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出雲盛衰記27
 出雲盛衰記
 二十七章



 寝苦しさに目を覚ますと、カビくさく薄暗い部屋の中だった。
 両手足を縄で拘束され、無造作に転がされている。

 ――ここは何処だ?

 始めに浮かんできた疑問はそれ。
 九峪は動かないで周囲の気配を探る。
 辺りには誰もいない。それを確認すると身体を起こした。

 そこは物置のような場所だった。
 高い位置に窓があり、光が注いでいる。

 周りには何が入っているのか大きめの木箱が並んでいた。
「ん~、どういう事なのやら」
「知りたいですか?」
 声は上から。

 九峪が寄りかかっていた木箱の上に、眼鏡をしたインテリっぽい少年が座っている。
「桂。久しぶりだな」
「父上殿も息災そうでなによりです」
「そう思うなら縄解いてくれ」
「ご冗談を。私にも立場というものがあるのですから」

 桂はそう言って鼻で笑う。

「で、状況を説明して貰おうか?」
「そのくらいならば。ここは当麻の街の地下、あなたは人体実験用の検体としてここにいます」
「人体実験?!」
「復興軍の快進撃、少しはおかしいと思っていたでしょう? 反乱の芽が元々あったとはいえ、幾らなんでも上手く事が運びすぎです」
「たしかにな。でも、それは天目のおかげだろ?」
 桂は馬鹿にしたようにため息を吐く。

「母上の用兵術は確かに卓抜してはいますが、それでも素人を寄せ集めて戦わせているのです。普通にやったら楽勝とは行きません」
「それで、それが人体実験と何か?」
「知っての通り狗根国は魔人やら魔獣やらを使用します。それに対抗するべく、人を改造しているのですよ」

 九峪は幾つか有り得そうな事を想像し、そして首を傾げる。

「じゃあ、あの寝太郎から貰った優待券は、消えても何ら不都合の無い人間に渡されるものってわけか」
「あの砦の他にも火向のあちこちで似たような目的の施設が作られています」
「ふ~ん、それが裏の顔ってわけか……」
「いえ、それも一つと言うだけです」
「ん?」

 桂は楽しげに眼鏡を指で押し上げた。

「まだ、確証はありませんが、存外面白い場所と繋がっているようですよ、宗像神社の連中は」
「ほう、お前が面白いという場所があるとはねぇ」
 桂は含み笑いをしたまま肩を竦めてみせる。
「まぁ、それについてはもう少し情報がまとまってから報告しましょう」

 そう言って懐から小刀を取り出すと九谷に向かって投擲する。
 小刀は後ろ手で縛られていた九峪の縄を切断した。

 九峪は足の方は自分ではずすと、手足をぶらぶらと振って感触を確かめる。
「母上が心配していましたよ」
「天目には悪いと思ってる。けどな、もう少し遊ばせておいてくれや」
「後でどうなっても知りませんよ」
「覚悟の上だ。それにお前等がきんちょには分からんだろうが、俺と天目は何時だってラブラブなんだよ」

 桂は心底呆れた表情になる。
「そうですか。まぁ何だって構いませんが、私は忙しいのでこれで失礼します」
「ああ」
 九峪が手を挙げて応じると桂は姿を消した。



 ――以前、ある女に聞かれたことがある。
『お前は本当の地獄を見たことがあるか?』

 ――答えは否。
『なら、見せてやろう。私が、本当の地獄って奴を……』

 ずいぶんと昔の記憶。
 それでも色褪せることもなく、九峪の裡に確かにまだある光景。

「深川様、また失敗です」
「また、か」
 深川は毒吐いて手に持っていた竹簡を放り投げた。
 その竹簡には事細かに何かのデータが書き込まれている。

「なかなか難しいな。やはり一般兵に適応するには濃度が問題か。量よりもむしろ」
「では、次は例の奴で……」
「ああ、そうだったな。と言ってもアレには特別せいの奴だ。くっくっく」

 九峪はその笑みに嫌だなぁと思いつつ、扉を開けて奥の物置に部下の男が入っていった瞬間に入れ替わる。
「くっくっく、昔年の恨みを今日ここで!」
「お前に恨まれる覚えはねぇよ。つーか復興軍の施設じゃないのかここ」
「!!」
 つまらなそうに呟いた九峪に、深川は愕然としながら振り返る。

