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出雲盛衰記33
 出雲盛衰記
 三十三章



「カッカッカッカッカ」
 不気味な笑いと共に天井から舞い降りてくる蛇蝎。
 中空で停止すると、九峪達を見下ろす。
「魅壌。これはどういう事かな? 狗根国を裏切るというなら、お前の同族は今日にでも滅びるが……」

「黙れ外道! 仲間など、とうの昔に殺したのだろう!」
「さて、どうだったかな。歳を取ると物覚えが悪くなってしまう。はてさて、龍神族はどうしたのだったか」
 わざとらしく考える素振りを見せた後、黙って黒き泉を指さす。

「そう言えば、そこに沈めてやったかの。カッカッカ」
「貴様ぁっ!」
 魅壌は腰の鞭を引き抜くと蛇蝎に向かって振るう。
 蛇蝎は天井の闇に消え、不気味な笑い声だけが響く。
「カカ、丁度良いからそこの奴らの試練ついでに始末してくれよう」

 蛇蝎がそう言って不気味な呪文を詠唱すると、祭壇の上にある闇が蠢いた。

「な、なんだ?」
 混乱する九峪の目の前で、闇から溢れる水の量が唐突に増える。
 どんどんと増えていって池には入り切らなくなったものが、部屋の中に溢れ始めた。
「く、まずいな」
「何がだ?」
 魅壌は少女を抱き上げて自ら逃げるように後退る。
「お前等人間ならば、万に一つの確率で適応できる可能性もあるが、仙人の私には魔界の黒き泉はただの猛毒だ」
「ああ、そりゃお気の毒。だったら逃げた方がいいんじゃないか?」
「蛇蝎の監視がある中で、逃げおおせられるわけもない」
「一人なら何とかなるだろ」
 九峪は天目を抱いたまま魅壌の方に行くと、少女を受け取る。

「……いいのか?」
「いいも悪いも無い。元々あんたには何の関係もない事だ」
「いいから行って。生きて、いつか私たちの仇をとって」
 やる気の無い九峪と覚悟を決めた天目に、魅壌は一言すまないと言い残して闇に消える。

 九峪は部屋の隅まで行くと、僅かな凸部に二人を押し上げる。
「九峪も、早く!」
 天目はそう言って手を引くが、九峪はその手をふりほどく。
「俺はいいから、落ちないように気をつけろよ」
「九峪!?」
「俺の体格じゃそこには上がれない」
「でも、このままじゃ!」
「ま、ここは運試しだな」
 足下に押し寄せる黒い水。
 じんわりとスニーカーにしみこむ。

「あ、冷た――――」
 九峪の顔が強ばる。
「九峪!」
 顔中にびっしりと脂汗を掻き、壁に背中を預けると俯いたまま必死に何かを耐えている。

 ――ああ、最悪だなこれ。

 全身を引き裂くような激痛。
 足下からはい上がってくる得体の知れない感触。

【お前の身体をよこせぇええ】
【くるしぃいいいい】
【助けてぇええ】
【ぎゃあああああ】
【死ねぇえええ】
【この身体から出ていけぇええ】
【いやあああああ】
【殺してやるぅううう】
【うえええええん】
【邪魔だああああ】
【くたばれぇええええ】

 恨み辛み、妬み嫉み、怒り悲しみ、欲望と絶望。
 頭の中にあらゆる負の感情が湧き上がり、九峪の自我を責め立てる。

「ぐ、ぐあ、ああ……」

 頭を抑え、必死で耐える。

「九峪! 九峪!」
 泣きそうになりながら叫ぶ天目。
 名も知らぬ少女は九峪の様子をみておろおろしている。
「カカ、よう耐えるのう。常人であれば一瞬でとり殺される所を」
「……九峪を助けて!」
「助ける? カカ、そうだのう。お主等が代わりに泉に入るというならば、助けてやらんこともない」
 蛇蝎はそう言って天目の前まで下りてくる。
「どうする? 迷っておればその間に九峪が死ぬぞ」
「本当に、助けてくれるのね」
「誓おう」
 天目は、躊躇無く飛んだ。

