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出雲盛衰記09
 出雲盛衰記
 九章



 九峪が兎小屋に来てから、いつの間にか一ヶ月が経とうとしていた。
 兔音はいつまで経っても帰ってこないし、雲母の傷もすっかり良くなったので、それでは山を下りようか、と言うことになった。

 問題は九峪は天目と子供がいる復興軍へ向かいたいが、そうすると敵である雲母は一緒には来られない。九峪自身は戦争などどうでもいいし、寝返ればそれでいいのに、という考えなのだが雲母はそうは行かないようだ。

「仮にも狗根国四天王の一人だぞ、私は」
 上から数えて十番目くらいには偉いらしいので、それなりに矜持もあるのだろう。
「ん~、でも一人で大丈夫か?」
「誰にものを言っている」
「送ってやるよ、なーんか心配だし」

「いいのか? 妻がいるんだろう?」
「まぁ、別に心配しなくちゃならないような奴でもないし」
「そうか」

 雲母は特に肯定も否定もしなかった。
「ま、どのみち途中までは一緒に行かないと、雲母じゃ道分からないだろ?」
「九峪には分かるのか? そもそも道に迷ったからこんな所にいるんだろ?」
「大丈夫だって。ここに来るのは初めてじゃないんだ」
 そう言って自信たっぷりに歩き出した。



 一時間後……

「ごめん、迷った」
「……言わんこっちゃない」
 たかが一時間とは言え、二人の移動速度からすると、かなりの距離を歩いている。
 元来た道をたどるのは難しそうだった。
 雲母は大仰にため息をつくと、その場に腰を下ろす。

「じたばたしても始まらない。取り敢えず小休止でも取ろう」
「ああ、そうだな」
 道に迷ったというのに、二人にそれほどの危機感はない。
 食料も持っているので、当面の命の心配がないからだろう。
 少なくとも獣如きにやられるほど二人とも弱くない。

「雲母。お前復興軍にいいようにやられちまったんだろ?」
「ああ、そうだな」
 九峪の唐突な問いに、若干不機嫌そうに答える。
「じゃあ、戻っても処罰されるだけじゃねえの?」

 雲母は渋い顔で頷く。
「おそらくはな」
「じゃあ、戻る意味無いんじゃないのか? 処罰って結局処刑だろ?」
「……私の指揮の元で、多くの将兵が死んでいったのだ。責任は取らねばなるまい?」
 楽しげに笑いながらそう言うと、何か思い出すように空を見上げた。

「いっそあの場で討ち死にしていれば良かった。けれど、私は恐怖に駆られて逃げ出したんだ。もう、これ以上そんな惨めな真似はしたくない」
「ふ~ん。惨め、ねぇ」

「慰めならいらんぞ」
「そんなつもりはねーよ。別に止める気もないし。それが雲母のけじめの付け方だって言うなら、それでいいんだろ。ガキじゃねぇんだから、自分のケツの拭き方くらい自分で決めたらいいさ」
「そうするさ」

「んな事より、どっちに向かう? 適当に決めないと歩きようも無いだろ」
「そうだな。取り敢えずあっちでいいか」
「音痴なのは料理だけだといいがな」
 馬鹿にするように九峪が笑う。
「……」
 雲母は無言で九峪のことを蹴り飛ばしていた。



 九峪の予想は見事に外れ、その日の内に山人の里にたどり着いた。
 適当に駄賃を払って案内をつければ、これ以上迷う心配もないだろう。
「どうやら方向音痴は九峪だけのようだな」

 勝ち誇ったような雲母の顔。少しばかりむかついた九峪だったが、コレばかりは言い返せなかった。
「もうじき日も暮れるし、今夜はこの里に泊めて貰おう。それでいいよな?」
「ああ、別に――」

 九峪はふと空を見上げる。
 空は赤く染まり始め、ぼちぼち真っ暗になるだろう。
 さて、そろそろ一ヶ月経つわけである。
 兔音と前に会ってから。

「し、しまったぁ――っ!!」

 突然大声で叫ぶ九峪。
「ど、どうした?」
「やばいな。ん~、って、一番やばいのはお前だ!」
 そう言って雲母を指さす九峪。

 雲母は何のことか分からず首を傾げる。
「何の話だ」
「いや、でも、くそ。どのみちもう遅いか」
「だから何の話だよ」
 九峪は引きつった笑みを浮かべながら答えた。
「雲母に俺が喰われちゃうって話だよ」
「はぁ? なんで私がお前を」
 不思議そうな雲母に、鼻で笑って答える。
「じゃ、せいぜい我慢してくれ」
 雲母は怪訝そうに首を傾げた。



