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出雲盛衰記11
 出雲盛衰記
 十一章



 日が沈み始める頃、九峪は自分で山に出向いて狩ってきた兎を捌いていた。
 時を止められる九峪は、猟に関してもかなり優秀だ。特に魚など逃した試しがない。三秒間だけとは言え、卑怯な奴である。

「どした? 親の敵みたいな目で、人のこと睨んで」
 さっきからひしひしと感じる視線の方に顔を巡らせると、清瑞がじっと九峪のことを見据えていた。

「仇も同然だ。父上をそそのかして」
「そそのかす、ねぇ。清瑞はこのままひっそり暮らしていても別に構わないのか?」
「当たり前だ。もとより私は他の暮らしなど知らない」

 九峪はため息をつきながら、兎の肉を串に刺して火にかける。
「そりゃ、悪いことしたな。だが、それならおっさんに言って止めるように説得すればいいだろ。可愛い愛娘が懇願すれば気も変わるって」
「……お前は何者だ?」
 九峪の言葉は無視して詰問口調の清瑞。

「生もの」
 べたべたのセリフを返すと、クナイが九峪めがけてとんでくる。
 九峪はそれを受け取ると、次の兎を捌き始める。
「真面目に答えろ!」
「はいはいっと。お姫様はどんな答えがお望みでしょうか? 耶麻台国の縁者? それとも復興軍からの刺客? 或いは狗根国の間者? どれでもなく都合のいい神の遣いだとか?」

 馬鹿にしているようにしか聞こえない九峪の言葉に、清瑞は腰に下げていた剣を抜き放つ。
「真面目に答えないなら、殺す」
 九峪は清瑞を一別して、そっぽを向く。
「止めとけ。かなりの腕なのは分かるが、お姫様には剣は似合わないよ。そんな美しい顔してるのに」

「う、美しい!?」

 裏返った声で叫ぶと、顔を真っ赤にする清瑞。
「な、き、貴様、何を――!」
「事実は事実。歳はいくつだ?」
「十七だ」

 ――青い果実って所か。瑞々しいねぇ。
 九峪はどうしようか考えながら、もう一匹の兎も火にかける。
「なぁ、お姫様」
「名前で呼べ。私には清瑞という名がある」
「じゃあ、清瑞。おまえ昨日の晩、ずっと俺と雲母の事見てただろ」

「っ!!」
 絶句する清瑞。
 耳から湯気でも出そうなほど、顔が真っ赤だ。
「関心があるのはいいことだけど、覗きは感心しないなぁ」
「だ、誰が覗きなんて真似!」
「おや、違ったかな? だけどあんな上手く気配を消せるのはこの里にお前くらいだと思うんだけどなぁ」

「し、知らない! そんなことは知らないぞっ!!」
 懸命に否定する清瑞。
 九峪は清瑞の方に視線を送らずにニヤニヤして更にからかう。
「知らないなら、なんでそんなに狼狽しているんだ? 本当は見たんだろ? やらしい奴だな清瑞は」
「うぅ、そ、そんな事……」

 だんだんと勢いがしぼんでくる。
「どうだった? 見物料は感想でいいや」
「……」
 足音を残して清瑞は無言で去っていってしまった。
 九峪はいい塩梅に焼けたてきた兎の肉を見ながら呟く。
「やれやれ、所詮は子供だな……」

 何を期待していたのか、そんなセリフをほざいてため息をついていた。



 清瑞と入れ替わりに雲母が戻ってきた。
 九峪と雲母の二人は、村の端で寝泊まりすることになっている。
 まだ得体の知れない輩を、自分の家に招くほど伊雅は馬鹿な男では無いらしい。
「何か分かったか?」
「まぁ、取り敢えず美禰の街への行き方だけはな」
「そうか。で、雲母はどうするんだ? 予定通り都督に行くってんなら、途中までは送ってくよ」

「さて、どうしたものかな……」
 歯切れの悪い解答に九峪は眉を顰める。
「なんだ? 昨日は意地でも戻るような口ぶりだったが」
「まあ、なんだ。少し興味が湧いてな。処罰を受けるのは別にいつでも構わないだろうが、その前にお前がどう動くのか、知りたくなった」
「はあ?」

