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出雲盛衰記42
 出雲盛衰記
 四十二章



 父と娘、初めての出会い。

 しかし、それは涙が共に溢れるような感動的なものではなかった。

 二人の間に横たわる十五年という年月。

 生まれてから一度も顔を合わせたこともない二人が、初見で親子という関係を見つけ出すには、あまりにも互いに情報が無さ過ぎた。

 果たして本当にお互いの血が繋がっているのか、そんなことは分からない。

 唯一、二人に共通してあった感慨と呼べるものは、会うべき人にようやく会えた、ただそれだけなのだろう。


「はじめまして、父上」
「はじめまして、彩花紫」

 他人行儀に挨拶を交わし、後はただじっと相手を見つめる。
 何処か自分に共通するものを探すように。

「母上から幾度と無くあなたのことは聞かされました」
「沫那美からか」
「母上は、死の間際まであなたに会いたいと譫言のように申しておりました」
「……そっか」
「なぜ、こちらに?」
 彩花紫の言葉に、九峪は哥羽茉莉の方に視線を泳がせる。

「このままだと、お前は死ぬ」
「そのようですね。狗根国か復興軍、いえ再興軍でしたか。まぁどちらかの手によって……」
「戦争だからな。大将首取るまでは本当の終わりじゃないことだし。天目はその点躊躇しない」
「……それが運命だというのならば、是非もありません」
「お前は俺の一番始めの子供だ」
「そうでしたか」
「だからと言うわけでもないが、出来うることなら救いたい」
「……嬉しい」
 幸せそうに笑った彩花紫に、九峪はため息を吐いてみせる。

「だが、お前を救うことは天目を裏切ることになる。お前は知らんだろうが、天目は敵に回すとかなりおっかない」
「父上の、娘であり、妻である人と伺っていますが」
「あいつは俺がこの世界で一番はじめに見つけた居場所だ。だから特別だし、裏切りたくもない」
「では?」
「……う~ん、困ってるんだよこっちも。なぁ、彩花紫。お前頭いいだろ? 何か考えろよ」
「分かっているなら苦労は無いと言うものです。父上こそ、蛇蝎すら欺くその狡い頭でなにかお考えになっては?」
「狡い言うな。つーか、蛇蝎か。ふむふむ、それはなかなか」
「?」
 急に名案でもひらめいたかのように何度も頷く九峪。

「どうかしましたか?」
「まぁ、今はいいや。それよりお前、遷都したことで本国から何か言われてないのか?」
「さて、特に」
「じゃぁ深川の言った通りか」
「暗殺、来ますか?」
「現段階で本国からお前に対して文句が来ていない以上、その可能性が一番高いな。相変わらず躊躇がないな。ただの王族の肩書きだけの小娘に追いやることも現段階で可能だろうに」
「そうなっていれば、まだ私にも救いがあったのでしょうけれど」
「今残っている将軍も鋼雷だけだろ? せめて平八郎くらいならな」
「私を連れて、逃げてはくれませんか?」
「王女様!?」
 彩花紫の暴言に哥羽茉莉が色めき立つ。

「それでも構わないといいたいが、王族として育ってきたお前が野に下って生きていけるとも思えん」
「あら、それくらいの順応性はあります」
「どうだか。同じお姫様の天目にものを教えるのにどれだけ苦労したか……」
「経験論ですか? しかし同じ人間では無いのです」
「……まぁ、いざとなったらそれも止む無しだろうが。ともかく今は暗殺に備えろ。哥羽茉莉って言ったか? 異国の人」
「言われずとも承知している。王女様には私が指一本触れさせない」
「徹底しろよ」
「また、どちらかに行かれるのですか? もう少しお話がしたいです。せっかく会えたのだから」
「ここにいても根元的な解決になりそうにない。それは分かった」
「寂しいです」
「また会える」
「はい」
 しおらしく頷く彩花紫。九峪はその背後に立つと頭をひとしきり撫で、それから部屋を辞した。

「ねぇ、哥羽茉莉」
「はい」
「想像してたのと、大分違ったわ。思ったより老けてたし、不真面目そうだし……」
「そうですか」
「でもね」
 彩花紫の小さな口元から、鈴が鳴るような笑い声が零れる。


