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出雲盛衰記32
 出雲盛衰記
 三十二章



 それは不気味な神殿だった。
 採光のための窓もほとんど無いため昼だというのに薄暗く、梁や柱には気味の悪い彫刻が彫られている。奥の方からはまるで人の悲鳴のような、不気味な音が鳴っていた。

「気色わりぃな」
 九峪は顔をしかめたがそれだけ。
 少女二人は九峪に左右からぴったりとくっついている。

「ここは玄武宮と言ってな、魔界への裂け目があるところだ」
「魔界……ねぇ」
 九峪も今更魔界くらいで驚きもしなかったが、あまりいい響きのしないその言葉に、顔をしかめてみせる。

「まぁ、裂け目と言っても、そこから魔人が好きに出入り出来るわけでも無し、ただそこにあるだけならばなんの事はない」
「いいねぇ、何のことも無ければ」
「カッカッカ。もちろん何事も無いのであればお主等にも用は無いわな」
 機嫌が良さそうに笑っている蛇蝎。
 その足が、一際不気味な扉の前で止まる。

 そこにあるのは石の壁。
 中央から人の裸体が飛び出している。
 蛇蝎が何事か唱えると、脳天に亀裂が入り、不気味な苦鳴とともに身体が二つに割れて石の壁が左右に開く。
 どうやら扉のようだ。

 二つに開かれた扉の前で蛇蝎は振り返ると、その窪んだ眼窩の奥にある瞳で九峪を見つめる。
「この中に魔界への裂け目がある。お主らは、そこから溢れるておる黒き水を飲むのだ」
「それだけか?」
「カカ、そう、それだけだ」

 九峪はちらりと後ろの方を見る。
 周囲を囲む左道士達。
 とても逃げ出せる状況ではなさそうだ。

 ため息を吐くと足を踏み入れる。
 真っ暗な部屋に入ると、不気味な音が響いて扉が閉じられた。
 一応戻れるか試してみるが、そこには石の壁があるだけで、継ぎ目など何処にも無くなってしまっている。

「進むしかないか」
 呟いて奥へと進む。
 足下も見えないような暗闇の中、奥の方は僅かに明かりがある。



 柱が円状に二十四本立ち、その内側に八つの燭台が置かれている。燭台に灯された炎は青白く、暗い。そのため結構な高さのある天井は見上げても分からず、柱も闇に消えていた。
 燭台は円形の池を囲むように置かれている。
 暗い部屋では水深がどれくらいあるかも分からないが、半径三メートルほどの池。
 その中心に水に濡れた祭壇が鎮座していた。
 黒曜石で出来たような黒光りする祭壇。
 その上に、闇がある。
 闇という意外に表現のしようもないもの。
 そこだけに黒い霧でも発生しているように、不自然に闇が広がっている。

 水はその闇から溢れ、祭壇を伝って下の池へと落ちている。

 蛇蝎が言っていたのはその水のようだ。


 おおおおおおおおおおおおおん


 不気味な音が響いている。
 闇の向こう側から。
 天目ともう一人の少女は、怯えて九峪にしがみついたまま目を閉じている。


「よう分からんが、この水を飲めばいいんだな」
 九峪はやれやれと思いながら、池の横に膝を着いて水を掬おうとして手を出す。

「いいのか?」
 声を掛けられ顔を上げる。
「誰だ?」
 天目でも少女でも無い声。
 柱の影から赤い髪の女が出てくる。

「魅壌。なんでこんな所に」
「お前等が蛇蝎の元に預けられたと聞いて、先回りしていただけの事だ。それより魔界の黒き泉がなんなのか知っていて飲もうとしているのか?」
「いや、知らんが?」
 魅壌は呆れたようにため息を吐く。

「その水を飲めば、十中八九死ぬ」
 九峪は慌てて池から離れる。
「そう言うことは先に言え」
「……だが、生き残れれば強大な力が手に入る」
 魅壌の言葉に九峪はじっと水面を見つめる。

「ありがちな設定だな……」
 ぽつりと呟いて頭を掻く。
「どのみち生き残って見せなければ、生きてここを出られんのだろう? 今のままノコノコ出て行って無事に脱出出来る公算もないし、それなら一か八かに賭けた方が懸命とも言える」
「正気か?」
「はぁ~」
 九峪は大げさにため息を吐く。

「魅壌ちゃんさぁ~、あんた一応俺たちの敵でしょ? それともこの状況からあの蛇蝎と戦って救い出してくれるとでも言うのか? 何が気に入らないのか知らないけど、余計なお節介でしかないと思うんだけど」
「……救ってやろうか?」
 九峪は魅壌の真意が分からず首を傾げる。
「出来るのか? というか、そんな事して何かいいことあるのか?」
「私は龍神族。仙人だ。魔人を使う狗根国も、この場所も、好きでいるわけではない。狗根国にいるのも人質を取られて仕方なくだ」
「ふ~ん。それで? 人質を救い出せる公算でもついたのか?」
「いや。人質など、おそらくもう……」
 一瞬悲しげな表情を見せた魅壌。

