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出雲盛衰記18
 出雲盛衰記
 十八章



 山人出身の火魅子候補、伊万里は火向の各地に散らばる山人の支援要請に山の中を行ったり来たりしていた。

 正直な話、いきなり火魅子候補だと告げられても伊万里には寝耳に水以外の何者でもなく、得意でもない人の説得や勧誘はただ疲れるだけでちっとも楽しくなかった。
 これならまだ前線で剣を振るっていた方が気楽だと思っていたのだが、今の内に王族としての仕事に慣れておく必要があるという復興軍内部からの――殆どが宗像神社系だが――意見に押し切られてしまった。

「伊万里~、人が倒れてるってさ~」
 乳姉妹の上乃は伊万里の気など知らず、火魅子候補と分かっても敬う気持ちは欠片もない。そのせいか伊万里は自分が火魅子候補だとまるで自覚していなかった。
 今までの仕事も王族としてではなく、全て伊万里個人のものとしてやって来た。

 ――大体……

 伊万里はため息混じりに自分に付いている僅かばかりの護衛を見つめる。
 復興軍は急速にその規模を拡大しているが、それでもやはり兵力は幾らあってもありすぎると言うことはない。そんな名目で護衛最小限。

 理由としては既に支配下に入った場所を回るのだから、それほど危険性はない、と言うことらしい。火魅子候補とは言えいきなり名指しされて後見人も何もない伊万里は言うとおりにするしかない。
 とんだ傀儡だった。

 伊万里は上乃の声の方に渋々足を向ける。
 不満はたくさんあったが、それでも九洲の現状を何とかしたくて復興軍に入った以上、今の仕事を何とかこなそうと頭を切り換えた。



 伊万里が上乃の元に行くと、護衛兵が倒れている人間を起こしているところだった。
 見たところ男の旅人のようだった。
「生きてるのか?」
「はい」

 衣服は所々破れ、血に濡れてカピカピになっている。
 上乃は無精髭面の男に興味津々な視線を向けている。
「怪我は?」
「目立った外傷は無いようですが」
「じゃ、返り血かな?」
「一応周囲を警戒しろ。万が一と言うこともある」

 伊万里の指示で護衛兵が数人様子見に走る。

 どうしたものかと伊万里が男の顔をのぞき込んでいると、不意に男が目を覚ました。
 急に目を見開いたので伊万里も上乃もビックリしてのけぞる。
「――ふう」

 男は周囲をぐるぐると見回して、伊万里と上乃を交互に見ると最後に護衛兵に目をやり立ち上がる。
 その行動に慌てて上乃は槍に、伊万里は剣に手をかけた。
「ああ、待て待て。見たところ復興軍の連中のようだが俺は別に怪しいもんじゃないし、敵対してるもんでもない。タダの旅の薬師だ」
 男は慌てて手を振る。

 伊万里は丸腰と言うこともあって、幾分警戒を解く。
「こんな所で倒れてどうしたんですか? それにその血……」
「まぁまぁ、尋問もいいが名前くらい名乗らせてくれ。俺は九峪。あんたらは?」

「伊万里だ」
「私は上乃。伊万里はこう見えて火魅子候補なんだよ~。偉いんだから」
 上乃が補足すると、伊万里は不機嫌そうな顔になる。

 九峪は少しだけ驚いた表情を見せたが、直ぐにへらっと笑う。
「そりゃ凄いな。へぇ~、これが火魅子候補か~」
 全然敬う気がなさそうな口調に、上乃の方がむっとする。
「なによその言い方。大体これって……」
「ああ、悪い。口が悪いのは生まれつきでね。しかし火魅子候補様がなんだってこんな山奥に?」

「あなたには関係ないでしょう。それよりそちらこそ質問に答えて下さい」
 九峪は肩をすくめる。
「昨日の晩魔獣に襲われてね。危うくクソになるところだった。大した数じゃなかったから何とかなったが……」
「魔獣!」

