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出雲盛衰記06
 出雲盛衰記
 六章



 日本昔話でおじいさんとおばあさんが暮らしてそうな、木造家屋。水車付き。家の前にはステロタイプな畑があって小さな緑の葉っぱが地面から顔を出している。
 九峪は傍らに膝をついて、しげしげと葉っぱを眺めた。
「あ~。これは多分……」
 九峪は手慣れた手つきで土をすくい取ると、小川から水を汲んで来て土を入れてまぜ、布で越す。それから荷物の中から怪しい瓶を取り出すと、中の液体を一滴垂らす。透明の液体が赤く変色した。
「やっぱりな」
「何がだ?」
 九峪の行動の意味が分からずに首を傾げる兔音。
「高麗人参が自生しているのは、主に山岳地帯。腐葉土の降り積もった酸性の土壌が最も適している。だが、阿祖山系の土壌は火山灰による酸性硫化塩土壌。ただでさえ酸性に傾いてる土壌に、腐葉土を肥料として捲いたせいで、ちょっとばかり偏りすぎてる。こういう時の対処法はと」
 九峪は立ち上がると兔音を見る。
 ちんぷんかんぷんだ、と目で訴えていた。
 無理もない。
「取り敢えず石灰をまくのが定石だな」
「石灰?」
「ああ。まあ、幸い場所も分かってるし。直ぐに取りに向かうか」
「まあ、それで治るというのなら手伝うか」
「新しく畑を耕す方がいいなら、それでも構わないけどな。割と繊細なものだから、あまり同じ場所で作るのは止めた方がいい。連作障害で、作れば作るほど質は落ちるし、病気もつきやすい」
「わかった。だが、取り敢えず今は応急的にでも処置をするべきだろう」
「ん、そだな」
 と、言うことで石灰を取りに二人は向かった。



 割と近場なので二日ほどで戻ってくると、そこには見知らぬ女が待っていた。
「誰だ?人の家に勝手に上がり込んでいるのは」
 兔音がいかにも不快そうにそう言って女に詰め寄る。
 女は戦場から逃げてきたような格好で、背中に矢が二本ほど刺さって息も絶え絶えと言った風情だ。
「……ま、魔人……」
 兔音の事を見て絶望にうちひしがれる女。
 状況からすれば戦に敗れ、這々の体で阿祖に逃げだし、死にそうになっているところでこの場所にたどり着いた、と言うところだろうか。
「まあ、誰でもいいさ。この場所を知られたら生かしてはおけない」
 そう言ってあっさり殺そうとする兔音を、九峪はやんわり引き留める。
「あんまり気軽に殺すなよ、こんないい女。勿体ない」
「……」
 じと目で九峪を睨む兔音。
 九峪は意に介さずに女の傍らに座り込むと、背中の矢を見る。
「あ~あ、こりゃ抜くのに苦労するな。兔音、酒」
「まったく、お人好しめ」
 そう言いつつ逆らわない兔音。
「お前は?」
「九峪ってんだ。アンタは?」
「雲母と言う」
 九峪はその名前に眉根を顰めた。
「雲母?月影将軍?四天王の?」
 雲母は黙って頷く。
「よく知っているな」
「世事には詳しい方だ。あちこち旅してるからな。しかしアンタがここにいると言うことは、復興軍とはもう戦が始まってるのか」
「始まっている、というのかな、アレを」
「?」
「既に終わっている、と言ってもいい」
 九峪はせっせと雲母の鎧を剥いで服を脱がすと、敷物の上に俯せに寝かせる。
「終わってるってのは?」
「各地で一斉に民衆が蜂起した。同時に主要都市の領主が暗殺され、実質狗根国の軍事力は九洲内で機能していない」
 九峪はため息をつく。
 ―――おそらく、桂と小夜の仕業だな。少しは手加減してやれよ、まったく。
 そんなことを考えつつ雲母に布きれを噛ませる。
「痛いけど我慢しろよ」
 九峪は小刀をやじりの根本に突き刺すと、ぐりぐりと肉をえぐって先端を掘り出す。
「ぐがっっ!!んんーっ!!」
 激痛に身をよじる雲母。
 九峪はその身体を必死に押さえつけながら、取り敢えず一本取り出す。
「ふー、ふー、ふー」
 荒い息で雲母はぐったりと倒れてしまう。
 九峪は流れ出る血を吹いて、そこに酒をかけて消毒する。
 雲母の白い身体が真っ赤に紅潮し、床の上をのたうつ。
 酸味の利いた香りが室内に充満し、九峪は顔をしかめる。
「ん?これ、酢じゃないか?」
「ああ、間違えた」
 兔音は悪びれなくそう言ってニヤリと笑った。
「性格悪いな。まあ、滅菌は出来るからいいけどさ」
 雲母は白目を剥いて気絶していた。
 本人はあまり良くなかったらしい。
「さて、じゃあもう一本もさっさと引っこ抜くか」
 九峪はそう言って小刀を握る手を振り下ろした。



