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深川26
 深川
 二十六話



 少しばかり前の話。

 火魅子が美禰の街に降臨したとの噂は、火向中に驚くほどの早さで広がった。
 一番近い城郭都市である刈田の街の留主は、その事実に次は間違いなく自分だろうと震え上がった。

 脅えた留主は、国都川辺城へと援軍を要請するため、使いを数名派遣。

 少しばかり先見の明があるものならば、その事を先読みするのは簡単で、急使がどの街道を使うかと言うことまで、分かり切ったことだった。

 旅の一座はその留主の使いを殺害し、一座の男がその使いに成り代わって川辺へと向う。

 川辺へ着いた男は刈田から来たと言い、援軍の要請が突っぱねられるとそのまま今度は川辺城の遣いとして刈田へと戻る。

 刈田に着いた男は、使いの者は来なかった以上逃げたのではと告げ、逆に川辺から兵力の引き抜きの令が出たことを留主に告げたのだ。


「美禰での反乱はただならぬ事のよう。国都を守備する兵を増やそうとのお考えでしょう」
 本来は上官命令は絶対ではあるが、刈田の留主も我が身かわいさにおいそれとは応じられない。

「しかし、今刈田から兵力を引き抜かれては、いざ反乱軍が北進してきたときに抗せぬではないか。臆病風に吹かれたわけではない。この刈田が防壁になるとならぬとで、国都への進軍への時間も稼ぐことができよう」
「確かに。いきなり半数も引き抜いた敵の乱破にバレでもしたら、そこにつけ入れられるかもしれませんな」
「そ、そうだ。だからその要求には……」
「とは言え、まったくの手ぶらで私が帰るというわけにも行きません。どうですかな? ここは目立たぬ為にも少数ずつ数回に分けて派兵するとしては。そうして時が経てば状勢も代わり、国都の管理も考えを改めるやもしれません」

 それはあくまで一時的な対処法でしかなかったが、完全に命令を無視することもまた出来ない留主は、仕方なくその案で了承した。

 十人かそこらの少人数を引き連れた男は、策通りに人気のない街道で一座の仲間に討ち取らせる。

 川辺へは手ぶらで戻り、再び援軍の要請だと告げる。当然のように素っ気なく断られ、再び川辺へと戻って同じ事を繰り返す。

 次第に刈田の兵だけが減っていき、数の少ない一座だけでも制圧は可能になる。


「けれど、それだとその人以外の伝令が川辺から来たり、川辺へ行ったりしたら破綻する。まぁ、刈田からはどうやらはじめに伝令が逃げたことを告げたのが、留主に上手いように作用しているようだけど」
 日魅子は志野から策のあらましを聞いてため息を吐く。

「危険ね。とても……」
「そうですね。でも、座長がやると言った事ですから」
 そう言う志野の顔は少しだけ強ばっている。

「その座長、志都呂って言ったかしら? 志野の恋人?」
「え、いえ、そんな……、そんなんじゃ」
 わたわたとする志野に、日魅子は苦笑を浮かべてみせる。

「片想いとか?」
「あの、座長とは別に……。尊敬してますけど、好きとか嫌いとかそう言うことでは……」
 なぜ火魅子にそんな事を聞かれなければならないのかと思いつつ、しどろもどろに答える志野。

「いいわね。羨ましいわ」
 そう言って遠くを見つめる日魅子の顔が、とても寂しげだったからだろうか。志野は知らず口を開いていた。

「火魅子様には、あの、好きな人は……」
「うん、いた」
 いた。過去形で口に出されたその言葉に、志野は聞いてはならないことを聞いたのだと知った。

「申し訳ありません」
「別に、いいのよ。私は火魅子になるために、他は何もいらないと決めたんだから」
 自分に言い聞かせるような言葉。
 とても割り切れていないのは、表情を見れば誰にでも分かる。
 それだけ悲痛な顔をしていた。

「――まぁ、今はそんな話をしているときではないわね」
 日魅子は志野の話を聞きながら、頭の中で刈田攻略作戦を既に立案していた。

 本来ならばまだ落とすつもりは無かったが、志野達一座だけでは最終的な攻略はやはり賭だ。物量が違いすぎるから、九洲兵の煽動が上手くいかなければその時点で破綻する。川辺のつなぎを志都呂一人がやっている間はいいだろうが、何か動きがあったとき急使が出されれば、そこでもやはり失敗する。