「思っていた以上に、素敵な人」
 哥羽茉莉はその言葉を肯定も否定もしなかった。



 筑紫城を我が物顔で歩き、九峪は彩花紫の近衛隊の幹部の詰めている建物へと向かった。
 各地から集められた狗根国兵も、現在は全て近衛隊という事で一括りにされている。本来は精鋭二千で組織されているが、今はそれら新たに加わった兵で三千五百あまりの規模だ。
 それらを統括しているのは、雲母や帖佐と同じ狗根国四天王である飛燕将軍鋼雷。とは言え四天王最弱と揶揄され、別名猪突将軍とか言われたりもする。九峪はずかずかと幕営に上がり込むと、人間よりは熊に近い要望の大男の前に立った。
 突然の珍客に、幕営にいた幹部全員が一斉に剣を抜いたが、鋼雷の様子の豹変で全員行動に移れなくなる。

「久しぶりだな、鋼雷。元気にしてたか? うん?」
「ま、ま、まままままま、雅比古っ」
 盛大にどもりながらかろうじて九峪の名前をいい、青い顔で後退る。
 幹部のそれなりに歳の行っているものは、雅比古の名に驚いた表情を浮かべていた。
「く、狗根国を出奔したと聞いていたが、こ、こんな所になんの……」
「蛇蝎との確執で国を出ちゃいるが、未だに俺は狗根国の人間なんだが? 大王もまだ俺に下された勅令を取り下げちゃいないんだろ?」
「……」
 歯の根が合わない鋼雷。

 九峪は気軽に鋼雷の肩を叩く。
「まぁ、そう怯えるな。別に取って喰いやしない。ただ俺はお前に自分の仕事が何なのか分かっているのかそれを聞きたかっただけだ。なぁ、鋼雷。お前は何のためにここにいるのか聞かせちゃくねえかな」
「そ、それは、当然、王女様を……」
「そうだ。聞いたぞ、鋼雷。その言違えることがあったらどうなるか、分かってるよな? 反乱軍の虫共になど譲らんぞ? 俺直々に手を下してやる。いいな?」
「は、はっ!」
 九峪は満足げに頷くと、早々に部屋を出て行った。
 
 あまりの事にあっけにとられている幹部達。
 若い幹部が、それでもいくらか事情を知っていそうな古参の幹部に訊ねる。
「今の、誰です?」
「お前等若いもんは知らんだろうな。あれはかつて狗根国軍で最も畏れられた男。幽鬼将軍雅比古じゃ。噂くらいならお主等も聞いておろう」
「……あれが」
 ごくりと生唾を飲み込む若い幹部。視線を鋼雷に向けると、虚脱したように座り込んでいる姿があった。



 筑紫城をでて北へ向かって歩く九峪の後ろを、三人の少年少女が付いてくる。
 つけているというのにはあまりにもあからさまに。
 九峪ははじめ無視していたが、いい加減うざったくなって振り返ると声をかけた。

「お前等何のつもりだ? 俺に何か用か?」
 リーダー格の少年は九峪の直ぐ目の前まで行くと、短く告げる。
「蛇蝎様からの伝言で、雅比古を見つけたらその動向を逐一監視せよとの事でしたので」
「暗殺しろの間違いじゃないのか?」
「残念ながら蛇蝎様ですら殺すことの出来ないという人間を、私どもではとても殺すことが出来ません。そもそも、今もってあなたが狗根国軍に置いてすら畏怖されているのは、一重にその不死性にあるのです。大王もその異端じみた能力を畏れて、あなたに与えた特権を剥奪することも出来ないと聞いてますが」
 九峪はやれやれと肩を竦める。

「何処で吹き込まれたんだか。大王が俺に甘いのは、俺をもう一度喰いたいと思ってるからだろうよ。まぁあの豚に喰われてやるつもりは無いが」
「随伴する許可を頂けませんか?」
「随伴ね。彩花紫の守りはいいのか?」
「あそこに二名もいればおつりが来ます。そもそも哥羽茉莉だけで十二分です」
「かもしれんがな」
「なにより、あなたは王女様を救い出す術を、既に思いついていらっしゃるのでしょう?」
「なぜ、そう思う?」
「勘です」
「はぁ、ガキのお守りはもう沢山何だけどなぁ。ったく」
「まぁまぁ、いいから一緒に行こうよ、おじさん」
 気楽そうに眠そうな顔をした少女が言う。

「ガキじゃ抱くわけにもいかんしなぁ」
 ぽつりと呟いて、少女二人をじろじろと見つめる。
 下した結論は論外。
「志野と珠洲は救っても、私たちは救えないんですか?」
 男女の少女がそう言って九峪を見つめる。
 その瞳には期待が込められているようにも見える。蛇蝎の子供らしくもなく。

「そんな話も知ってるのか。でもま、あれも巡り合わせだからな。まぁいいや。最近あんまりやってなかったし、ガキのお守りもいいか。で、お前等名前は?」
「閑谷です」
 少年が言う。
「虎桃で~っす」
 眠そうな表情の少女がそう言って手を挙げる。
「真姉胡です」
 中性的な少女はぽつりと呟いた。