「ん、うあ、あ」
 ―――気が付くと辺りは真っ暗だった。
 静寂に包まれ、自分の息づかい以外に物音もしない。
 雲母は身体を起こすと辺りを見回した。
 壁の隙間から入り込んだ月明かりに、うっすらと室内は照らされている。
 背中には断続的に痛みが走っているが、耐え難いほどではない。
 上半身は背中の傷を覆うように包帯が巻かれていただけで裸。
 張りのある胸が露出している。
 着るものを探したが、元々着ていた服は何処にもなかった。
 どのみち返り血と自分の血液で濡れて着られたものではなかったが。

「―――…」

 話し声が聞こえた気がして立ち上がると、戸の隙間から外を覗く。
 そこにはウサギの耳をはやした魔人と、ひげ面の優男が岩に腰掛けて寄り添い、酒を飲んでいた。

 二人だけの世界に浸っていて、話しかけるのは憚られた。
 雲母はやれやれと肩をすくめると、元の場所に戻ってもう一眠りすることにした。


 が、

「ぅん、あああんっ!」
 などと嬌声が一晩中響き渡って、さっぱり眠れなかったと言う。










追記:
 出雲盛衰記五章お届けしました。
 雲母が出てきましたね。一体どういう方向に話を持っていくつもりなんでしょうか。まあ、多分オチもヤマもないでしょう。戦争も多分やりませんしね。だって面倒なんだも~ん。


 さて、くだらないアトガキはこの辺にして、web拍手のご紹介です。
 昨日の分は一件です。

21:57 日魅子優先の九峪が出る幻聴記が良かった。候補では伊万里と志野がツボなので、氏のSSは楽しく読めます。

 おお、誉められちゃったよ。伊万里と志野がツボですが。確かに火魅子候補ではこの二人が目立ってますね、作者の作品では。他の火魅子候補を使わなすぎだと言う話しもあるのかも知れませんが。
 ともあれ楽しんで頂けたのなら何よりでございます。

 それでは今日はこの辺でヾ( ̄◇ ̄)ノ)) バイバイ



【2006/02/14 05:29】 | 小説 | トラックバック(0) | コメント(1) | page top↑
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コメント
雲母まで出てくるとは……正に理想郷!お姉様揃い踏み!!
九峪は謎の不死身っぷりを発揮して兎音までその毒牙に…………そうですか、また浮気ですか (ノ ゚ρ゚)ノ ┫:・'.::・┻┻:・'.::
最早何も言わん!このまま雲母お姉さまも落としてしまえ(笑
そういえば兎は寂しいと死んでしまうと聞きますが魔兎族の皆さんはどうなんでしょう?

ヤマもオチも要りません、そこにお姉さまがいれば!!
お姉様プリーズ!!あとウサギさんテイクアウトでお願いします(笑
……これ以上アホな事を喚いてるとパンダ色した車で壁の向こうに連れて行かれそうですので、この辺で失礼します。
【2006/02/14 23:19】 URL | 逃亡者 #-[ 編集] | page top↑
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