「……志野。貴方達の手柄をよこどりするようで悪いけど、刈田は復興軍が落とすわ」
「それは構いません。別に報償が目的でやっていたことでもありませんし」
「いえ、報償は当然払うし、当初の予定通り貴方をはじめ一座のみんなは重用させて貰う」
「はい」
「今現在刈田の兵力は?」
「百五十程度です」
「……復興軍の調練がまだ十分ではないけど、二千近いのだから攻略は容易いわね。城郭都市攻略の訓練には丁度いいか」
「私たちも内応しますか?」
「当然お願いすることになると思うわ。出来るだけ早くやりたいから、準備をぬかりないように」
「はい」

 頷いた志野を満足げに見やり、日魅子は清瑞の元へと向かった。






 昨夜捕らえた深川の部下の尋問。
 何か新たな事実を聞き出せたのか、あまり期待していなかった日魅子だが清瑞は重要な部分は聞き出していた。
「鏡……。って、あの鏡?」
 その言葉は少しばかり衝撃だった。

 深川が探していたのは伝説の鏡。それが志野の一座にあると言うのだ。

「志野、知ってるのかしら?」
「もしそうならば、耶麻台国に対する裏切りです」

 全ての願いを叶える扉を開く鍵である、鏡と剣。そのうち鏡の方は長らく耶麻台国の神器として耶麻台国が管理してきた。
 復興戦争の折紛失したその鏡を所持しながら、日魅子にそのことを教えなかったのであれば、確かにそれは裏切りとよべる行為である。

「……それは無いと思うけど。志野はそう言う人じゃない」
「そうでしょうか?」
 疑うことが仕事の清瑞は首を傾げた。表面上はどうあれ内心では分からないと思っている。

「志野は、望みを叶えるのに自分以外の力を頼る事はしない。自分の力で出来ない望みなど持たない現実的な人よ。清瑞とそう言うところは似てるかもしれないわ」
「……心外です」
 ぶっきらぼうに応じた清瑞にくすりと笑いかけて、一つだけ気になったことを聞いた。

「捕らえた人はどうしたの?」
 尋問が、ただ質問をする行為だとは思っていない。そして、用が済んだ男の末路も分かり切ってはいた。
「上手く処理しておきました。それで鏡の方はいかが致しましょう」

 ――処理。

 その言葉に心が軋むのを感じながら、表情を消して答える。

「まだ預けておきましょう。どのみち私が此処にいる限り、奪えるものなど誰もいないのだから。志野達が配下になった後で渡して貰いましょう」

 全ての願いを叶える扉。


 ふと過ぎったのは九峪の顔だった。もう一度会うことが出来るなら――



 首を振るとその考えを頭の隅へと押しやり、清瑞へ伊雅への伝令を任せた。






「志野をどうするつもりなの」
 唐突に発せられたその問いに意味を計りかねて、日魅子は少女を見下ろした。
「……珠洲、だったわね」
「火魅子様は志野をどうするの?」
 口調こそぶっきらぼうではあるが、それは真摯な問いだった。
「耶麻台国を作る手伝いをして貰おうと思ってるだけよ。不満?」
「使い捨てるつもり?」
 珠洲は殺気に似た気迫を込めて日魅子を睨んでいる。

「……私は志野を高く評価してる。使い捨てなんて勿体ない事出来ないわ」
 日魅子は珠洲の頭に手を伸ばすと、若干強めになでつける。
「それは貴方にも言える事よ、珠洲」
「私も?」
「期待してるって事。この国のために頑張ろう?」
「……」

 日魅子があまりに屈託無く笑ったせいか、珠洲は呆然としてその場に立ちつくしてしまった。













追記:
 うぃ~っす。い、忙しい。なぜこんなに忙しいのかっ! 少しはぐうたらさせてくれ! と言う感じの作者です。あ~、眠いよ~。

 えーと、今回の話は相変わらずグダグダと意味はあっても価値はない一幕でしたね。まぁ、いいや。過去編はかったるいのでさっさと終わらせて、九峪の七転八倒(?)の活躍を書きたいなぁ、と思う今日この頃。ああ、そう言えば十三階段一応一周年らしいですね。全て更新という偉業をしようかと思ったけどもそんな暇が何処にも……。気づけばまた一ヶ月更新してないし……orz