 雲母は半生の兎を取ると、それに齧り付く。
「まだ焼けてねーぞ」
「半生なくらいの方が美味いだろ」
「相変わらず破綻した味覚だな。で?」
「帖佐を知ってるんだろ? どんな風に出会ったんだ?」
「ああ、それね」

 九峪は苦笑する。
「昨日のお前と一緒だよ。、あの当時は特に九洲中に魔なる者が犇めいていたから、満月の晩の度に、そりゃ酷い目に遭ったもんだ」
「ほほう。と言うことは、帖佐に掘られたのか?」
「……笑えん冗談を。言っとくけどな、雲母。満月の晩に俺のこと喰いもしないで強姦するのはお前くらいだぞ」
「喰うのか?」
「うん。コレがまた美味いらしいんだ。帖佐の時はあいつの女も一緒にいたな、そう言えば」
「ほう」
「で、蒼竜玉はその代金」
「何処が命の恩人なんだ?」

 九峪は苦笑を浮かべる。
「満月の晩に俺の肉を食うと、魔なる者の力が増す。色々効能あるんだよ。ま、人によって違うけどな。帖佐の金魚の糞、柚子妃って言ったか?あいつの病は知ってるだろ?」
「病? 柚子妃が?」
「ああ、そうか。あの時点で雲母はまだ四天王じゃなかったんだな。柚子妃は魔界の黒き泉の力で、帖佐と同じ不老になろうとして、それが行きすぎて若化が起きていたんだ。そのまま放っておけば、今頃は十歳くらいの女の子になってるはずだが、俺の肉を食ったおかげでそれが治って、目に入れても痛くないと言うくらい、溺愛していた帖佐は、海よりも深く俺に恩義を感じてるってワケだ」

 雲母は得心顔で頷く。
「なるほど。確かにあの冷血漢も柚子妃の前でだけは違うからな。本人の命を助けるよりもむしろ恩に着てるだろうな」
「そゆこと」
「しかし、あれは何なのだ? 他にも何かあるだろう? 時々おかしな動きをする事だし」

「能力については秘密だよ。ああ、どうでもいいけどさぁ――」
「ん?」
 九峪は苦笑を浮かべながら告げる。

「満月の晩に俺と犯ると、確実に孕むぞ」

 ぴしり

 雲母が固まる。

「な、なん、だと……」

「う~ん、だから俺はやめておけと言ったのになぁ。うるさいからってお前しゃべらせないし」
「は、孕むって、おい!」
「俺のせいにするなよ? お前が嬉々として人のこと組み敷いてたんだからな」
「聞いてないぞ!」
「だから言わせなかったのお前じゃん?」

 九峪は別にそのことなどどうでもいいのか、ようやく火が通った兎にかぶりつく。
「俺も、また喰われるもんだと思ってたから、別に警戒してなかったんだけどさ。やはり味音痴には最高級の美味がわからんらしい」
「……は、孕むって」
「まぁ、気にすんな。女としての務めさぁ~」

 雲母はへなへなとその場に崩れ落ちる。
「ん? そんなに嫌なのか? まぁ、堕胎すなら堕胎すで構わんと思うが」
「……最悪だな。で、責任を取る気はあるのか?」
「だから、責任も何もお前が勝手に――」
「貴様の子供には違いないだろ!!」
 雲母に襟首をしめられて、呼吸困難に陥る九峪。

「ひゅ、ひゅー」
「あ、すまない」
 雲母が手を離すと思い切りその場でむせ、少し落ち着いてからまた口を開く。
「ごほっ、ごほっ。うん、なんつーかさ。すでに俺には結構な数ガキがいるわけで、少なくとも俺に養えと言うのは無理な話だな」
「そんな無責任な話があるか!」
「そう言うお前は理不尽だな。まぁ、確かに満月の夜にそうなるって知ってて手を打たなかった俺にも非は無いこともないしなぁ。でも、前にも言ったが、俺には既に嫁がいるし」

「別れてでもどうにかしろ!」
「ああ、無理無理。話を出した時点でどうなることか」
「何処にいるんだ、そいつは」
「復興軍。って、伊雅との話し聞いてなかったのか?」
「話をつけてくる」
「って、ちょっと待て。お前が復興軍行ったら、袋たたきにされるぞ」
「知るか!」