「貴様! どうやって!」
「どうやってって、普通に歩いて」
「相変わらずでたらめな身体だな。致死量の倍は麻酔薬を打ったはずだったが」
「殺す気かお前……」

 深川は呆れたように呟いた九峪から間合いを取る。

「ふ、ふっふっふ。しかし、まぁ全く想定していなかったわけでもない。久しぶりだな、九峪。会いたかったよ」
「何やってるって聞いてるんだが?」
 九峪の視線の先には、人が数人天井からぶら下がっている。
 誰しも目が虚ろで涎をだらしなく垂らしている。

「何を? 聞くことでもあるまい」
 挑発的にそう言った深川を無視して、ぶら下がっている一人に近づく。
 じっとその状態を見つめて、九峪はため息を吐いた。

 ――桂が言っていたのはそう言うことか。

 九峪は全てを了承する。
「反乱すらも、狗根国の手の内か……」
 深川はやれやれと肩を竦める。
「相も変わらず察しがいいな。その通り。今回の反乱も全て狗根国に管理されている。勝ちも負けもない。まぁ、都督の連中はもちろん知らないことだが」

「どういうつもりだ?」
「簡単なことだ。形の上では耶麻台国に復活してくれた方が、民からより搾り取りやすくなる。管理もしやすいだろう?」

「ったく、誰の発案だ?」
「そこまで教える義理はない」
 ふふんと鼻を鳴らすと、話は終わりとばかりに深川は手を叩いた。

 大して広くもない部屋に深川の部下が押し寄せてくる。

「取り押さえろ。殺すつもりで構わん」
「「はっ!」」

 九峪は襲いかかる屈強な男達を、冷めた目で見回す。

 刹那の間に死体がゴロゴロと部屋に転がる。

 瞬きする間も与えず皆殺し。

 深川はそれでも落ち着いていた。
 落ち着いて、その結果を見届け動いた。

「貴様の能力は知れている。終わりだ九峪」
 能力というハンデが無ければ、九峪はそれほど優れた身体能力を持っている人間ではない。
 待機時間の三秒間。
 深川がその隙を突くには十分だ。

 何か液体が塗られた刃が九峪の腕を掠める。
 深川はそこで動きを止めた。
「くく、くくくく」
「ん? 毒か?」
「あっはっはっはっは、そんなちんけなものじゃない。後悔しろ、九峪。私を捨てて狗根国を去ったことを!」

 ドクン

 ドクン


「な、んだ?」

 ドクン

 ドクン

 ――からだが、熱い。

「それは魔界の黒き泉さ。フフ、復興軍の連中をそれで強化してやってるんだが、お前につけてやったのは私が開発した精製法で濃縮した奴だ。常人なら身体が負荷に耐えられずに破裂する。くく、お前が悪いんだ、九峪。天目などと共に消えた、お前が……」
 深川は、泣いていた。
 笑いながら、泣いていた。

「……無駄を悟れ、深川」
「え?」
 九峪は、全身から湯気を上げながら、それでも平静そのものの顔でそう言った。

「俺が、魔界の黒き泉で変質などするものか」
「……なぜだ?」
 その湯気すらも、徐々に収束して……九峪は何も変わらなかった。

「なぜ……お前は」
「魔界の黒き泉なら、十五年前に三ヶ月ほど浴び続けた。今更俺には効果がない。変わるべき所は既に変わっている」
「ば、かな」
 魔界の黒き泉は飲んだものに絶大な力を与えるかわり、その反動に耐えられないものに死を与える。
 そんなものに三ヶ月間。
 深川にはとても信じられなかった。

「諦めろ……」
 九峪は深川の背後を取ると、首筋に当て身を食らわせる。
 意識を失い、ぐったりと崩れ落ちる深川。

 九峪は深川を担ぐと、どうしたものかと周りを見回した。














追記:
 深川登場! ついでに息子も出てきたり、復興軍の裏の顔が暴露されたりとストーリーには深く関わっているはずなのになんだかつまらない気がする二十七章でした。
 まぁ、つまらんのは書き方が悪いせいです。他にありませんね。

 次回は深川の過去編というか、十五年前の話しを書こうかなぁ~、なんて思ってますが。どうなることか。

 昨日のweb拍手ですが……。コメントはないようです。叩いてくれた人に全身全霊でお礼を! アリガトネ!


 では本日はこの辺でヾ( ̄◇ ̄)ノ)) バイバイ
【2006/04/01 00:01】 | 小説 | トラックバック(0) | コメント(1) | page top↑
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コメント
深川がいつもおいしい役なのはなぜ?
【2006/04/01 17:07】 URL | ss #JXoSs/ZU[ 編集] | page top↑
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