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深川45
 深川
 四十五話



 火魅子の遺言に従って今耶麻台国を統べているのは星華という王族の女。復興前は亜衣が後見人として付き、宗像神社という嘗ての耶麻台国の国教の巫女を取り仕切る立場でもあった。
 その誇り高い血と権力に囲まれ生を受けた少女は、その直ぐ後に耶麻台国滅亡というどん底に突き落とされた。だからこそ、星華は純粋に耶麻台国の復興を望んでいると言ってもいい。

「衣緒、まだ落ち込んでいるの?」
 火向が狗根国に落ちたことで国の統制が火後の国都、片野城へと移り目が回るような忙しい日が続いている。都督から火魅子の遺体と共に戻った衣緒は、星華の政務を手伝いながらも心ここにあらずと言った様子だった。

「……申し訳ありません、星華様」
「責めているわけではないわ。心配しているだけ。やはり少し休んだ方がいいわよ」
「ご心配なく。私は怪我一つしておりません」

 まるで、腕の一本でも落としていればまだ気が楽だったと言わんばかりの衣緒。星華はあきれ顔でため息を吐いた後、その頬を思い切りひっぱたいた。

 乾いた音がたいして広くもない部屋に響く。

 じんじんとする頬に手を当てて、自分も痛そうに手を振っている星華を見つめる。

「いいから下がって休みなさい。そんな辛気くさい顔をされたら私の方まで気が滅入るわ」
「……わかりました。それでは失礼します」
 さらに落ち込みながら部屋を出て行く衣緒。星華はもう一つため息を吐いて、どうしたものかと頭をひねる。

 星華にとって衣緒や亜衣、羽江は共に育ってきた姉妹のようなもの。妹が落ち込んでいれば手を差し伸べたいとは思うが、落ち込み具合も半端ではない。仕えるべき主君を目の前で殺されて、何一つ出来なかったのだから無理もないが、いつまでもそれでは星華が困る。

「全く、亜衣は亜衣で我が儘言って出て行ったままだし、どいつもこいつも勝手なんですから」
 こなさなければならない政務はまだまだある。早速戻ろうと思っていると、今度は星華の身の回りの世話をしている蘇羽哉がやってきて、来訪者がいることを告げる。

「こんな時に? 一体誰なの?」
「それがその、自分が王族だと名乗る山人風の女なのですが……」
「……ふぅん。いい度胸ね」
 火向が落ちたことで立場的にライバルだった藤那は今は大人しくしている。今の星華は誰も文句をつけられない耶麻台国の国主。その星華に、自ら王族だと名乗る、どこの馬の骨とも分からない女が訊ねてくる。

 ――さて、これも狗根国の奸計か、それともただの馬鹿が現れたのか。

 ちょうど政務ばかりで退屈していたところだった。暇つぶしにはなるかと気楽に考え、星華はそのものに会うことに決めた。






 割とすんなり通されてしまったことに伊万里は少しばかり驚いていた。正直なところ自分が王族であるなど半信半疑ではあったし、そう言えば入れると言ったとある人物の事は未だに信用していいのかどうかも分からない。ただ、それでも今は力が必要だ。相手は火魅子すら打倒した人外の存在。ありすぎて困ることはない。

「あらあら、王族というからどんな人かと思ったら、ただの山猿じゃない」
 遠慮無く嘲笑しながら入ってきた星華を、伊万里はむっとしながら見つめる。自覚はあるがいわれれば腹は立つ。星華のその嘗めきった態度はある意味非常に王族らしいとは言えたが。

「はじめまして、星華様」
「はじめまして。私に何の用かしら、お猿さん」

 伊万里のこめかみにくっきりと青筋が浮かぶ。が、ここで事を荒立ててもいいことは何もない。伊万里は必死で堪えながら、単刀直入に目的を話すことにした。

「炎の御剣、その所有者を止めたい。そのための力を貸してはくれないか」
「……なんの話で来たかと思えば」

 星華の表情が一変し、真剣な表情で伊万里の前に腰を下ろした。

「詳しい話を伺いたいところですが、その前にお名前をお聞きしておきましょう」
「伊万里だ」
「伊万里さん。私はあなたという王族など聞いたこともありませんが、一体なんの根拠でご自分を王族だと?」
「さぁな。私もよくは分からない。ただ、天魔鏡を持てるのは王族だけという話を聞いた」
「――天魔鏡を持っているの?」

