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出雲盛衰記39
 出雲盛衰記
 三十九章



 空を見上げた九峪。
 見たこともない鳥が空を飛んでいた。
「っていうか、鳥じゃねぇな」
 それは羽江が乗る飛空挺。
 九峪は何処に行くのだろうと見上げていると、なにやらきりもみ状態になりながら落ちてくる。
「おいおいおい」
 荷物を放り投げると慌てて走り出す。
 ギリギリ落下点に入り込み、時を止める。
 身体の向きを反対にしてから、上に覆い被さる。

 三秒後。
 九峪の身体ごと上空に向かって浮き上がるが、九峪の重さの分だけ浮力は減って中途半端な高さまで上がって落ちる。九峪は地面に転がるように着地すると、腕の中の少女を見つめた。
「子供か。あーあ、せっかくのからくり壊れちまったな」
 気絶している羽江をどうしたものかと見つめる。
「当麻の街に戻るのも面倒だしなぁ。ま、いっか」
 独り言ちた後で少女を地面に横たえると、荷物を取りに一端戻る。
 ――あのからくり。誰の作かは知らないがこの辺でそんなもの持ってるのは、復興軍の連中なんだろうな。

 そんな事をぼんやり考えながら戻ると、少女の横に深川が立っていた。
 深川が。
 なにやら怒った顔つきで。

「どうした?」
「どうしたじゃない。貴様はまた私に無断で姿を眩ます気か!」
「お前だって知ってるだろ? 一月ごとにやばいことになる俺は人と一緒にいられないんだっつの。そろそろ次の満月だしさぁ」
「なにを寝言をほざいている! 昨日新月だったろうが!」
「え、あ、そうだっけ?」
 とぼける九峪。深川はため息を吐くと羽江を見下ろす。

「なんだ、宗像のおちびちゃんじゃないか」
「知ってるのか? つーか宗像って事は……」
「ああ、復興軍だな。天才だよ、この娘は……」
 深川の言に九峪は神妙な顔で羽江を見下ろした。
「天才か。お前だって、そう呼ばれてただろ」
「ふん。それも四天王の座にあの女が就くまでだ」
「あの女? で、四天王?」
「お前の後釜だよ。まぁ、天目にやられたらしいが」
「って、雲母か。そう言えばあいつも操作系の能力を持ってたな。しかもかなり強制力の強い」
「会ったのか? というか……」
 じと目で九峪を睨み付ける深川。

 九峪は心外だなと肩を竦めてみせる。
「ちょっと孕ませただけだ」
「死ね!」
 深川の投擲したナイフが見事に九峪の額に突き立った。
 仰向けにそのまま倒れる九峪。
「まったくこんな奴に十何年も会おうとしていたのか……」
 疲れたような深川のため息。
「……ん」
 かすかなうめき声が聞こえて、羽江がうっすらと目を開ける。
「あれ、私……」
「大丈夫か」
「誰?」
「誰でもいいだろう。起きれるか?」
「うん」

 羽江は深川に支えられながら起きあがると、そこら中に散乱している飛空挺の残骸を見つめてため息を吐く。
「はぁ、落っこちたのか。でも、なんで怪我してないんだろう。で、おばちゃん誰?」
「誰がおばちゃんだ! 貴様の姉と歳は変わらん」
「え~、そうかなぁ。っていうか、亜衣お姉ちゃんの事知ってるの?」
「まぁな」
「じゃぁ復興軍の人?」
「まぁそうとも言うが。だがこんな所で何をしていたんだ? 偵察にしてもお前を一人で行かせたりはしないだろう」
「あ、うん、当麻の街の志野様の所に」
「志野の?」
 頭からナイフを引っこ抜きながら、九峪が起きあがる。
 面白いように、額から血が飛び出しているが、気にした様子もなく持っていた手ぬぐいで抑える。

「だ、大丈夫おじさん」
 狼狽える羽江。
「うむ、致命傷だが大丈夫だ」
「ほっといても死なないよ。それより志野に用って伝令かい?」
 羽江ははっとして九峪から深川に視線を向けると首を振る。
「違うよ。ちょっと確かめたいことがあって……」
「確かめたいこと?」
「うん。だから私急がないと」
 そう言って勢いよく立ち上がった羽江だったが、直ぐによろめいて腰を付く。
「あれ?」
「無茶するなよ。とっさだったからかなり無茶な助け方したからな。それに、川辺からお嬢ちゃん一人で飛んできたならかなり疲れてるだろ」
「うん、でも……」
「深川、おぶってやれ」
「こういうときは男がやるものじゃないか?」
「お前の方が肉体的に優れている」
「何時までも親として色眼鏡で見ていると思うなよ、九峪!」
 深川は禍々しい笑みを浮かべながら、懐から札を取り出す。

