一杯いそうだなぁ。そう言う意味じゃ人望無いのかも(ぇ
 コメントありがとうございました。

 他にも叩いてくれた皆様ありがとうございます。


 では本日はこの辺でヾ( ̄◇ ̄)ノ)) バイバイ
【2006/11/07 21:53】 | 小説 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
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