「きっかけが欲しかった。ただそれだけだ。お前が助けて欲しいというなら、私は全力でお前を助けよう」

 九峪は暫く見えない天井を見上げながら考えていた。
 そして随分経ってから魅壌に手招きをする。

「なんだ?」
 直ぐ横まで来た魅壌に、天目ともう一人の少女を渡す。
 二人は当惑したような表情で九峪を見ていた。

「連れてく余裕があるなら若い方から順にだな。俺連れて行くのもガキ連れてくのも、足手まといという点には変わりないだろうしな」
 魅壌はちょっと驚いた顔だった。
「血も涙も無い奴だと思っていたが……」
「生憎とどっちもある。蛇蝎がそれなりに興味があるのは俺だけみたいだし、ガキ二人が逃げても大した追っ手はかからないだろうしな。色々都合もいいだろう」
「……そうだな」

「じゃあ、さっさと行けよ」
「――死ぬなよ」
 魅壌はそう言って二人の少女の手を引き、踵を返す。

「待って!」
 叫んだのは天目。
 九峪に抱きつくと泣きそうな目で九峪を見据える。
「……離れたくない」
「天目。生きてりゃそのうち会える。死んじまったらどうにもならんだろう」
「嫌だ! 絶対に! だって、このままじゃ九峪死んじゃうんでしょ?! そしたら会えなくなるじゃない!」
 九峪は困った表情を魅壌に向ける。
 魅壌は肩を竦めてみせる。
「……嫌だよぉ。もお、誰も失いたくない」
「縁起悪いな。確実に死ぬと決まったわけでもないだろ」
「だけど……」
「お前に死なれたら、俺はお前の父ちゃんや母ちゃんに顔向け出来ないんだよ。お前を救うために犠牲になって貰ったんだし」
「そんなの知らない! 私は頼んでない!」
「駄々をこねるな」
「九峪も、一緒に逃げようよ! どうせ一か八かなら、それだっていいじゃない。ね、そうしよう」
 
 必死ですがる天目。
 始めと一緒だなと、九峪は思う。
 何と言うか決めずに、九峪は口を開く。
 期待する、天目の表情。

 その期待も裏切られる。

「カッカッカ」

 九峪でも、魅壌でもない、その笑い声で。



「踏ん切りが付かぬなら、強制的に飲ませてやるまでよ」


 骸骨が、闇の中に浮かび上がった。














追記:
 どこがハートフルやねん! と突っ込んだ方は挙手して下さい。嘘です。微妙にハートフルでしたよね。きっと。どの辺がと言われると困ります。そして、今回ですんなり魔界の黒き泉を飲む予定が狂ってしまいました。次回に持ち越し。ああ、何処まで続くのか~。
 そう言えば謎の少女が一言も口をきいてませんね。いい加減自己紹介くらいしろって話なんですが、次回もそんな暇は無いような気がするので、さらにその次になりそうな予感が……。



 さて、ではweb拍手紹介のコーナー♪
 3/8は二名様三件ですね。始めの一件目。

9:57 ア○ゲ△×……ああ、○×・ゲ△ツかぁ、なつかすぃ~
 と頂きました。
 あ、ネタに反応してくれて嬉しいです。分かる人には分かるでしょうが、あの数年に一度単行本が発売される漫画が元ネタですね。前発売してから一体どれくらい経ってるんでしょうか。続き読みたいヨ~。
 コメントありがとうございました。

 続いて二件連続!

15:53 オリジナルの「こーどぶるー」読みました。凄く面白かったです。
15:53 月一で出されるという事なので、来月も楽しみにしてます。
 と頂きました。
 ちなみに「こーどぶるー」ではなく「こーるどぶるー」だったりします。まぁ、題名がなんでそうなのか意味不明な上に、コードブルーは作中で出てくる単語なので間違われるのも無理はありませんね。ちなみに主人公の二つ名が「絶対零度の蒼白」だからなんですが、その二つ名が出てくるのは結構先の話だったりして、この時点じゃ何の意味もありません。まぁ、題名をその回毎に活躍する人とかの二つ名から付けてたりするのでこうなってます。いらない話でした。
 ついでですので作品の大まかなあらすじとかを書いておきますと、OLSという何かの作品のパクリの学園というか研究機関と言うかそんなものがありまして、主人公が女子寮の管理人という何処にでも転がってそうな設定。ある日、幼なじみの琴名枯朱美(ことなかれしゅみ)に幽霊屋敷と俗に言われる講義に付いてきて欲しいと頼まれます。で、着いていった先で殺人事件が! というミステリみたいな展開で主人公が謎解きをするシーンもあります(かといって推理ものとして読むようなものではなく、雰囲気だけですが……)。
 まぁ、あんなのでも続きを楽しみにしてくれる人がいると思うと嬉しいです。来月分は、ゴールデンウィークの関係でもしかしたら四月後半に出すかもしれません。何というか作中の日付がGW中の話なので。出来るだけ同じ時期に出そうかなと。ちなみに題名は「ニオイスミレ」です。
 コメントありがとうございました。

 日曜日分は無し。叩いてくれた人本当にありがとうございます!



 では本日はこの辺でヾ( ̄◇ ̄)ノ)) バイバイ
【2006/04/10 00:00】 | 小説 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
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