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出雲盛衰記08
 出雲盛衰記
 八章



 九峪が記憶喪失になって一週間。
 些細な出来事はあっても特に何事もなく日々は過ぎていた。

「どうだ?九峪」
 みそ汁の味見を頼んでいる雲母。
 九峪は小皿に少量とって口を付けると、首を傾げる。
「おかしいな……」
 雲母は肩をがっくりと落とす。
「また、駄目か……」
 九峪は腕を組んで唸りながら、おかしいおかしいとしきりに呟いている。

「……そんなに、おかしいか?もしかして才能が無いのか、私?」
「ん~、ありえん」
「そうか、やっぱり……」
 重い空気を放って座り込む雲母。

「あり得ないんだよなぁ」
「しつこいなお前も」
「いや、そうじゃなくてだな」
「うん?」
 九峪は雲母に小皿を渡してため息をつく。
「ちゃんと出来てるんだ」
「何!!」
 思わず九峪に掴みかかる雲母。

「出来てるのか?本当か?本当にか?」
「ああ、遅効性の副作用の心配はまだ残るが、少なくともヘドロのような臭いもしないし、酸味の利いた臭いもしないし」
「どれどれ……」
 雲母は自分でも掬って飲んでみる。
 口の中にダシの香りが広がる。
「おお、確かに美味しい……、って九峪?」
 九峪は血を吐いてばったりと倒れていた。

「お、おいどうした!?」
 九峪は真っ青な顔をしながらも、何かを悟った顔で笑った。
「き、雲母……、お前は……強烈な、味音痴だ……ぐふっ」
 力尽きて倒れ伏す九峪。
「な、まさかさっきの上手くできてるというのはウソか!」
 雲母は今まで自分では一度も味見をしていなかった。
 それは味見をした後の九峪が、面白いように痙攣したり、泡を吹いて倒れたりしていたからだ。

「くそ、謀ったな九峪!!」
 むしろそんなもんを平気で味見させてる雲母の人格を疑いたいところだが……
 雲母は口元を抑えてどうしようか悩む。
 さっき口にしたときは美味しいと感じたのだが、目の前で血を吐いて倒れる人間がいると、どうしたものか悩む。
 吐き出すべきかどうか。

 雲母が真剣に悩んでいると唐突に九峪が起きあがった。
「お、おお、九峪。大丈夫か?」
「へ、へへ、へへへへへ」
 だらしなく口を開けて、嫌な感じの笑いを零す九峪。
「お、おい、九峪?」
 血走った目が雲母を捕らえる。

「お~ん~な~っ!!」
 大声で叫ぶと雲母に飛びかかる。
 雲母は反射的に持っていたおたまで九峪の事を殴りつける。
 この一週間で雲母の傷は大分回復している。
 狗根国四天王という重責を担うにふさわしいだけの力量を持っている雲母の一撃だ。例えおたまでも人の頭は割れる。
 だが、しかし!

「消えた?」
 目の前にいたはずの九峪が一瞬で視界から消える。
 ――どこだ、一体どこに……。

「っ!」
 急に背後から羽交い締めにされる。
「くく、くっくっくっく」
「く、なんて力だ!」
 ふりほどこうとして全くふりほどけない。
 焦ってもがく雲母を楽しむように、九峪は不気味に笑っている。
「ぐふ、ふふふふふ、あははははは」
 九峪は雲母の両手を片手で押さえ込むと、余った手で胸を揉み始める。

「く、お前、何を!」
「お~ん~な~っ!」
 どれだけ餓えていたのか、九峪はすっかり獣になってしまっている。このままでは喰われると思ったのか、雲母は魔界の黒き泉で得た力を解放した。

 閃光。
 そして静寂。

 後には白目を剥いた九峪が倒れている。
 ちなみに魔界の黒き泉とは、触れたり飲んだりすると死んだり超人的な力が手に入ったりする、不思議な水のことである。

「はぁ、はぁ、一体こいつ、どこにこんな力を……」
 雲母はなぜか、物欲しそうな目を、倒れた九峪に向けていた。



 九峪が目を覚ますと既に辺りは暗くなっていた。
 自分が何で寝てるのかも分からなかったが、周りを見ると誰もいない。
 どういう事かと首を捻りつつ、外に出ると近場の温泉へ向かった。

 温泉の湯気の向こうに人影が見え、九峪はなんだ人がいるんじゃないかとため息をつく。
「雲母。一人で温泉か?」
「九峪か……」
 九峪はため息混じりに呟く。
「もう大丈夫なのか?」
「ん~、何が大丈夫なのかよく分からん。取り敢えず何ともないが」
「そうか。入るか?」
「そうだな」
 九峪は躊躇無く服を脱ぎ捨てると温泉に飛び込む。

「ふい~、寝起きの温泉も格別だな」
「じじくさいな」
「ジジ臭い、ねぇ。まぁ、もう三十路だしな。雲母はいくつだ」
「二十八。まぁいい歳さ」
 雲母はそう言っておいて、首を傾げる。