 ――身体が、熱い。
 日が沈みきって、夕餉の香り漂う山人の里の角で、雲母は一人もだえていた。
 汗ばむくらいの気温なのに両肩を抱き、上気した顔で必死に何かに耐えている。

 ――九峪……

 気が付けば姿を目で追っている。
 九峪自身は観念しているのか何なのか、木の上で寝ていた。
 雲母は視界に九峪が入るたびに、いいようもない衝動が全身を駆けめぐるのを感じていた。

 ――なんだ、これ? 九峪を、貪りたくなる
 知らずに涎が垂れ、慌てて拭う。
 動悸が高鳴り、頭は熱に浮かされているように、どんどん思考がぼやけてくる。

 ――ああ、駄目。もう、我慢出来ない。
「……九峪」

 小さく呟くと九峪に飛びかかっていた。
 木の上まで一足飛びで飛び上がり、九峪を抱きしめる。
 そのはずが、両腕が空を切った。

「え?」

 確かに捕らえたはずなのに、腕の中には何もない。
 そのまま着地して振り返るとそこに突っ立っていた。
「やっぱ無理なんだな」
 疲れたようにため息をつく九峪。

「――九峪、私、変なんだ」
「ああ、見りゃわかる」
「お願い……じっとしてて」
「嫌だね」
「大丈夫、痛くしないから……」
「痛いワケじゃないんだが、それでも嫌だな」
「……聞き分けのない、男だな」

 雲母の身体から閃光が放たれる。
 眩しさに一瞬目がくらむ九峪。
 同時に全身から力が抜け、その場に崩れ落ちる。

「んなっ! なんだ?!」
 身体が動かず狼狽する。
 じたばたすら出来ずに、もがく九峪に雲母が一歩一歩近づく。
「無駄よ。ほら、右上げて」
 雲母がそう言うと、九峪の右腕が跳ね上がる。
「いいっ?!」
「左上げて、右下げて。そのまま鼻をつまんで口閉じて」

 九峪は雲母の言葉通りに動く。
 鼻をつまんで口を閉じたせいで呼吸が出来ず、九峪の顔色がどんどん悪くなっていく。
 雲母はそれを楽しそうに眺める。
「んんーっ! んーっ!」

 死にそうになっている九峪。雲母はくすっと笑うと左手を下ろさせた。
「これが私の能力。魔界の黒き泉で手に入れた、私だけの能力。ただ、一度の操れる人間の数は決まっているのが難点だが」

 一対一なら無敵じゃん、と思った九峪だったが、今や蛇に睨まれたカエル以下。無駄口は止める。
「すまないな、九峪。出来るだけ優しくするけど、多分、あまり加減出来ない」
 紅潮して呼吸も荒い雲母は、そう言って九峪に顔を近づける。
 間近で雲母の吐息を浴びながら、九峪は最後に一言だけ口にした。

「この淫乱」
 一瞬面食らった雲母だったが、やらしい笑みを浮かべるとそのまま九峪の口を自分の口で塞いだ。




 ――嬌声の響く森の中、少女が一人、男と女の逢瀬を見つめていた。

 木の陰に隠れて、息を殺して。










追記:
 いやぁ~、今回は気分的に頑張りました。どこがって、そりゃ何処ということもなく。
 最後に出てきた少女。遂にお姉様キャラ以外を出す気になったようです。少女だけじゃ誰だか分かりませんね。一体誰なのかは次回のお楽しみ。いえ、考えてないだけですけどね。


 さて、アトガキはどうでもいいので、今日も今日とてweb拍手の紹介じゃ~っ!
 昨日メッセージ一件ございました。ありがとうっ!

10:25 全米が案埜津の死に泣いた!おまいに言いたい事がある、Great Job!!!!
 全米が泣いた!? あの影が薄いキャラに?! とか思いましたが、そんなこと言ったらかわいそうですね。脇役にだって華々しい出番を与えるのが作者のいいところであり、駄目なところですね。メインキャラを放置しすぎです。編年紀で多少挽回出来ればいいなと思ってるんですが。
 ええと、キャラ殺しに関してはまぁ、もはやどうでもいいですね。案埜津に関しては一回死んでるわけで、今回のことでちゃんとした葬儀を出してもらえるなら、むしろこれは救済ですね。多分……。二度と化けて出るなよー。
 メッセージありがとうございました。

 今日は他になんも無いのでこの辺で、ヾ( ̄◇ ̄)ノ)) バイバイ 
【2006/02/22 11:41】 | 小説 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
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