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深川偽伝16



 虫の知らせ。
 或いは私の力に関係した直感か、それともあいつの方から何かを送ってきていたのか。
 嫌な予感はその朝起きた時から持っていた。

 それともあの日は悪夢にでも魘されていたのだったか。

 ともかくもうそのときには何かあることを理解していて、自分の人生の岐路であることを予感していたことは確かだ。想定の一つにその後の結果が含まれていたのは、多少は予想していたと言うことなのか。

 その日、あいつは首を吊った。



 深川偽伝
 十六節 救出



 救って欲しいと頼まれたのは宗像三姉妹の末っ子。名は羽江といい、歳は十四。亜衣の話では反乱軍の今後に取って非常に重要な人材であると言うことだ。

 反乱軍の益はそのまま私の益でもある。ならばその救出という仕事に是非は無かった。

 ――無かったが、しかし気にもなっていた。

 その羽江という少女がどんな逸材であるのかは知らないが、まだ十四の子供に過ぎない。あの亜衣が逸材と言うからには、その言葉に間違いは無いのだろうが。

 まぁ、ただ妹可愛さに無理難題を私に頼んだという事でも、私は構いはしないのだが。

 むしろ、そうであってくれた方が、色々な意味で安心できる。

 あまりに切れすぎて、恐ろしいくらいのあの女に、それくらいの人間味があってくれるならば、いざというとき、つけ込める隙になるだろうから。

 ともかく亜衣に依頼されたのはその少女の救出で、しかし世情にも地理にも疎い私が、単身でそんな仕事をこなせるわけもない。

 話では少女は次に攻略対象として亜衣が上げている当麻の街から、火向の国都である川辺城へ移送されるという事なのだが、移送ルートにしろ、襲撃を仕掛ける地点にしろ、私には判断のしようもない。

 そんなことは亜衣も当然分かってはいるので、策も道案内も付けてくれるとはいうのだが……。

「ここで待ち伏せていれば本当に通るのか?」

 山の中をどう歩いたのかもう覚えてもいないが、唐突に出た街道の真ん中で仁王立ちになりながら呟く。

「ああ。程なく部下が戻ってくるだろう」
「しかし乱破の演習も兼ねてとはな」

 無駄なことをしたがらない亜衣らしいと言えばそうなるだろうか。あくまで論理的だというか。

 護送隊襲撃には幾つか目的がある、と私は見ているし実際そうだろう。その一つが乱破部隊の実戦演習と言うことになる。

「経験の少なさが反乱軍にとっての最大の弱点とも言えるからな。悪くはない策、なのだろう」

 私に仕事として依頼してきたのは、想定外の人物が護衛についた場合、最悪全滅することになりかねないからだろう。いざというときの壁役。まぁ、使いどころとしては別に間違ってはいない。

 突出した個の力は確かに脅威ではあろうが、私一人が戦局を左右することはまず無い。九峪にしろ同じ事。私たちが相手にしなければならないのは、普通の兵士などではなく、突出した力を持ち、自軍に莫大な損害をもたらしかねない、そんな化け物ども。

 例えば魔人とか、蛇渇とか。

「深川。部下が戻ってきたぞ。まもなくやってくる」
「そうか。私の出番はありそうか?」
「いや、いらないだろう。護衛も二十人ほどだそうだ。それも羽江一人にと考えれば多いくらいだろうが」
「……中途半端な数だな」

 そもそも捕虜になった少女が未だ生かされているというのは不自然だ。反乱分子である。老若男女に分け隔て無く容赦のない狗根国が、まさか少女が少女であるからという理由で生かしているとは思えない。むろんそっちの性癖を持った輩の玩具として、という可能性は無くもないが、それも調達しようと思えば幾らでも手に入るものだ。

 だから、生かしていると言うことは、利用価値があると言うことだろう。

 亜衣が戦局を左右すると言うほどの、その才能を利用したいが故か、それともその才能を理由にノコノコと現れる連中を罠にかけるためか。或いはその両方か。

「周囲に敵は?」
「探らせてはいるが、何も」
「……ふぅん」

 罠でないならば、二十人という護衛は少数だ。
 狗根国の連中は、既に反乱軍が潰れたとでも、完全に瓦解してわざわざ少女一人の救出になど来ないと、そう思っているのだろうか?

