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出雲盛衰記38
 出雲盛衰記
 三十八章



 川辺城の上空に飛竜が現れ、それに羽江が連れ去られたことで、特に宗像神社の関係者達は大きく動揺した。
 直ぐに追走すべく、巫女が数名飛空挺を背負って飛び立とうとしたが、亜衣がそれを許さなかった。

「なぜです、お姉様! このままでは羽江が! あの娘は何も知らないんですよ。宗像の巫女だとばれた何をされるか」
「落ち着け衣緒。それに無駄だ。所詮飛空挺では飛竜はどうあっても捕らえられん。空中であの化け物によもや勝てるつもりか? それに、龍神族とてお前の手には余る」
「わかってます! だからと言って妹を見殺しにしろと言うのですか!」
 取り乱す衣緒。亜衣はやれやれと肩を竦める。

「羽江の身を案じるなら尚更止めておけ。助かるとすれば、あの天然娘が何も知らないと言うことで、あちらが手を出さなかった場合だけだ。逆に追っ手がかかれば人質として扱われる可能性もある。放っておくのが一番あいつの為なんだよ」
「……実の妹の事だというのに、あなたという人は……」
 衣緒は鼻息も荒く下がっていく。

 亜衣はやれやれとため息を吐き、仕事に戻る。
「本当にいいの?」
 気のない声は後ろから。窓際に腰掛けて外を眺めている星華だ。
 亜衣は仕事の手を休めることなく答える。
「龍神族がまだ残っているとは計算外でしたが、残っていてもそれ一匹でしょう。何が出来るわけではありません」
「……私が聞いてるのは羽江の事なのだけれど」
「心配ですか? 星華様」
 星華は当然でしょうと、眉をそばだてて答えた。

 亜衣、衣緒、羽江の宗像三姉妹の母親と、星華の乳母は同じ女性。いわば乳姉妹。自分の地位を脅かす人間に対しては冷酷非情な星華も、妹のこととなれば平静ではいられない。
「私も衣緒も、事の顛末をそれほど詳しく知っているわけではないけれどね、それでも龍神族がどれほど宗像連中を恨んでいるかくらいは想像に難くないわよ」
「厄介なことですね。ちゃんと皆殺しにしておけば良かったもを」
 冷めた声でそう言いきる亜衣。星華は背中に嫌な汗を掻きつつ、その場を辞する。
「本当に、使えないな」
 亜衣は、もう一度ため息混じりに呟いた。



 翌朝、何事も無い顔で羽江は帰ってくると、誰彼構わず魅土とまーくんの事を話して回った。
「でね、龍神族と飛竜を狗根国に売った人がいるんだって。復興軍で懲らしめようよ、衣緒お姉ちゃん」
 妹が無事に帰ってきたことに喜んでいた衣緒だったが、さすがに羽江のこの言葉には返答に窮した。本当のことを告げれば、羽江は傷つくだろう。
「そ、そうね」
「でしょ~? 亜衣お姉ちゃんなら何か知ってるかなぁ」
「……羽江」
 無邪気な妹を抱きしめる衣緒。
「ん? どうしたの?」
 衣緒は、迷いつつ、やはり告げなければならないのだと覚悟を決めた。
 だが、その時計ったかのように亜衣が現れた。

「お姉様」
「え、亜衣お姉ちゃん?」
 衣緒の拘束から解かれると、羽江は亜衣を見つめる。
「羽江、そこに座れ」
「ん? うん」
 素直に座ると、亜衣はその前に腰を下ろした。
「お前にも言っておかなければならないことがある」
「何~?」
「龍神族の事だがな……」
「あ、それそれ。ねぇいま衣緒お姉ちゃんにも話してたんだけど……」
「狗根国に売ったのは私だ」
「へ?」
 羽江は言葉の意味が飲み込めず、首を傾げる。

「当時、耶麻台国には狗根国と戦争するだけの力は無かった。少しでも時を稼ぐため、かの国の王が所望していた飛竜の居所を教えてやる事を進言したのだ」
「……嘘」
 思い出す、寂しそうな魅土の横顔。
 亜衣は、真摯に羽江にその事の必要性を教えたが、羽江の頭には一つも入ってこない。
 どんなお題目や大義名分も、魅土と先に知り合ってしまった羽江には、届かない。