 今にも走っていきそうな雲母。
 九峪はやれやれと思いつつ、背中を向けた雲母に声をかける。
「どのみち俺は一人の女を愛することはないよ」
 雲母はピタリと立ち止まる。
 九峪はたき火をじっと見つめながら、言葉を続ける。
「この世界は、俺にとってはかりそめだ。お前も兔音も、忌瀬も天目も、魔人も天人も、耶麻台国も狗根国も、全てかりそめでしかない。実感が湧かないんだよ。生きている。存在している実感って奴がさ。何をしていても、まるで上から俯瞰しているようで……。雲母、お前は俺に現実感を与えられるか? 俺は、もうずっとそれだけを求めている」

 雲母は、振り返ると邪悪な笑みを浮かべて九峪を見つめた。
「吐き気がするほど教えてやろう。後悔するなよ、九峪」
 そう言って、九峪に襲いかかった。



 日も暮れて、曇っているのか星も出ない夜。
 闇に包まれた伊雅の里。
 飽きずに励んでいる雲母と九峪。
 清瑞は、昨日と同じく、闇の中でじっと二人を見ていた。

 夜目が異常に利く清瑞は、闇の中で蠢く肢体を、息をのみながら見つめている。
 気を使っているのかどうなのか、昨日よりは声が漏れない。

「? なんだ?」

 そのおかげ、だろうか。
 清瑞は目の前の状況に没入しきることなく、異常を察することが出来た。

 闇の中に立ちこめる、戦いの前触れを――










追記:
 三日連続盛衰記更新!! いえ、別に暇だからとかそう言うワケじゃないんですが……。気分の問題です。で、今回は特に話が進んだわけでもなく、相変わらずだらだらと。主に九峪はセクハラしかしてませんが、まあおっさんですからね~。清瑞が若干若い件に関しては別に意味はないです。王族と自覚していますが、ツンデレです。なんとかツンデレに書きたいですが、九峪のターゲットではないのでどうなるかは分かりませんね。


 さて、ではでは、本日もweb拍手の感想コーナーでございますですよ。前日の上げてから三時間も経ってないってのに……。昨日は三件ですが、二件は同じ人からですね。

8:23 九峪徒然草、はまりましたbすごく面白かったです~!
 と頂きました。
 徒然草ですか。実は作者も今読み返してるんですが、まぁ適当なお話ですね。と言うか、編年紀に繋がる部分があんまり無いなぁとか思いつつ……。まぁ、別物って書いてるからいいか。九峪の話はあそこで終わってるわけだしね。
 とにかく、誉めて頂いてありがとうございました。

 さて、それでは次の二件。

23:18 十七夜死んだァァーッことより深川ちゃんサマにビックリ。自称するとは…そして一話で出番終わりとは流石っ
23:20 流石はちゃんサマなのデスっ。んで出雲の戦力ってか行きずりメンバー集まったとき深川も十七夜もいる、と
 と、言うことですが。

 ぎゃああああっ!! って言うか、むしろ、

 ぎゃはははははははっ!!

 すみません、誤字でしたね。はじめ何のことかよく分からなくて?ってなってたんですが、実際確かめてみて爆笑しました。ちゃん様ってアンタ…… 
 一応これの言い訳をすると、十七夜の一人称なのに深川をちゃん呼ばわりさせないで書いてたのに、後で気が付いて、置換してまとめて直したんですね。その時に深川様が深川ちゃん様に。一応読み返したんだけどなぁ。その時は気が付かなかったようで。面白かったけど、シリアスシーンなので直させて頂きました。ご指摘ありがとうです。
 で、一話で出番が終わりって、まぁ、奴はそんなもんですよ。幾ら強くなってもね。ちなみに次の出番は気まぐれを起こさなければ第三部です。当分見ることはないでしょう。アディオ~ス、ちゃんサマ。
 それで盛衰記での奴の出番ですが、どうしよう。まぁ、その場その場で先を考えていつも書いているわけで、出そうと思えば次回辺りでも出せるけどね。
 まぁ、行きずりパーティーに入れるか、お楽しみと言うことで。

 後、テンプレート変えてみたんですが、前の方がいいとか今の方がいいとか、どうでもいいとかあったらご意見をお聞かせ下さい。


 では、本日はこの辺で。ヾ( ̄◇ ̄)ノ)) バイバイ
【2006/02/24 00:25】 | 小説 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
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