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深川47
 深川
 四十七話



 雨は上がり日は沈み、夜の帳が降りた頃、九峪は空を見上げていた。その腕の中で眠る深川の体温を感じながら、決然とした顔で。

「……すー、すー」
 寝息を立てる深川の顔は年齢の割に幼い。そんなことを口にすれば怒られそうだが、今は安心したように無防備ですらある。

 ――私だけは、お前の味方だ。

 誰が言っても深川だけは口にしないような台詞。
 その意味が分からないほど九峪は馬鹿なわけではない。

 嬉しかった。
 ただ単純にそう感じられた。

 隙あらば表に出ようと藻掻く蛇渇を押さえ込むだけで、九峪の精神は疲れてしまう。今や九洲全てを敵に回した九峪にとって、味方だと言ってくれる人間が一人でもいるのは心強い。

 何より、少なからず九峪自身も深川のことが。

「……だから、お前を日魅子と同じ目には」

 巻き込んで、自分のせいで殺してしまったらもうどうしようもない。二度と繰り返さぬと誓ったのだ。もう終わらせると決めた。ならば、九峪の取るべき道など一つしかない。

「悪い」
 深川が起きないように、そっと体をずらして地面に横たえる。

 今ならばまだ、自分でけりがつけられるかも知れない。

 そう思って立ち上がった九峪の腕を、しっかりと深川は握っていた。

「私を、養ってくれるんだろう」
 それは約束。九峪から口にした、迷い言。

「綺麗事な最善を求めるのがお前の性分だろう。なら、自分の人生をここで諦めるのは違うんじゃないのか?」
「……そう言ってくれるのは嬉しいけど、実際問題他に方策はない」
「諦めるのか? 先の事なんて分かるほど利口じゃないくせに、それを言い訳にするな。そう言いはなったのもお前だろう」
「だけど」
「お前の論理に従うなら、お前を失うと悲しいと思う人間がいるのに、その命を捨てるのは間違いだろう」
「……」

「火魅子を殺して悲しい気持ちが分からないでもない。今の私になら何とはなしに想像も付く。死にたいほどに後悔しているんだろう。蛇渇を止めることも出来たのに、それが出来なかったんだから。だがそんなものは結果論だ。あのときのお前にそれは出来なかったし、火魅子が礎になったからこそ、いまその偉業を体現できているとも言える。火魅子はお前に生きて欲しかったからこそ、自らその身を犠牲にした。ならばただ単純に死を選ぶのは火魅子の死に対する冒涜ですらある。何かの死を踏み台に生き残ったというなら、その分まで生きるべきだ」

 最後のそれは深川の論理。だが、今このとき九峪にもそれは正論だと分かる。

「だけど、そのためにあいつが護りたかったものを傷つけるなら、そんなものはあいつの望みなんかじゃ」
「寝ぼけるな。九洲の民が真実護りたかったならば、お前のことを殺していたんだ。九洲の民、その有象無象よりお前を取った。ただそれだけの事だろう」
「けど、俺は……」

「言い訳などするな。そんなものは無意味だ。罪の意識に思考が曇っているというなら私が教えてやろう。お前が取るべき道というものを」

 毅然と深川は言い放った。
 九峪は、場違いではあったが今この状況がとてもおかしくて、あまりにもおかしすぎて――

「ぷ、あはははっ!」
 思い切り笑ってしまった。

「……嘗めてるのか貴様」
「ちょ、だって、お前。くく、あはははは、よりにもよってお前が言うか? いや、うん、その通りでさ、そうなんだけどもさ。まさか深川の口から励ましなんて聞けるとは思わなかったからさ」
「からかってるなら殺すぞ?」
「違うって。意外すぎただけだ。これも愛の力かねぇ。いや重畳重畳」
「やっぱり貴様からかってるだろう。ん? そうなんだろう?」
「まぁ、多少は」
 深川は無言で頭を殴りつけると、それからため息を一つ吐いて続きを口にした。

「最善がもしあるとするなら、お前が蛇渇に完全に打ち勝ち、その炎の御剣の力を我がものとし、さらに天魔鏡で本当の望みを叶えることだな」
「願い事はどうでもいいんじゃ?」
「権利があるなら行使するべきだ。蛇渇の思惑が入らなければお前の望みは九洲の民のためにもなるのだろ。まぁ、私にしてみればどうでもいいが」
「……そうだな。まぁ、確かに実行する手段があるのだとすれば、それは確かに最善だ。誰も犠牲にはならないし。願い事云々は置いておくにしても、俺自身、もう誰も殺したくはない」