「……だから、しかたがなかったのだ」
「何が仕方ないだよっ! 魅土一人ですっごく寂しそうだった! なんで、なんでそんな酷いことしたのさっ!」
「羽江。耶麻台国の為だったんだよ」
「知らないよっ! 結局滅んだんじゃない! そんな、そんな事するような国だから、滅ぶんだよっ! そんな国、私いらないっ」
 叫んだ羽江の頬を、亜衣が思い切り叩いた。
「羽江、興奮しているのは分かるが、言葉は選べ」
 殺気すら籠もった亜衣の言葉に、羽江はまなじりを釣り上げてにらみ返す。
「……私、お姉ちゃん達が死んだら、悲しい。復興軍のみんなが、宗像神社のみんなが死んだら悲しいよ。考えただけで、胸が締め付けられる。亜衣お姉ちゃんは、違うの?」
「違わないさ。だが、国そのものが滅びれば、それ以上の悲しみが増える。事実、お前だって見てきただろう?」
「……そうだね」
 羽江は頬を撫でながら、その場を後にした。
 やるせない気持ちで、一杯で……。



 羽江は泣きながら飛空挺に乗って、魅土を探した。
 何も知らずに酷いことを言ってしまった。
 そのことを謝りたくて。出来るなら、自分の姉を許して欲しくて。
 羽江は知っている。亜衣がどれだけ耶麻台国復興の為に力を尽くしてきたか。
 そのことで、行きすぎてしまった事がかつてあっても、不思議ではないと思えるほど。
 許してくれるわけはない。それもわかる。
 だけれど、どうしても、申し開きがしたくて……

 魅土と一緒に野宿をした場所。
 しかし、魅土の姿はもう何処にも見えなかった。
 手がかりはない。
 まーくんに乗って移動している魅土を探すなど、羽江一人では到底不可能だ。
 絶望が心にしみ出し、羽江はまた泣いた。

 その泣き声を聞きつけたのか、近くをたまたま通りかかった者がいた。
「あの声は、羽江?」
 声を上げて泣いていた羽江。背後に立たれてもその気配には気づかない。
「おい、羽江。どうしたんだ? こんな所で」
「え?」
 驚いて振り返る。
 そこに立っていたのは、死んだはずの……
「ふ、藤那様? あれ? どうして」
「死んだとでも思っていたのか?」
「え、うん」
「生憎だったな。だが、弱ったな。まだ星華達に生きていることを知られるわけにはいかないし」
「どういう事?」
「どういう事も何もない。星華は私を殺すつもりだったんだ」
「嘘。星華様がそんなこと……」
「私だけじゃない。伊万里なんかもっとあからさまにな。護衛に付いていた奴らに殺そうとされたらしい」
「……」
 伊万里については羽江も聞いていた。

 でも、亜衣が言うには魔獣に襲われて部隊が全滅したと言うことだった。
 そのことを話すと、藤那は首を横に振る。
「そういう風に思わせるようにしただけで、まだ生きているよ」
 分からなくなる。何もかも。
 自分が信じていた姉は、一体何なんだと。
 敵であるならばともかく、なぜ、味方である藤那や伊万里を殺そうとするのか。

「それだけじゃない。宗像の連中、と言ってもお前は知らないだろうが、狗根国とも通じているという話だ」
「それは無いよ!」
 疑心暗鬼になっていた羽江は、それだけは無いと叫んだ。
 藤那は、ゆっくりと首を横に振る。
「事実なんだよ」
「嘘だ、嘘だよ……。亜衣お姉ちゃん、狗根国を追い出したくて復興軍作ったんだもん。その狗根国と仲が良いはず無いよ、何かの間違いだよ、それ、だけは……」
「そう思うならそれでもいい。真実が知りたければ当麻の街に行ってみればいい。行って志野に話を聞くんだ」
「志野様に?」
「ああ」
「うん、わかった」
 羽江は首肯すると飛空挺を背負う。

「あれ? そう言えば藤那様はこんな所で何をしてるの?」
「飛竜がこの辺りに現れたというのを聞いてな。復興軍を討つなら協力してくれるかと思って探していたんだ。何か知らないか?」
「魅土とまーくんなら、昨日までは確かにここにいたけど、今は分からない」
「会ったのか?」
「うん。昨日、一緒にいた」
「……そうか。まぁ、こっちはこっちで探してみるさ」
「ねぇ、藤那様……」
「何だ?」
「もし、その話が本当だったら、お姉ちゃん達はどうなるの?」
 心配するような羽江の瞳。

 藤那は、作ったような笑みを浮かべて答えた。
「むかついてるのは確かだからな、一発ぶん殴らせて貰うさ」
「それだけ?」
「ああ、それだけだ」
 羽江は、よかったと一言呟いて、空へと飛んでいく。


「まぁ、私だけならな……」
 付け足すように言った藤那の一言が、森の中に冷たく響いた。













追記:
 三十八章完了! あ~、大変だった。やっぱ羽江主人公は書きづらい。半端なく書きづらい。キャラが掴めてないからもう、本当に。でも、悪事を露見させる描写は、何も知らないキャラに解き明かしていって貰った方が見栄えが良いような気がするんですが……どうなんだろう。上手く書けてないから困ったもんだけど。修行ですな、これも……
 でも、書くのが大変なので次回辺りから降板するかもしれませんねぇ。どうなることやら。っていうか、魅土一発キャラでしたね。また登場してくれることを祈りましょう。