 すうっと細まった星華の瞳。伊万里は頷くと懐から布に包まれたものを取り出す。

「この通り持っている。そのとき九峪という男にあった。炎の御剣の持ち主だというその男は、炎の御剣の御霊に体を半ば乗っ取られ、今もコイツを捜しているはず。仮にこの鏡が奪われるようなことがあれば、そのときは何が起こるかわかったものじゃない。何せ、炎の御剣の御霊の正体は、あの蛇渇だ」
「……なるほど、そこまで知っているのね」

 星華は驚きもせずただ頷いただけ。伊万里は逆にそれが不審になる。なぜ、そんな事を知っているのかと。

「元々その天魔鏡と炎の御剣を管理していたのは私たち宗像神社。三百年前の紛失も、その後の行方も、代々長となるものだけには伝えられてきた。正確なことは火魅子様すら知らなかったでしょうけどね」
「なぜ、教えなかった? 知っていれば或いは」
「あら、いわなければ分かりません?」

 そう言ってほほえんだ星華。鏡と剣。その伝承の内実を誰よりも知り、求めることの無意味さに気づき、ただ求めるものが墜ちていくのを高見の見物していた星華。

「十五年。いえ、生まれ落ちて十八年。私は火魅子になるべく生きてきた。例え国が滅びようともただそれだけを目指し己を磨き、いずれ国を興して高らかに名乗り上げるつもりだった。それをどこからか湧いた小娘に奪われたのよ? もちろん、国が滅びては困るし、火魅子様が有能だった事も認める。だから、積極的におとしめようとは思わなかったし、自分では何一つしなかった。それは罪かしら? 彼女は勝手に戦い勝手に死んだ。私が告げていれば変わったかも知れないけれど、私がそこまでしてあげる必要があったかも疑わしいでしょう? なにせ彼女は、絶対にして不可侵である直系の火魅子だったのだから」

 鈴が鳴るような流麗な笑みを見せた星華に、伊万里は苦り切った表情を返した。だが、ただそれだけ。

「権力争いなど勝手にやるといい。だが今はそれどころじゃない。あの禍々しい蛇渇が九峪を飲み込み、その願いを叶えたら下手をすれば世界が滅びる。協力はしてくれるな?」
「当然です、といいたいところですが勘違いはしないで。協力するのはあなたで、指揮を執るのは私がやります」
「……勝手にしろ」

 星華の矜持の高さに本気で呆れたように、伊万里は閉口する。そんな伊万里の反応などまるで無視するように、星華は伊万里に向けて手を差し出した。
 にこやかに笑いながら、どこまでも威圧感がある視線を向けて。

「天魔鏡は返して頂けますか? 本来それは私が管理するべきものです」
「それは出来ない相談だな」
 伊万里は忌々しそうにそう言って、眉をつり上げた星華に肩をすくめて見せた。

「私もこんなもの別に必要でもないんだが、鏡の方が嫌がるんだ」
「天魔鏡が?」
「嘘だと思うなら取ってみるといい。怪我をしても知らないけれど」
 星華は半信半疑でそっと鏡が包まれた布に手を伸ばす。しかし、鏡に触れると言うところで、指先にバチリと電撃のようなものが走り、敢えなくはじかれてしまった。

「そんな。私は王族なのに」
「宗像の巫女は嫌いだそうだ。心当たりでもあるんじゃないか?」
 伊万里はこともなげにそう言うと、鏡を懐にしまう。星華はやはり忌々しそうな顔だったが、それも直ぐに引っ込めると、取り繕ったような真顔で伊万里に告げた。

