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出雲盛衰記30
 出雲盛衰記
 三十章



 焼け落ちた出雲王宮。
 その周囲に展開した狗根国軍二万。

 囲まれるように出雲の民が集められ、その前方に作られた舞台に、出雲の王族や要人が並んでいた。

 一人ずつ、処刑されていく。

 幼い子供の手によって。

 たんたんと……


 舞台の端では東山が愉悦を浮かべてその光景を見ている。

 処刑を行うのは身内。
 大抵が子供。
 もしくは妻。

 出雲で強い力を持ち、今後反乱の芽となりそうな者達。
 無理矢理、親を殺させる。

 子供達は負い目を持つ。

 自分が殺したのだと。
 そんな自分が、何故復讐をするのだと。

 助命を懇願する親に、剣を振り下ろさせる。
 出来なければ狗根国兵が無理矢理やらせる。

 この凄惨な光景を、止めるものは一人もいない。



「くっくっく、これほどの愉悦がまだあったとはな。雅比古、誉めて使わすぞ」
「勿体ないお言葉で」
 九峪の顔に表情はない。

 自分が提言したことで起きている惨劇を、なんの感情も込めていない瞳で見つめていた。

「さて、いよいよ大取だ」
 舞台の中央に、王と王妃が引っ立てられる。

 出雲の民がどよめいた。
 その二人の前に、剣を持たされ立っている天目。


 東山は涙を浮かべている天目の方へ、歩を進める。
 九峪は舞台から少し離れた場所にいる魅壌の方を見た。
 軽蔑の眼差し。

 次に二人で会ったら即座に首を刎ねられそうだった。
 九峪はやれやれと肩を竦めると、視線を舞台へと戻した。

「娘。儂も鬼ではない。二親をその手に掛けるのは忍びないだろう。選ばせてやる。どちらかをお前が殺せたなら、もう一人は助けてやる」

 東山の外卑た囁き。
 すでに場の雰囲気に飲まれている天目は、その言葉に更に混乱する。

 いままで処刑された要人達も、処刑した子供達も、天目はよく知っている。
 泣きわめき、親を殺す光景。

 耐え難かった。
 でも、視線を逸らすことすら許されなかった。

 そして、今自分も。

 その時になって示される、儚い希望。

 だが、それは最愛の両親の、どちらかを選ぶという行為。
 どちらかを裏切るという行為。

「さぁ、どうする?」
 東山は楽しんでいた。
 幼い子供がどちらを選ぶのか。
 選べない選択の前に立たされて悩むのを。

 だが、停滞は東山の好むところではない。

 東山は王と王妃にも同じ事を言う。

 二人は視線を交わすことすらなく、死の恐怖すら見せず、毅然と言い放つ。

「天目、迷うな」
「私たちを、殺しなさい」

 二人は僅かな震えも躊躇も見せなかった。

 自分の子供に殺されると言うことを、受け入れていた。


 王族として、取るべき態度を、自覚していた。

 天目だけでも、生き残ってくれればいいと、そう願う親の姿だった。

「父上、母上……」


 そのことを理解して、天目の震えが止まる。

 東山すら呆れるほどの潔さで、天目はまず王の心臓に剣を突き入れた。
 痛みに目を見開きながらも、精一杯笑みを返す王。

 続いて王妃の首を掻ききった。
 王妃も穏やかに笑っていた。


 天目は両親の返り血をその身に浴びながら、目を閉じ、歯を食いしばった。

 最後に、止められるいとまも与えず、自分の事を貫こうと思った。

 潔く散ろうと、決心した。

 だが、声が聞こえた。

 それは、背を向けた両親の、最期の呟きだった。

 或いは、天目にだけ向けて放たれた、最期の呪か。

「「生きて……」」

 自分に突き立てようと、振り上げた剣を壇上に突き立てる。


「見事なものだ。自分の親に恨みでもあったか?」
 皮肉気な東山の声に、天目は感情のこもらない視線を返す。

「出雲を滅ぼしたのは私だ。この手柄は狗根国で高く買ってくれるんだろうな」

 子供とも思えない言葉に、東山は笑みを浮かべる。

「いいだろう。だが、お前が死ななければだがな……」
 天目は、東山のセリフを半ば無視して、壇上から降りた。


 これを持って、事実上出雲国は滅亡したことになる。



 処刑の終わった後、九峪と天目は東山の軍に連行される形で狗根国国都、山都に運ばれる。
 山都について直ぐに二人は薄暗い牢獄に投獄された。

 日の光も届かない地面の下で三日。
 天目は一度も口を開かなかった。


「いい加減飯くらい喰った方がいいぞ」
「……」
 九峪の差し出す残飯のような食料を、天目は払いのける。

「やれやれ、へそ曲げちゃって。しかしアレだな、とうちゃんかあちゃん殺したときは、なかなか勇ましかったよ。思わずほれぼれした。あれが泣きわめきながらだったら、あの場でお前も殺されてただろう。東山はそう言う奴みたいだったからな」
「……」
 九峪は軽い調子で天目の心の傷を抉る。

「お前、死ぬつもりだったろ。あそこで……」
 九峪は見透かしたように言う。
 天目は答えない。
 九峪も両親の敵の一人だと言う意識は拭えない。

「だが、止めた。なんでだ? それがどうにも分からない」
「……ら」
「ん?」
 小さな呟きに、九峪は首を傾げる。

「父上と、母上が、生きろっていったから……」
 掠れた声でそう言って、直ぐに顔を自分の膝に埋める。

「でも、それはきっと違う。私の思いこみ。自分が死にたくないから、二人が私の事を恨んでいることが怖かったから、だから聞こえたと思いこんでいただけ。死ねば良かった。死んでしまうべきだった。なんで、私、生きて……無様に……」
 嗚咽を漏らしながら、天目はため込んでいたものを吐き出す。

