スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

【--/--/-- --:--】 | スポンサー広告 | page top↑
深川32
 深川
 三十二話



 当麻の町。復興軍が三番目に手に入れた街であり、自力で手に入れた街の中では唯一日魅子が関わることなく陥落した場所。陥落せしめたのは王族の一人で火魅子になる資質も持っている藤那という女だった。

 都督で天目が反乱を起こし、火向以外の九洲をその手に落とすと、耶麻臺国を名乗り九洲を乗っ取った。同時に復興軍とは同盟関係を結び、その印として火後、豊後の二つの国も与えられた。その時点で復興軍は耶麻台国を名乗り、今に至っている。

 復興軍には三種類の王族がいる。一つ目は日魅子。言わずとしれた直系の火魅子であり、既にその身に人あらざる力を秘めた現女王。二つ目は前王の弟である伊雅と、その娘の清瑞。他の傍系とは違い最も直系に近い純粋な血を受け継ぐ二人である。そして三つ目は傍系の王族。亜衣が後見人となっている宗像巫女衆をまとめる星華。そして独力で軍を起こし当麻を自力で陥落させた藤那。二人とも王族という肩書きはあれど、直系がいては日の目を見ることなど絶対にない。そして、そんなものなどいるはずもなく、耶麻台国は自分が復興させるのだと思い、十数年を生きてきた。日魅子の存在に何も思うところはないと言えるほど、二人は大人しい人間ではなかった。

 ……というげんなりする話を聞かされた後、実際に対面してみると確かに矜持と自負に充ち満ちた高飛車な女だった。

「今知らせが入った。どうやら火魅子様が動いたらしい」

 当麻に来て数日。一応の立場は賓客だが、実質は軟禁。見張りの兵をおかれた上で一日中部屋に閉じこめられていた。部屋は珠洲と相部屋で、そこから察するに珠洲自身もあまり藤那と言う女に信用がある訳ではないのだろう。まぁ、指示を出している志野がそもそも天目側についているのだから、仮にも耶麻台国である藤那にしてみれば敵とは言える。見方を変えれば隠し持っていると言えないことも無いだろうが。

「天目は応戦するでしょうか」

 綾那と言う藤那とは乳姉妹の参謀が呟く。

「天目の性格から考えればまずすると思うけど。ただ、火魅子を敵に回して勝てるだけの策があるのかどうか」

 別の部屋に同じく軟禁されていたと朗らかに語っていた忌瀬が答えた。藤那は神妙な顔で頷くと、九峪の方に視線を向ける。九峪はこっちを見るなと言いたげに露骨に視線をそらしたが、藤那はかまうことなく聞いてくる。

「九峪。お前はどう思う? 天目は戦に応じると思うか?」
「……俺が知るかよ。天目って奴に会ったこともないし、戦力がどうなってるのかもわからないんじゃ答えようもない」
「そうか。耶麻臺国軍は約三千。耶麻台国軍は今動いたのは五千ほどだ」
「兵の練度は?」

「さして違いはない。耶麻臺国軍の方がいくらか上だろうが、天目の反乱に伴って狗根国軍の正規兵は粛正されたからな。いくらか半島から傭兵を雇っている分だけ、という程度だ。ただ耶麻台国軍の方には優れた方術士部隊がある。まぁ攻城戦になれば方術士など何の役にもたたんのだが」

「……普通に考えればそのまま応じるだろう。日魅子の要求は清瑞なんだろう? それにどのくらいの利用価値を見いだしているかは人となりを知らないから何とも言えないが、今たかが人一人の事で九洲内でもめている暇はない。天目って奴が政治家なら清瑞を返して終了。バカなら抗戦するだろう」
 たぶん、とは言わないことにして九峪は口を閉じた。戦争の予想などしたくもないと言いたげに。

「ふむ。だがそうなると川辺を後ろから衝くという策は取れんな」
「……大丈夫。日魅子は清瑞一人じゃ止めない」
 珠洲が相も変わらず淡々と言う。

「そのために、コイツはここにいる」
 指さされて九峪は顔を顰めた。

「話のあらましは聞いている。火魅子様の思い人だとか。志野が耶麻臺国に行ったとなれば、死体が見つからない九峪もそこにいると考えるのは必然。確かに火魅子様が引く理由はない」
「……だが、俺はここにいる」
 九峪は日魅子ならどうするか、それを考えてため息を吐く。直情的で頭の固い幼なじみは、他の可能性を考慮しないような気がした。このまま行けば、戦争が始まる。無意味でしかないと言うのに。

「一応準備はしておくか。一度交戦状態に入ってしまえば双方引くに引けまい。火魅子様が不在の川辺など落とすのに労は無いが、ただ落としてしまったのでは反逆者にしかならんからな。さて、ではまたしばらく窮屈な思いをしてもらおうか。何、必要なものがあればたいていそろえてやる」
 横柄に藤那は言って立ち上がる。どこか楽しそうに、憮然とした九峪の表情を見つめながら。






 珠洲と同じ部屋で軟禁されている九峪は、部屋の窓からぼーっと外を眺めていた。見えるのは留主の屋敷を囲む塀と植木だけ。二階程度の高さしかないため街を見下ろせると言うこともないし、抜け出そうと思えば出来そうな場所ではある。だが、そんな事は微塵も考えていなかった。

