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出雲盛衰記23
 出雲盛衰記
 二十三章



 柔和な顔立ちの男が、少女の手を引いて歩いている。
 背中には大きな荷物を背負い、足取りも重く街道を歩く。
「志都呂~。私もう疲れたよ」

 少女はそう言ってへたり込む。男に比べれば大したことはないが、それでも少女の方も身体に対してかなり大きな荷物を背負っている。
「忌瀬……。確かにこのところ歩きづめですからね」
 男はそう言うと自分も荷物を下ろして街道脇に腰を下ろした。

 二人は旅の薬師。この地は九洲。
 狗根国による侵略が完了してから数年が経ち、搾取と反乱が続く争乱の地とあっては、薬師の需要は非常に高かった。同時に危険であることを理由に普通の薬師は九洲には入ってこないと言うこともある。
 二人が大荷物を抱えているのも、大量に必要とされる薬草を採ってきた帰りだから。

 忌瀬は豆が出来てしまった足を痛そうに見つめてため息を吐く。
 前の薬師の師匠とは別の場所ではぐれ、その後腕のいい薬師だと変な奴に紹介されて志都呂の元にいるのだが、腕はいいがあまり利口ではないと気づいていた。

 金のない人にも薬を分け与えたり、わざわざ率先して危険な場所に乗り込んだり……。
 正義感が強すぎるのだ。
 このままだといつか面倒な事に巻き込まれる。
 それは分かっていても、忌瀬は独り立ち出来るような歳ではない。

 ――はぁ、私って不幸だわ。
 知らずにため息を吐いている。

「忌瀬、すまないね。私の道楽に付き合わせてしまって」
 志都呂の口からそんな言葉が漏れ、忌瀬は慌てて首を振る、
「そ、そんなこと無いよ! 私だって苦しんでる人たち放っておけないもの」
 その言葉は半分本当だった。

 現在の九洲の状態は本当に酷い。
 狗根国が搾取し続けるから幾ら働いても報われず、そのせいで反乱を起こすものや、真面目に働く事を止めて野党に成り下がるものが増えている。
 虐げられるのは弱い人間、つまりは女子供と老人だ。

「そうだね。……ん?」
 志都呂は不意に視線を街道の先に走らせ、目を細めた。
「どうしたの?」
「何か来る。おそらく狗根国軍だな……。蹄の音が聞こえる」
 忌瀬はそう言われて自分も耳を澄ましてみるが、さっぱり聞こえない。

「相変わらず志都呂の耳は凄いね」
「そうでもないさ。とにかく隠れるぞ」
「うん」
 二人は荷物を背負い直すと、街道脇の森の方へと向かっていった。

 今まで二人が荒れた九洲で生きてこられた理由は、この志都呂の異常な聴覚にあった。大規模な行軍ならば、十里も離れていても聞き取れるとかなんとか。事前に敵が来ることを察知出来るならば、身を守ることでこれ以上有利な事はない。

 志都呂は街道から十分に離れた場所まで来ると、荷物を置いて忌瀬に告げる。
「かなり大がかりに動いているようだし、私は様子を探ってくる。忌瀬はここで待っていなさい」
「駄目だよ。わざわざ危険な真似なんて」

 志都呂は不安そうな忌瀬の頭を撫でながら、優しく笑いかけた。
「大丈夫。今までだって、私は帰ってきただろう? それに別に戦いに行くわけじゃない。離れた場所から様子を見てくるだけさ」
「本当に?」
「ああ、本当だ」

 志都呂は一度忌瀬の事を力強く抱きしめると、挨拶もそこそこに街道の方へ戻っていった。

 ――ま、大丈夫か。志都呂強いもんね。

 忌瀬は知っている。志都呂は何度か狗根国と揉めていて、一度など狗根国の正規兵二十人を一人で蹴散らしたのだ。
 未だに九洲に残されている左遷組の連中など、百人いても大丈夫だと自分に言い聞かせる。
 実際信頼もしていた。

 志都呂も正義感だけで無謀な事はしない。引き際は心得ているし、無理などしない人間だ。無茶なことをやっているように見えて、ちゃんと忌瀬がいる事も配慮に入れているのだ。無茶なことをやって死んで、忌瀬を悲しませる真似などしない。

 ――でも、不安だよ。早く戻ってきて。

 暗い森の中。
 忌瀬は身を隠すように小さくなって、志都呂の帰りを待っていた。



 森の中、普通では気配を察するのも難しい場所で志都呂は狗根国の行軍の様子を探っていた。狗根国には少数とは言えとんでもない使い手もいることを知っている志都呂は、ことさら近づいたりはしない。遠くから聴覚で出来るだけ収拾出来る限りの情報を得る。

 とは言え、基本的に狗根国の行軍でおしゃべりなんかしているわけもない。分かるのは人数と編成くらいなものだ。

 ――数は、二百かそこらか。近頃にしては物々しいな。何か大捕物でもあったか?

 志都呂は気になって少しずつ近づく。

 ――騎馬が多いというのも気になるな。それなりの大物が出張っていると言うことか。だが、この先に反乱軍はいないはずだが。

 大がかりな軍行動があったとなれば、志都呂も今後の動きに影響が出かねない。そう判断して、志都呂は視認出来る場所まで移動する。
 街道脇の木々の間。
 黒い鎧を纏った兵士達の列。

 その中央に、一際目立つ影があった。

 ――あれは、蛇蝎!