「げ、お前親として俺を見てたのか。せめてお兄ちゃんにしてくれ」
「黙れ、この人間のくずが!」
 唐突に始まる親子喧嘩――或いは兄妹喧嘩――を羽江は呆然と見つめていた。



 周囲の地形と九峪の外見を著しく変わるほどの喧嘩が小一時間ほどで終結すると、九峪は羽江の事を背負って当麻の街に引き返しはじめた。
「しかし、志野に聞きたい事ねぇ。踊りでも習うのか?」
「……ちがうよ。聞きたいことがあるんだ」
「なんだよ。意外と俺たちも知ってることかも知れないぜ」
「おじさんは誰なの?」
 九峪は暫く考え込んだ後、深川に訊ねる。
「俺って誰だっけ?」
「九峪っていうすけべえ親父だよ。ものすごく質の悪い人間」
「お前に質が悪いとか言われたくねぇよ」
 眼付けあう二人。
 羽江はそれを無視して話をはじめる。
「あのね、昨日竜神族の魅土って人に会ったんだけど……」

 深川と九峪。二人の顔色が変わる。
「魅壌……だと。随分懐かしい名前だな」
「え、知ってるの?」
「まぁ、一応な。なんだ、生きてたんだあいつ」
「うん、でね……」
 それから羽江が宗像と竜神族の話、それから藤那に聞いた狗根国との関わりの話をする。
 話を聞き終わると同時に、深川が楽しそうに笑い出す。

「あっはっはっは、そりゃ藤那の言ってることが正しいよ。ねぇ嬢ちゃん、その宗像と繋がってる狗根国の者ってのが、この私だよ」
「え!」
 邪悪な笑みを浮かべる深川に、羽江は真っ青になる。
 深川はそんな羽江の様子を楽しげに眺める。
「さぁて、その話を聞かれたんじゃ黙って帰すわけにはいかないなぁ。他にも何か知ってないか、拷問でもして確かめないとねぇ」
「ご、拷問」
 泣きそうになる羽江。
「そうだね、始めはまずツメを一枚一枚剥がして、それから……」
 訥々と楽しそうに拷問方法を語る深川。羽江は九峪の背中で凍ってしまったかのように硬直する。
「おい、深川」
「なんだい、九峪。人の楽しい時間を邪魔しないで欲しいね」
「妄想するのは勝手だが、あまり子供をからかうな。背負ってるときに漏らされたらどうしてくれる」
「それはそれで楽しそうだけど、まぁ止めておこうか」

 深川は邪悪な笑みを引っ込めると羽江の頭にぽんと手を載せる。
「私が狗根国の人間だというのは本当だけどね、拷問なんかしないから大丈夫だよ」
「……本当?」
「ああ、本当だとも。でも、さっきの話も本当だよ。幼い嬢ちゃんには知らされていなかったみたいだけどね。というか、知ってるのはあの亜衣って女と他数名だけだからね」
「でも、亜衣お姉ちゃんは一体何で狗根国と……」
「少し、面倒な話なんだけどね。いや、単純なのか……」
 深川はどこから話したものかと中空を見つめる。

「順を追って話して行こうか。まず、十五年以上前の話から。まぁ、その辺の話は私も聞いて知ってるだけだが。当時狗根国はあちこちに征服戦争を仕掛けて領土の拡大を図っていた。その中で、最終的に目標としていたのがここ九洲。お嬢ちゃんも宗像の巫女の端くれなら、天界の扉の話くらいは聞いたことがあるだろう?」
「うん。願いを叶えてくれる便利な扉だよね」
「ああそうさ。当時から魔界の黒き泉の力を利用することで莫大な力を得ていた狗根国だったが、それでもさらなる力があると聞けば、やはりそれを求めようと思うのが人間の性だ。加えてそれが他の者の統治下にあると聞けば、自分たちを脅かすかも知れないと考えるのもまた当然の成り行きだろうね。そんなわけで狗根国は軍を西進させ、どんどんと耶麻台国に進行していた。まず手始めに耶麻台国の属国であった出雲が落とされ、それに続いて泗国にも兵が向けられた。その頃には、既に九洲進行の軍も半ばできあがっていたのだが、やはり戦争というのは何とも分が悪い。金は喰うし、兵も無限にいるわけじゃない。出来るだけすんなり落としたい。しかも相手は九洲全土を統治する巨大で歴史もある耶麻台国。当然狗根国も始めは搦め手で来たのさ。その更に数年前から九洲進行は内々に進んでいて、九洲の状況もある程度分かっていた。その中で厄介になりそうなものを上手く排除出来ないかと画策した。その一つが竜神族狩りだよ」

