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出雲盛衰記22
 出雲盛衰記
 二十二章



 ――餓えて、死にそうだった。


 七年前、狗根国による反乱軍狩りが最も激しかった頃、少女はその日の食料にありつくこともままならなくて、草の根や虫を食べて命を繋いでいた……。

 女だとわかれば幼いと言っても狗根国軍の兵や、野党と化した荒くれ者達の慰みものになる。だから、顔を汚して、髪を短くして、人には近づかないように気を付けた。

 親はいなかった。

 戦争から逃れる為に各地を転々としている間にはぐれてしまって、もう随分と長いこと一人。

 生きていく術を知らない少女。
 この時代の九洲は、そんな少女が生きて行くにはあまりに過酷で、同じような子供達が溢れ、多くが命を落としていた。


 城壁の壊れた街の中。
 少女は焼け落ちた家屋の中で、いつも眠りに落ちる。

 誰の家かは分からない。
 家主は、少女が訪れたときはいなかった。

 この街には、他にも多くの親や家を失った子供達がいる。

 不自然なほど多く。



 少女は不思議に思っていた。
 自分はただはぐれた場所から一番近くにあったから、この街にいた。
 そう思っている。

 他の子供と話はあまりしなかった。
 聞けば同じように答えただろう。

 でも、子供達はあまりに餓えていて――

 あまりに疲れすぎていて――

 群れる事もしなかった。


 始めたのは少女。
 一人で生きるより、二人で生きた方が効率がいい。二人より三人……

 誰に教わったわけでもない。
 少女はそれを知っていた。

 時に裏切られ、時に虐められ、その三倍の報復を繰り返しながら、子供達は少女の元に集まっていく。


 野党や狗根国兵に対して見張りを立て、食料を集める者を分担し、夜露の凌げる場所を作らせた。

 知っていたわけではない。
 少女は必死で考えたのだ。
 生きるために、どうあるべきか。

 共同体は少しずつ大きくなり、廃墟と化した街は、今や五十人ほどの子供達の街と化していた。



 ……だが、それも……

 ……少女の思惑を超えた、予定調和の出来事。



 破滅は唐突に訪れる。

 絶望は音を立ててやって来た。

 黒衣を纏った不気味な面相の男が、大軍を引き連れて。

「カッカッカ、まさかこうも短期間でできあがるとはな。いや、思わぬ拾いものだったの」

 子供達はすぐさま捕らえられた。

 何も悪いことはしていない。
 ただ日々を生きていくことの何が悪いのか。

 少女はそう告げた。
 骸骨のような男に、真っ向から。

「お主、名は何という」

 骸骨は奈落の底から響くような声で、少女に問うた。
 少女は涙を堪えながら、それでも目一杯睨み付けて、骸骨に告げる。

「私は志野」

「志野、か。お主のように指導力がある輩が九洲にいられると困るのでな。狗根国に忠誠を誓うというなら、いい思いをさせてやろう。儂と来い。断るなら……」

 その先は聞かなくても少女には分かっていた。
 仲間達は、全員狗根国兵に捕らえられている。

 断れば、死……

「……わかり、ました」

 選択肢など始めから無かった。

 ただ少女は、目の前の男の事を勘違いしていた。

 この骸骨に、慈悲はない。


 骸骨がすっと手を挙げた瞬間、捕らわれた子供達に、容赦なく矢が降り注いだ。

「な、なんで……」

 少女は、目の前の惨劇を見て、悲鳴を上げることすら出来なかった。
 ただ、震えて骸骨の昏い瞳を見つめていた。

「カッカッカ、始めからこういう計画だったのだよ。所詮才あるものは一握り。お主以外を生かしておいてもどのみち長くは生きられまい。言うなれば慈悲だ」

「な、なんで、なんで、いやぁあああああああっ!!」

 状況に理解が追いつき、絶叫する。

「カッカッカ。これからお主には狗根国のために、身も心も捧げて貰うぞ」
 骸骨の、不気味な哄笑が響いた。

「うえっ、うう……」

 少女は狗根国兵に引きずられるように連行される。
 嗚咽を漏らしながら。

 そんな事にはお構いなしで、骸骨は笑い、狗根国兵は子供達の周りに火を付ける。


「やあああっ!!」
「死にたくなぁああい」
「助けてぇええ!!」
「痛てぇよ~!」
「うわ~んっ!!」

 泣き叫ぶ声。
 矢を受けても死んでいなかった子供達の悲鳴。
 焼け残っていた家屋が崩れ落ち、炎が子供達に襲いかかると、その声も止んだ。

「……なんで、こんな酷いこと」
「知りたいか?」
「……」
「愉快だからだ……カッカッカッカッカ」

 骸骨は少女の耳元で不気味に笑うと、撤収の指示を出す。




 馬の蹄の音も、血なまぐさい男達も、骸骨の哄笑も遠く去った後、その場所を訪れた若い男と垢抜けた少女。
「酷ぇ臭い。どうやら焼かれて直ぐみたいだな」
「の、ようだな。どれも子供達ばかりだ、むごいことを」
 少女は辛そうにそれを見ている。

「いい加減見慣れちまったってのもあるけど、それにして妙だな。なんで子供だけ」
「確かに」

 がらがら

 かすかな物音に、二人同時に振り返った。
 薄汚れた女の子が一人、壊れた家屋の置くから這い出してくる。

 まだ三つか四つ。
 不安そうな顔で二人を見つめている。

 少女は連れの男に目配せすると、女の子に駆け寄る。
「……よく、無事だったわね。もう大丈夫だよ」
「天目……」
 男はやれやれと頭を掻いている。
 
 女の子は少女に抱きつくと、堪えきれなくなったように泣き出した。
「……う、うわあああん」
「よしよし、もう大丈夫だから」
 天目は薄汚れた女の子を気にせず抱きしめる。


「志野が……、志野が連れて……」
 嗚咽を漏らしながら、何とか助けを求める少女。
 天目は男の方に視線を送った。

「助けたいってか?」

 どうすっかな……、と男はやる気がなさそうに呟いた。











追記:
 前回までの展開をまるで無視して過去の話に。しかもなんだかどす黒い話しだし。
 何考えとんのじゃ~って言わないでね。何も考えてませんから。取り敢えず珠洲と志野のフラグを立てるための過去編! とフェイントを掛けて別の目的なのかも。最終的にどうなるかは神のみぞ知る(ぉぃ 取り敢えず珠洲を子供の内から手なずけるためにも過去編は必要だったわけだが、天目に抱きついたことで変にねじ曲がりそうな。骸骨まで出てきてやる気なさそうな、九峪はどうするのか。頑張りに期待です。


 さて、それでなんとなく暇じゃないのに暇といういつもの状況で日曜日分まで書いちゃったので載せますね。二十三時間ばかり早いですが。

 それと節操なくまたテンプレート(ブログの背景)変えてみましたので、前の方がいいとかなんとかありましたらご意見お聞かせ下さいませ。今回の奴は月をドラックすると動かせたりします。どうでもいいですかね?
 当然の如くweb拍手はまだ無いので、それは置いといてと。

 では、良い週末をヾ( ̄◇ ̄)ノ)) バイバイ
【2006/03/19 00:00】 | 小説 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
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