 そこまで、嘗められていると言うことだろうか。

 あり得なくは――ない。圧倒的な力でねじ伏せられたのだ。
 完膚無きまでに玉砕されたのだ。
 再建できるなどと、思う方がどうにかしているのかも知れない。

 それでも、未だ反乱軍のその頭、星華の首を取ってもいないのに、それは油断が過ぎるのではないのか?

 考えはまとまらない。が、まぁ、別にいいだろう。

 事ここに至れば、後はやってしまう以外に道もないのだから。






「かかれぇ――!」

 清瑞の号令と共に、護送隊に向かって強襲をかける乱破部隊。見たところ、その数に見合うほどの化け物が護衛についているという話でもなさそうだ。ただの一般兵。それでも、狗根国の正規兵ではあるから、相手としては反乱軍の一般兵とは格が違う。

 それでも強襲をかけられてしまえば話は別だ。多少腕が立つものを清瑞が相手をすることで、一瞬でケリがついた。圧勝にて任務完遂と言ったところだ。

 一応罠の可能性を考慮して、周囲を警戒しながら縄で拘束されていた少女に近づく。十四という年齢相応か、或いはそれ以下にしか見えない幼い表情。捕虜生活で憔悴しているのか目の下にクマが出来てはいたが、取りあえず自分で歩ける程度には無事なようだ。

「お前が羽江か」
「……誰、おねえちゃん」
「深川と言う。お前の姉に頼まれて助けに来た」
「ふーん。深川。深川ねー。ねーねーねー」
 じとーっと人の顔を凝視して、それから縄を解いてと呟く。

「人にものを頼むときはお願いしますだ」
「じゃあいいよー」
「……」
「……」
 微妙な沈黙が訪れる。

「何二人でにらみ合ってるんだ? 羽江、無事だったか?」
「縄解いて、清瑞」
「ん、ああ――」
「駄目だ」
 縄を解こうとした清瑞を止める。

「……いや、しかし」
「私がいいと言うまで、こいつの縄は解くな」
「はぁ」
 清瑞は呆れたようにため息を吐いて、羽江の縄を解いてしまう。

「それではこれから戻るとき困るだろう。全く貴方も意外と子供だな」
「口の利き方には気を付けろよ、お前等」
 清瑞ははいはいと生返事を返して自分の部隊に撤収の命令を出しに行った。

「…………」
「…………ふふん」

 羽江は鼻で笑って私の脇を通り抜け、清瑞の方へ行ってしまう。

 なんだかよく分からんが、あいつはムカツク餓鬼のようだ。






 反乱軍のアジトまで羽江を連れ帰ると、そこには九峪が待っていた。
 待ちくたびれた様に、私の帰りを待っていた。
 帰るなり渡されたのは亜衣がしたためた書簡が一つ。

 直接言いに来る暇もないのかと、悪態を吐きながら内容に目を通し、それから後ろを振り返った。

 そこには、何もない。ただ覆うように山林が広がっているだけ。

「九峪! どういう事だ、誰もいないぞ!」
 先を行っていた清瑞が怒鳴りながら戻ってくる。

「――くく、はははは、あはははははははっ!」

 清瑞に説明する九峪。その二人に背を向けたまま、堪えきれずに大声で笑う。可笑しい。酷く可笑しい。痛快とさえ言ってしまってもいいだろう。

「どうした、深川。何を」
「ん? いや、呆れていたというか、感心していたというか」
「?」
 当惑する清瑞。しかし、一から全部説明してやるのも面倒だ。
 面倒だし、時間もない。

「清瑞、すぐ部隊をまとめろ。それから羽江をつれてこい」
「わかった」
 言葉に危機感を感じ取ったのか、清瑞はすぐに動いた。困惑は後回しにして。

「やれやれ。本当に恐ろしいな。なぁ九峪」
 九峪は分かってないのか首をかしげただけだ。相変わらずと言ったところか。

「私は恐ろしいよ。できるなら、関わり合いになりたくないくらいに」
 一体誰のことを言っているのかすら、九峪にはやはり分からないようだ。

「――あの女には、未来でも見えてるのか」
 九峪が何かを感じ取ったのか、おもむろに立ち上がると剣を抜いて私の横に並ぶ。

「何か用なのー?」
 やってきた羽江を一瞥し、それから有無を言わせず抱き締める。

「な、何々? いったい何なの? あぅー、くるしー」
「じたばたするな。すぐに、すむ」
 それは直感ではあったが、事態を逆算すれば多分間違いの無いことだろう。

 羽江はやはり罠だったのだ。しかし、目的は私が推測したものと違った。救出に来る部隊を叩くのが、それ自体が目的ではない。
 狗根国は、羽江を必ず救出に来ることを知り、その羽江を取り返した部隊を追跡することで、反乱軍のアジトを見つけようとしていたのだ。