 九峪は閑谷と名乗った少年を見つめ、何処かで聞いた名前だなぁと思いつつも、黙って歩き始めた。


 向かう先は九洲の玄関口、那の津。













追記:
 よんじゅ~に~。なんか今回は話が前に進んでないなぁ。まぁいいか。まぁいいや。勢いで書いてればそう言うことだってあるさ。ただ鋼雷を思いっきりヘタレにしたかっただけさ。親子感動の再会なんて演出してやるもんか。っていうか、絶対感動なんて出来ない場面だよ。思いこみの激しいアホ二人なら話別だけどね。
 と、言うわけで何故か三馬鹿を出してしまいましたとさ。別に馬鹿じゃないか。話に組み込んだことでどうにかなるのか? まぁ、正直閑谷の話だけかければいいかなと思ってたんだけど。なんか閑谷っぽくないと思っている方々。アレは蛇蝎の教育の賜物って奴なんですよ。つーかですね、次回辺り……。まぁ不確定な話は止めておきましょう。珍しく作者が伏線回収する気になってるような気がしないでもないので(どっちやねん!


 と言うことで、web拍手のお返事でも。
 一昨日からかなぁ~。一件です。

23:54 この話を読むのを毎日の楽しみの1つにしています。
 と頂きました。
 かはっ(吐血 ものすごい殺し文句が来た……。さてはやり手のホスト……。危うく結婚して下さいと言うところでした。いえ、冗談ですけどね。そのくらいジャストミートなコメントでした。作者の心に乾坤一擲ですね。
 コメントありがとうございました。


 では昨日分。
 まずは二件まとめて。

1:55 盛衰記目当てに毎日訪れてます。表の編年記
1:56 (途中で送ってしまいました・・)編年記よりも楽しみにしてる自分がいます・・
 と頂きました。
 毎日来て頂いていると。うわ~、前のコメントもですが、そこはかとなくプレッシャーを感じるのは作者がチキンだからでしょうかね。無かった日が申し訳ないような。まぁ、毎日はどのみち無理なんですけど……。やっぱり更新頻度高い方が頻繁に来る人にはいいのかなぁと思ったり。う~ん、難しいところだ。
 で、まぁ、作者がなんでこんなに沢山の火魅子伝SSを書いているかと言えば、いろんな趣味の人に読んでもらえるようにと言う配慮があるような無いような……。なので、編年紀よりと言われる方もいるんでしょうね。まぁ書いてる本人がそもそも……(マテ
 コメントありがとうございました!

 そして三件目。

8:31 反乱、遷都、暗躍、潜行ってとこですかね? 深川が出来るなら、蛇渇が出来ないわけないけど…きゃーっ
 と頂きました。
 色々起こってますが、九峪はノータッチです(爆 普通そこを書くだろうと言うところを断固として書きません。なので復興軍vs再興軍とか、狗根国との戦争とか、神の啓示でも無い限り書かないでしょう。書かないけど戦争は終了して……とか、なるのかなぁ? まずそうだったら書くけどどうなる事やら。
 そう言えば骸骨に関しても何も考えてないなぁ(ぇ まぁ、後一回くらい出番はあるかも……知れ…………ない……。
 コメントありがとうございました。

 最後四件目。

23:22 幻聴記まじですか!更新ですか!!やったぜ楽しみだー
 と頂きました。
 そう言えばそんな事、本サイトのtopに書いたね。書いちゃったね。……いや、土日で書くよ。書くけどさ……。来週の土曜日でも怒らないでね(爆 まぁ、来週出すとしか言ってないもんね。正直最近クソ忙しくて……言い訳はいいですね。すみません。書きます。
 コメントありがとうございました。


 他にも叩いてくれた人、ありがとうっ!


 で、と。コメントも来てましたね、そう言えば。
 aaさんからです。

誤字脱字をすべてゆるせるくらいおもしろいっす~
今後も応援します!! (・・)ノシ
 と頂きました。
 許してくれるとはいい人です。まぁ、誤字なんて無いに越したことはないですから、無くなるように努力はします。終わりよければ全てよしという言葉もあることですし、まぁせいぜいいいエンディングを迎えられるように頑張りたいと思います。
 コメントありがとうございました。


 では、本日はこの辺でヾ( ̄◇ ̄)ノ)) バイバイ
【2006/05/13 01:40】 | 小説 | トラックバック(0) | コメント(1) | page top↑
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コメント
恐るべきは藤と閑を離れさせたその柔軟さ・・・みたいな!!
【2006/05/14 15:13】 URL | aa #-[ 編集] | page top↑
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