「……不老不死のお薬になるんじゃないの?」
「そう言う俗説をそもそも捏造したのも狗根国だよ。適当な理由つけてね。ともかく耶麻台国にしてみれば、それが理由だと言うのならば、それだけを狗根国に渡してしまえば気は済むと言うことになる。傍目に見ても勝機の薄い戦い。同じ九洲に住むものだとは言え、特に関わりが深くもなく、いざ戦争になって共に戦ってくれるかも分からない仙人が幾ら襲われようとも知ったことではなかったのかも知れない。その辺の詳しい理由は当事者じゃない私には分からないが、とにかく当時も耶麻台国内で強い派閥を形成していた宗像神社関係者が、その策を実行した。始めは少数とは言え、やはり狗根国軍を引き込むのは得策ではないと、自分たちで狩ることにした。だが、人間と仙人では器が違いすぎる。結局は敵わず、狗根国に場所だけ教えることとなった。結果的にはこれが致命的だったのだな。正直飛竜による上空からの攻撃というのが、狗根国が最も危惧していた事だった。それを早々に叩けたことで、後はただの人間を相手にすればいいことになった。飛竜狩りの部隊と同時にかなりの数の乱破が九洲に潜入し、要人を暗殺しまくったために、耶麻台国はなすすべもなく滅亡した……と聞いている」
「……じゃあ、やっぱりお姉ちゃんのせいなんだ」

「その通りだが、お前の姉の話はこれからだ。どのみち耶麻台国軍では狗根国軍には勝てない。そのことを悟った亜衣は滅亡は避けられないならば、後に再興出来るようにと少しでも多くの人材を残すことを考えた。耶麻台国があっけなく滅んだのもそのためだ。つまり、自分の知る優秀な人材を見逃して貰う代わりに、狗根国に対して有利になるような手引きを幾つも行ったんだ」
「え?」
「わからんか? 当時は亜衣が実際に動いていたわけではないだろう。他の宗像連中が仕切っていたのは間違いがない。だが、狗根国と宗像神社関係者が通じていたのは当時から、今に至るまでずっとだ」
「そ、そんな!」
「にわかには信じがたいだろうな。始めはさっき言ったみたいに、一度滅んででももう一度国を興すために人材を逃がすという名目だったんだろう。だが、実際に滅んでみればとても復興も再興も夢のまた夢のような状況。裏で裏切りを画策しながらの服従のはずが、何時の間にかただの犬に成り下がっていたと言うことだ。どうせ復興も不可能ならばと、狗根国の征服下で少しでも宗像の勢力を維持することだけに尽力してきた。そしてそのために、狗根国の意図したとおりの反乱を何度も演じ、敗北を繰り返すことで九洲の民に敗北感を与え続けてきた」
「……」
 絶句する羽江。そこまで深刻なつながりとは考えていなかったのだろうか。
 だが、深川は更に容赦なく続ける。

「今回の事に関しても同じだ。反乱の規模が大きくなっているのも始めから狗根国の計算の内。ここから潰す算段も既に付いている。まぁ、反乱の規模を大きくしていることに関しては、狗根国内部でのゴタゴタに寄るところが大きいのだが、それは関係ない」
「じゃ、このままじゃ」
「あの女の本心は知らない。もしかしたらこのまま本当に復興させる事が出来るつもりでいるのかも知れない。だが、お笑いぐさだろう? これまで何度と無く九洲の民も、耶麻台国も裏切り続けてきたあの女が、今回だけなんとか頑張って復興を実現させるなど」
「お姉ちゃん……」
 泣きそうな羽江。九峪の首に捕まる腕を、ぎゅっとしめる。

 九峪は若干息苦しさを感じつつも、楽しそうになおも続けようとする深川の頭を殴りつけた。
「? なんだ?」
 自分が殴られた理由が分からず目を丸くする深川。
「お前な、現実知らずのおこちゃまに現実突き付けるのは楽しいかもしらんが、もう少し他人の気持ちを考えろ」
「……よりによってお前がそれを言うのか?」
「俺は物事を根本まで洞察した上でやってるからいいんだよ。お前のはただの趣味だろ」
「ほほう。誰彼構わず女を孕ませまくる男が、物事を洞察とは恐れ入るな」
「……それはそれだ」
 深川は九峪をじと目で見た後、すっかりしょげかえっている羽江の頭を撫でた。

