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出雲盛衰記16
 出雲盛衰記
 十六章



 ―――九峪。
 
 ――九峪。
 
 ―九峪。


 頭の中で何度も反芻する。
 会えなくなってからもう随分経つ。
 いつもは一月もいなくなることは無いのに。

 前から仇討ちには消極的だったけど、それでも最後には納得してくれると信じている。
 あの場には九峪もいたのだ。

 私の両親が、非業の死を遂げたその場所に。



「天目。考え事?」
 天目は視線を下に下ろす。
 そこには頭に大きめの頭巾を被った少女がいる。

「なんでもない。それより兔華乃。本当に九峪は生きてるんだな?」
「あら、私の占いを疑うの? それに兔音だってちゃんと会ってるんだし。あの人の限って万が一なんて無いわよ」
 コロコロと笑ったかと思うと、直ぐに視線を鋭くする。

「でも、許せないわよねぇ、九峪さんたら。私たちに黙って兔音と……」
 
 びぎっ

 兔華乃の持っていた酒瓶にヒビが入る。
 天目はその様子を鼻で笑って、自分の指揮下の部隊に視線を戻した。

 天目は復興軍に加わると同時に、当初の予定通り重用されたが、主に本人の性格上の問題から前線に送られて、今は豊後攻めの指揮官になっている。

 耶麻台国の連戦連勝。その理由の一つが天目であることは間違いがない。
 亜衣が送ってくる策を勝手にいじくりまわして、状況に応じた用兵を行っている。亜衣も成果が出ている以上文句は言えないし、川辺では自分の策で上手くいっていると思わせている。

 天目はその辺りのことは当然察しているが、今は泳がせている段階だ。
 豚は太らせて食え。それが天目の持論だ。

「こないだの四天王とか言うのも大したこと無かったし。もう少し強い人が出てきてくれないと、私つまらないわ」
 兔華乃が不満そうに口をとがらせる。
「お前が満足するような相手に早々出てこられては、復興軍など直ぐに瓦解してしまう。それにこないだのは偽者だろう」
「あら? そうなの?」

「小夜の報告だと、本物は敵わないと見て逃がされたそうだ。それにおそらくそいつは今九峪と一緒にいるだろ」
「ああ、そう言えば兔音がそんな事を言っていたわね」
「九峪が手を出していないはずはないしなぁ」
 諦めたように天目は呟く。

「あなたも大変ねぇ。でもいいじゃない。結局九峪さんはあなたを選んでくれたんだから。私たちなんておこぼれに預かってるだけで」
「一月以上も姿を眩まされては、そうも言ってられないな」
「まぁ、そうかもしれないけど」

 今までもいなくなることはよくあった。
 大抵は満月が近づくと子供を巻き込むことを嫌っていなくなる事が多かったが、それだけで直ぐに戻ってきたものだ。

 それが、今回は随分と遅い。

「何か、企んでいるのかな、あいつも」
「そう言えば、火魅子候補が一人死んだらしいわね。あれなんか怪しいわ」
「そうだな、おそらく九峪が関わっているだろう。こんな事なら桂か小夜をつけておくんだった」

「子供達も大変ねぇ。こんな母親を持つと」
「別に私の子供じゃない」
「肝心のあなたの子供は?」
「その辺で遊んでるんだろ」
「育児放棄ね」

「私と九峪の子供がそう簡単にくたばるか。おおかた魔獣でも狩ってるだろう」
「心ないあなたに代わって兎奈美を貼り付けておいてあげたけど」
「そうか」
「お礼は」
「必要ないだろ。別に頼んでない」
 まったく、と兔華乃は呟くと踵を返す。

「そんなんだから、九峪さんにも愛想を尽かされるのよ」
 それだけ言って去っていく。

 愛想を尽かされる。

 そんなワケがない。

 天目は確信している。

 天目にとって九峪は、恋人であり、夫であり、兄であり、父親でもある。
 この世界で唯一九峪だけが家族と呼べる他人だ。
 離れていても、心は一つ。

 家族、いや、すでに自分の一部。



 ――副国王とやらの所に行ったと言うことは、九峪はそちらに付いたと言うこと。そうでなければとっくに戻ってきている。


 天目は不確定な状況から、九峪がそこにいたことを露ほども疑わずに推測する。

 ――そもそも、神の遣い、実質天魔鏡がそこに火魅子候補を差し向けたのは、間違いなくそいつを消すため。それを阻んだと言うことは、九峪はそちらに正当性があると認めたということ。


 そして未だに何も話を行ってこないと言うことは……


「勝手にやるつもりか。まぁ、放っておいても問題はあるまい」

 九峪は最終的には自分の事を考えて行動している。
 天目はそのことを疑っていなかった。

「小夜。いるか」

「はいはい、ナンデショウカ?」

 何も無いところから癖毛の少女が現れる。

「お父さん、探してきてくれる? どういうつもりなのか聞いてきて」
「そんなの桂にやらせれば? なんであんなクソ親父のとこ」
「小夜……」
 天目に暗い声で名前を呼ばれ、小夜は舌打ちすると盛大にぼやきながら踵を返した。

「はいはい、行きます行きます。行けばいいんですね、お母様。なんか伝言は?」
「愛してるって」
「……ああ、そうですか。じゃ、行ってきます」
 そう言い残して小夜はいなくなった。

 天目はため息をつくと、これから攻略する長井の街へ意識を戻した。


「帰ってきたら、また釘を刺さなくちゃね、九峪」


 そう、一言だけ呟いて。













追記:
 あまりに出番が無いのがかわいそうだったので、天目で書いてみました。ついでに兔華乃も出してみましたが、この話しあってもなくてもいいようなもんですね。まぁ、いいか。消すのも面倒だし。
 ちなみに最後の釘を刺すのはリアルの釘を刺すという意味です。頭に麻袋を被せて釘を頭蓋に打ち込むって拷問ですね。拷問っつーか処刑なんでしょうか? まぁ、天目の逆鱗をデッキブラシで擦るような真似を晒していますから、その程度ですめば九峪も幸いでしょう。

 では、何事もなくweb拍手のお返事をば。
 ええと、コメント頂いたのは七日の分だけですね。

17:54 じゅーまんひっとぉーっ………踏み損ねたぁぁぁっっっっ! …あ、おめでとうございます。
 と、頂きました。
 そうなのです。十万ヒットですよ。ぶっちゃけ予想より到達するのが一年ほど早いんですが……おそろしや。ついでにぶっちゃけると密かに作者も十万は自分で踏んでやれと思ってたんですが、いつの間にか過ぎてましたね。ん~、残念!
 めげずに二十万にでもチャレンジして頂ければと思います。いつになるでしょうね……。

 コメントありがとうございました。

 では本日はこの辺でヾ( ̄◇ ̄)ノ)) バイバイ
 
【2006/03/09 16:25】 | 小説 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
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