「……この、馬鹿っ!!」
 九峪は気合いを振り絞ると、天目を抱き留める。
「九峪!」
「てめぇ、そこの骸骨が本当に約束守るとでも思ってるのか? テンパってんじゃねぇ!」
 再び押し上げられ、天目は涙に濡れた顔で九峪を睨む。
「だからって、このままじゃあなたが!」
 叫ぶ天目をひと睨みして騙させると、九峪は蛇蝎を見上げた。

「おい、クソ骸骨。こんなぬるま湯で俺が死ぬとでも思ってんのか?」
「カカカ、まこと面白い男じゃ。よう口がきけるのう」
「――俺は死なねぇ。だが、ここで力を得ても、このガキ二人にお前が手を出してたら、俺はてめぇらに手を貸さねぇからな……」
「ほう。いっぱしに儂と交渉しようと言うのか?」
「別に、聡明なクソ骸骨様なら、弱みは残しといたほうが人は使いやすいって事くらい分かると思うんだがな」
「カカカ、まぁ良かろう。確かに縛る鎖はあった方が良い。じゃが、お主が死したらその瞬間にこの娘達の首をはねるぞ」
「好きにしろ」
 蛇蝎は高笑いと共に闇に消える。

「――ぐっ! あぁあああああ!」
 同時に叫び声を上げる。
 蛇蝎がいなくなっても泉は引かない。
 それどころか水深がどんどん上がっていき、今ではもう膝まで浸かっている。
「くそ。大見得切ったのはいいが、めちゃ痛てぇ。っぐぅ」
「九峪! しっかり」
「天目。そっちの嬢ちゃんが落ちないようにちゃんと見てろよ。飛び込みやがったら俺が痛い思いする意味がないからな。お前が守るんだ」
 しっかりと頷く天目。

 九峪はそれを見ると、壁に寄りかかったまま身体を沈ませる。
 暗い意志が、まるで水と共に染みこむように九峪の中を満たしていく。

 激痛を通り越して体中の感覚が消え失せ、次第に意識ももうろうとしてくる。

 ――死ぬ……か。死ぬのか? 俺。

 ――しかし、なんでこんな場所に来たのかも分からずにお陀仏かよ。間抜けだなぁ、おい。

 ――しかもなにかっこつけてんだって話だよな。馬鹿か俺は。ガキ二人救ったところで何の得があるわけでも無いっつーに。

 ――あ~、眠い。寝たら死ぬな。

 ――ま、いっか。



 ――……





 ばしゃん


 九峪の上半身が傾いで、水面に叩き付けられる。
 鼻と口から水が入ってきて、思わずむせる。

「がはっ、ごほっ、げほっ!」

 魔界の黒き泉が、九峪の体内に取り込まれた。


「が、がああああああ! ぐぎいいいいいい!」
 獣のような咆吼。胸をかきむしりながら、のたうつ。

 壁際から離れ、柱の一つに取り付くと、思い切り頭を叩き付ける。
 爆発したような音が響き、一抱え以上ある太い石柱にヒビが入った。

「あがぁああああ!!」

 血を吐くように叫びを上げて今度は腕を叩き付ける。
 拳が石柱にめり込み、叩き折られた。

 ――ク ル シ イ

 意識が、明滅する。

 ――イ タ イ

 両腕が黒く変色し、五指が巨大なかぎ爪のように鋭く変形していく。

 ――タ ス ケ テ

 赤黒く血のように輝く瞳。
 必死で叫んでいる、少女を捕らえる。

 瞳があった瞬間、愕然としたように目を見開き、隣にいる少女のように震えだした。

 ――タ ス ケ テ

 人に在らざるものになった九峪は、救いを求め、狂気に溺れ、少女へと、飛んだ。

 闇の中で、髑髏が笑う。

「儂は、手を出さない。必要もないしな、カッカッカ」


 鮮血が、九峪の身体に降り注いだ。














 ぴちゃ


 ぴちゃ



 血と、黒い水が混じり合い、したたり落ちる。
 恐怖に引きつった顔を浮かべる少女。

 苦痛に、顔を歪める天目。

 九峪の鋭い爪が、天目の肩口を貫いている。

「――っ! もう、大丈夫だから……、落ち着いて、九峪」
 天目は目の前で固まる九峪の顔に、腕をまわす。
 九峪の髪に付いた黒き泉が、天目に浸食して苦痛を与える。
 天目は、気丈に笑顔を見せると、九峪の頭を撫でた。

