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出雲盛衰記40
 出雲盛衰記
 四十章



 当麻の街に戻った後、九峪は無断で立ち去ったことを理由に志野に別室でこってり絞られていた。とばっちりが怖かった珠洲は、羽江と共に別の部屋でそれが終わるのを待っている。
 珠洲と羽江はそれほど仲のいい間柄というわけでもない。二人とも趣味が合わないし、性格的にもそんなにあう方でもない。復興軍として別の任務や部隊になることばかりだったので、そもそも接点も無かった。
 だが、同じ年頃の少女同士。戦争に加わるには幼すぎるという点では、二人とも浮いていて、同時に意識をしていたのも確かだ。

「ねぇ、珠洲ちゃん」
「何?」
「珠洲ちゃん達は、お姉ちゃん達と戦うの?」
「……多分ね」
「そっか……」
 珠洲も別に戦いたいと思っているわけではない。戦わなければならない状況になってしまっているというだけで。

「亜衣お姉ちゃんも星華様も、九洲のために戦ってるんだよ。それは、間違いないのに」
「でも、このままじゃ九洲のためにならない。それは間違っているという事だと思う」
「どうにか、ならないかなぁ」
「なるかも知れない」
「え?」
「わからないけど。何とかしてくれそうな人なら知ってる」
「誰?」
「九峪」
「あのおじさん?」
 羽江は不思議そうな顔で珠洲を見つめた。羽江にはただのおっさんにしか見えなかった。だが、珠洲は自分の発言に何の疑いも持っていないように思える。

「頼んでみたら? 頼まれたからって動いてくれるような人でもないけど」
「何とか、出来るの?」
「だからわからない。ただ、他の人じゃ出来なくても、九峪だけならなんとかしそうだから」
 根拠の無い言葉。羽江にはやはりピンと来ない。
「九峪ってどんな人なの?」
「よく分からない人。でも、一番いて欲しいときは必ずそばにいてくれる人」
 珠洲はそう言って頬を緩める。
「志野が連れ去られたときも、取り戻してくれたし、志都呂が死んだときもそばにいてくれた。今だって、こんな重要なときだからちゃんとそばにいてくれる」
「好きなの?」
 羽江のあけすけな言葉に、珠洲は普通に頷いた。
「志野の次くらいに好き」
「へぇ~」
 羽江はなんとなく九峪に撫でられた頭に手をやった。
 大きい手の感触が、まだ残っている。無条件で安心させてくれる、力強く暖かい手の平だった。

「おかげで割り喰ってる人間もいるんだけどねぇ」
 部屋の隅から深川の不機嫌そうな声が聞こえてくる。
「何? 深川」
 珠洲は途端に険しい目つきになる。狗根国の左道士で九峪を狙う女の一人である深川は、珠洲にしてみれば敵でしかない。
「別に。そんなに睨まなくてもいいじゃないか。わざわざ連れ戻してやったんだから」
「羽江ちゃんがいなければ、そのまま一緒に行ってたんじゃないの?」
「まぁね」
 深川は悪びれもなく肯定する。
「だが、逃げるあの男を捕まえるのは容易じゃない。九峪はいつだって必要なときにしかそばにいないんだからね。いつも一緒にはいてくれない」
「……寂しいの?」
 鼻で笑うような珠洲の言葉に、深川は怒るでもなく頷く。
「珠洲は、寂しくないのかい?」
 逆に問い返されて珠洲は黙り込んでしまった。

「……志野様もあのおじさんが好きなの?」
 羽江の問いに珠洲は黙って頷いた。そこに深川が揶揄するように畳みかける。
「しかも独占欲が強いから、周りにいる人間はとばっちりを受けると。どうせあの男は一人の女だけ選んだりしないのにね」
「敢えて言えば天目のだけど」
 天目……、と深川は呟く。視線に一抹の憎悪。
「いろんな女の元を渡り歩いている九峪だけど、天目だけは特別みたいだし。私と志野にとっては九峪は父親で、天目は母親みたいなものでもあるけど」
「そういえば天目は今どこに?」
「あ、確か豊後の長湯を攻めてるところだったはずだよ~」
 羽江の言葉に深川はため息を吐く。
「では、そろそろだな」
「何が?」
 首を傾げる羽江。

「嬢ちゃんも火向での攻防で狗根国の討伐軍とどの位戦闘を繰り返したかは記憶しているだろ?」
「え、うん。大きな戦いは四回くらいかな?」
「そう。それで復興軍も兵力は損耗しているにも関わらず、豊後進行が早すぎだとは思わないか? 川辺を落とすまでにかかった時間に比べて」
「そういえばそうだね」
「理由は討伐軍が送り込まれてこないから。天目はただ道すがらの街に残存する兵力のみを相手にすればいい。なぜ討伐軍がこれ以上編成されないか?」
「しようにももう兵力が残ってないから、でしょ」
 珠洲がぶっきらぼうに答えた。