「……珠洲。お前は日魅子を恨んでるのか?」
 座長、志都呂の仇。だが、話を聞く限り日魅子の行為は立場からすれば当然で、本来責められるようなことではない。むろんそう言った個々人の恨みを背負うことが、支配者としての常であることも確かだろうが。

「愚問。何があっても、私が火魅子様を許すことはない」
「許せないのは別にいいんだけどさ、殺したいほど憎いのかどうかって聞いてる」
「……わからない。でも、志野はたぶんそう。私も志野が殺されたら、理由なんか関係なく相手を殺したいほど憎むから」
「そっか。うん、そうなんだろうな」

 殺したいほど憎い。九峪には今ひとつその感情がわからない。殺意という感覚がそもそもほとんど無い九峪には、適当に推測するしか無い話だ。

「九峪は、火魅子様を私が殺したとしたら、そうならないの?」
 聞き返された質問。考えた時間はほんとうに僅か。

「ありねーな。薄情かもしれないが、例え両親が殺されても一緒だろうなぁ」
「嫌いなの?」

「そうじゃない。いや、どうなんだろうなぁ。ただ、我慢ならないんだよ。俺はそんな事をする奴を憎いとは思うけど、それはなんでそんな事したんだって言う行為に対する怒りで、その怒りがそのまま殺したいって気持ちと一緒になったりはしない。殺されてしまった事はただ悲しいだけで、それは一緒にしちゃいけないと思うし」
 そんな風に冷静に考えてしまえるのは、やはりどこか冷めてる部分があるからだろう。

「きっと殺したいなんて誰も思ってないんだと思う。ただ、悲しくて、やりきれなくて、自分の気持ちをどうしていいかわからないから、とりあえず奪った奴を恨むことで行き場のないもやもやを発散させようとしてるってだけで。けど、実際に殺しても無駄なんだよ。気持ちが晴れるわけがない。だって、失ったものが戻ってこない限り、そのもやもやは消えちゃくれないんだからな」
 珠洲は九峪の言葉を黙って聞いた後、じっと見つめてそれから素っ気なく呟いた。

「理屈っぽい。つまんない奴」
 九峪は辛辣な言葉に苦笑すると、窓際から離れて珠洲の方に近寄る。

「なんだ、おもしろい話を期待していたのか。ならば、俺様がとっておきの一発芸を披露してやろうじゃないか!」
 そう言って九峪は一昔前のギャグを披露して、空気はますます冷めていった。






 ひっそりと、周囲に気づかれぬように軍備を整えていく当麻の街。それを遠目に監視する男がいた。狐目をさらに細め、藤那の企みをせせら笑うようにその口を歪めて。
「……なるほど。クク、なるほどなるほど」
 独り言のような呟き。何がおもしろいのか、笑みは深まるばかり。
「わかりました。それならば私が動くとしましょう」
 ざわりと、男の足下に広がる影がざわつく。
「少しは、楽しめるといいのですが。クク、クククク」
 草原であまりに目立つ白の外套を笑いながら翻すと、風にさらわれるように狐目の男の姿はかき消えていた。後には嫌に耳につく嘲笑の残滓だけが漂っていた。













追記:
 ほんっっっっっっとーに久しぶりに深川を書いてみました。前後の事など知らんよ、って感じで書いてるので矛盾があったらすみません。三十話もあると読み返すのも面倒で、どこまで設定出してたかとか覚えてないんだよねぇ。後で見直すかもしれませんが、まぁ、暇が無いんでどうなるかなぁ。振り返るより前進しないと終わらない気もするし……。
 さて、近況としましては、昨日ぎっくり腰になりました。今日はとってもしんどかったです。まぁ、寝たきりになるほど酷くは無かったんですが、昨晩は腰に氷嚢乗せて唸ってました。今も湿布張ってこれ書いてます。いい加減小説なんか書いてないで暇な時間は運動した方がいいような気がしますが。二十代半ばでぎっくり腰とか我が事ながら肉体年齢何歳だと突っ込みたい気分。とにかく土日は休みなので養生したいと思います。


 ではweb拍手のお返事を。
 4/2分。

0:05 社会人一年生ですか・・・多分ここ数ヶ月は更新できないでしょうが、がんばってください。半年もすれば
0:06 息の抜き方が分かりますよ。ということは、次の更新は半年後!!>ええ~~
 と頂きました。
 なんとなく更新してみました。まぁ、まだ本格的な仕事に就いてないからなんですけど、来週から担当部署に配属になるので次がいつになるかはわからないです。明日、明後日で多少書ければなぁと思いす。土日が連休になるときはせめて1話くらいは更新したいですけどねぇ。
 コメントありがとうございました。

 4/10分。

2:31 ご無事でなにより
 と頂きました。
 ご心配をおかけしてしまったかもしれませんね。突発的な事故でもない限り少なくともあと十年は確実に生きてるつもりですが、どうなんでしょう。ああ、でも職場は結構危n(ry
 コメントありがとうございました。

 他にも叩いてくれた皆様に感謝を!


 では本日はこの辺でヾ( ̄◇ ̄)ノ)) バイバイ
【2007/04/13 21:21】 | 小説 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
<<深川33 | ホーム | 近況報告>>
コメント
コメントの投稿












管理者にだけ表示を許可する

トラックバック
トラックバックURL
http://sophist00.blog48.fc2.com/tb.php/149-72f5a787
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
| ホーム |
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。