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深川偽伝15



 目的の為に手段を選ばないどうしようもない人間と、手段のために目的を選ばない最悪な人間。
 私はそのどちらにもなりうると言われたことがある。

 確かに選り好みをしない性格ではあるし、倫理観の希薄さと欲望に対する素直さには些かの自信がある。

 ――だが、それでも。

 それでも私にも理性と呼べるものはあるし、ポリシーだってプライドだってある。手段を選ぶことは出来るし、手段のために目的を見失うこともない。時々、行きすぎることはあるにせよ。

 だから周囲の私に対する畏れというのは、恐らくは半分以上が虚構であり、勝手に肥大化した私という存在に対するものなのだろう。

 私だって鬼や悪魔ではない。

 変な力を持っているだけで、中身は普通の女の子なのだ。



 深川偽伝
 十五節 親切



 反乱軍の勢力は少しずつではあるが、しかし順調に増えてはいる。大敗後ではあるが、狗根国が大規模な反乱が起きたことに警戒して、締め付けを強化しているのが追い風になっている。粛正を畏れて避難してくるもの。このままではどのみち立ちゆかないという閉塞感から消去法的に立ち上がるもの。狗根国への反感は逆に増しているとすら言える。亜衣は予想済みの結果のようだが、果てさてこの女は一体何処まで読んでいる事やら。正直敵にはあまり回したくない。

「狗根国への反攻作戦ですが、第一攻略目標は当麻の街です。狗根国正規兵二百。九洲兵四百。東火向ではそこそこの規模の街ですから、ここを押さえられれば反乱軍も一気に勢力を盛り返すことが出来るでしょう」
「必要戦力は?」
「八百が目標ですが、状況によっては早めに仕掛けます」
「それはなぜだ?」

「単純に軍を維持する都合です。幾ら反乱軍が兵站に有利な部分が多いとは言っても、ただでさえ狗根国に搾取されている状態で、無尽蔵に物資が補給できるわけではありません。兵員増加と糧秣を天秤にかければ後五日。それが限界点です」
「そこが過ぎれば自壊するってことか」
「そう言うことです」

 なんとも綱渡りな事だと思いながら、状況を説明してくれた蘇羽哉と言う女を見つめる。歳は上だろう。星華よりも少し上くらいに見える。私が一人補佐する人間をよこしてくれと、実質的なパシリを要求したらこいつが来た。まぁ、そこそこ有能ではあると思う。宗像の巫女らしいがあまり清楚というイメージは無い。

「明日には決戦へ向けての評定が開かれると思います。深川さんや九峪さんの配置はそのときにでも決まるんじゃないでしょうか?」
「まぁ何処だっていいけどな」
「……でも、その傷で戦場に出るんですか?」

 蘇羽哉はそう言って私の右手を見る。相変わらず完治には至っていない。まぁ、骨は殆どくっついているとは思うが、完全にとなれば後一週間かそこらはかかるだろう。清瑞の方は軽傷だったのか直りが早いだけなのか、既に包帯などは巻いていない。鍛えてくれと言ってきたのはいいが、あいつはあいつで乱破を育成しなければならないからそれほど暇があるわけでもないし、ここ三日は見ていないが。

「おそらく魔人対策の予備兵力として配置されるだろうからな。まぁ、どのみち左道士である私にこの程度の怪我は関係がないが」
「それでも乱戦になれば」
「私には九峪がいるからな。特に問題はない」
「ああそうでしたね。愚問でした」

 蘇羽哉は納得と頷く。

「ところで一つ頼みがあるんだがな」
「はい、なんでしょう」
「人を呼んできてくれないか」
 私がその名を告げると、蘇羽哉は意外そうな顔をして出て行った。

「怖いこと、するわけじゃないですよね?」
 去り際に一つ念を押すようにそんなことを聞いて。






 緊張した面持ちで目の前に座っている小娘。
 唐突な呼び出しに不信感を抱いているのだろう。客観的に見て仲が悪いというのは共通した認識ではあろうし、主観的にも否定するには及ばない事実。