「……二人とも笑ってた。どうして? あの死に顔が頭から離れないの。恨んでないはずないのに、私のこと、失望しているはずなのに……。両親を殺せるような酷い娘なのに」
 親を殺した罪悪。
 消えないだろう。
 例えこの後の人生がどれだけ幸せでも、その暗い影は一生付きまとう。

 いっそ、壊れてしまえるほど、弱ければ、
 無視してしまえるほどに、鈍ければ、
 忘れてしまえるほどに、薄情であれば、
 それはどんなに楽だろう。

 でも、天目はどれでもなかった。
 強い女の子で、そして後悔出来る普通の女の子だった。

「ねぇ、私……どうしたらいい?」
 俯いたまま、呟く。

 九峪はため息まじりに答えた。

「んなもん知らん。そんな贅沢な話は、自分で人生が選択出来るほど余裕のある時に考えろ」
 九峪は現状を乗り切ることしか考えていない。
 東山に気に入られたかと思ったが、それでも投獄されていることを考えれば、機嫌が悪いという理由だけで直ぐにでも首が飛ぶ身。

 天目に至っては、いつ殺されてもおかしくない状態は変わっていない。

「三日くらい経つしな。そろそろ何かお達しがあると思うんだが」
「九峪は、自分が助かるためにあんな事を言ったの?」
 何かを期待するような、天目の瞳。

「命は惜しいからな」
 九峪は言い訳せずに認めた。

「でも、私が今生きてるのはあなたのその生き意地の悪さのおかげ……」
「勘違いすんな。お前が今のところ生きてるのは、お前の自信のおかげだ」
「でも、あのままなら一緒に処刑されてた。私は死にたくなかったし、九峪がいなければやっぱり死んでいたと思う」
「……なるほどね」
 納得したような九峪に、天目は首を傾げる。

 九峪は言うか言うまいか迷い、結局口を閉ざす。

 ――敵軍でたった一人でいたくないから、親の死に加担した人間であっても味方であると思いたがる。まだ十歳かそこらの女の子だもんな。親殺して正気保ってるだけで信じられんし。ここでそんな救いのない心理分析披露したところで、絶望死するだけか。ここは優しいお兄ちゃんでも振る舞うか。

 0.2秒ほどでそんな打算を働かせ、九峪は天目の隣に移動する。
 当惑顔の天目の頭を自分の方に引き寄せる。

「どのみちお前の両親を助けてやれなかったのも事実だ。恨んでくれてもいいぞ」
 九峪は天目が欲している言葉を選ぶ。
「ううん。ただ、九峪のせいで生き残ったのだから、責任……とって欲しい」
「少し眠れ。疲れてるだろ? ここにいてやるから。ずっと……」
「うん」
 寝息を直ぐに聞こえ始めた。

 九峪は天目の頭を撫でながら、どうやって生きて牢屋を出るかを考え続けた。














追記:
 ああ、次から次へと湯水のように話が湧いてくる~。と、言うわけでも無いのですが連続更新です。まぁ過去編は大体ぼんやり頭の中に構想があるので、それを書けばいいだけだからすらすらいっているとも言えますが。
 と言うことで三十章(なんと)でした。
 あ~、遂に三十章だよ。誰がここまで続くことを予想したでしょう。読み返すと矛盾だらけで嫌気が差します。特に年代なんて適当も適当。そもそも十五年前に出雲滅亡だと小説の時系列と異なるし。まぁ今更ですが……。その辺はいつか直そう。まぁ原作なんて尽く無視してオリジナルな展開ばかりなので、どうでもいいか。キャラも何もかも壊滅状態ですね。いっそ清々しいくらいに。
 で、処刑のお話だったわけですが、始めはもう少し湿っぽくてグダグダとした処刑風景を考えていたんですが、幼いとはいえ天目にそんなのは似合わないと書きながら思い立って、すぱっとやりました。すぱっとやりすぎて危うく自決させるところでしたが……。
 さて、次回辺りで深川が出てくるかな……。ん~、微妙。多分出てきます。九峪と天目の狗根国ライフをご期待下さいってそんな話にはならないかな~。


 ではアトガキはこの辺にして、web拍手へのお返事コーナー。
 昨日はお一人様五件と言ったところですね。

14:19 深川の小説…見てみたいです。
14:20 とはいってもあんまり手を広げるのも大変だと思うので
14:21 一段落ついたとかどうしても書きたくなったとかに
14:22 なったらでいいので書いていただけないでしょうか?
14:25 それでは編年紀も盛衰記もがんばって下さい。
 と、頂きました。
 深川の小説もみたいと。そう言えば深川のラブ話なら十話書けるとかホラ吹きましたね。いえ、あながちホラでも無いんですけどね。ご心配頂いているとおりこれ以上手を広げると死ぬので、盛衰記が終わったりしたら書きたいと思います。まぁ深川の話し書こうとしたら多分R指定に……(グロとエロ両面で)
 コメントありがとうございました。

 他にも叩いてくれた人たちに、幸あれと祈りを捧げたいと思います。



 では、本日はこの辺でヾ( ̄◇ ̄)ノ)) バイバイ
【2006/04/05 00:00】 | 小説 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
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