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出雲盛衰記14
 出雲盛衰記
 十四章



 九峪の案内で拠点を確保に阿祖を移動する一行。

 今は野宿の場所を決めて、それぞれ役割分担をして、あるものは薪を広いに、あるものは水を汲みに行っているところだ。

 伊雅が副国王だと知ると、藤那と案埜津も黙ってその言葉を信用した。
 元々山人の里を襲うという任務が二人とも腑に落ちていなかったらしい。藤那にしてみれば、九峪がそこにいたから、と言うのも一因だったようだが。

 九峪と藤那は飯の用意なのだが、そんなこともせずに世間話に興じている。

「何年ぶりになる? 前に会ってから」
「七年ぶりくらいだろ」
「そっか。そんなになるか。どうりで大きくなってるはずだな」
 九峪が頭を撫でようとすると、それをはねつける。

「馴れ馴れしい真似はやめろ。子供じゃないんだから頭など撫でられても嬉しくもない」
「ふうん、そうかねぇ。前ははしゃいで俺の手を強引に頭に持っていったもんだったが」
 しみじみ呟かれて、藤那は不機嫌そうに顔をしかめた。

 二人の出会いは、七年前。まだ、九洲にも耶麻台国の残党が少なからず残っており、散発的な抵抗が見られた時分だ。
 それに伴って狗根国の支配も、今以上に辛いものだった。少しでも逆らう者は死罪。法が崩壊し、略奪や人さらいなどが横行し、その日の糊口を凌ぐことだけで、誰もが必死だった時代。

 藤那も例外ではなく、妹と弟を連れ山間の集落でひもじい生活をしていた。



 ――七年前。火向某所。

「逃がすなぁっ!! 反乱軍共を捕らえろぉ!」

「いやああぁぁ!」

「助けてーっ!」

「ガキだろうが容赦するなぁ!!」

「ひいぃいっ!」

「見せしめだ!責めて殺せぇっ!!」

「ぎゃあああ!!」

「うわあああぁん!」

「はははっはぁーっ!!」

 阿鼻叫喚と狂気の笑いが混同する里の中、藤那は妹と弟と共に、森の中でじっと息を殺していた。

「……藤那ぁ、怖いよぉ」
 弟の閑谷はひしっと藤那に抱きついて涙を浮かべている。
「藤那姉さん。このままじゃ……」
 妹の綾那はまだ状況が見えているのか、悲壮感を浮かべた顔で藤那の判断を仰ぐ。

 藤那は何とかしないとと思いつつも、子供とは言え三人で動けばばれると分かっているから、どうしようもなかった。
 ただ縮こまって、誰も来ないことを念じ続けるしかない。

 ――くそ、狗根国の連中め。
 悪態を付くだけ、僅かばかりの余裕。
 藤那一人ならきっととっくに逃げ出していただろう。
 護るべき者がいることが、藤那を努めて冷静にさせている。

「とにかく、今はじっとしてるしかない。私にしっかり掴まっていろ」

 藤那は弟と妹をしっかりと抱きしめる。



 一体、どれだけの時間が過ぎただろうか。
 悲鳴も殆ど聞こえなくなり。
 何度か近くまで来た狗根国兵も、じっとしていることでやり過ごした。
 まだ、うろついているのか、鎧の音が聞こえる。

 極限とも言える状態で、まだ幼い三人は、それでもよく耐えたのだろう。だが、もうどうしようもないほど限界だった。

 がさ

 閑谷が少しだけ安堵した瞬間に、ふらついて藪がざわついた。
「――っ」
 藤那は閑谷の口を塞ぎ、息をのんで周りの様子をうかがう。

 ……

 ……

 …………

 長い沈黙。
 どうやら、ばれなかったようだ、そう安心した瞬間――

 ざっ


 空気を斬る音が頭上で鳴った。
 同時に頭上を覆っていた藪がバラバラと落ちてくる。

 藤那の判断は速かった。

 弟と妹を両脇に抱えると、振り返りもせずに一目散に駆けだした。


「ぎゃははっははっ! 逃げろ逃げろぉ~っ!」
 楽しそうに笑う男の声。
 相手は鎧を着込んでいるとはいえ、まだ七つになったばかりの閑谷と十になったばかりの綾那の足では、逃げ切れそうにもなかった。

