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出雲盛衰記43
 出雲盛衰記
 四十三章



 北は豊後国都長湯、南は当麻の街から内乱の報が火向国都川辺城にもたらされた。
 長湯の方には、復興軍先方を務めていた天目が主導となり、当麻の方では火魅子候補の一人、志野が中心となって兵をまとめ上げていた。
 両者とも耶麻台国再興軍を名乗り、かつての耶麻台国敗北の咎は復興軍幹部の大部分を占める宗像神社の関係者にあるとし、完全なる復興を果たすためにはまず復興軍を討つべしと宣言していた。

 予想もしなかった足下からの火の手に、星華は完全に顔色を無くしていた。
 なぜならば、再興軍の中心となっているのは天目でも志野でもない。御旗として掲げられているのは、現存する最も正統なる耶麻台国の血統、元副国王の伊雅とその娘清瑞である。
 確かに九洲を開放し、火魅子として女王位に付くことが出来れば、伊雅も清瑞も恐るるに足りない。しかし、その血統を絶やそうとした事実は隠蔽出来ない。耶麻台国が滅亡したのが十五年前。伊雅の事を知っているものもまだ少なからず生き残っているし、伊雅を偽者と断ずることも出来ない。その伊雅がかつて謀叛を起こし、今回もまた自分の命を狙ってきたのだと言えば、大多数は伊雅側に心証が傾く。さらに、火魅子候補も伊雅側には、藤那、伊万里、志野の三名が付いている。
 火魅子候補そのものに存在意義が本来無いものだとしても、それが復興軍の求心力の中心であった以上、また自分も火魅子候補の一人である以上、星華に藤那達を偽者だと言い切ることもまた出来ないのだった。

 いや、実際には星華は口汚く藤那や伊万里のことを罵っていた。偽者だ、俗悪な血統だとこき下ろしていた。対外的にそれが漏れる事を抑えていたのは、逆効果だと分かっていた亜衣の差配によるものだ。

 ともかく乱は起こり、狗根国側にもこれを利用して漁夫の利を得られるだけの戦力が無く、静観を決め込んでいる以上、復興軍と再興軍の衝突は避けられず、そしてその勝敗も誰の目から見ても明らかなほどに開いていた。
 再興軍に戦力の八割を吸収された復興軍は、自前の戦力は残すところ川辺城に残していた千のみ。豊後方面にいくらか押さえを残しておくとはいっても、再興軍は三倍以上の兵力で攻めてくることになる。

「亜衣、どうしよう?」
 不安そうなキョウの言葉に、亜衣は眼鏡の奥の冷徹な瞳を細める。
「どうもこうもないでしょう。戦い、そして勝たねば我らに未来はありません」
「で、でも……」
「確かに旗色は悪いです。ですが、勝てない分けでもありません。三倍です。たかが三倍。キョウ様はお忘れですか? 復興軍としての初戦の相手も、三倍でしたよ」
「……それは、そうだけど。状況が。何も知らない一般兵の中には動揺するものも増えてるし、何より……」
 キョウの視線を送った先は神の遣いの間だ。

「あのお方にもいずれ役に立って頂かなくてはならないでしょうが。まぁ、ギリギリまで知らないで頂きましょう。しかし、深川まで裏切るとは――いや、裏切ったのは当然として、まさか志野に付くとは……」
「志野、か。理知的ではあったけど、控えめな志野に、一体何が……」
「さぁ。大方猫でも被っていたのでしょう。使い勝手がいいと思わせて、自然兵を預けさせるようにし向けていた、と言う事でしょうか」
「そ、そうなんだ?」
「そうでなければ、こうも鮮やかに兵をまとめられません」
 亜衣はやれやれと肩を竦める。

「しかし、それでもこうもまとまって反旗を翻した事には、他にも何か裏で動いている気がしてなりません」
「一体何が? まさか狗根国?」
「狗根国も動いてはいるでしょうが、この場合は違うでしょう」
「と、言うと?」
「分かりません。ともかく勝つための策を張り巡らせましょう。私はそのためにいるのですから」
 まるで機械のようにたんたんと語る亜衣。
 キョウはその横顔を見つめて、内心焦っていることを見て取る。

 キョウも亜衣とはそれほど長い付き合いではないが、それでも戦時中の数ヶ月である。元々王宮で権謀術数の限りを見てきたキョウは人の内面を伺う術に長けている。亜衣の焦りも手に取るように分かった。
 
 ――このままじゃ、マズイかも知れない。いざとなったら逃げ出さなくちゃ……

 伊雅と確執があるキョウとしては、再興軍に下ることも許されない。見つかったが最後、確実にたたき割られる。
 
 ――オイラ、どうすれば……

 頭を抱えるキョウ。救いの手は、意外な所から差し出される。しかし、その事はまだ誰も知らない。



 一方その頃、那の津へと向かっていた九峪ご一行様は、本州行きの船を探してぶらついていた。
「船ならばこちらで用意致しますが?」
 閑谷の親切を九峪は素っ気なく断る。
「蛇蝎の息のかかった船なんてぞっとしねぇ。例え海が凪いでてもしずむだろ」
「暗殺の危惧なら……」
「気分の問題だよ。それに、船ならもう見つけたし」