 考えてみれば、狗根国が楽観などしているはずも無いのだ。その理由は、首謀者である星華が見つかっていないから。九洲の希望である、王族が生きているから。しかし、地の利のあるこの地で、星華を探し出すのは困難を極める。だから、あくまで星華の探索を重要課題としているならば、狗根国がこういう形で罠をしかけるのは、至極当然とすら言える。

「見つけた。脱がすぞ」
「え。いやん」
 有無を言わさず来ている服をはだけ、肌を露出させる。背中の真ん中あたりに、黒い染みのようなものがあった。

「こいつか」
 とは言え、追跡される心配を全くしていなかったというわけではない。それが一番怖いことだと、考えていなかったわけではない。清瑞は部下に索敵をさせ続けていたし、痕跡を残さないようにと注意も警戒も怠らなかった。

 それでも尚、追跡できたと言うことは、捜索範囲の外。大分離れた場所から追ってきていたことになる。

 無論そんな真似、普通には出来ない。普通の人間には。

「意外と左道も奥が深いな」
 見たところ、入れ墨ではなくただ墨か何かを付けただけのようにも見える。拭き取ったくらいでは消えなかったので、薄皮一枚ごと剥ぐことになって、羽江は泣き出してしまったが、それは仕方のないことだろう。

 ようは発信器のような役割をするものだったのだろう。

 ただ力としてしか術を行使できない私には無理な小細工だが、だからこそ気がつかなかったと言うべきか。

「深川。部隊は揃えたが――」
「任務は継続だ。羽江を護衛しつつ伊尾木ヶ原へ向かえ」
「――まさか、もう動いたのか?」
「いないと言うことはそう言うことだ」
「お前達は?」
「客が来ている。出迎えている間にお前等は先に行け」
「……武運を」

 清瑞の理解が早くて助かる。やはり使えるな、などと思いながら乱破部隊を見送った。
 気付くのが早かった上に、敵は離れて追跡していたから、まだ襲撃の体勢も整ってはいないだろう。包囲されているわけではないから、抜けることは簡単なはずだ。

「――それにしても、恐ろしい」

 もう一度呟く。何のことだよと、仕方なしにと言う感じで聞いてきた九峪に、亜衣のことだと笑って答える。

「この状況を予測して、部隊を動かしている。決戦に向けて、少しでも相手の戦力を削るために」

 機を読むに長けるのは、優秀な軍師としては当然なのだろうが、しかしそれにしても優秀すぎる。

 九峪はようやく言わんとしていることが分かったのか、小さく頷くとため息混じりに呟いた。

 ――それでもお前には負ける。

「悪いが権謀術数ではあの女とは勝負にならんぞ」
 あきれたように切り返すと、九峪は首を振る。何があろうが、俺とお前が一緒なら無敵だと。

「……言われてみれば、それもそうか」

 楽観ではあると思う。それでも、九峪と一緒ならば私の前に不可能は無く、九峪と戦うなら敵など何処にもありはしないだろう。少なくとも九峪さえいてくれるなら、精神的に私は不死不滅で、無敵で最強になれる。

 思うところが無いわけでもないが、今はその楽観に浸ることにしよう。余計な事を考えて、間抜けに死ぬのは頂けない。

「さぁ、虐殺の時間だ」

 至近に迫った哀れな子羊たちを眺めながら、私は楽しげに呟いた。













追記:
 お久しぶりっ!
 一ヶ月ぶりになりますが皆様お元気でしょうか? 私はまぁなんというか年度末だから非常に忙しくて死にそうだ…………、と言うわけではなくもないような微妙なところなのですが、取りあえず生きているみたいです。

 それにしても本年度は四十話程度執筆した事になるわけですが、仕事をしながらだとこんなもんですかねぇ。表に出ていない部分を含めればその三倍くらいは書いてるような気もするけど、あまり身になっていないような気もするし。ああ、一週間ほど学校をさぼって、暇をもてあましごろごろしながら一日中鍵板叩いていた学生時代が懐かしい。