「私が、ずっとついていてあげるから」
 天目の小さな唇が、九峪のそれと重ねられる。

「……っあああ!」
 全身を引き裂く苦痛が、今度は天目を襲う。
 小さな少女の悲鳴に、深紅にそまっていた九峪の瞳が、次第に元に戻っていく。
「……天目?」
 苦痛に顔を歪めている少女の姿が、九峪の目に映る。
 慌てて離れようとすると、か弱い力で天目はそれを止める。
「離れないで。もう、二度と……」
「……約束しよう」
 九峪はゆっくりと後方に倒れていき、天目も九峪に抱きついたままゆっくりと水面へと落ちていく。

「……」
 二人の姿が水底に消え、一人残された少女は不安そうにきょろきょろと辺りを見回した後、自らも勢いよく飛び降りた。














追記:
 三十三章書き上げましたでございます。なーんか、あんまり上手く書けた気がしないなぁ。一応この過去編最大の見せ場のはずだったんだけどなぁ。まぁ九峪君もじたばた頑張ってはみたものの、結局三人仲良くドーピングです。しかしまぁ、相変わらず謎の少女が謎のままですね。セリフもないし。何のためにいるのか存在意義が分からなくなってきました。特に今回は蚊帳の外の感じが強かったし。まぁ、いいや。出番のないヒロイン救済の為の過去編だから、天目が健気に頑張ればそれで……(投げやり
 で、過去編は今回で山場が終わったと言うこともあって、次回で終わりになるよ~な気がします。その次からはいよいよ元の時間軸に戻るわけですが、相変わらず何も考えてません。深川が宙ぶらりんなのでその辺をどうにかしないとなぁと漠然と考えてはいますが。無視されたら深川だからね、と言うことで納得して頂くほかありませんが……。


 では、web拍手のお返事コーナー♪
 昨日は二名様三件ですね。
 まずは二件連続。

2:17 23巻は2004/3/31だったはずなので、もしかしたらもうすぐ出るんじゃないかなー?
2:18 ワイドとか小説抜きで本編だけ数えると16年で23冊。すごいよこのまんが!さすが(ry
 と頂きました。
 出るんですかねぇ、アレは。UJに掲載誌が移ってから、それほど連載されているのを見た記憶も無いんですが。二、三回じゃ無かったかなぁ。ページ数も別に多かった記憶はないし。何よりPCに取り込む前の下絵(?)かなんかの状態で掲載されてたしね。まぁ、文字だけでコマを埋めて次回に引っ張ってたこともある方ですから、絵が在るだけマシなのかも分かりませんが。ぶっちゃけ、完結することは諦めているので出ても出なくてもどうでもいいんですけどね。
 コメントありがとうございました。

 続いてもう一件。

19:58 ほんのちょっと、気まぐれ的に主人公っぽくなりましたね(笑 次節で変なの飲まされそうですが>九峪
 と頂きました。
 気まぐれ的に主人公っぽいって、そんな風に言われたら九峪が悲しみますよ~。って、そういうキャラでもないですけどね。本編ではただのスケコマシですから。
 今回変なもの飲まされそうって言うか、全身浸かって水浴びまでしてる有様ですからね。いい加減身体に悪そうです。次回で死んでたりして(マテ
 コメントありがとうございました。

 他にも押してくれた人に届け! 作者の熱き思い!




 と、言ったとろこで今日はお開き。ヾ( ̄◇ ̄)ノ)) バイバイ
【2006/04/11 00:00】 | 小説 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
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