「では鏡はあなたが管理して下さい。宗像関係者の総力を挙げて、剣は探し出します。あなたはその間この町に逗留しているといいでしょう。まぁ、九峪とやらがこの鏡を求めて動くというなら、遠からず見つかることでしょうけど」
 自信満々でそう言った星華に、伊万里は首肯すると立ち上がり、最後に一言だけ危惧していたことを告げた。

「相手は火魅子様すら倒したある種の化け物だ。策はあるのか?」
 真っ向からでは確実に負ける。それが例え万の軍だとしても保証はない。それが分かっている故の質問に、星華は不敵な笑みを返した。













追記:
 職場でトラブル続きで大変でございます。まぁ、私には関係ないというかどうでもいいというか、影響はあるけど蚊帳の外的なトラブルなワケなのですが、おかげで上司がピリピリしてるとか何とか。何を期待されているわけでもなく何か出来るわけでもなく、せめて今後同じトラブルが起きたときのためにと頭は巡らせてみるわけですが、人の話を聞かない人ばかりなので偉くなるまでいかんともしがたいのかなぁとか。

 はぁ、来年くらいには部署変わってるかなぁ。今の部署がつぶれて(爆

 と、仕事の愚痴はこのくらいにしておきまして、やや早めの更新。今月はあと一回は更新すると思いますが。日曜の夜か月曜になるか、そこはちょっと分かりませんけどもね。


 web拍手のお返事。
 6/16。

15:06 ぶっちゃけ九峪が日魅子に存在を知られる前に野たれ死んでたら、最善でなくとも丸く治まった気がしますなぁ
 と頂きました。
 九峪が野垂れ死んでいれば……、まぁそうなんですけどもね。そんな事になったら話が進まないというか。そこに手を差し伸べてしまった深川とのお話なワケでありまして。そもそものたれ死になんて選択肢を蛇渇が取らせるかというと謎な部分もあったりなかったり。世の中うまくいかないもんです。
 コメントありがとうございました。

 6/18。

23:47 おぉ~ OLSあと2回かあ できれば更新おねがいします~
 と頂きました。
 ……えーと、書かなくちゃやっぱり駄目かなぁ(滝汗 んー、まぁ、さっさと終わらせたいという願望と一回あたり短めとは言え深川にして最低十話以上はある分量を書かなくてはならないという嫌悪感とがいったりきたりな感じでして。特にいんそむにあ後編がねぇ。ちゃんと書くと大変だなぁとか思うわけですが。まぁ、なんとか頑張ります。
 コメントありがとうございました。

 他にも叩いて頂いた皆様に千の感謝を!


 では本日はこの辺でヾ( ̄◇ ̄)ノ)) バイバイ
【2007/06/19 19:59】 | 小説 | トラックバック(0) | コメント(1) | page top↑
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コメント
おお、いつのまにか復活しているですね。
相変わらず、凄くいいですね。
日魅子は、九峪?に殺され、志野が後悔する。
確かに、志野の言うとおり、日魅子を嵌めるのは難しくないのでしょう。
しかし、珠洲と忌瀬が前向きのですね。
特に、珠洲は火魅子に強さは認めていても、敬意はほとんどなかった。
いいですね。

星華の伊万里への態度。 正直ですね。 まあ、星華の日魅子への感情、もっともですね。 もし、日魅子が九洲を解放し、狗根国を滅ぼしたら、一生日陰と言うかお飾りで、
下手したら、殺されかねなかったような気がしますす。
しかし、この星華、原作の星華より、余程、女王候補らしいですね。
アニメ版の星華が腹黒さを覚えたような感じです(笑)
 星華とやりあい、鏡の所有権を認めさせた?伊万里も凄い。
原作のような気の弱い所がなく、凛々しい女戦士ですね。

 しかし、これが本当に女王候補同士のあるべき姿かもしれませんね。
原作は仲良し過ぎます。

 伊万里への情報提供者も気になります。
 うーん。 志野と伊万里が組む事になるのかな?
 これからも、おもしろい作品お願いします。
【2007/06/20 00:14】 URL | アレクサエル #xfGWKbWo[ 編集] | page top↑
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