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出雲盛衰記28
 出雲盛衰記
 二十八章



 その時代、その場所には酷く似合わない格好をした男は、足に怪我をした少女を背負って道無き道を歩いていた。
 気が付けば森の中にいて、何故か分からないが物騒な連中に追われている。
 原因は背負っている少女のようだったが、始め口を開いてから、一言も発していない。

 ――何がどうなってるんだか……



 男の名は九峪。今年十六になる高校生。毎年恒例で、ゴールデンウィークには親戚の家を訪れ、その足で出雲大社へのお参りをする。なぜそんな慣習が九峪家にあるかは謎だが、とにかくそうなっている。

 高校生になったばかりで、九峪は新たに出来た友達とGW中は遊び惚けたかったのだが、朝食に睡眠薬を入れられ寝ている間に連れ去られてしまった。
 明らかな犯罪行為に憤慨もしたが、じたばたしても戻れないので、いつも通り神社へとお参りに向かったのだ。

 適当にお参りを済ませ、さっさと帰ろうと振り返ると辺りに沢山いたはずの人が一人もいなくなっていた。
 ただ一人、広い石畳の中央で、女がまっすぐに九峪の方を見つめていた。

「……あれ? ほかの連中はどこに……」
 九峪はおかしいなと思いつつも、石段を下りてまっすぐと女の方に歩く。別に女に用があったわけではなく、単純にそちらが帰り道だから。

 女はずっと九峪を見つめていた。
 九峪には見覚えのない女。
 すらりと背が高く、金髪で、かなりの美人。

 外人かと思ったが、どうやらそうではないようだ。
 九峪は関わり合いを避けるように視線を避けて脇を通り過ぎる。
 ナンパする雰囲気でもないし、どうにも周囲の様子がおかしかったから、とにかくこの場を一刻も早く離れたかった。

 ふわり、と空気が動いた。

 九峪は背後から抱き留められ、驚いて振り返ろうとする。
 目の前を金髪がさらさらと流れ、顔を上げればそこに女の顔がある。
「なっ……」
 驚愕。他に感情は湧かなかった。
 思考は停滞し、身体は竦んでただ固まったまま女を至近距離で見つめる。

「助けて……下さい……」
 女は唐突に呟いた。
「は?」
「助けて……下さい……」
 同じセリフを繰り返す。

「助けて……って言われても……」
 狼狽している九峪の身体を女は一層強く抱きしめる。
「お願いです……。あなたしか、いないの」
「いや、わけがわからん」
「早くしないと、何もかも死んでしまう」
「し、死ぬ?」
「そう。だから……助けて下さい……」

 唐突な状況に狼狽する。
 結局何から何を助けて欲しいのか全然分からない。
 それを聞くと、女は儚げに笑った。

「呪われし運命から、私の子等を……」

 今にも泣き出しそうに沈んだ声。
 九峪は美人が悲しんでいるのに動揺しながらも、内心では――

 ――うわぁ、電波だ電波……。逃げてぇ……

 なんて思っていた。

「取り敢えず離してくれないか?」
「いやです。いいと言ってくれるまで離しません」
「じゃ、無理矢理」
 九峪は幾ら自分より背が高いとは言え、女の細腕をふりほどくなどわけはないと、思い切り振り払った。

「ん? ぐぬ! むうううん!」
 顔を赤くして本気でやるが、女の腕は微動だにしない。
「あれ? んな馬鹿な」
「聞いてくれませんか?」
 女は悲しそうに言う。
 九峪は抜け出すことが先だと、取り敢えずお願いを聞くことにする。
「はいはい、わかったから離して」
「口先だけでは駄目です。あなたの心が了承しないと、契約は成立しない」
「はぁ?」
 九峪はヤバイ薬でも決まってるのか? と疑いつつ、どうしたものかと首を捻る。
 女の方も同様に、どうやって九峪に心からの肯定を引き出そうか思案する。

 そして――
「お願い聞いてくれたら、私を好きにしていいですよ……」
 九峪はなぬっと女を凝視する。
 その一瞬。ほんの刹那だが、確かに九峪の心は揺れ動き、そして肯定した。女のお願いを。

 女は身体を離す。
 とても暖かい笑みを向けて。

 九峪は今度は光の輪に身体を拘束され、どんどんと持ち上げられていく。
「な、なんじゃこりゃーっ!」
 女はとろけそうな笑みを浮かべたまま、答える。
「頑張って下さいね。応援してます」
「はぁ? おい、なんなんだよ、どうなってるんだ!?」
「お代は戻ってこれたら支払いますね、うふふ」

 次の瞬間、九峪の意識は消失し、次に見たものは背中の少女だった。



「はぁ、わけわかんね」
 体力には自信があったが、それでも人一人担いでそんなに動き回れるわけもない。今後の事も考えて無理はしないように休憩することにする。
「なぁ、お前なんて名前なんだ? 俺は九峪」
「……天目」
 少女は痛むのか足の傷を見ている。
 走っている間に何処かですりむいたのだろう。血は既に止まっていたが、傷口は土と血で汚れて汚い。