「お前、もう記憶喪失はいいのか?」
「は?記憶喪失?」
「ああ」
 九峪は頭をぼりぼりと掻いて怪訝そうに聞き返す。
「俺、記憶喪失だったのか?」

「ああ」
「記憶喪失だった記憶がない」
「ふん、まぁ、思い出したならそれでいいさ」
「兔音は何処に行ったんだ?」
「それも覚えてないのか?姉様だかを探しに出て行ったよ。七日ほど前に」

「ふ~ん、って七日!? 全然覚えてないな」
 雲母はそのことに憮然となる。この七日とはつまり雲母との関わりのあった七日。九峪との関係を深めた七日間だったからだ。
 それを忘れたと言うことは、自分の事を忘れたと言うに等しい。
「覚えてないのか?何も」

「ああ。記憶喪失だった間の記憶が記憶喪失だな」
 何がおかしいのか九峪はそう言って笑う。
 ますます面白くない雲母。
「九峪、そこになおれ。成敗してやる」
「は?なんで?」
「うるさい!」

 裸なのも構わず立ち上がって九峪に飛びかかる雲母。
 九峪はワケも話からず逃げ回り、なぜか楽しげにそれを追いかけ回す九峪。
「あはははははは、待てこらぁ~っ!!」
「なんでだよ、おい!!」

 雲母の冷静な部分が囁いていた。
 ――何をやっているんだ私は、と。
 別に自分との関わりを忘れられたからと言って、雲母に困ることがあるわけでもない。
 それなのに、その事に腹が立って、そしてこうして九峪を追いかけるのは楽しい。

 ――私はじゃれ合う相手を求めていたのか? いや、ただ自分をさらけ出せる相手を……
 それは恋心と言うほどのものではなく、ただの人恋しさでしかないのも事実だったが、それでも不足しているものがあれば、代用品であれその場にあるものを求め、結果的に必要としてしまうのが人間というものだ。

 与えられる選択肢が今、目の前には九峪だけだから、だから、雲母は九峪を選んでいる。そう、それは錯覚にせよ、幻想にせよ、気の迷いであれ、現実的に今だけは。




 ……悲劇と言えば、雲母の心の隙間を埋める為に必要なピースは、決して甘い恋人同士の関係ではないと言うことか。


 ――いや、


「しつけぇっ!! 俺が一体何をしたぁっ!!」

「あはははは~、大人しく死ねぇ~!」

 ざっぱ~ん


 コレは間違いなく、喜劇だろう――









追記:
 雲母が壊れた(?)
 はははは、まぁ、あの後どうなったかは知りませんが、手を出す相手次第では九峪もタダじゃすまないって話しですね。なんとなく雲母の方向性が決定したので、今後も出番はあるでしょう。主に九峪の浮気の抑止手段として用いる予定です。まぁ、今現在酔っぱらってるので、酔いが覚めた後読み返したら真っ青になるかもね。それもまたよし!



 さて、では昨日のweb拍手のコメント……なしっ!!
 叩いてくれた人はいましたのでその人達に御礼を申し上げます。

 そう言えば別にこっちはキリ番やってないけど、1000を踏んじゃって微妙な気分。

 で、いきなり話が無くなってしまうので、このところ毎回やってるようにオリジナル小説のご紹介! もっとも読む価値が無いと公言してはばからない作者が、はたして紹介してるのか貶しているのかが疑問ですが。
 まぁ、いいか。で、本日は三界行、狂超の乱ですが、これは天環の戦いの続きで特に語るべき事はありません。
 と言うわけで今回は三界行【地】の災間の月天。題名からして何じゃそりゃですね。災間とか造語だし。意味わかんないし。
 あらすじはこんな感じ。
 三界行【天】と基本的には一緒。三界のうち魔界に送り込まれた高校生、草下慎(くさか しん)と霧沢秋桜(きりさわ こすもす)が鉄鼠の森というとても危なくてデンジャーな森から脱出するお話。
 この話も少々力の跳ね上がり方が異常だし、肝心の森からの脱出劇が上手く書けないのではっきり言ってボツ。やりようによってはいい話に出来ると思うんだけど力量不足でゲスよ。
 ちなみに天と地では戦争と戦闘、知と力、そんな感じに分けたかったんだが、あんまり上手くいってないし。

 ま、どうせ書き直すんだけど。

 と言ったところで本日も終了!ヾ( ̄◇ ̄)ノ)) バイバイ
【2006/02/18 02:30】 | 小説 | トラックバック(0) | コメント(1) | page top↑
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コメント
マイPCが昇天してしまわれたので、逃亡者inネットカフェ な状態です。

ま、そんな事は置いといて。
料理下手のスキルを持っているということは雲母さんはメインヒロインですね?
九峪は記憶喪失になるし、ギャルゲーの如き展開(笑
いや、私的にはむしろ嬉しいんですが……
しかし、彼女の料理で記憶を取り戻すと思ってたのですが予想が外れてしまいました。
【2006/02/18 18:00】 URL | 逃亡者 #CIQa7Elw[ 編集] | page top↑
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