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出雲盛衰記15
 出雲盛衰記
 十五章



 火向の国都である川辺城。
 その一番高い場所にある部屋で、天魔鏡の精キョウはご機嫌斜めだった。
 阿祖山中に反乱分子を始末に向けた部隊が全滅し、せっかく祭り上げた火魅子候補の一人も失ってしまった。

「ま~ったくさぁ~。使えないよね藤那もさ~」
 盛大にぼやくと、窓際で街を見下ろしていた巫女服姿の女が、鈴を鳴らしたように笑う。

「それは無いでしょう、キョウ様。仮にも元耶麻台国副国王の隠れ里ですよ? 百程度の部隊しか送らなかったのですから、こういう事態も有り得たでしょうに」
「……百くらいで十分だって言ったのは星華だよ。まったく競争相手減らしたいからって、あんな真似」

 巫女服姿の女は口元を隠しながら、目だけ笑って見せる。
「いやですわキョウ様。あんな田舎臭い女と私が競争相手だなんて。私は単純に分不相応な者に火魅子候補などという立場は似合わないと教えてあげただけですよ」

 ――女ってこれだから。
 キョウは内心でそんなことを思ったが、別に藤那が死んだ事などどうでも良かった。おかげで伊雅討伐を本格的に行う名文が出来た。

 元副国王伊雅は十五年前も狗根国に通じ、耶麻台国滅亡に加担したうえ、今もまた火魅子候補を殺害した。
 こんな所だろうか。
 現在の復興軍は十五年前の戦争に直接関わっていた者は殆どいない。

 伊雅の正当性を訴えられる人間は何処にもおらず、逆にそう言う意見が出ても火魅子候補と神の遣いに心酔している兵達により圧殺されるだろう。

「そう言えば神の遣いはどうしてる?」
 キョウの言葉に、星華は肩をすくめる。
「まだ寝ているのでは無いかしら? あの人はどうやら朝が苦手のようだから」
「まったく、のんきだね」
「そうでなくては困りますけど」

 星華は楽しげにそう言う。
「火向の地はもはや復興軍の手に落ちましたし、豊後の地ももはや時間の問題。各地ではだいぶ下火になっていた反乱の動きが活発化による民が蜂起で街が落城している。最早耶麻台国復興も掌の上ですわね」
「油断は少々早いのではありませんか? 星華様」

 固い声が響き、星華は不機嫌そうにそちらを見る。
「亜衣、何の用?」
「何の用とは随分なお言葉ですね。軍議が始まりますよ」
「あら、もうそんな時間でしたか」
「皆首を長くして待っています。お早く……」
「分かったわ」

 星華は優雅に立ち上がると、キョウを一瞥して腰を折る。
「ではキョウ様、私はこれで」
「うん、ボクもあとで顔を出すよ」

 星華が亜衣と共に出て行くと、キョウは大きくため息をついた。
 十五年前、伊雅に筑後川に捨てられたキョウは、その時初代姫御子が施していた危機回避プログラムの作動によって、遙か時空の彼方に飛ばされてしまった。
 キョウはそこで土の中に埋もれていたのだが、ある時そのキョウを掘り起こした人物がいた。

 キョウはその人物と共に、再びこの世界に戻ってきたのだ。
 右も左も分からないその人物を、キョウは神の遣いと言いくるめ、耶麻台国復興を決意した。
 その後星華に出会い、宗像神社の関係者達に呼びかけることで、復興軍を起こした。

 星華は元々孤児で、宗像神社の巫女の家系である、亜衣の両親の元に拾われた。幼少より何処か気品を持っていた星華は、どうやら勝手に王族だと勘違いされて育ったようだ。
 正確に言えば、その頃から亜衣の両親が宗像神社内での地位を高めようと、星華をそう言う立場に仕立て上げたのだ。元々王族の遠戚であったことも事実なので、星華が王族の一人から預けられたという言葉をことさら疑う者もいなかった。