 慌てて周囲を警戒し始める伊万里と上乃。
「いや、倒したから大丈夫だ」
「魔獣を……一人で?」
 怪しい、とでも言いたそうな上乃。

 すると周囲を見に行っていた一人が戻ってきて魔獣の死体が見つかったと告げる。
 伊万里は警戒心の籠もった視線を九峪に向ける。
 報告されたのは一体ではない。都合五体の魔獣の死体だ。

 魔獣五体となると、一人で相手するには魔人一匹よりも難儀な相手だ。それを素手で、その上無傷で倒せる人間。
 復興軍にもそんな人は一人くらいしかいない。
「さすがに疲れて寝てたんだが……心配させちまったみたいだな」

 そう言って軽く笑ってみせる九峪。
 上乃はそんな九峪をじっと見た後、伊万里の腕を引っ張ってその場を離れる。
 声が聞こえない場所まで離れると、上乃は護衛兵と何事か話をしている九峪をちらちら見ながら話を切り出す。

「ねぇ、伊万里。あのおじさん連れて行こうよ」
 神妙にそう言われて伊万里は顔をしかめた。
「危険だ。素性も知れないのに……。敵の罠かも知れないだろ」
「え~、でもそうじゃなかったらものすごい戦力を連れて行けることになるんだよ。火魅子候補としての伊万里の株も上がるじゃない」
「星華さんに睨まれるだけだよ……」

 消極的な事しか言わない伊万里に、上乃は頬を膨らませて指を突き付ける。
「いい、伊万里! もし星華様がこのまま火魅子になったりしたら、伊万里なんてけちょんけちょんにされて殺されちゃうよきっと! 藤那様だってそのせいで……。本当に伊万里が火魅子候補かどうかなんて知らないけど、もう火魅子にならなくちゃだめになってるんだよ。じゃなきゃ、きっと……」

 伊万里は上乃がそこまで考えていたことが意外でもあったし、自分の身を案じて真剣になっている姿が嬉しくもあった。
「上乃……」
 じんとしながら、何事か言おうとすると、上乃がにんまりと笑って付け足す。
「それにあの人ちょっとかっこいいし」

 頬を染める上乃。全部ぶちこわしだった。

 伊万里はあきれ顔でため息をつくと、手をひらひらとフリながら勝手にすればと突き放す。
「じゃあ、勝手にするね~。お~い、九峪~」

 上乃は意気揚々と駆けていき、事情を九峪に説明している。
 九峪が何事か答えると、上乃は目に見えて肩を落とした。
 断られたのだなと、何処か伊万里が安堵して二人の方へ足を向けると、突然上乃が顔を上げ、あまつさえ九峪の手を取って飛び上がり始める。

 嫌な予感がしていた。
 ものすごく嫌な予感が……

「伊万里~、九峪次の里までなら一緒に付き合ってくれるって~」
 そう言いながら上乃は伊万里にだけ見えるように、右手で合図を送っていた。
 伊万里は心底げんなりする。



 その合図は、上乃が男を誘惑して落としてやるという、そんな破廉恥な意思表示なのだった。









追記:
 伊万里と上乃登場~。伊万里は火魅子候補があっていると思うので火魅子候補にしときました。本当は志野の話し書こうと思ってたんだけど、それは今度にします。さぁ、九峪よ! 上乃の誘惑に見事耐えて見せよっ! とかあり得ないことを考えつつ、次回は上乃の誘惑の話になるのか? えろえろは駄目だって言うのに……。そして伊万里の参戦は!? まるで考えてないのでこんなの希望とかある人はご意見お待ちしております。

 で、今回もフライングで出しているのですが、現時点でweb拍手のコメントはございませんでした。押してくれた人アリガトォ~!


 では、この辺でヾ( ̄◇ ̄)ノ)) バイバイ
【2006/03/11 22:37】 | 小説 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
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