「それが?」
 羽江が首を傾げる。
「現状狗根国は都督を守るための兵力以外は実質無い。本国に応援を要請しているが、一日二日で来るものでもない。一月は見なければならない。となれば、生き残るための策は一つ」
「一つ?」
「逃げることだ」
 羽江は目を丸くする。
「逃げ、ちゃうの?」
「今の都督長官はそう言う奴だと言うことだ。勝てない戦はしない。そしてそれこそが狗根国側が復興軍に肩入れしていた理由でもある」
「?」
「今の都督長官はそこそこに切れ者だが、敵も多くてな。本国でもどうやって首を切ろうかかねてより画策していた。そして実際に今回動いたわけだ」
「ふ~ん。じゃあ、もう勝利は目前なんだ」
「……いや」
 深川は寄りかかっている窓から、海の方に視線を向ける。

「当然復興軍にくれてやる気も無い。実際問題起こそうと思って起こした反乱だ。既に狗根国側では相当な戦力を準備し、いつでも九洲にこれるようにしてある」
「そ、そんな」
「おそらくは万単位。今の復興軍など一蹴してしまえる」
「そんなこと話しちゃっていいの?」
 珠洲の冷めた言葉に、深川はため息を吐く。
「私は九峪の側だ。狗根国にいたのも元々あいつが私に与えた場所だったからだ」
「九峪が?」
「知らないのか? あいつは元狗根国四天王だぞ」
「……そうなんだ」
「驚かないんだな」
「本気でやってたとも思えないし」
「確かにそうだが」
 それで納得出来るのか? と言いたげな深川。
「今の九峪は九洲の為に動いている。それでいい」

「九洲の為、ねぇ」
 呆れの混じった声は天井から。
 深川は身構えたが、珠洲は黙って上を見上げただけだった。
「小夜。天目から報告?」
「まぁね。親父いるんでしょ?」
「志野とお楽しみ中」
「あのクソ親父は……」
「誰だ?」
「あのクソ親父の娘よ」
 小夜はそう言って天井の梁から落ちてくる。

「母親は?」
 不機嫌そうな深川。小夜は肩を竦めてみせる。
「残念ながら天目では無いわよ。一応現在の母親ではあるけど。本当のお袋は当の昔にご臨終。でもなければ、親父もお母様も付いていくのを許したりはしないから。ってどうでもいいか。珠洲、志野さんと親父呼んで来てくれる?」
「はぁ~、やだなぁ~」
「四の五言わないでさ。私の指示はお母様の指示なんだから」
「だからいやなんだけど」
 トボトボと部屋を出て行く珠洲。
 小夜は深川の方に向き直る。

「初めまして、でも無いんだけれど。初めまして深川さん」
「はじめまして」
「私は小夜です。あなたの事はお母様と九峪から何度と無く聞かされていました」
「ほう」
「申し訳ないことをした、と」
「……笑えない作り話だな」
「本当ですよ。まぁ、二人とも面と向かっては話さないでしょうけれどね」
「……」
 何か思うところのありそうな深川。
 小夜は続いて羽江の方を見つめる。

「羽江。本当に大事なものがあるならば、迷うことはないと思うよ」
「そうなのかな?」
「悩まないで、一番やりたいことをやればいいんだよ。どうせ人間一人で出来る事なんてタカが知れてるしさ。取り敢えず自分で決めたことなら後悔しても納得は出来るでしょ?」
「でも、何が一番やりたいことなのか、分からないよ」
「姉を止めたいならここに残ればいい。姉を殺させたくないなら帰るといい。どちらにしても、今の復興軍は私たちが間違いなく潰す。羽江がいてもいなくても変わらないし、もう止めることも出来ない。このままだとあんたの姉は死ぬ。星華も死ぬ。一緒に死ぬか、それとも……」

「意地の悪いことしてるんじゃねぇよ、小夜」
「クソ親父」
「誰がクソだ。まったく、反抗期かなぁ深川」
「私に聞くな」
 九峪はやれやれと肩を竦める。

「羽江ちゃんには悪いですけれど、例え戻りたいと思っていても今帰すわけにはいきません。情報が露営します。些細なことでもそれは許容しかねますので、当分はここにいて下さい」
 志野ははっきりとそう言い放つと、小夜に向き直る。

「では、聞きましょうか。天目さんはなんと?」

 志野の問いに、小夜はよどみなく答える。

「機は熟せり。裏切り者に、制裁の鎚を打ち下ろせ」
「……了解しました」
 小夜は志野が頷いたのを見ると、九峪を睨み付ける。


「それからクソ親父。お母様が『愛してる』だって」
 九峪はその言葉に、嫌そうに顔をしかめた。


「結構です、って言っておいてくれ」
 呆れたように呟いて、次の瞬間には姿を眩ましていた。













追記:
 四十章終了~。
 四十……。なんだかんだで書いてる中じゃ最長? いや、まぁ編年紀は表裏と挿話合わせればもっと書いてるけどさ。内容なんて考えてないからこっちの方が書くの楽なんだけどね。
 さて、いよいよ復興軍vsその他、の戦いが始まりそう……なのに九峪は何処に行った? まぁ戦争は書かないって何度も言ってるもんね。はてさて、何処で何をするのやら。予想が的中した方には漏れなく作者の熱い吐息が送られます。嘘です。っていうかいりませんよね、そんなもん。


 web拍手のお返事~、はコメントがないので省略。

 他にも叩いてくれた方々、せんきゅ~べり~まっちょ。まっちょ?



 では本日はこの辺でヾ( ̄◇ ̄)ノ)) バイバイ
【2006/05/09 22:55】 | 小説 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
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