 最も、その両親も既に死に、その事実を知っているのは亜衣一人。亜衣はキョウにだけはその事実を打ち明けたが、星華は自分一人だけが王族だと言うことを信じて疑っていない。
 それでも構わないとキョウは思っている。他に五人――藤那が死んだので四人――仕立て上げた火魅子候補の中で一番鼻持ちならないが、序列がはっきりしていた方が、組織は上手くいく。

 他の火魅子候補は自分がそうであるという自覚に乏しく、どこか自信が無い。その中ではっきりと立場を利用していた藤那が星華には目障りだったのだろう。

 ――何も変わらないのにね。どちらもただの人。

 キョウが火魅子候補を選ぶ上でつけた条件は、方術を使えるか、腕が立つか、ただそれだけだ。戦争で役に立ちそうな人間に地位を与えただけ。復興したらどうするべきか悩むところではあった。
 事実を伏せて、もはや血筋すら関係ない者を耶麻台国の長として据えておくべきかどうか。

「おい、キョウ」

 声をかけられて振り返ると、変な服を着た男が突っ立っていた。
「あ、ようやく起きたんだね」
「別にいいだろ。どうせ俺のやることなんてねーんだからよ」
「それはそうだけど、一応神の遣いなんだからもう少し節度ある生活した方がいいと思うよ。体面上」
「うるせぇな。別にいいんだよ俺は。それより藤那が死んだって聞いたんだが」

 ――珍しく出張ってきたのはそれが原因か。
 キョウは一人納得すると、ことさら軽く答えた。
「うん。実は藤那には伊雅って言う元耶麻台国副国王を説得してもらいに行ってたんだけどね。どうやら伊雅って狗根国と繋がってたみたいで、部隊ごと」
「確かなのか?」
「間違いないよ。逃げ帰ってきた兵士が殺されるとこ、しっかり見てるから」

 男は青い顔でうつむいてしまう。
「……大丈夫だよ」
 キョウは見透かすような口ぶりで呟く。
「君が殺される事はないから」
「本当か?」
「もちろんだよ。だから、安心していいよ」

 男は頷くとため息をついて部屋を出る。
「今は、まだね」
 キョウは自分にしか聞こえないようにそっと呟くと、静かに天魔鏡に戻った。



 軍議の席。議事の進行は亜衣。上座は空席で神の遣いの為に空けてある。
 それぞれ左右に火魅子候補が並び、その次にはその縁者や他の幹部の姿が見える。末席の方では忌瀬と音羽が肩を並べていた。

「まず、お聞き及びの所かと思いますが、藤那様が伊雅様の説得に失敗し討ち死になされました。このことを受けまして、豊後侵攻に併せて逆賊伊雅の討伐を――」
 意見を差し挟むこともなく、軍議は過ぎていく。

 始めはそうでもなかったのだが、最近では亜衣の策に口を出す者は少なくなっている。何を言ったところで上手く言いくるめられてしまう上、これまでも特に亜衣の策で破綻は無かったのだから無理もなかった。

「では、各自持ち場に着いて下さい。これからの戦いはより厳しくなり、討ち取られる者も増えるでしょうが、ここで引いては事はなりません。私たちの手で九洲を狗根国から取り戻しましょう」

「「おおっ!!」」


 一致団結した返事を見せたところで軍議は解散。
 いつも通りで特に何もなかった。
「あ~、疲れた。どうもこういうのはしょうに会わないわねぇ」
 忌瀬はそう言って腕をぐるぐると回す。

「忌瀬さん」
 背後から声をかけられて忌瀬は振り返る。
「あ、志野。どうしたの?」
「志野様って呼べ」
 志野と呼ばれた少女の傍らにいた、ボーイッシュな女の子が忌瀬を睨み付ける。

「ああ、ごめん珠洲。まだクセが抜けなくてさ」
「別にいいですよ、呼び捨てで」
「駄目」
 志野は困ったように珠洲を見下ろす。

「まぁ、立場ってものがあるしねぇ。で、話って?」
「いえ、ここでは何ですから私の部屋の方に」
「うん?」

 首を傾げながらも断る事もせずに、志野と珠洲の後を着いていく忌瀬。
 部屋にはいると志野は周りに誰もいないことを確認して戸を閉めた。
 戸の前には珠洲が残って見張りをしている。