「問題は手段だがな。正直なところ火魅子本人が生きていてもどうにか出来るものなのかどうか」
「おい」
「ようはお前が揺るがなければいいだけの話だ。蛇渇に負けないように」
「簡単に言うが、ものすんごいしんどいんだぞ? 実のところ熟睡だって全く出来ないんだぞ? ぶっちゃけ寝てないしな」
「お前も少しは考えろ」
「んなこと言ったって、余計な事考える余裕もねーんだよこっちは」

 九峪は精神的にかなり参っている。いや、いまだ正気を保っていられるのが不思議なほどだ。深川はふと、その事実事態が何か現状を打開する鍵になるのではないかと気が付く。

 普通の人間。例えば自分ならば蛇渇の精神などどうあがいても叶わないだろう。それに対抗できるのは何故なのか。

「うふふ、頑張っているようねぇ、少年」

 唐突に闇夜に響いた妖艶な声。声のした方を見れば明らかに堅気には見えない煌びやかな衣装に身を包んだ女。油断無く構えながら、九峪と深川は女と対峙した。






 女は細かく編み込まれた色鮮やかな布を頭に巻き、季節はずれに暑そうなこれまた色鮮やかな衣を幾重かに纏い、その端正な顔に満面の笑みを浮かべていた。
 夜だというのにその姿がはっきりと見えるのは、女の手のひらの上で何かが発光しているから。よく見ればそれは札で、九峪には理解できなくとも深川にはそれが方術士が使う符であると分かった。

「仙人か? なぜこんなところに」
 身に纏う異質な気配から深川が正体を推測すると、女は笑みを浮かべたまま二人へと近づいてきた。

「なぜ、と問われれば救いに来たと返しましょう。うふふ、信用していないみたいね。でも本当よ。まずは自己紹介でもしましょうか。私は寝太郎。竜宮にて乙姫に仕える仙人よ」
 寝太郎。男のような名前に戸惑いながら、九峪は近づいてきた寝太郎が、この前自分がナンパしようとした相手だと言うことに思い至る。

「アンタ、あのときの」
「あら、覚えていてくれたのね。嬉しいわ。それより名前を教えてくれないかしら。私は名乗ったのだから」
 そう言われて名乗ろうとした九峪の口を深川が手で塞ぐ。その目は寝太郎に対する警戒心がありありと浮かんでいた。

「迂闊に名乗るな阿呆。術者相手に名を軽々に明かすなど自殺行為に等しい。それが敵になりうるなら自ら名乗るなど論外だ」
「……ふが、って、それじゃ名前分からないだろうが」
「そうねぇ。私は名乗ったわよ?」
「ふん。どう考えても本名ではあるまい。それに、私たちを捜してきたというなら、わざわざ名乗る必要も無いはずだ」
 言うまでもなく、既に知れているだろう。深川の言葉に寝太郎は苦笑を浮かべると頷いた。

「やれやれ、警戒されてしまっているみたいねぇ。心配しなくても私は基本的にあなた達の味方なのよ。九峪さんに深川ちゃん」
 寝太郎はからかうようにそう言って、二人の間合いに易々と入ってきた。

 その無防備な振る舞いに深川も九峪も毒気を抜かれてしまう。

「その剣を、なんとかしたいんでしょう?」
 見透かしたように確信を突いた寝太郎は、クスクスと笑いながら九峪の瞳を至近から覗き込む。顔と顔とがくっつきそうなあまりの近さに九峪は気圧されたが、押しのけるまでもなく寝太郎は直ぐに離れた。

「……なんとか、出来るのか?」
 懇願にも似た九峪の問い。寝太郎は値踏みするように九峪と深川を交互に見た後、指を一本立ててみせる。

「出来るしやり方を教えてあげてもいいけれど、条件が一つだけ。あなた達にそれが飲めるかしら?」
「なんだ? 条件って」
 どんな条件であれ、現状を打開できるならと聞いた九峪に、寝太郎の回答は残酷なものだった。

