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出雲盛衰記46
 出雲盛衰記
 四十六章



 天目と対峙する少女と女。
 三者の間でとてつもない気が溢れ、遠巻きに見つめる再興軍兵達は息をのんでいた。
「同じ組織にいたというのに、あなた方と会うことは今まで無かったな」
 組織に組み込まれて直ぐから、前線で仕事をしていた天目は二人の事を名前以外知らない。

「ええ、初めまして」
 妖艶な雰囲気を醸し出している妙齢の女性が、そう言って微笑む。
「紅玉殿、でよろしいか?」
「これはこれは、お見知りおき頂いて光栄です。天目様」
 天目は鷹揚に構えながら、隣にいる少女の方に視線を見つめる。

「そしてこちらが香蘭様か」
「初めましてのことね」
 ニッコリ笑いつつも殺気の籠もった視線。天目はますます楽しそうな顔になる。

「して、お二人は何の為に出てこられたか? 使者としてか、それとも……」
「まずはお話を……」
 紅玉はそう言って一歩下がる。
 間合いをはずされた天目は、自らも一歩下がって頷いた。この間合いが二人が同時に仕掛ける事の出来ない距離。同時に迎撃を確実に行える距離でもある。

「ともかく同じ志を持つもの同士、争うことは無意味、と言うのが復興軍一同の見解です」
「同じ志……だと?」
 嘲笑を浮かべる天目。
「それは一体何の冗談だ? 狗根国と裏で手を結んでいいように操られているだけの俗物共と、純粋に耶麻台国の復興を望んでいる我らと同じ志などと笑止な」
 紅玉は肩を竦めてみせる。

「あら、それでしたらあなたもあまり変わらないのではないですか? 出雲王家のお姫様」
「あなたはただ、出雲王家を復興するために九洲の人間を利用してるだけね。何も変わらないよ」
 香蘭もあわせて追撃を加える。
 天目はこの反撃に首を傾げてみせる。わざとらしく。
「これは異な事を言うものだな。確かに私は出雲王家の血筋ではあるが、だからといって何を根拠に九洲の民を利用しているなどと。仮にそうであるならば、復興軍と同じ下賤な者であるというならば、何も火魅子候補や元王弟の伊雅様を立てる事もせず、全て自分で牛耳ってしまえばいいだけ。利用していないとは言わぬが、それはあくまで出雲王家復興のためではなく、耶麻台国再興の為。勘違いはなされるな」
「詭弁、ですわね」
 紅玉はそう言って嘲笑を浮かべたが、それでもそれ以上の反撃は無かった。

「交渉は決裂……ね」
 香蘭はそう言って身構える。それに習うように紅玉も。
 天目も油断無く構えながらも、ニヤリと笑った。
「そう言えばそなた達が復興軍に肩入れする理由を聞いてなかったな。聞けば正統なる王家の血筋とか。何故滅亡の一助となった宗像連中に与する」

「王家の血筋と言っても、所詮は傍系もいいところね。その上大陸に渡ったから支えてくれる人もいないよ」
「後ろ盾ほしさに、か」
「どのみち、私と母様がいれば負けは無いね」
 香蘭はそう言うと同時に、拳を地面に叩き付けた。

 爆裂音と共に土砂が舞い上がり、天目の視界を覆う。
 天目は舌打ちしながら、大きく後方に飛んだ。
 だが、それも二人の手の内。死角をついて回り込んだ紅玉が背後から必殺の拳を天目に叩き込む。

 ――殺った。

 勝利を確信した紅玉だったが、その拳が天目の背中にある派手な羽根飾りに弾かれる。驚愕に目を見開く紅玉。
「母様! 危ないのこと!」
 香蘭の叫びに、紅玉は飛びのく。追撃するように伸びる羽根飾り。
 それは明確に意志を持って紅玉を追跡してく。

「こっちね、天目!」
 天目が視線を向けると、中空から香蘭が飛びかかってくるところだった。
「愚か者め」
 天目の顔が険しく歪む。

 空中からの攻撃。それは浮いてる間は無防備であると言うこと。
 天目の羽根飾りが蠢き、香蘭に向かって一直線に飛んでいった。
 確実に香蘭を捕らえたと思った瞬間、放物線を描いていたはずの香蘭の身体が、空中から地面に向かって加速し、羽根飾りをかわす。着地点は天目の目の前。

「しまっ!」
 気を放出することで可能な多段飛び。紅玉を追っている分と、香蘭に向けて放った分で、武器となる羽根飾りを防御には回せない。
 香蘭の拳がうなりを上げ、天目の腹部に突き刺さった。

 腹部で爆弾が破裂したような衝撃に、天目の身体は豪快に吹っ飛ぶ。
 血反吐を吐きながら、何とか体勢を立て直した天目だったが、紅玉がその隙を逃すはずもなく追撃してくる。死角となる上空からの蹴り。必殺の間合いから放たれたそれは、しかし横合いからの妨害で阻止された。

 紅玉をはじき飛ばした小さな影。
 自らも追撃に突っ込んでいた香蘭の顔に、当惑が広がる。

「子供?」
 無邪気な顔で佇む子供は、香蘭との間合いを一瞬で詰めると無造作に殴りつける。まるで間の距離が消失したかのような神速以上の動きと、全身を軋ませるような一撃。
 香蘭も大きくはじき飛ばされ、川辺城を囲う城壁に激突した。