 九峪は近くに水場が無いか探すが、目の届く範囲にはなさそうだった。
「天目はなんで逃げてるんだ? つーか何が起こってるんだ?」
「出雲王家に、狗根国が侵略してきて……それで」
 九峪はそのセリフに鼻白む。

「出雲王家って……」
「知らないの?」
 九峪は肩を竦める。
 ――わからん。なんだここは。そもそも天目も変な格好してるし、追っ手もなんか鎧姿だしなぁ。

 映画のロケ現場? と思いたかったが、天目の怪我も、追っ手の殺気も本物だというのは確かなようだ。
「……あ~、どうするかなぁ」
 現実感は湧かない。
 どうするべきかも思いつかない。

「あの、あなたはどこから来たの?」
 天目の疑問に、九峪は答えられない。
「それが分かれば苦労は無いんだが。やっぱりあれなのか? ここは異世界って奴なのか……」
「異世界?」
 九峪は不思議そうに見上げている天目の頭を撫でる。
「なんでもね。どうせわかりゃしないか」
 諦めたように呟く。

 九峪は辺りを見回して、立ち上がるともう一度天目を担いだ。
「さて、じゃあもうちょい逃げるか」
 そう言って走り出そうとした、
 足が止まる。


 ザッ

 土を踏む音。
 振り返った場所にいたのは、
 悪鬼の如き赤い髪をした、大柄な女だった。



「もう、逃げられない」














追記:
 またまた過去編突入。というか、物語の主幹を語るにははずせない本来序章に当たるべき部分だったりします。で、深川の話はどうなったって? その内出てきます。今回の過去編は長くなりそうな気もしますが、気がするだけで二、三回で終わるかも分かりません。相変わらずプロット無しで思いつき書いてたりしますからね。天目をもう少しヒロインらしく出してやろうという配慮もあったりなかったり。もっとも子供ですから色々とアレですけど……。


 アトガキはこの辺で、web拍手のお返事コーナー!
 まずはエイプリルフール分。二件連続で。

3:35 122333 なんていう数字をとってしまった。
3:36 ラッキーだなと思う今日この頃
 と頂きました。
 キリ番もどきを踏んだようですね。最近数が大きくなってキリ番が巡ってくるまでの周期が随分長くなりましたが……。そう言えばキリ番記念小説書いてないなぁ。余裕が無いので短編は全然手を出してないし……。ネタがあると編年紀か盛衰記に盛り込んでたりするのがその主な原因ですけどね。その内書きます。
 おめでとうございました。

 そして三件目ですが……

16:56 出雲盛衰記いつも楽しみにしています。っていうか、編年紀書きながらこっちも書ける貴方様を尊敬しています
 と頂きました。
 ご愛読頂いているようで本当にありがとうございます。今月はどれだけ書けるか分かりませんが、出来るだけ頑張って書こうかなと考えておりますのでどうぞ宜しく。実の所編年紀は二週間に一回くらいまとめて書いてたりして、最近じゃ盛衰記書いてる頻度の方が多いんですよね~。五十章くらいで完結出来ればと考えてはいるんですが、どうなることやら。
 コメントありがとうございました。

 続いて昨日の分のコメントに。
 お一人様三件の模様です。

13:12 「二人は火魅子候補である以前に~」って、二人ともそうみたいに聞こえてしまったわー。
13:13 「二人『にとって』は~」ぐらいの方がよくない?ない?な~い?
13:15 ということで十八、十九章の読後感想でした。どっかんどっかん。
 と、頂きました。
 言われてみればその通り。誤解を与える文章でしたね。と、言うことで修正させて頂きました。まぁ、この文章の内容自体本当にそうか? という疑問も無いではないのですが……、そこは深く考えないようにしておきましょう。
 コメントありがとうございました。

 さて、本日は久しぶりに直接コメントも頂いておりましたね。

深川がいつもおいしい役なのはなぜ?
 と、頂いておりました。
 そんなものは決まってますがな。作者が大好きだからです。と言うか、ああいう変態キャラが主人公に惚れるというシチュが大好きなのです。その気になったら深川のラブラブストーリーで十話くらい書きますよ、ええ。
 やはり好きなキャラの方が妄想も膨らんで話しも書きやすいですから、今後も出番が増えるんじゃないかと思います。他のSSじゃ瞬殺だったり出番が無かったりと不遇の存在の深川ですから、せめて作者だけでも贔屓し続けようと誓ったり誓わなかったり。
 ssさん、コメントありがとうございました。


 では、本日はこの辺でヾ( ̄◇ ̄)ノ)) バイバイ
【2006/04/03 19:14】 | 小説 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
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