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出雲盛衰記10
 出雲盛衰記
 十章



 色々な意味で激しい満月の夜が過ぎ、空が白み始めると九峪と雲母は山人の里の長老の元へ挨拶に向かった。
 長老は名前を伊雅といい、眼光鋭い白髪の老人だった。

「道に迷われたか。それは難儀なことだな」
「ええ、もう本当に。で、ただでとは言いませんから誰か案内つけてくれませんかねぇ。近くの街道まででいいので」
「うむ。のたれ死にさせるのも忍びないしな。よかろう。清瑞、清瑞はおるか?」

 老人が叫ぶと、奥の方から黒髪の美しい少女が現れた。切れ長の目に隙のない立ち振る舞い。歩き方だけで雲母は清瑞がただ者ではないと看破した。
「これは儂の一人娘で清瑞という。これに案内をさせよう」

 伊雅はそう言って清瑞の方に視線を送る。
「よいな、清瑞」
「はい」
 清瑞は短く返事をすると頭を下げた。

「さて、それで他になにか入りようなものでもありますかな?」
「いえ、案内さえつけて頂ければ十分です。これはほんのお礼です」
 九峪はそう言って荷物の中から、布に包まれた物体を伊雅に差し出す。

「これはっ――!!」
 伊雅は布をめくって驚愕に目を見開く。
 中から出てきたのは変わった形をした宝玉だった。大きな真っ青の玉に貴金属が絡まっている。

「そ、蒼竜玉!!」

 九峪は首を傾げた。
「知ってるんですか? これのこと」
「い、いや、それは」
 何故かどもる伊雅。

「蒼竜玉と言えば、耶麻台国の神器ではなかったかな? 確か」
 雲母は思い出したように呟く。
「なぜそれを!」
 またまた驚愕する伊雅。

 ――いちいちリアクションでかいなこのおっさん。
 九峪はそんなことを考えつつ、アワアワと場を取り繕うと必死の伊雅を眺める。
「ご、御仁。これを何処で手に入れられた」
「それは私も興味あるな。耶麻台国ゆかりの人間だったのか?」

 雲母は若干警戒心も含めた目で九峪を見る。
 伊雅も不審そうだ。

「別に大したことじゃない。十三年くらい前かなぁ。耶麻台国関係者を助けたときにお礼にって貰ったんだよ」
「か、関係者? 名前は分かりますか?」

「ああ、確か帖佐とかって奴だったな」

「「帖佐だと!!」」

 伊雅と雲母が同時に叫んだ。
 九峪は驚きに目を丸くしている。
「あははは、まぁ、二人が言いたいことはなんとなく分かるよ。耶麻台国関係者じゃないもんな、あいつ」

「というか、四天王だろう。しかし帖佐と知り合いだったとは……」
 雲母がため息をついている中で、伊雅はぷるぷると震えながら何かに耐えている。
「父上?」

 首を傾げる清瑞。
「……九峪殿、何故あの外道を助けたりしたのですか? そしてなぜあ奴がコレを持っていたのか、知っておいでですか?」
 静かに怒りを湛えた声。

「ああ、まぁな。あいつがまさか耶麻台国を滅ぼした張本人で、それが戦利品だったなんてな。まぁ、気が付いたのは結構経ってからだが」
「清瑞、剣を取れ」
 伊雅は真っ赤な顔をして立ち上がると、そう言って手を出す。
 清瑞は素早い身のこなしで、伊雅の背後にあった剣に飛びつくと、鞘から抜きはなって伊雅に持たせた。