 では、web拍手のお返事でも。
 昨日は七件で、全てお一方ですね。

20:18 次回予告のは座員なのかまっしーこなのか…わからないので衣緒と予想しますわー
20:19 あと8万というのは1600年の西側くらいですね。13世紀も経って同じ数とは…厳しいかも?
20:20 あとみづち…小説の魅壌はどうだか覚えてないし今調べられないというかめんどくさいんですけどゲームの魅土
20:21 …長いな。ツチノコみづちは竜神族ですな。『藤那と閑谷は「竜人族」なので、魅土とは異種族のようです』と
20:21 SACRED FIREさんに書いてあったよーぅ。
20:24 あ、方術は使えるですよ。…うん、これもソコ見たんですけどねー。後から言うあたり見落としてたけどねー。
20:26 …はっ、アトガキにもふれなきゃ…肌の色をわざわざ黒系に描写されるのは蛇か腕か……重然くらいしかっ。
 と頂きました。
 では一件目から順番に。まず次回予告のキャラ予想ポイントは、珠洲に同志と言っている点ですね。炎戦記の何巻か忘れましたが、そこで珠洲に同志と言っているようなシーンがあった気がします。貧乳だけど衣緒ではないです。比較対象がないのでよく分かりませんが、衣緒より貧乳なんじゃないかなぁ、と思いますがどうなんだろう。
 二件目。やはり八万は多いか。このコメント見た後一応ググって人口推移のところを発見したのですが、関ヶ原の時の日本の総人口が約千二百万人という感じ。一方二世紀くらいでは総人口で六十万人弱。まぁ、三世紀の話ですから多少増えていたとしても、七十万には手が届かないでしょうから、八万人の兵士というと、八人に一人くらいは兵士と言うことに。……無茶苦茶やね。ええと、関ヶ原で戦ったのが東軍、西軍合計で十六万とか言われてるから(まぁ諸説あるみたいだけど)仮に日本の全兵力の六割くらいが集結していたとして、人口に対する兵数の割合は、約2%……。まぁ、これをそのまま適応するのも考え物だけど、これが多少現実的な数字だとすると、さらに生産力が乏しいはずの三世紀では数万単位の兵力の育成自体がほぼ不可能と言うことに。それこそ女子供から老人まで集めないとねぇ……。
 ……どうしよ。ああ、でもアレです。便利な一言思いつきました。これは異世界だから(爆 漫画版の火魅子伝はかなり文明が進んでいたようですし、あれに準拠するとすればありカモね。まぁ、関ヶ原にしろ農民兵が結構いたのは事実だから、正規軍としてでなければ数万という話もあながち不可能ではないのかも知れないけれど。あと、人口の推移を調べててって言うほど調べてもいないけど、少し面白い事もあったのでそれは後で。
 さて、三~五件目。SACRED FIREさんかぁ。そう言えば設定集みたいなのがあったね。と言うことで見に行ったら魅土の顔色が悪いことが発覚。アレ? こんな人だったっけ? という疑問もあったけどまぁいいや。でも、閑谷達が竜人族で、魅土が竜神族か……。何か関係あるんでしょうかねぇ。ご先祖様が竜神族とか。まぁそんな設定にしても良かったんですが、盛衰記の藤那は別に竜人族でもないからいいやぁと。
 六件目。あ、やっぱり仙人様は方術使えるんですね。良かった良かったって別に魅土に方術使わせて大暴れの予定も無いんですけどね。でも羽江と飛空挺に乗っての交流とかはほのぼのしてて言いカモね。絶対に書かないけど(ぇ
 七件目。え~と、黒い人はbbsの誰かへの返事を読めば一撃必殺だけれども、まぁ腕の人です。
 コメントありがとうございました!

 他にも叩いてくれた人に、大感謝!


 で、調べてわかった面白い事って、別に面白いほど面白くもなくて、作者がなんとなく面白いかなと思っただけの事なんですが、縄文時代の人口の推移で、今から三千三百年前~二千九百年前、つまり三世紀からだとおおよそ千年くらい前に人口が急激に減少していて、それが火魅子伝の世界の魔天戦争とかの時期に当たるんだろうなぁとなんとなく思っただけの事です。まぁ、実際は気候の変動のせいで人口が減ったみたいですけどね。詳しいことが知りたい人はググって下さい。



 では、本日はこの辺でヾ( ̄◇ ̄)ノ)) バイバイ
【2006/05/02 18:22】 | 小説 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
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