「まぁ、お前は何も知らなかったんだろうし、責任を感じることはない。だが、そんな姉を止めたいと思うか?」
「うん」
 深川の問いに、羽江は迷い無く頷いた。
「だが、口で言って止まるような輩ではない。止めるならば術は一つしかないな」
「……殺……す?」
 おそるおそる口にした羽江の言葉に、深川は肩を竦めてみせる。
「本当に償いたいのであれば、他に術はない。さぁ、お前はどうするお嬢ちゃん。身内を取るか、それとも大義を取るか。別にどちらでもいいが、これだけは心しておくんだな。もし、お前の姉がこのまま耶麻台国を復興させたとしても、その後また同じように狗根国の手によって滅ぼされるだけだ。耶麻台国と狗根国。この力関係がまるで変わっていない以上、また攻め込まれたとき、お前の姉は同じ選択肢しか取れないだろうからな」
 深川はつまらなそうに言い捨てて、話は終わりと口を噤んだ。
 返事は聞こうとも思っていない。
 羽江が見た横顔がそう言っていた。

 ――このままじゃ、お姉ちゃんは繰り返す。

 ――同じ事を。

 羽江の脳裏に、九洲各地の惨状が目に浮かぶ。

 同時に、自分の姉たちや、宗像の巫女達、そして星華の顔が過ぎる。



 ――私は、どうしたらいいんだろう……


 心の内の呟きに、答える者は何処にもいない……














追記:
 三十九章終了……。ああ、次で四十章かぁ。よく続いてるなぁというコメントも一体何回目になるのか。完結までカウントダウンが開始! と行きたいところですが、終わるかなぁ。何せどんなエンディングになるか考えてないし(爆 まぁ、頑張って終わらせよう。はみ出るかも知れないけどねぇ。

 さて、それで今回は深川がまた登場。というか誰でもいいんだけど、志野ではなく深川に。まぁ狗根国側の人にしゃべって貰った方が説得力あるしね。でも、深川のキャラ変わってないか? 今更かな。……今更だなorz
 真面目な話になると九峪が黙り込むのは彼の性格でしょうか……。謎だ。
 つーかね、今回微妙に長いよ。別に長いだけだけどさ。これはアレか? GW記念ってやつなのか? と、他人事のように言ってみました。まぁ、連休も何もあったもんじゃないんだけどね、実際。



 では、web拍手のお返事!
 昨日はコメントは一件ですね。

2:57 わーい志野登場Vv 哥羽茉莉も復活したようですし楽しみです
 と頂きました。
 おおぅ。志野に喜んで頂いて何より。でも活躍するかは前も言った気がするけど知りません! どっちかと言えば哥羽茉莉の方が目立つかな? いえ、戦闘シーンの問題で、志野の相手が悪いから……。とかそんな話も暴露してみたり。まぁ、結局裏の主役はあの人なんだけど、とか言ってみたり。
 コメントありがとうございました!

 え~と、連休でブログも休むから、本日分も今来てる奴だけは出しちゃえ。

11:51 ふむ…アイさん死刑?それとも死刑っすか?それとも食べちゃうのか…w
11:52 ついでにいえば”神の遣い”出てませんね(笑)
 と頂きました。
 死刑! って、人聞きの悪い。まぁそれもいいかもなぁと思いつつ、盛衰記では人は死なないという(主要キャラは)掟があるので、どうなるかなぁ~。珍しく作者の作品に置いて亜衣が悪者になってるからなぁ。深川と役回り逆だろ、とか思わなくも。まぁ両方好きなキャラですから、どちらかと言えば食べ(以下略
 そう言えば神の遣いなんていましたね(ぉぃ 彼の方は本編に置いてはミソなので出番は少ないと思われます。多分最後の方には顔を出しますけどもねぇ。
 コメントありがとうございました!

 あと一件!

17:32 コンパクトになった!?
 と頂きました。
 これは十三階段の方ですね。本当はもっとシンプルにしてしまいたかったんですが、あんまりやりすぎてもなぁ、と言うことであの辺で止めておきました。まぁ、レイアウトが少し変わっただけですけどね。しかも本当に少し。ともかく反応があって嬉しかったです。
 コメントありがとうございました!

 他にも叩いてくれたみんなっ! 好き好き大好き愛してるっ!


 では本日はこの辺でヾ( ̄◇ ̄)ノ)) バイバイ
【2006/05/03 20:43】 | 小説 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
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