 ではweb拍手のお返事を!
 7日分。

23:17 幻聴記の更新楽しみにしてます。頑張ってください。
 と頂きました。
 幻聴記ですか? あ~、幻聴記ねぇ、どうなってたかなぁ(汗 今年中に一度くらい更新できたらいいなぁと思いますが、どうなるかなぁ。何とか頑張りたいと思います。
 コメントありがとうございました。

 8日分。

0:17 「深川」の今までの話とか後書き読んでると、火魅子の血統って人格能力関係なく血が濃ければ良いみたいです
0:21 ね。火魅子の知識能力意志をダウンロードするための存在な気がします。まさに巫女役として以外必要無し?
 と頂きました。
 火魅子に必要なもの。確かに血の濃さですかね。あまり高等な判断基準は存在していないような気がします。後は火魅子としての何らかの因子。それが覚醒しなければ火魅子にはなれない、みたいな。直系でも遺伝に問題があれば後継者にはなれない。だから日魅子の次に血が濃いはずの清瑞は……って別にそこまで原作踏襲する必要があるのかは分かりませんが。
 火魅子の力に火魅子として逸脱した行為を行えないという制約が含まれている以上、人格もあまり問題ではなく巫女役、依り代としてのみ存在していると解釈するべきなのかも知れませんね。
 コメントありがとうございました。

 12日分。

22:36 朱美ちんあっけなく?帰還…ってことは明藍ってば日陰者に逆戻りなのかな。アワレな
22:40 それにしても、いままでいい様に周りをあしらってきてた青がここに来て置いてけぼりを喰らうとは、
22:41 ついに王道な主人公な役回りになるんかな?
 と頂きました。
 明藍は……、まぁ正直どっちも出番はあまり無いですね。どうでもいいような所で出てきますが。もはや情報屋関係は話の上であまり意味が無いので。そう言う意味で今回の話が最後の出番かも……。
 青は今後暴走した師匠を相手に大立ち回り……、な展開とは斜め上を行くかも知れませんが。まぁ、王道と言うよりは横道な感じでいつものように……? そこはお楽しみとしておきましょう。
 コメントありがとうございました。


23:16 チェーンデスマッチ 面白かったです。恋愛物万歳! 最後までお互いに名前を識らないとか。
23:17 劣悪→最悪へランクアップさせて告白とかetcetc 色々ツボでした。面白い作品ありがとうございます。
 と頂きました。
 しょうもない恋愛ものですが楽しんで頂けたようで何よりです。本当はもうちょっと某女子高生が元クラスメイトに傾倒していく様を書きたかったんですが、そう言う心理描写の移り変わりは作者には無理でした。ああ、歯がゆいですねぇ。もっと精進致します。
 コメントありがとうございました。

 13日分。

13:36 兔音?兎じゃないのかな?
 と頂きました。
 あ~、日本語って嫌ですねぇ。意味は同じなのに……。どのくらい間違ってるか想像も付かないなぁ。読めないことも無いと思いますがその内直しておきます。
 ご指摘ありがとうございました。

 14日分。

2:37 深川読ませていただきましたっ!面白い~~~~~っ
 と頂きました。
 ありがとうございます。かようなものでも楽しんで頂けたならば幸いでございました。
 コメントありがとうございました。

 他にも叩いてくれた皆様に心より御礼を。

 え~と、次回更新がいつになるのか今のところちょっと分かりかねますが、出来れば来週も出したいと思います。

 では本日はこの辺でヾ( ̄◇ ̄)ノ)) バイバイ

【2006/11/17 18:27】 | 小説 | トラックバック(0) | コメント(1) | page top↑
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コメント
26話おもしろいです。
最初は、日魅子と志野の関係も良好だったですね。
志野も黒化していませんし。
しかし、志野の座に鏡があると言う事は、この話でも志野は、火魅子候補?

>「志野は、望みを叶えるのに自分以外の力を頼る事はしない。自分の力で出来ない望 みなど持たない現実的な人よ。清瑞とそう言うところは似てるかもしれないわ」

 その通りだと思います。 しかし、後に鏡等の力を利用しようとしているのは、それだけ、怒りと憎悪が激しかったのでしょうか?

 清瑞の処理。 まあ、当たり前ですね。 反乱軍に、いや、この時代に捕虜収容所なんてないでしょうし、こんな重要機密を知っている敵方を生かして置ける訳ないですよね・・・・・・・・・・・。
【2006/11/19 03:37】 URL | アレクサエル #xfGWKbWo[ 編集] | page top↑
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