「かあちゃん虐めちゃ、め!」
 そう言って口を尖らせ、二人の存在など無視して天目に駆け寄る。
「だいじょうぶ~? かあちゃん」
 天目は口元の血を拭うと、息子の頭をなでつける。
「ああ、問題ない。すこし油断した……」

 立ち上がった天目の足下は危なげない。視線を向ければ、困惑したような表情を向ける、香蘭、紅玉がいる。

「さぁて、どうする? 次は容赦しないが……」
「香蘭、ここはいったん退きますよ」
 紅玉は慎重にそう呟いた。得体の知れない子供の参戦で、流れが悪い。

「仕方ないね。天目、次は確実に仕留めるよ」
「負け犬の遠吠えか……」
 嘲笑を浮かべる天目に、殺気の籠もった視線を向けつつ、二人は川辺城へと戻っていった。

 天目はそれを見届けると、息子の手を引いて踵を返す。
 本陣の方から、数人の兵士が向かってきていた。

「天目様。ご無事ですか?」
「大事無い。それよりも部隊の展開を急がせろ。隙をみせれば奴ら、嬉々としてそこを攻めてくるぞ。お前等では一対一では話にならんのだ。余計な被害が増える」
「はっ!」
 天目はそれから部下へと一通り指示を出し終えると、川辺城の方を一瞥し、呟いた。

「さて、次はどう出るか……」



 本営の天幕で、上半身裸の――と言ってもいつもと大して変わらないが――天目は、忌瀬の治療を受けていた。
 香蘭の一撃を貰った部分が、どす黒く変色している。熱があるのか顔色もあまり良くなく、呼吸も若干乱れていた。
「まったく、あんなの貰って良く生きてるわね~。無理しちゃダメよ、独り身じゃないんだから」
「ふん。大したことはない」
 忌瀬は苦笑しながら、薬草を練り合わせものを布に貼り付けて、患部に貼り付けると包帯でそれを固定する。湿布のようなものだ。

「大仰だな。もう少し何とかならんのか?」
「何言ってるのよ。きっちり肋三本折れてるんだから。本来なら絶対安静よ」
「普通の人間と一緒にするな」
 天目はぶっきらぼうに呟くと、腰を下ろしている寝台で、寝息を立てている息子の頭を撫でる。

「まぁ、コイツがいなければ危ないところだったがな」
「しかし、強いねあの親子。どうするつもり? 討ち取るのは難儀よ」
「相応の犠牲は覚悟しなくてはならないだろうな。一対一ならば負けはしまいが」
「それも怪我をしていなければ、でしょう? あ~あ、こんな時九峪がいればねぇ~」
「……」
 九峪の名前が出た途端、天目の顔に渋面が広がる。人前では絶対に見せない顔だが、忌瀬との付き合いは短くない。それだけ心を許している面もあるのだろう。
 忌瀬はそんな天目の表情を見て苦笑を浮かべる。

「アハハ、ごめんごめん。冗談よ。九峪に頼んだらその子の兄妹が増えるだけだもんね。まぁ、犠牲は出ないかも知れないけど」
「節操がないからな」
「何を今更だけど。どこにいるのかしら、本当に」
「さてな……。まぁ、どうでもいいさ」
「無理しちゃって」
「別に無理など……」

「天目。何かあったの? 九峪と離れてもう三月以上でしょう? なんで、探しに行かないの? 今までのあなたなら……」
「もうすぐ……、時間切れだから」
「時間切れ?」
「あいつは、自分の世界に帰る。いや、帰らなければならないんだ。それを引き留めることは出来ない」
「どういう事? 自分の世界って……」
「あいつはこの世界の人間じゃない。異世界からやって来た」

「それは聞いたことあるけど」
「私とて全てを分かってる訳じゃない。ただ、十五年経ってしまったから」
「ちょっと、天目? 意味が分からないわよ」
「だから、今の内から九峪がいない世界に慣れておかないと……」
「……本当なの?」
「さぁ。いい加減愛想が尽きただけかもな」
 天目はそう言って鼻で笑う。だが、忌瀬にはその横顔がどこか寂しげに見えた。













追記:
 一転シリアスモード、ってな感じの四十六章でした。天目が何をどこで知ってそんな事を曰っているかは、ご想像にお任せします。書かないとマズイかなぁ。まぁ、書くかぁ。予告エンディングまであと四章だが、絶対終わらんな。まぁ、六十までには終わるでしょう。間違って後四章で終わるかも知れないし。

 さて、アトガキはこの辺で、web拍手のお返事でも。
 2日の分一件です。

22:48 設定上姫御子は人妻ですよねぇ。旦那が誰で生きてるのか不明ですから未亡人かもわかりませんし
 といただきました。
 確かに姫御子は人妻ですね。でなければ子孫など出来ていないわけですし、耶麻台王家の祖でもあるわけですから、おかしな話になりますよね。まぁ、天空人が細胞分裂で増えるなら話は別ですが(爆 作者の脳内設定では旦那は人間でとっくの昔に死んでいることになってます。
 しかし、姫御子も火魅子も号とかそんなもので、名前じゃないような気もするんだけど、どうなんだろう。まぁ、気にしても仕方ないですが。
 コメントありがとうございました。

 後は盛衰記の場所が分からないというご報告がありましたが、そちらはメールで返事を出したので割愛させて頂きます。

 他にも拍手をくれた皆様、ありがとうごぜえますだ。

 では、本日はこの辺でヾ( ̄◇ ̄)ノ)) バイバイ
【2006/06/06 17:57】 | 小説 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
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