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出雲盛衰記31
 出雲盛衰記
 三十一章



 牢屋から出されたのは五日後だった。
 九峪は始め東山の元へ通されるのかと思っていたが、東山は既に泗国への遠征に向かったとかで山都にはおらず、九峪達は狗根国で一番厄介な人物に預けられていた。

 九峪は始めそれを見たとき、ぎょっとすると同時に呆れもした。

「なんで骸骨の仮面なんか……」
 始めそう呟いたが、直ぐにそれが仮面などではなく本物の顔であることが分かった。

 ――人間じゃねぇし。

 力無く心の中で突っ込む。
 骸骨……つまり蛇蝎は九峪達に選択肢を示した。

「元王家のものと、素性の知れぬ男。とてもではないが、そのまま軍に組み込むわけにはいかぬし、かといって何時までもただ飯を食わせておくわけにはいかぬ。お主等には己が運命を試して貰う。生きておったら仲間で、死んだらそれまでだ……」

 そう言うわけで、選択するのは神であり九峪達には処刑宣告とさほどかわりがなかった。

 ただ一つ、選べるものは……

「だが、それは普通に自害した方が楽でもある。どちらを選ぶか己等で決めよ」

 蛇蝎はそう言って悠長なのか何なのか、九峪達を妙な小屋に放り込んで去っていった。

 小屋、と見える場所には多くの子供と数人の大人が犇めいていた。
 九峪はなんとなく強制収容所みたいだなぁと、不吉な想像を巡らせる。
 実際その想像は当たらずとも遠からずだった。


 天目は久しぶりに見る大勢の人の姿に、始め戸惑っているようでもあった。
 九峪の身体に密着したまま、怯えるように周りを見回している。

 九峪は天目の手を引きながら、壁際に座る場所を見つけて腰を下ろす。
 これから何が起こるのかは想像も付かなかったが、ロクな事じゃないだろう。

 それからまた暫くして、黒衣に身を包んだ怪しい集団が入ってきた。

 近くにいた男が呻くように呟く。
「左道士……」
 九峪はなんの事やらと思いつつ、その集団を見ている。

 ぐるるるるるる

 獣の呻くような声が聞こえた。

 声は建物の外から。
 黒衣の集団が二つに割れ、入り口からのそのそと巨大な獣が入ってくる。

 醜悪な獣だった。
 人や猿のような扁平な顔に、禍々しく後方に伸びた四本の角。足は馬の蹄であり、尾はトカゲのように鱗に覆われ先端が丸くなっていて、トゲのようなものが飛び出している。腕は毛で覆われ鋭い爪が飛び出していた。

「魔獣!」
 ざわめきと悲鳴。

 九峪は青い顔で「おいおいおいおい」と呟いている。

 何が起こるかは九峪にも分かった。
 瞬時に理解した。
 希望的観測は即座に捨てた。

 だからこそ、すぐさまその化け物に向かって走った。

「く、九峪!」

 天目が名を叫んでいたが、九峪に止まる気は無かった。

 人混みから飛び出すと同時に、黒衣の男の一人に肉薄する。
 男は予想もしていなかったのか狼狽して一歩後退った。

 できたのはそれだけ。

 九峪は男の腰にある剣を奪い取ると同時に、まだ動いていない魔獣の首に切りつけた。

 魔獣は左道士が召喚する。

 召喚された魔獣は左道士の命令に従う。

 命令が無ければ動かない。

 これから起こる惨劇を一瞬で理解し、その理を知っていたのかは定かではないが、とにかく九峪はそれと決めつけ、先手を打った。


 だが――


 ギィン

 魔獣は予測通りに微動だにしなかった。

 九峪の剣は魔獣の首に確実に突き立てられた。

 それでも、九峪は魔獣がどんな生き物であるか、知らない。

 常人では、武器を持っても歯が立たない生き物だということなど、知るわけがない。


「嘘だろ……」
 悪い冗談だ、と言いたそうに半笑いの表情。

 剣は弾かれた。
 傷一つ付いていない。

 魔獣と視線が交錯する。

 そして横で左道士の無慈悲な命令が響いた。

「やれっ!」

 魔獣は九峪を見つめたまま、足をたわませると跳躍した。
 先ほどの攻撃は、九峪を敵と認識させるだけの効果すら得られていなかった。

 魔獣は子供達の中に飛び込み、凶悪な爪をもった腕を振り回した。

 一撃で、数人の子供が引き裂かれ、内臓をぶちまける。


 九峪は舌打ちすると左道士達を睨みつける。
 左道士達は何処吹く風と、直ぐに引き返して行った。

 唯一の出入り口は塞がれる。

 九峪は付け焼き刃にすらならない剣を早々に捨てると、天目のいるほうに走る。

 内心で蛇蝎の思惑を考えながら。
 ただ殺すつもりならば、ここに入る前に話した言葉に意味はない。

 ならばこれは選定。

 この状況下で生き残れるかを試しているもの。
 趣味の悪い、試験ということになる。

「天目!」
 九峪は叫びつつ天目を抱き上げると、魔獣の動きを見る。

 問題は幾つか。
 この場に誰も人を残していないと言うことは、生き残った何人かを選ぶと言うわけではない。

 おそらくは時間。

 どの位かは知らないが、あちらが決めた時間を逃げ切らなければならない。
 敵は一匹だが、その行動を予測して、生き残らなくてはならない。

「……!」
 天目は阿鼻と叫喚の地獄の中で、硬く目を閉じて九峪に抱きついている。

 九峪は魔獣を見つめる。

 その動きをじっと。

 魔獣は相変わらず逃げまどう子供達を追いかけ回し、肉塊に変えては爪に引っかかった肉の切れ端をついばんでいる。

 九峪の視界の端に、他の子供の内臓や血をぶちまけられて、放心している少女が映る。


 魔人は目の前のそれを無視して、大きな群れへと向かっていく。


 それを見た瞬間、九峪の頭に天啓が舞い降りた。


「迷ってる暇はないか」

 九峪は呟くと、魔獣の死角から少女の方へと走った。




 随分と長い時間が経過して、重々しく扉は開かれた。

 広い空間の中に魔獣が人間だったものを咀嚼する音だけが不気味に響いている。

 他に、動くものはない。

「やはり、だれも生き残らんか」
 左道士の一人がため息混じりに答えた。
「そりゃそうでしょう。何も知らない子供や罪人共じゃ逃げ切れませんよ」
「そうだな。よほどの運でも無い限り」

