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深川40
 深川
 四十話



 暗い森の中、目覚めれば傍らには黒い剣。
 忌まわしいのに、汚らわしいと思うのに、頭に響く思念がそれをさせてくれない。
 一体それは誰の声なのか。得体の知れないものが自分の行動を制御している事に、九峪は怖気を感じて身を震わせた。

「……おい、大丈夫か?」
 視界を深川の顔が塞ぐ。ぼうっと見上げる九峪の瞳には精気が無かった。

「人のことを心配なんて、柄じゃないだろ」
 茶化すように言って、笑いもせずに起きあがる。体に異常はない。兎音の攻撃を防ぎ、兔華乃を葬ったと言うのに、体自体は至って健康だった。

「これからどうするつもりだ?」
 深川にそう聞かれて、九峪は首を傾げた。いつもの深川なら九峪が考えを言おうが強引に自分の意見を通したはず。だが、今の深川はどこか違った。

「どうもこうも、日魅子に、会いに……」
 そこまで口にして、首を振る。もう、その選択肢は選べないことに気づいて。

「行けないな。今、あいつに会うわけにはいかないし」
 九峪の中の誰かは、日魅子も殺すと言った。邪魔なものは皆殺しにすると。日魅子と殺し合いなど、九峪にとって考えるのもおぞましい。

「どうすればいいかなぁ。なぁ、深川」
 回答が帰って来るとも思わず聞き返すと、深川は忌々しげに九峪を睨み付け、そしてその場に腰を下ろした。

「お前は危険だ、九峪」
「そうだな。あの兔華乃達を、俺は……」
「お前がちゃんと制御できるなら、別に怖くはないんだがな。分かるか九峪? 私はお前を恐れているんだ」
 自嘲気味にそう言って笑う。

「お前の邪魔をしたら、お前は私も殺すんだろう?」
「……あ」
 言われて、九峪は衝撃を受けた。深川を殺す。殺してしまう。いくら非道だろうが、人間を自分が殺してしまう。ころ、す。
 兔華乃達ならまだ人ではないと言い訳出来たかもしれない。だが、深川を殺してしまったら、もうそれはどうしようもない。何より人が死ぬのを忌み嫌う九峪が自分の手で人を殺してしまったなら……

 一歩、九峪は後ずさる。誰かの近くにいたら、誰かを傷つけてしまう。いつ、また自分が自分でなくなって、人を殺すか分からない。
 そう気づいた瞬間、九峪から見た世界が反転した。他人が怖い。怖くて、仕方がない。

「九峪」
 名前を呼ばれて、その瞬間走り出していた。追い立てられるように、どこに向かえばいいのかも分からないのに。どうすれば解決するかなど全く分からないのにただ人のいないところにいかなくてはならないと思って。

 しかし、また頭の中に声が響き、九峪は無理矢理足を止めさせられる。

「……ん、でだよ、なんでだよ。動け動け動け!」
 石のように固まった足を殴りながら、何度も何度も叫ぶ。

 誰かは確かに言っている。鏡をお前が手に入れろと。そのために深川を連れて行けと。

「そして用が済んだらあいつも殺すって言うのか?」
 自問自答。しかし、答えは返ってこない。
 九峪は直ぐに追いついた深川の方を振り返り、みっともなく泣き崩れた顔で言った。

「……ごめん」

 それは何に対する謝罪なのか。ただ九峪にはそれしか言葉が見つけられなかった。






 ただならぬ気配を感じ、その瞬間九洲中にいる方術、左道の力を持つ者達が一つの方向を振り返った。過去感じたこともないとてつもない力の発露。九峪が兔華乃と戦った時に解放したものだった。
 当然、湯布院の砦で政務を行っていた日魅子は真っ先に気が付いた。

「――九峪?」
 感じた力は確かに九峪の裡に秘められていた炎の御剣の力。しかし、同時に隠しようもない邪気を感じた。生きていてくれたのだと言う喜びと、新たに生まれた危惧。

 ――この気は何? 直ぐに消えたけど、確かにこれは。

 いくつもの仮定が頭の中に浮かび上がり、その中で最悪の想像が的中しているのだと理解する。

「九峪……、そんな、そんなこと……」

「火魅子様、耶麻臺国より使者が」
「……衣緒」
 入ってきた衣緒を、泣きそうな顔で見る日魅子。衣緒は見たこともない日魅子の姿に驚き直ぐに駆け寄る。

「火魅子様? どうしました。もしや先ほどの」
「衣緒、どうしよう。私、私……」
「しっかりしてください、火魅子様」
 肩を掴んで日魅子の体を揺する衣緒。しかし、日魅子はうわごとのように呟くだけだ。

「九峪を、殺さなくちゃ……」






 炎の御剣の覚醒。それは同時に天魔鏡との共鳴をもたらした。
 本来二つで一対の神器である鏡と剣は、数百年ぶりに一つところに揃おうとしていた。

 征西都督府。嘗て耶麻台国が滅ぼされる前、その王城が会った土地。狗根国による侵略後、水に沈められその上に現在の征西都督府が作られた。それも先の天目の反乱によって破棄され、現在は無人の地。

 その征西都督府から天に一本の光の柱が立ち上がっていた。まるで狼煙のようにつき立ったその光。その異変は直ぐに九洲中に伝わった。民衆はただその怪異に恐れおののくだけだったが、勘のいい支配者達はその光の柱の意味を察していた。