「あの怨敵を助けたなどと聞いては、生かしてはおけぬ。この場で斬り捨ててくれるわ!!」
「おい、おっさん。なにいきり立ってんだよ!」
「うるさいわっ! 死ねぇ!」

 大上段から振り下ろされた剣。
 ただの山人にしては鋭すぎる太刀筋だったが、九峪はかろうじてかわした。
「すこし落ち着け、おっさん」
「黙れ!」

 連続して襲いかかる剣を何とかかわしながら、九峪は内心で舌打ちをすると、時を止める。

 僅か三秒間の制止時間。
 だが、相手が人間である限りに置いて、この三秒は絶対的な時間だ。

 伊雅の剣を奪い取ると、同時に座って静観している清瑞の首筋に剣を突き付ける。




「――ああ?」
 伊雅は目の前から九峪の姿消えて狼狽する。
「な、何処に――」
「動くなよ、おっさん」

 声に振り返ると、九峪の姿目に入る。
 いつの間にか自分の剣を愛娘に突き付けている光景に、自分の目を疑う。
「頼むから落ち着いてくれ。別に俺はアンタを怒らせたくて帖佐を助けたワケじゃないし、特に狗根国が好きだというわけでもないんだ」
 九峪はそう言い置いて剣を下ろした。

「む、むう」
 伊雅は渋い顔で頷くと、その場に座りこむ。

「しかし――」
 雲母は場が落ち着いたのを見計らって気になっていたことを口に出した。
「あなたこそ何者なのだ? 神器を一目見て分かるなど、耶麻台国縁者でもそれなりの地位の者だとお見受けするが」

 伊雅は、ぎくりとして雲母に視線を送る。
「そ、それは――だな……」
 どうにか言い訳を考えている伊雅だったが、それをもどかしく感じたのか、清瑞の方が先に口を開いた。
「父上は元耶麻台国副国王であらせられます。二人とも頭が高い」

 雲母と九峪、二人の動きが完全に停止した。

 そして、暫くして……

「ん、んなにぃ~~~~っ!!」

 驚愕の叫びは、里の隅々まで響き渡っていた。



「しかし、火向ではすでに復興軍が起こっていると聞いてたけど、副国王様がこんな所にとはねぇ」
 九峪の呆れたような、感心したような言葉に、伊雅はとんでもないと首を振る。
「今起こっている復興軍など、耶麻台国の名を利用しようとした輩が、いもしない火魅子候補を祭り上げて起こした者にすぎん。あろう事か神の遣いまで仕立て上げてのう」

「いもしない? 火魅子候補の噂は、それこそ滅ぶ前後から九洲はもとより狗根国の方でも噂になってたぜ?」
「それは九洲の民が屈すること無きよう、儂が部下にばらまかせたものだ。今生き残ってる王族は、儂と清瑞の二人だけだよ」
「だが、実際起こってるしなぁ」

 伊雅は忌々しげに呟く。
「おそらくは天魔鏡の仕業だろう」
「天魔鏡?」
「蒼竜玉と同じく、耶麻台国の神器の一つだが、アレには精霊が宿っていてな。キョウというのだが、それがおそらく何も知らん輩に悪知恵を吹き込んでいるに相違ない」

「ふうん。神器の精ねぇ」
「そうだ。自己保身のためならいかなる手段も使う、ロクでもない精霊でな。耶牟原城落城の折りにも、いもしない直系の火魅子を儂に護らせ、ついでに自分も逃げ出したのだ。アレは、火魅子候補を鏡に映すことの出来る能力があるのだが、実際は映すことの出来る者をアレが選べるだけという、腹黒い代物なのだ。ここ百年、火魅子が絶えてなかったのも、アレが映さなかっただけだ。本来なら姫御子の力など、とっくの昔に喪われていて、儀礼的なものに過ぎなかったのに、八代前の王族が、一度キョウの姿をこき下ろしたことでへそを曲げて、映さないように嫌がらせをしたと聞いている。ふん、おかげで罰が当たって、五十年前からは、おなごすら産まれんようになってしまったがな。しかも落城の折、五十年ぶりの女系王族の清瑞は王族には認めんと抜かしおって、腹いせに筑後川に放り投げてやったんじゃが……あの外道め!」

 伊雅はたまっていたものをはき出すように、くどくどとキョウの悪態をついている。
「まぁ、なんでもいいけどさぁ、だったら自分が王族ですって名乗り出ればいいわけだろ? それともそれが出来ないわけでも?」

 九峪の言葉に馬鹿にしたように清瑞が答えた。
「そんな事をすれば消されるのがオチだ。それくらい分からないのか?」
 九峪は突っかかるような口調にため息をつく。
「で、こんな山奥に引きこもったままって事か……」