「どうしたの? こんな警戒して」
「藤那さんの事なんですけど」
「ああ、残念だったね……。まぁ、あれだけ出しゃばってれば星華様に恨まれて当然だけど」
「やっぱり、そうなんですよね」
 志野は苦しげな表情でうつむいた。

「やだなぁ、志野。大丈夫だよ、志野は藤那様とは違うんだし」
「でも、あの人の事だからいずれ……。私、もう嫌。こんな所出て元の旅芸人一座に戻りたい」
 両手で顔を覆う志野。

 忌瀬は弱ったなぁと頭を掻く。
「でも、今逃げたらきっとそれを口実に追討されちゃうよ。とにかく出来るだけ目立たないようにしてさ」
「ええ、そうですね。すみませんこんな話し相談したりして」
「いいのいいの。私なんかでよければいつでも相談に乗るよ」
「ありがとうございます」

 忌瀬は苦笑を浮かべる。
「でもさぁ、本当に藤那様死んだのかな?」
「え?」
 志野は思っても見なかった言葉に首を傾げる。

「おかしくない? 藤那様って向こう見ずで出たとこ勝負な人だけど、案埜津も付いてたし、そうそうやられないと思うんだけどなぁ」
「それは、そうですけど。相手が相手ですし」
「それも気になる。本当に副国王が火魅子候補を手にかけるような真似するかなぁ」

「何が、言いたいんです?」
 志野は困ったように訊ねた。
「これは、あくまで推測で誰にも言って欲しくないんだけど、伊雅様がいくら偉いからって、それを言いふらしてたらとっくの昔に狗根国に掴まってさらし首になってると思うんだよね」
「ええ、それは」

「でしょ? 幾ら王族でもそれを名乗らなくちゃタダのおっさんなワケで、そんなタダのおっさんの所に手練れがいると思う?」
「そう言われれば、変ですね。でも、十五年前の戦いを生き残った手練れとかがいたのかも」
「それもおかしいでしょ? もし伊雅様が亜衣さんが言っていたように耶麻台国における逆賊ならば、有能な人間が付いているとは思えないし、本気で裏切っていたならば狗根国にいていい思いをしているか、或いは消されているのが普通でしょう? 今山の中で隠居していると言うことはどちらでもないと思わない?」

「……そう、かもしれませんね。でも、裏切っていないのならば、なぜ復興軍に来てくれないのでしょう」
「こう考えるとすっきりしない? 本当に裏切っているのは伊雅様じゃないって……」
 声をひそめて呟いた忌瀬の言葉に、志野は目を見開く。

「そ、そんな、こと」
「あ、内緒だよこれ。別にそうだと思ってるワケじゃなくて、思いついたってだけだから。でもね、もしそうなら、藤那様が殺された理由も納得いくし」
「でも、忌瀬さんは死んで無いんじゃないかって……」

 忌瀬はう~んとうなり声を上げる。
「まぁね。だからこれも推測なんだけど、阿祖にいるのよ。そういうちょこざいな偽装が得意な人がね。場所的にも先にその場を訪れていた可能性もあるし、だとすれば百人を撃退したって話しも納得出来るからさ。っていうか、そうなら確実に藤那様は生きてないとおかしいし」
「それって、もしかして……」

 忌瀬は苦笑混じりに呟いた。
「九峪」

 志野は目を見開くと忌瀬に掴みかかる。
「九峪さんに会ってたんですか?!」
「ま、まぁね。言うと天目がうるさいから黙ってたけど……」

 志野は小刻みに震えると、全くの無表情で忌瀬を見つめる。
「忌瀬さん。九峪さんに関しては抜け駆けしないって言いましたよね」
「え、うん、まぁ、だったかな……」

「言 い ま し た よ ね」

「……はい」
 内心号泣しながら忌瀬は返事を返す。
 志野は無表情のまま、口元だけ笑みを浮かべると、優しい声で呟いた。
「では、約束を破った報いを受けて下さいますよね?」
 忌瀬は力無く首を振った。