 九峪がそう言って視線を向けた先には、大陸や半島へと向かう大型の船があった。手で漕ぐガレー船と風を利用する帆船の半々と言った作りだが、その帆に特有の印がある。半島を拠点に手広く商売をやっている名のある商人の船だった。狗根国とも懇意に商売をしているので、閑谷達にも見覚えがあった。
「さすが九峪。彼の商人とも知古なのですね」
「まぁな。半島行くときはよく利用したもんだ」
「なるほど」

 九峪は船のそばで慌ただしく動いている少女に近づく。三つ編みにした髪を二房垂らし、眼鏡をかけている。
「お~い、只深ぃ」
 九峪が手を挙げて声をかけると、少女は弾かれたように振り返り満面の笑みを浮かべて九峪の懐へと飛び込んできた。
「九峪は~ん」
 九峪は危なげなく抱き留めると、しがみついてくる只深をぎゅっと抱き返してやる。
 暫く抱き合ったあと、どちらからともなく離れ、只深は九峪に付いている瘤――すなわち閑谷、虎桃、真姉胡を見る。

「なんや九峪はん、また新しい隠し子でっか? まぁ、相変わらず貞操観念が欠落してはりますなぁ」
「違うはボケ。こいつ等"は"俺の子供じゃない」
「説得力無いですなぁ。本当は何処の誰の子やねん」
「だから違うって。それより船乗せて欲しいんだけどな」
「はぁ、ええですけど、どちらまで?」
「取り敢えず本州につけてくれりゃいいや」
「えらい大雑把ですな。まぁ、山都に行く所でしたからちょうどええですわ。それより天目はん達は?」
「ただいま別行動中なんだよ。あっちはあっちで忙しいから」
「珍しいこともありますなぁ。まぁ、船はもう暫くしたら出ますよって、それまでその辺のんびりしとって下さい。準備出来たら呼びに来ますさかい」
「ん、頼む」

 只深は営業用の笑顔を振りまいて去っていった。
 閑谷はその姿を目で追いながら、思い出したように呟く。
「只深、と言えば彼の大商人只恒の一人娘では?」
「ほう、物知りだな閑谷は」
「それが仕事ですから……。しかし、一体どういうなれそめで?」
 九峪は言いにくいのか視線を逸らすと頭を掻く。
「ねぇねぇ、教えてよ~。別に減るもんじゃないんだしさぁ」
 虎桃が甘えたように九峪の腕を取りながら言うと、九峪はやれやれと肩を竦めながら口を開いた。

「まぁ、良くある話さ。悪漢に襲われてる可愛い一人娘を颯爽と登場した俺がばっさばっさと斬り捨てて……」
「嘘ですね……」
 真姉胡がにべもなく言った。
「ぐぅ。かわいげのない餓鬼共め」
「で、結局どうやって取り入ったんですか? あなたのことだから、狗根国の将軍であることは言っていないのでしょう?」
「つまらん話さ。天目と二人、行き倒れたところを拾われた。一宿一晩の恩をかえすってことで只深の病気を治してやったらことのほか恩に着てくれてな。まぁ、そう言うわけだ」

「なるほど。つまりは沫那美王女の時と同じというわけですか」
「言うと思ったよ。事情は違うが確かに似たようなものだがな」
「で、本州には何をしに? 彩花紫王女を救う手だてを考えついたんですよね?」
「墓参り」
 九峪の言葉に怪訝そうに首を傾げる三人。

 九峪は苦笑を浮かべた。

「十五年……か……」

 見上げた空はあの日と同じように青く、どこまでも澄み切っていた……。













追記:
 はふぅ。ご無沙汰しておりま~す。夜更かしして日記を更新。五月最後の更新と相成りました。次は何時になるやら……。
 で、盛衰記四十三章、ですけどねぇ。ああ、しかし、なんというか、アレです、物語を終わらせるのって本当に大変です。オチを考えてても大変なのに、考えないで書いて終わらせるなんて出来るんだろうかと疑問に思いつつも、終わったら終わりなんでしょう。まぁ、そんな感じです。

 さてと、そう言えば本サイトのbbsに盛衰記を何処で連載してるかとか書いてありましたねぇ。バムルさんは見つけられたんでしょうか。ぶっちゃけ、ググれば直ぐ見つかるんですけどねぇ。微妙に題名が間違っているのが悪意を感じさせます。まぁ、どうでもいいですか。
 で、元々ここはひっそりとやっていく予定だったのですよ。ていうか今でもその方針は変わりません。ええ、変わりませんとも。topに明文化して書いておくんだったと今更ながらにそこはかとなく後悔。まぁ、別にもう盛衰記も終わりそうだからいいかなぁと思わなくも無いけど。
 あ、そう言えばどっかに盛衰記の紹介書いてあるなら教えて下さい。咎めるつもりは毛ほどもありませんし、単にどんな紹介されてるのか興味あるだけですから。知ってる方がいたら是非。