「どちらかが、必ず死ぬわ」

 それは宣告。

「それでもよければ、教えましょう」

 楽しむような寝太郎は、まるで死神のように二人には見えた。













追記:
 今日から七月。いやはや時間が経つのも早いですねぇ。試用期間も終わって私の方はぼちぼち仕事が忙しくなりそうな感じ。まぁ、頑張りますか。
 深川の方ですけども、一体どのくらいで終わるんだろうねぇ。六十前に終わらせたいと思ってたけども、なんだかあらぬ考えが頭をよぎってうんうん悩んでおるところです。さて、倍にならなきゃいいけどなぁ(ナニ


 web拍手のお返事。
 6/25。

22:13 おお!九峪と深川が結ばれましたね・・・・・・凄い勢いで死にフラグを立てまくってる気がしますが。
22:34 私の中で小説が原作と言う認識なくあれはゲームの二次創作に近いとおもてます
22:35 あと炎戦記はもういいヨ。ふつうにつまらなく成りっ放しだヨー。独自要素強すぎだヨ
22:36 でも確かに年齢層考えたらあれくらいのほうが良いのかもしれませんね。二十代半ば…もうそろそろラノベは
22:38 卒業しなきゃ駄目なのか…。でもつい見ちゃうんだ。                  にんげんだもの。
 と頂きました。
 深川と九峪のラブラブはまぁ、このお話の本筋なので本当にようやくって感じですが(笑 死亡フラグは……、きっときのせいデスよ。
 原作に関しては……ねぇ。元々私自身、小説、アニメ、コミックスの三つしかしらないので、ドラマCDとゲームのことは分からないので何とも言えないのですが。まぁ、でも無印の時は本当に次の巻が楽しみで仕方がなかったんですよねぇ。後、独自要素を言われると私は耳に激痛が(汗
 ラノベはいい加減卒業な感じにしたいと思いつつも、あまり硬い文章の本を読みたいとも思えず買っちゃうんですよねぇ。火魅子伝は買いに行こうとしたら本屋にありませんでした。今住んでる町はどうも大きな本屋が無いんですよねぇ。ちょい困ってます。
 コメントありがとうございました。

 6/27。

9:54 ガンバです
 と頂きました。
 ウッス! 頑張るッス!
 コメントありがとうございました。

 6/30。

1:09 深川フラグ キターw てか怖い女性陣が多いから、この深川の反応に素直に萌えられる。(i
1:09 ここまでの九峪の殺しイクナイって頑張り(がんばらなさ?)の成果が実ってよかった(ii
 と頂きました。
 読み返してふと、確かに深川が一番素直ってどうよ? って思ってしまいました。まぁ、いいか。事もあろうに敵の三下外道雑魚キャラをヒロインにしようっていう無謀な作品だし。無理はつきものなんだと言い聞かせましょう(オイ
 コメントありがとうございました。

 他にも叩いてくれた皆様に感謝を!


 後は直接コメント。アレクサエルさんから。

46話
おお、ついに、九峪と深川のある意味純愛!!! 美しい!!!
しかし、考えて見れば、深川がヒロイン!!! 発想が凄い!!!

九峪も理由はどうあれ、日魅子を殺したから、耶麻台国勢力には合流出来ないし、
いや、もし、伊万里に殺されなくとも、うまく蛇骨の呪縛が解け、耶麻台国が盛り返したら、待っているのは、
処刑しかない。 魔兎姉妹には恨まれているし。

 確かに深川しか、味方はいないような。
 と頂きました。
 やっぱり深川がヒロインって言うのは冷静に見ると苦しいですよねぇ。まぁ、だからこそ苦労してるわけですが、だって深川様が大好きなんだから仕方(ry
 九峪と深川の今の状況はまさに四面楚歌。ただし現時点最強という。他の腹黒さん方のような、自己保身的思考をもし九峪が取るならば、その力を使って全勢力を今の内に叩き潰すのが正解なんでしょうけども、間違ってもそんな事しないですしねぇ。はてさて、一体どうなる事やら。
 コメントありがとうございました。


 では本日はこの辺でヾ( ̄◇ ̄)ノ)) バイバイ
【2007/07/01 19:17】 | 小説 | コメント(1) | page top↑
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コメント
四十七話おお!!!!
しかし、寝太郎は、原作では、香蘭を助けた以外、全く言っていい程、
活躍ゼロでしたからね。
 どういう活躍をしてくれるのか?

 しかし、深川がいなくなれば、人道的以上に九峪は、本当に一人になってしまうから
受け入れられないだろうし。
【2007/07/08 00:09】 URL | アレクサエル #xfGWKbWo[ 編集] | page top↑
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