 全ての願いをかねる扉。天界の扉が開こうとしているのだと。

 それを理解し、願望を持つものは皆そこに引き寄せられれる。あらゆる願いがかねられるのだ。それを欲しないものなどいようはずもない。

 征西都督府から最も近い場所にいる権力者と言えば、耶麻臺国を統べる元狗根国将軍の天目。誰よりも早く情報を入手した彼女は、しかし今は動くことをしていなかった。

 側近である虎桃はそのことを何より不審に思っていた。天目という女は傲岸不遜で自信満々で欲望に忠実なのだ。自分の国が欲しいから狗根国を裏切り耶麻臺国を興すほどに。なのに、全ての欲望を叶えられるその扉を手に入れようとしない。それどころか、興味はないと言わんばかりだ。

「不思議か、虎桃?」
 そんな虎桃の様子を察してか、天目は自分から聞いてきた。虎桃は天目の考えていることが全く分からなかったので素直に頷いた。普段であればあれこれ天目の考えを推察するところなのだが、今回ばかりは全く理解できなかった。

「ええ、不思議ですね~。天目様の最終的な目的が何処にあるのかは分かりませんけど、利用できるものは何でも利用するものと思っていましたから~」
「随分な言いぐさだな」
「えへへ」
 軽く睨まれて愛想笑いでごまかす虎桃。

「……考えても見ろ、虎桃。あらゆる願いを叶える扉だぞ? その気になれば不老不死でも権力でも手に入れられるのだろう。それだけのものに、何の代償も無いと思うか?」
「ああ、それは確かに……」
 虎桃にも思い当たる節はあった。狗根国には魔界に通ずる狭間からあふれ出る、黒き泉というものがある。その水を飲めば超人的な力、人によっては不老不死まで得られるという夢のような効能がある。しかし、それに耐えきれるだけの器を持たなければ最悪なら死。そこまで行かずとも何らかの重い障害を抱えることになりかねない。

「出来うるなら私も扉の力は欲しい。しかし、今の私で私の目的が叶えられぬ分けでもない。ならば不要な賭けに出る必要はないだろう」
「まぁ、そうですけど」
 そんなの天目様らしくないなぁ、などとまた安易に口にして睨まれる虎桃。

「あ、いえ、でもそんなものを火魅子とか蛇渇とかに使われたらそれこそ手に負えなくなるんじゃないかなぁって思うんですけど。結局志野達には逃げられちゃって、案埜津も生きて帰れるか分からない状態ですし」
「火魅子ならば問題はないが、蛇渇は確かに厄介だな。消息は捜させてはいるが、まぁ見つかるわけもないか。どのみちこの期をあの爺が逃すとも思えぬし、せいぜい火魅子と潰しあってもらうさ。何にせよ監視だけは怠るなよ、虎桃」
「は~い。まぁ、真姉胡が見てるんで大丈夫だとは思いますけど」

 虎桃は脳天気にそう答えながら、本当にこのままでいいものだろうかとまだ考えていた。このまま黙っていたら、何か決定的なものを逃してしまう気がして。それは虎桃自身が何か叶えたい願いがあるが故の事だったのかも知れない。













追記:
 祝四十話! ってか、更新早いんじゃないかなぁと思うのは私だけですか? いや、ほら、前回ストック数で更新速度を決めるとか何とか言ったじゃない。そのせいなんだけどもね。そんなわけで四十三話書いちゃったので今日も更新しちまいましたとさ。

 内容に関しては何も言うまい。いいんだ、終わればそれで(ぉぃ えー、次回更新は明日書いたら明日になる気もするけどさすがにそれはどうかと思うので来週のどこかで更新するんじゃないかなぁとおもうんだけど……。まぁ、更新がランダムなのは今に始まったことではないですが、少なくとも一週間以内の更新期間で最後まで行ければなぁと妄想しております。


 ではweb拍手のお返事~。
 5/24。

23:11 出雲盛衰記はすばらしかった(´▽`)天目サイコ~
 と頂きました。
 盛衰記ですか。何か懐かしいですねぇ。あのころは編年紀も週一くらいで更新してたりして、一体一日何時間小説書いてたんだって感じですねぇ。まぁ、実際書いてる時間は今もそんなに変わらないという話が合ったり無かったり(ナニ? その割に更新に反映されてないのはゴミくずばかり量産しているせいなんでしょうねぇ。
 コメントありがとうございました。


 5/25。

1:30 そうでしたか、ツンデレじゃなかったのか・・・・・・
1:32 ターニングポイント→九峪殺人→茫然自失or自己嫌悪(自暴自棄)→深川の愛のむt(ry
 と頂きました。
 ツンデレ云々はまぁ、作者も実のところよくわから……ゲフンゲフン
 えーと、九峪と深川がどんな風になるかはまぁ、近々判明すると思うのであまり深くは語りませんが、話がどんどん重く沈んでいくのが止まらない今日この頃バッドエンドはありなのかと読者に問うてみたり。……いや、バッドなグッドエンドもあると思うんですが(?)
 コメントありがとうございました。

 次いでもう一件。

2:14 小説めっちゃおもしろいです!!
 と頂きました。
  あぅ? 面白かったですか? 本当ですか? マジデスカ? だとしたらこの上ない喜びで作者は小躍りの一つでも踊ろうってもんですよ。いや、実際は踊りませんが。話のクオリティは連載期間が長くなると反比例して落ちていく気がしないでもない今日この頃、もっと面白いものがかけるように精進したいと思います。
 コメントありがとうございました。


 他にも叩いてくれた人に心より感謝申し上げます
 日頃のご愛顧に感謝して沢山叩くと何か得点があるや無しや……

 では本日はこの辺でヾ( ̄◇ ̄)ノ)) バイバイ

【2007/05/26 21:37】 | 小説 | トラックバック(0) | コメント(1) | page top↑
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コメント
んん、Good
一気に読んでしまいましたよ

腹黒最高!
しかし腹黒に弄ばれると思われていた自分の腹の中に真っ黒な剣があるのね・・・
【2007/05/27 11:41】 URL | MaNa #-[ 編集] | page top↑
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