 藤那は二人を下ろして自分の足で走らせ。手を引きながら懸命に駆ける。

 ――ああ、このままじゃ追いつかれるな。

 藤那は確信した。
 それはもう、どうしようもない。
 どだいやり過ごすことすら難しかったのだ。

 顔だけ振り返る。
 下品な顔の黒い鎧を纏った狗根国兵が、気色悪い笑みを浮かべて追いかけている。

「二人とも、いいかよく聞け……」

 走りながらも、藤那は覚悟を決めた。

「何があっても振り返るな。走り続けろ。いいな!」

 藤那はそう言って二人を先行させる。

 二人は走りながら、足を止めた藤那を何事かと見つめる。

「藤那ぁっ!」「藤那姉さん!?」

「止まるなぁっ! 止まったら殺すぞっ!」

 出来る限りの怒声。
 声は震えていなかった。
 そう、思うことにした。


 ざっ

 狗根国兵が、藤那の前で立ち止まる。

「ちょっと早いが、まぁ、食えないこともないか……ヒヒ」

 ゆっくりと、男の手が藤那に伸ばされる。


 藤那は、目の前を覆うような、その大きい手を見て、ぎゅっと目を瞑った。



 ――怖くない。あいつ等の為なら……


 突き飛ばされた瞬間、木々の合間から見えた空は、血に濡れたように赤く染まっていた。



 気が付くと辺りは真っ暗になっていた。
 まだ十三の藤那に、狗根国兵は容赦も何もなかった。
 陵辱され、放心状態の藤那の首筋に冷たい刃物が張り付く。

「ふう、なかなか具合が良かったぜ、嬢ちゃん。お礼にひと思いに殺してやるよ」

 男の声など藤那には聞こえていなかった。
 耳には入っていたが、そんなことはどうでも良くて。

 気がかりだったのは、閑谷と綾那が無事に逃げおおせたか、それだけだった。

「げっひっひ。そう言えばお前が必死に庇ったあのガキ共な。きっと生きちゃいないぜ。あっちの方にはまだ部隊が残ってたからな。今頃寸刻みにでもされて魔獣のエサだろ。ひっひっひっひ」

 藤那の瞳に、精気が戻る。
 男はそれを見て、嬉しそうに笑う。

「俺が憎いか? 殺したいか?」

 ――なんで、こんな――

「……でもなぁ、嬢ちゃん。残念だがお前もここで死ぬんだよ。ひっひっひ」

 ――こんな、酷いことを――

「まぁ、嬢ちゃんがまた俺のを銜えてくれるっつうなら、考えないでもないが」

 ――なぜ、こんな輩が、のさばっているんだ!!

「うわぁぁぁあああああっ!!」

 ワケも分からず叫び、そして男に殴りかかっていた。
 だが、まだ幼い藤那の拳が、狗根国の正規兵に通じる道理もなく、あっさりと捕らえられる。

「あああああああっ!!」

 叫んでいた。
 何かに、あらがいたくて。
 このどうしようもない、クソみたいな運命を壊したくて。

 だが、それも――

「ふっひっひ。まだ元気じゃねぇか。じゃあ、今度は後ろの方で相手して貰おうか」

 藤那の死力を尽くした抵抗も、運命を塗り替えるには、あまりにも儚い。

「うっ、ひっぐ……いやあああああああっ!!」

 組み敷かれ、男に乗りかかられて、藤那は初めて悲鳴を上げた。

「助けてぇええええっ!」
「誰も来やしねぇよっ!! せいぜい泣き叫びなぁ、ひーっひっひっひ」


 ごりっ


 異音。
 押さえつけていた重圧が突然無くなり、熱い液体が藤那に降りかかった。鉄臭い臭い。
 それは血だった。


「大丈夫か?」
 月明かりの元、差し出された手。
 それは男の手なのに、農家の仕事で荒れている藤那の手よりも綺麗だった。

「……誰?」
 それは辛い目に遭っていたから働いた警戒心ではなく、純粋な好奇心。
 目の前の存在が、藤那の目にはまるで神のように神々しく感じられた。

「九峪だ。立てるか?」
 九峪は強引に藤那の手を取ると立たせる。
「あの、他の人たちは……?」
「狗根国兵なら野営の準備に入ってる。そこの里の連中は分からんな」
「そう……」

 肩を落とす藤那。
「まぁ、何にせよ生きてて何よりだ。直ぐ動けそうか?」
「大丈夫」
 藤那は多少ふらつきながらも、しっかりと二本の足で立ち上がる。

「さて、じゃぁ行くか」
「あの、何処へ……?」

 藤那の少しだけ不安が混じり、そして同じくらい期待に満ちた問い。

「何処か、遠くへさ」

 九峪はそう言って歩き出した。






 藤那は懐かしそうに目を細める。
 ――思えばあのときから、私はこの男に惚れていたのだな。

「なんだ? 人のことじろじろと。さては欲情したか?」
「ふん。誰がだたわけ」
 藤那は鼻で笑うと、いつも携行している酒の入った土瓶を呷る。

 結局、九峪はその後直ぐに藤那を別のもっと奥まった場所にある山人の里に預け、一人行ってしまった。
 置いてけぼりをくらい、九峪への想像を膨らませるだけの七年間。

 再会した相手は普通の男だった。
 そのことに幻滅するでもなく、むしろ好ましく思っていることが藤那も意外だった。

「さて、そろそろ案埜津達も戻ってくるだろう。無駄話もこの辺にして、飯の準備でも始めたらどうだ?」
「なぜ、俺に命令する」
「九洲じゃ女の方が権力が強いんだよ」
「さすが火魅子候補様」

 九峪はため息をつきながら、枯れ枝に火をつけ始める。


「なぁ、九峪」
「なんだ、藤那」

 九峪は見向きもせずに聞き返す。

「今度は、いなくならないよな」
 照れたように呟く藤那。

 九峪は一瞬だけ手を止めると、直ぐに作業に戻った。


「好きなだけ一緒にいてやるさ」


 藤那はその答えに、満足そうに笑みを浮かべた。









追記:
 隊長! 大変であります! 藤那の過去編など書いています! この調子だといつまで経っても終わりません! 至急ヤツの脳みそに撤甲弾を打ち込んで、正気に戻しましょう! え、なんですって! 既に手遅れ? は、その通りでした! 申し訳ありません、失礼します!