 何を仕掛けてくるのか、それが不安。
 しかし警戒心を働かせてみたものの、目の前に座る私に敵意がないことが明白。

 故に困惑する。

 私はそれを楽しむように、小娘を見つめる。

「数日中に反乱軍も動くらしい。訓練の方はどうだ?」
「え。いや、別に順調だと思うけど」
「伊万里が部隊長でお前が副隊長だと聞いたが、そんな曖昧な答えでは不安だな」
「私たちは大丈夫だよ。でも、他のところは分からないし。――って、そんな話がしたかったの?」

 益々怪訝そうにこちらを見つめる小娘。困ってる顔はそれなりに愛嬌がある。

「落ち込んでいるかと思ってな。少し心配していた――」
「はぁ?」
 あからさまに馬鹿にしたような顔をする上乃。そんな戯言誰が信じるとでも言いたそうだ。

「確かに勝負には負けたけど、九峪はちょくちょく顔出してくれるし、別に今までと変わった事なんて無いもん。小憎らしいけど、何も変わらないよ。てっきりそのことで文句言われるのかと思ってたんだけど」
「今が平時で、お前が本当にただの小娘なら、私はとっくの昔にお前を殺してる」

 淡々と事実を口にすると、上乃は何故か不敵に笑った。

「ようやく本性出したわね」
「私は裏表が無い人間だ。出すも出さないも無い」
「じゃあ、なんで? いいから殺せばいいじゃない。簡単にやられてなんかやらないけど」
「お前は何のために生きてる、上乃」
「何――、て」

 抽象的な質問に、咄嗟に答えることが出来ない上乃。

「私はあの馬鹿の為に生きてる。否、あの馬鹿のためだけに生きている」

 なぜ、こんな事をこんな小娘に語っているのか。それは同じ男に堕ちてしまった女への、単なる同族意識か。それともただの気の迷いか。

「私は私の事など知ったことではない。あの馬鹿の為に私がどうなろうと構わない。あらゆる事は容認できる、つもりだ」
「そんなに、好きなの?」
「好き、か。そんなくだらない感情であるものか。これは、もっとどろどろとした、或いはざらざらとした、酷く歪でねじ曲がった感情だ。恋だの愛だの馬鹿馬鹿しい。そんな夢見がちなものなど一欠片だって存在していない」

「……素直じゃないのね」
「お前のごとき小娘に理解は求めない。いやそもそも他人に理解できるとも思ってない。だが、それはそういうものだ。だから、私はお前をぶち殺したくても我慢できる」
「意味が分からないんだけど」
「ああそうだろう。お前の頭には何も期待していない」
「自覚はあるけど、正面切ってそうはっきり言われると流石にむかつくんですけど」

「自覚があったのか。それは幸いだな。だったら簡単に要約してやろう。私はお前に利用価値があると思うから殺さない。どうだ? わかりやすいだろう」
「まぁね」
「それとな、九峪に言い寄りたければ好きにすればいい」

「いいの?」
「九峪がお前を選ぶというならそれはそれだ。それがあいつの為になるなら黙って譲ってやるさ」
「……それで、納得できるって言うの?」
 そんな話は信じられない。上乃の瞳はそう語っている。

「……少なくとも、簡単に今の位置を譲るつもりはない」
 譲れる相手が、存在していると思っているわけでもない。

 それでも私は九峪に比べればあまりに脆い人間で、だと言うのにこれからあの馬鹿としか言いようがない頑丈な男の盾にすらなると決めているのだ。

 この小娘に変わりがつとまると思っているわけでは全くない。それでも、いつ何が起こるか分からないのは確かだ。

 動乱の時代。数日後にどんな状況であれ、見切り発車しなければ自壊するしかない、どうしようもない組織。そんなものに加わっている以上、覚悟だけは必要だろうから。

「まぁ、お前なんぞに九峪をやる様な事態になったら、どのみち私たちもおしまいだろうからな。そんな状況ならお前は真っ先に死んでるだろうし無意味な話だが」
「かっちーん。なによ! 結局九峪独占する気満々なんじゃない! だいたい私がただ話してるだけでヤキモチ焼いて九峪に八つ当たりするくらいベタ惚れのくせして、よくもまぁそんな口先だけの嘘がつけるわけね」

