スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

【--/--/-- --:--】 | スポンサー広告 | page top↑
深川48
 深川
 四十八話



「そんな話なら聞く意味がない」
 寝太郎の出した条件に九峪は間髪入れずに返事を返した。

 蛇渇は何とかしたい。どうにかしなければならない。が、しかしそれで九峪か深川が死ぬというのなら、そんなもの大人しく九峪が死んでいればいいだけで、現状から事態は何一つ代わりはしない。

「あら、私からすれば破格の条件だと思うのだけれど」
 寝太郎は聞く耳持たないような九峪の態度に意外そうに呟いた。

「その条件なら黙って俺が死んだのと何も変わらない」
「変わらない? 変わらないですって?」
 どこか怒ったように、からかうように、寝太郎は九峪の言葉尻をとらえる。

「認識が正しくできていないようね。このままではあなたは死ぬ事なんて出来ないし、蛇渇に飲まれて消えるだけのちっぽけな存在。誰かが殺してくれるなんて、そんな他人任せな上に不確定な事を本気で考えているの? 今や九洲で最強のあなたを、一体何処の誰が、どうやって殺すというの? いざ戦いとなれば動くもの全て殺し尽くすまで止まれない、壊れた殺戮人形のあなたを確実に、たった一人の命で止めてみせる。私はそう言っているのだけれど、それでもあなたはそれすら不満だと言うつもり?」

「不満だ」
 九峪は言い切った。ちらりと深川を見つめて、そう言いきった九峪を当然だとでも言うように見ているその表情に、救われる自分を感じながら。

 そっと手を伸ばして深川の手を握る。確かに感じる体温。それを失いたくはない。もっと感じていたい。そのためには、どちらが欠けてもいけないのだと。

「寝太郎って言ったか。そんな議論は深川ともう済ませたんだ。俺は死ぬつもりはないし、これ以上殺すこともしない。蛇渇は、もし取り去る方法が無いって言うならねじ伏せるだけだし、そのことで弱音ももう吐かない。出来ないなんて言葉は知らない。ただやるだけだ。それしか無いというなら、俺は迷うことすらしない」

 まっすぐと見つめられ、寝太郎はやれやれと苦笑をこぼす。

「度し難いほどのお馬鹿さんね、あなた」
「誠に遺憾な言葉をありがとう」
「仕方がないから教えてあげましょう。実に簡単に、炎の御剣、その御霊を解放する方法を」

 首を傾げる九峪。その方法とは、結局犠牲を強いる何か。ならばそんなものは聞きたくもないと言いそうになった九峪を、寝太郎は制して告げる。

「生け贄なんていらないわ。ちょっと意地悪してみただけよ。これだけの立場にあって女といちゃいちゃしている神経が少し癪に障っちゃったの」
「な――」
「うふふふ。でも、まぁ、そこまで筋金入りだというなら、まぁいいでしょう。教えてあげるわ」

 寝太郎は一拍おくと、じっと九峪の瞳を見つめる。

「そもそも、炎の御剣、その純白だったはずの御霊が汚れ、剣と共に一人歩きを始めた理由がある。蛇渇と名乗り狗根国に渡り、三百年にわたって宿主を捜し続けるに至ったその理由。元来変質するはずもない、初代姫御子が生み出したただの道具の延長上でしかないはずの精霊が、何を契機に変わり果ててしまったのか?」
「三百年も前の事じゃ……」
「そう。誰も知りはしない。唯一知っていそうな火魅子も知らなかったからこそあなたに殺された。でも知っているものは必ずいる。蛇渇という名の外道に剣の精霊を作り替えた犯人と、剣と一対の神器である鏡の精霊だけは」
 寝太郎は断定的に語って、不機嫌そうに鼻を鳴らす。

「伊万里には会ったわね? あの子が手に入れた鏡の精霊から裏は取れた。三百年前、私利私欲で蛇渇を生み出したのは宗像神社。想像の域は出ないけどまぁ、低俗にして浅薄な理由があったのでしょう。剣の精霊に宿主に対する妄執を植え付け、自分たちは鏡を管理し、いずれ宿主と共に戻ってくることを待っていた。自分たちはただ待てばいい。それが何年であろうとも、すでに七百年待っていた彼らには些細な問題だから」
「……宗像って」