 伊雅は苦々しい表情で呟く。
「せめてあの反乱が劣勢ならば、まだ我らも出て行けるのだがな……。いかんせん負ける気配もない」
 九峪はちらりと雲母を見る。
「ああ、そうだな。一月も前のことだが、一万の狗根国軍が鎮圧に出向いたが、僅か三千の復興軍にいいようにやられた」
「ふん、いまでは火向の国都も落として、火後と豊後も時間の問題だ。各地で民が蜂起して、あと三月もせぬうちに都督にも手がかかるだろう」

 九峪はぽりぽりと頭を掻く。
「まぁ、何にせよ九洲の民にとってはいいことだろ。狗根国の圧政が退いて新体制ができあがるならそれに越したことはない」
「だが、そんなものは耶麻台国ではない!」
「耶麻台国である必要も無いと思うけどなぁ。民にとっては、安寧が保証されていれば支配者が誰かなんて些細な問題だよ、実際」
「だが、人の名を借りる輩が民に慈悲など施せるとも思えん」
「真意が知りたいなら、身分を隠して会いに行けばいいだろ。こんな所に引きこもってたって何にも分からないさ」

「……だが、キョウは儂の事を知っておる。そんな中でノコノコ出て行けば……」
「じゃあ、新勢力でも起こして、偽復興軍を叩きつぶしてみるか?」
「な、なに!?」

 九峪の頭のねじが吹っ飛んだ提案に、伊雅は目に見えて狼狽する。
「こっちとしてもだな、本当に火魅子候補が偽者だとしたら、色々と困るんだよ。嫁が今復興軍に行ってるもんでね」
「嫁、って……。じゃあその人は?」
 清瑞が不思議そうに雲母を見る。
「行きずり」
 九峪が半笑いでそう言うと、案の定蹴りを食らう。
「痛てぇよ、雲母。事実だろ」
「事実だが腹が立っただけだ。もう少し言い方を選べ」
「はいはい。まぁ、いいや。で、どうするおっさんよ。一つ契約してくれれば、手伝ってやらんでも無いけど」

 偉そうに胸を張る九峪。
「む~、だが、儂らだけでは……」
「戦力に関してはある程度確保出来ると思う。だてに十五年間各地を彷徨っていたわけでもないし。何より復興軍の中にこっちの手札が数枚ある」
「勝てるのか?」
「必勝、とは行かないだろうけどね」

 伊雅は暫く唸った後、重々しく口を開く。
「少し、考えさせてくれんか」
「仕方ないな」
 九峪はおどけたような笑みを浮かべたまま、そう言って肩をすくめて見せた。








追記:
 更新が遅くなってごめんなさい。
 殆ど二十四日じゃん。話がなかなか決まらなかったと言うワケでも無いんですが、だらだらしてたらこんな時間になってしまいました。
 さて、今回の話で物語が若干動き始めるような始めないような?
 vs復興軍!
 ああ、また面倒そうな話を持ってきて、馬鹿ですか作者は。ま、なんとか頑張りま~す。


 で、本日も恒例のweb拍手メッセージ紹介&お返事!!

0:12 ああっ○○さまっが来たから次は小っちゃいってことは~かな?でもあと小型のって羽江くらいしかいないかな
 はい、こんなん出ましたけど。けど……って、まぁ確かに○○さまっネタで書きましたけど、アレはそんなに意味無いですから。小っちゃいってことは~は、読んだことはありますが、内容とか覚えてないし。ネタに出来ん。まぁ、ウソ予告に使うだけなら使えるかなぁ。あれって四コマだったよね? 記憶が曖昧。
 ぶっちゃけ、タイトルが思いつかなかったから、安易なのを選んだだけなんですけどねっ!
 メッセージありがとうございましたm(__)m

 昨日のweb拍手はそんなもんだったのでこれくらいで。他にも叩いてくれた人、アリガトォォォ~!!

 では本日はこの辺で、ヾ( ̄◇ ̄)ノ)) バイバイ
【2006/02/23 21:14】 | 小説 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
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