「誰がいつ妬いたって……? ふふふ、おもしろい事を言うじゃないか小娘」
「何が小娘よ。歳同じくらいじゃない。まぁ、あんたが老けてるのは確かだけど。ぷぷぷ」
「……やっぱり殺されたいか、お前」
「上等よ! 怪我人相手だからって手を抜くと思ったら大間違いよ。気に入らないならかかってこいっ」

 取りあえず、好いた惚れたの事情は別にして、この小娘を一度凹ませておくことにしよう。






「で、ぼこぼこにされたと。はしゃぐのも結構だけど、実戦に影響は残さないように」
「ふん、無論だ」
「……しかし、少し意外です」
 上乃にボコにされようが容赦なく仕事を持ってくる鬼が、似合いすぎな眼鏡をくいっと上げてほほえむ。

「一応人間関係に気をつかえるのですね」
 いやみったらしい敬語に腹が立つ。何を言わんとしているかは分かるが、そう言う表情を向けられると無性に腹が立つ。

「何を言っているか意味が分からないな」
「九峪さんを譲る気は無いにしろ、あの子を無碍にすれば折角の戦力が減ってしまう。自棄になられて戦場で死なれでもしたら痛手もいいところ。形だけとはいえ恩を売って、反乱軍内で殆ど唯一有効活用できそうな人脈を、軽々に失いたくはないでしょうし」

 腹は立つが、それ以上にその冷徹な思考に冷や汗すら浮かぶ。謀でこの女に勝てる気が全くしない。悔しいことだがそれは事実だろう。

「想像力豊かだな」
「ええ、それが仕事ですから」
 自分の思考を微塵も疑っていない。疑う理由は無いんだろう。それでも、一度失敗しているのも事実。しかし、この女が判断を誤ったとすれば、その要因はどこからもたらされたのだろうか。この女の率いる組織が一度負けているという事実は、とても残酷なことを証明している様な気がする。

「それで、あなたの仕事ですが」
「なんだ? 正直竹簡と睨めっこは好きじゃないんだが」
「それはそれでやって頂かないと困るんですが、今回は別の仕事です」

 亜衣はそう言って眼鏡をもう一度くいっと上げる。視線に茶化すような様子はない。至って真剣だ。

「どうせろくな話じゃないんだろう」
「受ける受け無いを含めてそちらで判断して貰って構いません。これは極々個人的なお願いでもありますから」
「仕事じゃないのか」
「受けて頂けるなら仕事になります」
「で?」

 亜衣は一拍おいて口を開いた。


「妹を、救い出して欲しい」

 淡々とした言葉の裏に隠された切実な想い。
 鉄面皮にあるまじきそんなものが見えた気がして、私は楽しげにほほえんだ。













追記:
 更新乙! と自分で自分に言い聞かせてみる。ん、まぁなんだ。実は先週の内に書き上がってて今週は殆ど何もしてないというか。まぁこれ上げ終わったら来週分を書くわけですが。

 それで今回は料理勝負後のフォローをしてみました。どん底まで突き落とすのが深川的には筋なんでしょうが、あんまりやりすぎると話が暗くなっちゃうしねぇ。ただでさえ鬱になることが多いのに、話の中まで真っ暗にすることもないだろうというえらく個人的な事情だったりします。

 それとまぁ、次の話が羽江の事になるわけですが、いっつもいっつもこの羽江だけは鬼門でして……。なので今回は羽江の性格がねじ曲がると思いますが、まぁそんな事はいつものことだと思って頂ければなぁと思います。うん、まぁ、本当に今更な感じな言い訳ですね。