「ふふ。まぁ、元凶というならばまさにそこ。けれどそんなことはもう些細な問題でしょう。実際に実行したものは既に土に還ってしまっているんだから。しかし、意図的に行ったことであるならば、当然その後の対処も織り込み済みのはず。何年かかるかも分からない偉業であるならば、確実にその術は子孫に伝えられている。そう、戻ってきた精霊が狂ったままだというなら、それをどうにかする方法も、確実に知っていなければならない」

 寝太郎は話は終わりとため息を吐く。

「まぁ、それをどう考えるかはあなた達次第。どのみちもしかしたら死ななくてはならないのかも知れない。けれど唯一にして最大の希望であることは確かでしょう。強がりで押さえ込むなんて言うのは結構だけれど、気合いでどうにか出来るようなものでもないはずよ。じゃあ賢い選択をすることを願っているわ」
 歩き去る寝太郎。頭の中で今の話を反芻していた九峪は、慌ててその後ろ姿に声を掛けた。

「ありがとう。でもなんであんたはこんな事教えてくれたんだ?」
 ただの親切、だとは思えない。

「……さぁ。ただ、人間界に降りてくる仙人なんてものはね、大抵お節介で偉そうに人間を導くことが趣味の変わり種なのよ。まぁ、私の場合はただの気まぐれ。敢えて言えば、九峪さんが少し可愛かったからかしらん」
 冗談めかしに言って気まぐれな仙人は闇に消えていった。

 暫く狐につままれたように呆然としていた九峪は、ふと隣からの視線に気づいて目を向ける。

 深川は何も言わなかった。
 九峪も口を開かなかった。

 何も語らなくても、今だけは考えていることが分かったから。
 自然、視線は火後を向いていた。






 やることもなく、片野城の街の中をぶらぶらしていた伊万里。やるべき事は全て星華がやる。何一つやることが無いのは暇だなと思いながらも、自分一人ではどうにもならないのだから仕方がないかと諦める。

 火魅子を殺した相手。

 そんな途方もない化け物相手に、勝算などカケラもない。星華は自信満々だったがその根拠が分からない伊万里には、状況が見えていないのではないのかと勘ぐってしまう。無論、星華は伊万里などより火魅子に近しい位置にいたのだから、その力の大きさも正確に知っている。それを倒すという意味も理解している。

 だからその上で余裕があると言うことは、何か確実な策を既に持っているという証左であるはずなのだ。

「結局私は鏡持ちって立場か。やれやれだ」
 ぼやきながらふと視線を前に向けると、絶世のと言って差し支えないような美女と目が合った。体の線は細く肌は白いが、決して病的な感じはない。むしろしっかりと鍛えられたしなやかな体。安定した立ち姿はそれだけで手練れであることが知れる。やけに露出と装飾が多い格好は、女が芸人である事を示している。

 視線が合ったのは向こうもこちらに何か感じるものが会ったからだろう。これも縁かと、伊万里はその美女に話しかけることにした。

「やぁ」
「どうも」

 気軽に声をかわし、それからふと何の話をしたものかと迷う。

「あー、この街で興行でもしてるのか? 生憎とお目にかかった記憶が無いんだが」
「ええ。興行はここではなく、別の街でやっておりますから。ここには少し用があったもので」
「ふぅん。用ね」
「あなたは?」
「?」
「ただものを卸に来た山人には見えませんが」

 伊万里は言われてみれば、今の自分が宮城にいるため普段とは違う格好であったことを思い出す。

「まぁ、私もちょっと用があったんだ。ああ、私は伊万里」
「志野と申します」

 志野。その名前に伊万里はぴくりと反応する。

「……どこかで聞いたような。何だったかな。確かについ最近」
「私の名を聞いたことがあると言うことは、伊万里さんは耶麻台国の関係者と言うことですか?」
「ん? どうだろう。ああ思い出した。確か女官の誰かがうわさ話をしていたのを聞いたんだった」
「ロクな噂ではなかったでしょう?」
「もう忘れたよ」