 って言うのが今の心境です。脳みそに在住中の濱中伍長(誰? でした。


 で、こんなん書いてしまったワケですな。どうせなら忌瀬とか兔音とかのも書いておけば良かったような気もするけど、まぁ、突発的にネタが思い浮かんだからしょうがありません。閑谷と綾那がどうなったのかは知りません。死んでてもいいんじゃね? などと作者は思ってるんですが、ネタに困ったら登場するかも知れませんね。一体誰がヒロインなんだ、って状態ですが……。つーか、長いですね。毎回こんなに書いたら確実に死にます。だから次回は短めに(ぉぃ



 アホウなアトガキは終了して恒例のweb拍手のお返事をば! なんかイッパイ来てます。大量です。ブログにweb拍手つけたのが正解だったのか? そう言うことにしておこうかな。
 まずはおそらく同一人物による連続三件。

2:04 清水と十七夜…って、清瑞じゃなくてですか?妖しげな治療っぽい何かをほどこされたノーネ?
2:05 雲母は百合の性質も有ったのか…いろいろ出来るなぁ、便利キャラめっ
2:07 あ、あと紫香楽スキなのですよ。一発変換できるくらいには。だって彼、巨大化とかするし。
 と、頂きました。なにやら最近よく送ってきてくれる読者さんのようですね。ありがとうございます。
 清水と十七夜。まぁ、だからどうしたのか読者にはさっぱり分からない編年紀の設定その一ですね。ああ、清水は清瑞の母親で、だから九章で清瑞が母上とか言ってたワケですが。細部は考えてないです。日魅子、天魔鏡と一緒に二十一世紀の世界に渡ったという事ですね。解釈するなら転生したって所ですかね。受精卵に魂が宿って云々みたいな。適当にそんな感じに理解しておいて下さい。別にそれで本編がどうにかなったりしません。まぁ、あることを説明するためには重要な気もするけど……。
 さて、続いて雲母の便利に使ってる疑惑! よく知らないので誰だよコイツって感じになってますね。清瑞と百合っぽくなる話しもあるかもしれないし無いかも知れないし。要望会ったら無理矢理本編にはめ込むかな。カップリング募集。ただし本番は書かないんでその点は注意です。
 で、最後が前回の紫香楽スキーですかという話しにに付いてですけど……本当にあのキャラにもファンがいるのですね。うちの作品では出てきたっけ? なんだか書いた記憶が果てしなく皆無だなぁ。幻聴の始めに原作にもあるシーンを省略して書いただけな気が。巨大化はゲーム? アニメ? そっちのメディアは見てないので知りませんが、そうですか、ではいつかヤツを大きくして暴れさせたりしてみよう! SSのどれかでヤツは活躍します。盛衰記かも分かりませんが、そこは明言は避けておきましょう。

 感想ありがとうございました。

 さて、では続いてのコメント。

4:25 ストーリーとエロが混ざってる作品っていいですねー。出雲盛衰記、新説・火魅子伝続き楽しみにしてます
 と、頂きました。
 ストーリーにエロ。エロは好む人と嫌がる人がいるので配分が難しいですねぇ。盛衰記は微エロくらいにしてるつもりですが、十分駄目だという人もいるだろうし、全然足らんという人もいるだろうし。重要なのは全体を通して濃度が一定になることだとは思うんですが。
 ちなみに新説は続き書かないカモしれませんが。他の作品で我慢して下さい。ごめんなさい。
 感想ありがとうございました。これからも頑張らせて頂きます。

 さて、まだまだあるぞ~。こんなに偏ると、明日辺り一件も来ないんじゃないかと不安になりますね。で、続いての三件は同一の方からですね、確実に。

20:23 ガンバれぇええ がんばれーーーっ. がんばれええっ
20:24 がんばれぇ~~~.あなたの小説サイコーだ~~~
20:25 がんばれええっ!!!
 と、頂きました。
 アハハハ……、web拍手へのお礼コメントをパクってくれたようですね。昨日ブログに設置すると同時にコメントの種類を増やしたんですけど、それに某格闘漫画が元ネタのコメントが二つあります。これもその一つです。まぁ知ってる人もいるでしょうが。
 コメントありがとうございました。元気でましたよ!

 さて、では本日はこの辺で、ってその前に。
 あちこちに書いてますが、今週末からいないので木曜から来週の水曜日あたりまでこっちの更新も止まります。その間全く作者は見に来れませんので悪しからず。

 では今度こそヾ( ̄◇ ̄)ノ)) バイバイ
【2006/03/01 16:37】 | 小説 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
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