 左道士達は魔獣を引き上げさせ、それと入れ替わりに兵士を入れて死体を片づけさせる。

「う、うわああ!」

 その兵士達の一角で悲鳴が上がった。
 何事かと左道士が駆けつけると、血やはらわたにまみれたものが動いている。
「な、生き残りがいたのか!」
 左道士が驚愕している傍らで、九峪は抱えていた二人の少女を下ろす。
 頬に張り付いた肉片を払いのけると、盛大にため息を吐いた。

「あ~、しんど。もうちっと早く来てくれても良かったんじゃないか? 動かないってのもなかなか疲れるんだぜ」

「ば、馬鹿な……。なぜ、生きてる」

 九峪は肩を竦めてみせる。
「あの魔獣、あんまり目が良くないみたいだな。そっちの女の子が血を被って放心してたら襲わないのが見えてな。だから俺も同じ事したってわけ。多分臭いもただの肉と紛れて消えるから、殺した奴との区別が付かなくなるんだろうな。そんだけ」
 軽く言ってのける九峪だったが、左道士は信じられなかった。

 確かに九峪の言っていることは当たっている。しかし、周りで殺戮が行われている中で、冷静に血を被って微動だにしないでいる事が普通の人間に出来るわけがない。

「カカ、やはり、生き残ったか」
 不気味な声が響く。
 兵士達と左道士達は、一斉に声の方を振り返り、そして叩頭する。

「……しかし、死んでおった方が楽だと教えておいたはずだがの」
「往生際が悪いんだよ」
「カカカ、愉快な男じゃ。ならば次の試練へと参ろうか」

 蛇蝎は部下に言って九峪と生き残った少女二人を拘束させると、そのまま連行する。

「せめて、身体くらい洗わせて欲しいもんだが」
「その格好で無くば、次の試練に不都合でな」
「いい予感はしないなぁ」

 無駄話を続けながら、九峪達は禍々しい空気を発する建物に連れてこられる。


 蛇蝎は笑いながら言った。

「生き残れたら、お主等も狗根国の狗じゃ……。せいぜいあがく事じゃな」

 そこは玄武宮と呼ばれる場所。



 ――魔界への、途が開く場所。













追記:
 蛇蝎の腐れとの初めての出会い、みたいな三十一章でした。しかし何者なのか九峪は一体。死体を被って平然と。頭おかしいですね。おかしいと思いますよね? でも、次回はそんな九峪がちょっと人間らしく振る舞うようなハートフルなお話になる……かも……(嘘くさ
 まぁ、何というか今やってる過去編で一番書きたかったのは次回の話な気もするけど、微妙に長くなりそうな気配が……。一文たりとも書いてないので気がするだけですけど。
 そう言えば九峪が成り行きで救った(?)少女は誰なんでしょう。って、前回出すと言ってた奴なんですが、自己紹介をのんびりやる空気でもなかったので、名無しのまま終わったりしてしまいました。次回も名無かも……。



 と、まぁアトガキはこの辺で終わらせておいてと。

 web拍手のお返事コーナー♪
 水曜(実は火曜だったけど)に、木曜日分まで先出ししたので水曜分からになりますね。
 まずは三件まとめてでっす。

1:52 グロとエロ、両方有る・・・じゃあ一言で表現してみよう。
1:53 ちゃんサマのゲロ話(18禁)。 ・・・とっても怖いネ~
1:54 しかもそれを10話以上。 ・・・凄いお人じゃぁ・・・
 と頂きました。
 ゲロって……。一言で言わない方がいいですね。響きが悪いですよ。グェロとかにするとかえって生々しい響きになる気もしますが……。どうでもいいか。ちゃんサマでツンデレな感じな話しになると思うんですが、あの人出すと大体シャレにならないところまでツンツンで、そこからデレに変わりますから。ツンによる犠牲者がどの位になるかでグロの割合が変わりますね。まぁ、亜衣と絡ませたりとか色々妄想中ですが……。
 書きやすさを追求すれば幻聴記のキリ番で書いた深川の話の続きをダラダラと書くのが良さそうですけど。それ書くならその前に幻聴記の続きを書かなくちゃなりませんね。あ~、う~、それは~……

 そして昨日の分。一件です。

21:15 なんだかスれてない天目が異様に可愛いのは気のせいですかそうですか。リアリスト九峪もガンバれ
 と頂きました。
 名前伏せたら誰だか分からないですね。ま、天目も始めからあの性格だったわけじゃないでしょうし。すれてない頃はめんこい女の子だったんです。前回とか今回とか次回とかでどんどんトラウマが増えて性格がねじ曲がっていくんだろうなぁ(遠い目 九峪は次回、ご声援に応えてえらい事になります。
 コメントありがとうございました。


 他にも叩いてくれた人全員に健康祈願のお祈りを!



 では本日はこの辺でヾ( ̄◇ ̄)ノ)) バイバイ
【2006/04/07 00:38】 | 小説 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
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