 伊万里はそう言いながらも、確かに憎悪すら籠もった良くない噂であったことを思い出す。目の前の少女を、裏切り者だの売国奴だの口汚くののしっていたのだ。

 ――とてもそうは見えないが。

 そんな内心はおくびにも出さず、しかしそんな嫌われ者が今や耶麻台国の中心である片野城に来ているのか不思議に思う。

「関係者でしたらちょうど良かった。出来れば星華様にお取り次ぎ願いたいのですが」
「ああ、どうかな。今はかなり忙しいみたいだし。それに取り次げるような立場でもないんだ。私も」
「そうですか。でしたら直接宮城へ――」

 "見つけた"

 向かおう。そう口にしようとした志野の言葉が止まる。空耳かとも思ったが、確かに聞こえた。

「あの、今何か?」
「え、いや私は何も――」

 "これで、――――る"

「え?」
「ん?」

 伊万里と志野。二人で首を傾げる。
 確かに聞こえた声。

 "時は満ちた。さぁ、扉を開こう"


 不思議な声が、二人にはとても楽しげに聞こえていた。













追記:
 あー、深川も後二話で五十話かぁ。よく書いてるなぁ。といいつつ仕事が忙しかったりなんだりで今週全くと言っていいほど小説書けなかったんですけどもね。仕方ないので今書きました。一時間ちょいで。なので誤字があっても知らん! って堂々と言う事じゃないですね済みません。

 後十月くらいにとある資格の試験がありましてですねぇ。勉強しないといけないので憂鬱だったりしてますです。落ちたら怒られるだろうしなぁ。何より私のなけなしのプライドが(あったのか?
 って事で更新ペースは多分、きっとこれ以上は上がらないかも知れないけれど勘弁して下さい。



 ではweb拍手のお返事。
 7/2。

2:21 毎回深川楽しく読ませてもらっますが、一言。
2:25 拍手 22:13の ~死にフラグを立てまくってる気がしますが。までで、その後の感想の方とは別人ッス。
と頂きました。
 あぅ。申し訳ない。よく見ると時間開いてますねぇ。後で直しておきますので。
 コメントありがとうございました。
 

2:32 寝太郎提案が云々じゃなく怪しさ大爆発ですね・・・生き死にを楽しそうに提案する時点で信頼度0ですし。
と頂きました。
 まぁ寝太郎が怪しい人なのは仕方がないですが(ナニガ? 今回で少しいいひとっぽくなったかなぁならなかったかなぁと思ってみたりみなかったり。まぁ、やるせないエンディング(?)に向けて邁進していこうかと。
 コメントありがとうございました。

 他にも叩いてくれた皆様に感謝いたします。


 あとは、アレクサエルさんから。

四十七話おお!!!!
しかし、寝太郎は、原作では、香蘭を助けた以外、全く言っていい程、
活躍ゼロでしたからね。
 どういう活躍をしてくれるのか?

 しかし、深川がいなくなれば、人道的以上に九峪は、本当に一人になってしまうから
受け入れられないだろうし。
 と頂きました。
 寝太郎の活躍……。えーとあるのかなぁ(苦笑 いやまぁ、なにがしかやるとは思うんですけれども。前回のはただの嫌がらせで結局今回も確かなことは何も言わない性別同様あやふやな寝太郎だったのでした(?)さて、物語は一体何処に進んでいくのでしょうねぇ。私にも分かりません(爆
 コメントありがとうございました。


 では本日はこの辺でヾ( ̄◇ ̄)ノ)) バイバイ

【2007/07/08 17:08】 | 小説 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
<<深川49 | ホーム | 深川47>>
コメント
コメントの投稿












管理者にだけ表示を許可する

トラックバック
トラックバックURL
http://sophist00.blog48.fc2.com/tb.php/165-dc6e364f
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
| ホーム |
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。