 で、まぁ、どのみち当分は積極的に更新は出来ませんので、後々の話になりますが、見つかった以上はよそに引っ越そうという事で、今後盛衰記みたいなブログ連載をする場合は別URLで立ち上げて今度こそひっそりとやると思います。まぁ、何時になるやらと言ったところですけどね。


 では、web拍手のお返事を……って、一体いつからだ?
 え~と、18日から。

1:03 幻聴記面白かったですw更新しばらく止まるようですが復活お待ちしています
 といただきました。
 復活……、出来るだけ早くなるように、と言うか明確に復活とかできるのか? 適当にダラダラやります(ぇ
 コメントありがとうございました。

 二件目。

7:57 復活まってまーす。
 といただきました。
 ありがとうございます。出来るだけ頑張ります。

 三件目。

13:12 久々に幻聴記が読めて満足です。しばらく更新無いそうですが、幻聴記を読み直しながらお待ちしてます。
 と頂きました。
 いやぁ~! 読み直すと矛盾点がぁ~。と戦々恐々しつつ続きをぼちぼち考えたいと……。ガムバリマス。
 コメントありがとうございました。

 四件目。

23:02 幻聴記おもしろいです。更新止まるそうでとても残念です。お早いお帰りをお待ちしております。おがいっぱい
23:05 略しておっぱい(謎)。あと火魅子伝はゲームとSSは面白いけど小説は最近微妙になってきた気がします。
 と頂きました。
 皆さん本当にありがとう。こんなクズな作者を気遣ってくれて(うぅ と言うのは大げさなんですが、期待されると答えたくなるのは悪癖なのか? う~ん、どうなるかなぁ。で、おっぱいは大好きです(爆 小説が微妙になってきたとのお言葉ですが、それは多分挿eゲフンゲフン……。まぁ白文で出した方が面白いと思ってるのは作者だけでは無いかも知れませんねぇ。特に兔音は酷かった……(涙
 コメントありがとうございました。

 続いて19日分。

20:08 更新お疲れ様です。忙しいようですが体調などにはお気をつけて、戻ってこられるのを楽しみに待ってます
 と頂きました。
 う~、ありがと~う! 体調に関しては完璧なる管理を実践しているので(嘘だけど)お気遣い無く。頑丈なだけが取り柄なんです。多分。
 コメントありがとうございました。

 さらに20日分。

9:49 すみません、氏の作品では出雲が一番楽しかった。こんな私を許してください。…おかわりしていいですか?
 と頂きました。
 出雲が好きですか。結構なことです。作者としても書くのが割と楽なので好きです。そう言う意味で好きです。と言うわけでおかわりどうぞ。でも一杯だけで勘弁して下さい。続きはディナーで。何言ってるのかよく分かりませんね(爆
 コメントありがとうございました。

 ……21日分。

21:38 アリアリアリアリアリアリアリアリィーーーーーーーーーーーー!アリキック(違
 と頂きました。
 え~と、ジョジョネタはいいですよね。では、作者からも……。コホン。
 ボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラ ボラーレ・ヴィーア!!(飛んで行きな)
 なんで死ぬんだよぉ~、ナランチャよぉ~(涙
 コメントありがとうございました。

 そして昨日分三件まとめて……でいいのかな?

4:20 幻聴記の九峪争奪戦はもう全員勝利者が一番な気がしたり。実際日魅子さえ受け入れれば丸く収まりそうですし
4:20 個人的には志野と伊万里が報われてくれればいいのですが。(笑
4:51 幻聴記の31話ですが、九峪と永閃が出てるところで最初の3つほど永閃が永楽になってました
 と頂きました。
 全員が勝利者ですと! と言うことは俗に言うハーレムもの……。うわ~ん、不潔だよぉ。とか心にもないことを口走ってみました。さて、どうなるんでしょうね。日魅子が心神喪失状態なのをいいことに、九峪がやりたい放題……するのか? 志野と伊万里が報われるかは謎です。個人的に志野には珠洲がお似合いだと思います(爆 まぁ、百合は毛嫌いする人もいるでしょうから書きませんが……多分。
 ええと、最後の誤字指摘に関しましては、早急に直させて頂きました。く、くそう。あの兄妹名前ややこしいんだよ! と切れてみたり。本気で時々どっちがどっちだか分からなくなります。作者の脳がヤバイだけかも知れませんが……。
 ご指摘コメントありがとうございました。

 他にも叩いてくれた方々。本当にありがとうございました。


 では、また暇があったらお会いしましょう。ヾ( ̄◇ ̄)ノ)) バイバイ



 



【2006/05/29 02:48】 | 小説 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
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