 珠洲は戸の外で見張りをしながら両耳を塞いでいた。
 時々聞くに堪えない悲鳴が入ってくるが、努めて気にしないことにして。

 やがて悲鳴すら聞こえなくなると、そっと手を離して空を見上げた。

「私も、会いたいな……九峪」

 呟いた自分に驚いたように目を見開き、そして直ぐに照れたように笑った。





 そのかすかな呟きを志野に聞かれ、忌瀬と一緒に楽しいお仕置きを受けることになったのは、また別のお話。











追記:
 気まぐれで復興軍サイドを書いてみました。つーか、あれです。九峪の方の場面転換を図るシーンが思いつかんかったんで、これ書いとけばその間に移動したんだなぁ、って感じに解釈されて、省略しても大丈夫かなっていう打算です。
 
 もうちょい復興軍サイド書こうかな。どうしようかな~。
 
 ああ、そう言えば火魅子候補誰にしよう。全員王族じゃなくてもいいんだから、全然関係ないヤツを据えるのも可だし。あと枠は三つか。香蘭、伊万里、只深の分。無理に出す意味もないしなぁ~。
 
 さて、そう言えば肝心の神の遣いは誰ですかね。実は決まってるんですけど敢えて書いてなかったり。オチは最後に取っておきましょう。ちなみに九峪ではありません。まぁ、オチっつっても、配役が誰でもその事によって何かあるわけではないんですが。ああ、コイツだったのか、って思って頂ければ何よりかと。まぁ、変わるカモね。何せラスト考えてないから何処で終わるか分からんし。

 そろそろ面倒になってきましたが、筆は進んでます。おかげで会議を書いていない今日この頃。アレはアレで面倒なんです。アトガキはこの辺にしてと……

 web拍手のお返事ー、と思ったらコメントはありませんでしたね。残念無念。でも、たくさん押してくれたみたいで何よりでございます。ありがとうございました。

 では、本日はこの辺でヾ( ̄◇ ̄)ノ)) バイバイ
【2006/03/02 18:49】 | 小説 | トラックバック(0) | コメント(1) | page top↑
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コメント
先日、やっとマブラヴオルタやり終えた逃亡者です。
調子の悪いPCを騙し騙し頑張りましたよ。特定の箇所を叩けば一時的に正常に戻るんですよね、壊れかけのTVみたいに……
まあ修理するか、買い換えろって話なんですけど。
そんな状態の上に同時進行でG.P.O.もプレイしてた為メッサ時間かかりました。
まだG.P.O.はクリアしきってないんですがね……

しかし、しばらく来ない間にかなり更新されてますね。
雲母お姉さまの出番が増えてたり、清瑞たんとか藤那様も出てきたし。
しかも藤那が逃亡者好みアレンジされてますよ?
清瑞は元々好きだったけどそこに『亡国のお姫さま』なんて記号を付加されたらその破壊力は測定不能ですw
乱破属性のない清瑞は世間知らずの純情娘っぽいですよね。そこがまたイイ!
雲母お姉さまは天目さまを差し置いてメインヒロインとしてのポジションを着々と固めている様子。
天目v.s.雲母が楽しみです。アリーナ席のチケット予約したいのですが、予約開始は何時からですか?
 
表の方も何やら急展開ですね。
ただのオリキャラだと思ってた十七夜にあんな設定盛り込むなんて……
十七夜に対するマイ評価が若干上方修正されちゃいましたよ? 
逃亡者はお姉様キャラかツンデレ属性だと思ってたのに……
ただあのオッサンを絡めるなんて、さすがに厳しい戦いになりそうですね。
【2006/03/05 04:02】 URL | 逃亡者 #zr419JUU[ 編集] | page top↑
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