 ではweb拍手のお返事。
 2/11。

15:33 深川強ー! これだと準はれむぅもかなり難易度高いんじゃあるまいか
15:34 出雲よりもはるかに独占度高いし、今後もこの状態が破られる気がしない…w
15:36 こうなったら九峪の独立型下半身に期待するしかないなぁw
 と頂きました。
 準ハーレム企画はまぁどうなるんだろう。深川が譲る譲らないの問題だし、そっちのルートに行くためには色々とイベントを考えないと厳しいかも知れませんねぇ。まぁ本筋が崩壊しない程度に考えてみます。
 コメントありがとうございました。

 2/12。

9:50 九峪ぃぃーー!! てめぇ、男ならどっちも平らげろ!! がんばって作った二人がかわいそすぎる
9:53 うまかろうが、まずかろうが、満腹だろうが全部食うべきだった。
9:56 他にも庶民くさい星華とか食いしん坊音羽の暴走とかよかったが、わざわざ作ってくれたのを残すのだけは・・
 と頂きました。
 あー、確かに手料理残すのは頂けませんねぇ。でもどうなんだろう。今回は審査員としてという側面もあるし、勝負に対する公平性にこだわった結果何じゃなかろうかと。まぁ、それでも一口だけ食べて箸を置くなんて外道な真似を出来るのは流石ですが。まぁ個人的に持ってきた料理ならば九峪も遠慮無く食うんだとは思いますよ。それが例え毒でアレなんであれ。
 コメントありがとうございました。

 もういっちょ。

13:00 口の中でシャッキリポンと踊り出す感じとは予想外。絶対不味いと思ったのに。もしくは薬物で審査員洗脳だと
13:01 思ったのに。畜生、こんなきれいな深川は深川じゃねえ! 「深川さん」だ!
 と頂きました。
 審査員洗脳は考えましたが、そう言うのは全部大きな深川の方に任せようなかなぁとか。深川の素敵な一面として、外道な部分があると思うので、それをどうきれいな深川にやらせるかも今後の仮題の一つではありますねぇ。まぁ大きい深川にやらせるっていうのが手っ取り早いんですが。
 コメントありがとうございました。

 更にも一つ。

20:15 空鍋というとNice Boatな奴じゃなくて混ぜこぜのほうですか???
20:15 これからの展開がますます面白くなりそうですね。
20:22 泣き顔フェチの九峪鬼畜萌え~
 と頂きました。
 空鍋はそうですね。まぜこぜの方です。まぁ私もネタとして知ってるだけで、原作は殆ど知らないんです(ぉぃ NiceBortの方も○死ねとか中に誰もいませんよとか、まぁネタだけは分かるんですけどもねぇ。今後そのネタを実行するかは……無いと思いたいなぁ(特に後者は
 コメントありがとうございました。

 他にも沢山の拍手ありがとうございました。


 続いてアレクサエルさんからのコメント。

料理勝負いいですね。
深川は、マルチの天才、宮本武蔵か?

しかし「乞食鶏」とは、中国でもこの時代は、まだ出来ていなかような。

深川、凄い、九峪が絡むと容赦なし。
 と頂きました。
 深川は基本的に万能設定。ただし料理以外は反乱軍中二番目以下と考えています。まぁ一応は。頭では現状亜衣よりは下。戦闘では九峪より下です。それでも十分破格ではありますし、総合力で言ったら図抜けている部分があるのは確かですが。九峪絡みで今後も大人げない真似はしでかすと思いますが、そうそういつまでも勝ち続けられるかというと……、勝ちそうで嫌な感じですねぇ。
 コメントありがとうございました。


 では本日はこの辺でヾ( ̄◇ ̄)ノ)) バイバイ
【2008/02/17 20:50】 | 小説 | トラックバック(0) | コメント(1) | page top↑
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コメント
15話もいいな。
羽江なら確かに危険を冒しても助ける価値はありますね。
羽江の才能は、この時代の他者に代替出来る物ではありませんので・・・・・。
しかし、深川可愛いですね。 九峪のために計算までして。
しかし、これで、ハーレムルート可か?
【2008/02/22 00:20】 URL | アレクサエル #xfGWKbWo[ 編集] | page top↑
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