 志都呂は狼狽すると同時に頭を下げた。
 実際見たのは初めてだが、噂くらいは聞こえていた。
 狗根国で最も危険な男。

 ――まずいな。あんなのまで出てくるとは。

 もう一度志都呂は蛇蝎の方を覗く。

 そして、目を見開いた。

「し、志野……」

 何の間違かと目を疑う。
 なぜ、蛇蝎の軍に志野が――ただの孤児がいるのか。

 そもそも、今回取ってきた薬草の大部分も志野達の街の子供に渡すためだ。
 実際かかりつけでいられるほど、志都呂も暇ではない。
 最低限の治療法や、薬草の判別を教えて、それで済ませるつもりではあったのだが……。

 ――どうする?

 志都呂は迷う。
 事情は分からないが、志野が捕らわれたのは事実だ。或いは子供達だけでも組織的に動いているのが狗根国の目に付いたのかも知れない、などと予想を立てる。それにしても、なぜ志野だけ。

 脳裏を忌瀬の顔が掠めた。

「忌瀬……、すまん」

 志都呂は自分に聞こえるようにだけ詫びて、ひっそりと狗根国軍の行軍の後をつけ始めた。









 
追記:
 酔っぱらうには少々時間が早いけど酔っぱらいながら書きました。後で見直さないと色々まずそうだな~、なんて思いつつ。それにしても志野過去編じゃなかったのか? なんで忌瀬。しかも志都呂と一緒だし。まぁいいか。今更ですね今更。原作なんてムシだムシ、と暴言を吐きつつ、やっぱり志都呂は死んでしまうのか、それとも生き残ってくれるのか? 気になりますね。殺さないといった手前殺しちゃまずいような、いまさら作者がそれを気にするのってどうだろ、ってのもあって……。まぁ、筆の進むまま続きが生まれていくでしょう。死亡フラグ立ってる気もするけどね(苦笑



 と、アトガキはこの辺で本日もweb拍手のご紹介に移りたいと思います。

 まず、18日分で~す。この日は二件頂いておりました。まず一件目。

2:11 天目の教育×(珠洲+志野)って……なんか、えらく策謀に強そうなワルイ女性が完成しそうな気が(笑)
 と、頂きました。天目にあの二人が教育されたら……ガクブルものですな。ん~、でもこれはこの後どの時点で二人と別れるかによりますね。九峪の性格だと誰かに押しつけたりしそうな気もしますが……。さ~てどうなることか。
 コメントありがとうございました。

 続いて二件目。

12:36 ここで骸骨が居なくなったら補佐役の居ない紫香楽とその下は………。 あと背景は重いです。むー
 と、頂きました。
 そう言えば現状の狗根国はどうなってるんだ? 天目の代わりに雲母がいたのだとしても、今は九峪にラブで寝返った感じだし、そもそも紫香楽が治めてるのかが……。意外と彩花紫辺りが何気ない顔で治めてるかも知れませんね。アレなら一人でも……。補佐とか多少馬鹿でもやっていけそうですし。紫香楽だとしたらどうなんだろ。他の誰かがやってるのか? そもそも天目の抜け番は誰なんだ? と、言う感じに何も考えてないので最後まで分からないかも知れません。適当でごめんなさい。
 それと背景重いですか。確かに以前のにくらべると、変に凝った感じですからね。そう言うことでしたら元に戻しておきます。
 ご意見ありがとうございました。

 では続いて19日分~。はじめの数件は同じ人の連投の模様です。

4:26 炎戦記6手に入れたけど・・・
4:27 内容が・・・
4:27 どっかで見たような気が・・・
4:28 ・・・
4:28 ・・・
4:28 キノセイダヨナ・・・
4:29 どう思います?
 と、頂きました。
 あ、六巻出たんだ……と、このコメント読んで知りました。なのでまだ読んでいなかったりして、どう思いますの内容がイマイチ掴めないのですが、某掲示板で見た感じだと多分藤那の事か……な? 違うかも知れないけど。読んでないので確かなコメントはしない方がいい気もするので、読み終わってからそれっぽいところがあったらコメントをしようかな~。藤那の事だったら、元々伏線あったのを作者が先取りしたと言えなくもない形なので、多少被っていてもそれはそれでおかしいとは思いません(むしろ原作で回収してない伏線を先に書くのはルール違反なの気もするけど……)殆ど原作無視してるとは言っても、一応考えられる先は想定していなくもないので(偉くファジーですが……
 コメントありがとうございました。

 では次のコメントです。これで最後ですね。

17:06 いつも楽しく読ませてもらってます。ゴミ箱の新説・火魅子伝も出来たら続き書いくれると嬉しいです。
 と、頂きました。
 またキター! うぅ、申し訳ない。書こうかと思って読み返したりもしてる今日この頃なのですが、実際続きが思い浮かばなくて……。次は一応対討伐軍四千と決まってはいるのですが、幻聴記もそこだし……ネタがね~。基本的に最強ものってのもあるし、如何に九峪を封じるかが面白くするポイントな気もするんですが、具体的な案は一つも出てきてなかったりしまして。あと、最近忙しかったり。
 このままのペースで行けば編年紀の執筆自体は夏くらいには終わる気がするので(まぁころころ状況は変わるので絶対とは言えませんが……)その後で……。
 コメントありがとうございました。

 他にもweb拍手を叩いてくれた皆様。いつも口だけなワケですが、最大限の感謝を送りたいと思います。ありがとうございました。

 では、本日はこの辺でヾ( ̄◇ ̄)ノ)) バイバ~イ
【2006/03/20 22:32】 | 小説 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
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