 ではweb拍手のお返事。
 2/18。

11:03 殴られたって事は左道なし? それは好感度高いなあ
 と頂きました。
 きれいな深川は空気も読むみたいです。あくまで九峪の為であると言うことに間違いないのでしょうが、大人しくやられてストレスが爆発しないか心配な今日この頃。そのうち暴れるカモね。
 コメントありがとうございました。

 2/19。

7:42 深川ボコられたーw これくらいで落としておいたほうが深川(小)らしくて良い。
21:01 更新乙です。ほんとに『親切』な話で、かなり癒されました。
 と頂きました。
 短いので二件まとめて。
 元々前回の話はその前の話のフォローでしたしね。あまりギスギスした人間関係はのーせんきゅーと言うか、リアルで食傷気味なのであんな感じになりました。
 コメントありがとうございました。

 2/20。

5:49 妹を救い出して欲しい」の部分を読んでふっと思った感想・・・随分時間たってるし無惨に死んでんじゃね?
5:51 女に飢えた獣がいっぱいぽいですし。
 と頂きました。
 羽江が生きていた理由は今回の話で一応は説明したつもりですが、なんか上手く説明できた気がしない。わかりにくかったらすみません。それでも何もされなかったのはかなり運が良かったんでしょうけどもネ。羽江の性格についてもまだ全然書けてないし、そのうち書くことになるかもしれないし、ならないかも知れないし。
 コメントありがとうございました。

 もう一件。

21:35 深川さんが見てない間に清瑞とできてたらうけるなぁ…w
21:36 ドサクサ紛れで孕ませた出雲の時の九峪ぐらいそっち方向にぶっとんでると最高。
 といただきました。
 九峪×清瑞フラグですか。んー、ぶっちゃけ私は清瑞党ではないのであれなんですが、気の迷いでそう言うこともあるかもしれません。孕ませるまではどうかと思いますが、まぁ、えろえろな方面で九峪君には私も期待しています。
 コメントありがとうございました。

 2/24。

14:23 変な力を持っているだけで、中身は普通の女の子なのだ。←ハイ、大嘘発見!深川が普通だと言う世界
14:23 が
14:24 有ったら絶望で死ねる。
 と頂きました。
 あれは深川なりの精一杯の虚勢です。思いこみたい年頃なのです。その方が九峪に好かれるんじゃないかなんて言う気の迷いです。むしろ私は深川が普通の女の子になったらそれこそ絶望で――、いやむしろ萌えるのか?
 コメントありがとうございました。

 3/4。

18:50 がんばれ~
 と頂きました。
 がんばります。

 もう一件。

22:40 幻聴記面白かったです。不定期更新なのが残念なほど。
 と頂きました。
 幻聴記かー。懐かしい響きだ。不定期更新というか絶賛凍結中なわけですが。幻聴記に限らず、深川偽伝が終わったら一端未完の奴の片づけに入ろうかと思案中。まぁ、偽伝も一年以内には多分終わるだろうし。……多分。
 コメントありがとうございました。

 3/7。

18:12 そろそろ来ないかなぁ… 作者さんがんばれ~
 と頂きました。
 がんばりますorz

 3/8。

21:40 出雲盛衰記。始まりから終わりまで一貫して爽快でした。
 と頂きました。
 うーん、やはりあれくらいフリーダムな方がいいのかなぁ、とか思わなくもない今日この頃。突然偽伝が変貌したらそう言うことだと思って欲しい。
 コメントありがとうございました。

 他にも沢山の拍手をありがとうございました。

 続いてアレクサエルさんよりのコメント。

15話もいいな。
羽江なら確かに危険を冒しても助ける価値はありますね。
羽江の才能は、この時代の他者に代替出来る物ではありませんので・・・・・。
しかし、深川可愛いですね。 九峪のために計算までして。
しかし、これで、ハーレムルート可か?
 と頂きました。
 ハーレムルートと言っても途中経過ハーレムで最終的には盛衰記のように落ち着くことになってしまうと思うのでそれがいいかどうかと言う問題もかねて考えていきたいなぁと漠然と考えております。羽江の方は今後色々活躍してくれればいいなぁとは思うのですが、それを書くかと言えば……どうなんだろう。まぁ、必要な人材として役には立ってくれるはずですが。
 コメントありがとうございました。


 次回更新は頑張って来週……できればしたいと思います。
 では本日はこの辺でヾ( ̄◇ ̄)ノ)) バイバイ 
【2008/03/16 21:43】 | 小説 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
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